令和2年6月、我が国周辺における中露両軍の活動


2020-07-05(令和2年6月) 松尾芳郎

 

令和2年6月の我が国周辺における中露両軍の活動は極めて活発で、それに対応して我が自衛隊および米軍の動きも増えている。

  •  令和2年6月、我が国周辺における中露両軍の活動について統合幕僚監部が発表した中露両軍の活動は8件である。
  •  6月20日、防衛省は「潜没潜水艦の動向について」と題して(中国海軍)潜水艦が潜没したまま奄美大島北東の海域の接続水域内を太平洋から東シナ海に航行した件を公表した。
  •  沖縄県尖閣諸島領海および接続水域への中国海警局艦艇の侵犯は、6月末まで連続78日間に達し、その後も続いている。
  • 台湾当局によると、6月における中国軍機の台湾防空識別圏(ADIZ)侵犯は、2日に1回の頻度で続き、その都度台湾空軍は戦闘機を緊急発進して対応している。
  • 米海軍第7艦隊によると、空母「ニミッツ(Nimitz)」打撃艦隊および空母「ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)」打撃艦隊は、6月初めからフィリピン海および南シナ海に展開・訓練を行い、“自由で開かれたインド・太平洋作戦(a free and open Indo-Pacific)”に従事している。6月21日からは空母「セオドア・ルーズベルト(Theodore Roosevelt)」打撃艦隊が新たに加わり、合計3空母打撃艦隊が同海域に展開している。
  • 米海軍第7艦隊および海上自衛隊幕僚監部発表によると、6月23日に南シナ海で日米両海軍の合同演習が行われた。米海軍の沿海域戦闘艦(littoral combat ship)「ガブリエル・ジフォーズ(Gabrielle Giffords / LCS 10)」と海自練習艦「かしま」および「しまゆき」が参加した。

 

  1. 統合幕僚監部公表の8件;―

6月10日  ロシア機の日本海における飛行について

6月19日  ロシア海軍艦艇の動向について

6月22日  中国機の東シナ機および日本海における飛行について

6月22日  中国海軍艦艇の動向について

6月22日  ロシア海軍艦艇の動向について

6月23日  中国海軍艦艇の動向について

6月28日  中国機の東シナ海および太平洋における飛行について

6月29日  中国海軍艦艇の動向について

 

以下にこれらの内容を紹介する。

6月10日公表:ロシア機の日本海における飛行について

6月10日(水)ロシア空軍「IL-20」情報収集機1機が、北海道西岸沿いに日本海を南下、能登半島沖で北に向け進路変更、シベリア方面に立ち去った。航空自衛隊戦闘機が緊急発進、領空侵犯に備えた。

06-10 IL-20

図1:(統合幕僚監部)6月10日、北海道の日本海沿いを飛行したロシア空軍「IL-20」情報収集機。「IL-20M」とも呼ばれ、通信傍受をするCOMINT/ELINT偵察機。1957年代から600機以上生産されたイリューシン(Ilyusin) IL-18旅客機をベースに開発された派生型。IL-18は離陸重量64 ton、イブチェンコAl-20Mターボプロップ4,250 hp 4基を装備する。

06-10 IL-20航跡

図2:(統合幕僚監部)6月10日、ロシア空軍Il-20 情報収集機の飛行経路。

 

6月19日公表:ロシア海軍艦艇の動向について

6月17日(水)午前1時、沖縄本島の南東80 kmの海域を太平洋から東シナ海に向け航行するロシア海軍ステレグシチー級フリゲート2隻を発見した。その後これら艦艇は宮古海峡を北上、対馬海峡を北東に進み日本海に向けて航行した。発見・追尾したのは海上自衛隊佐世保基地第13護衛隊所属護衛艦「あさゆき」、舞鶴基地第14護衛隊所属護衛艦「せんだい」、鹿屋基地第1航空群所属哨戒機「P-1」、および那覇基地第5航空群所属哨戒機「P-3C」である。

また、6月19日(金)午前4時、下対馬の南西150 kmの海域を北東に進むロシア海軍ウダロイI級駆逐艦1隻を発見した。その後同艦は対馬海峡を北東に進み日本海に入った。発見・追尾したのは佐世保基地第13護衛隊所属の護衛艦「じんつう」である。「じんつう」DE-230は、満載排水量2,900 ton、平成2年就役の近海警備用の護衛艦。

06-17 333

図3:(統合幕僚監部) ロシア海軍の「最新鋭コルベット」。満載排水量2,200 ton、全長104,5 m、速力27 kt、マスト頂部はSバンド3次元レーダー、マスト本体は最新の閉囲型で内部に各種レーダーが装備されている。兵装は、対空戦用にGSh-630M 30 mm ガトリング砲 2基、陸上用対空ミサイルS-400を艦載化し12セルのVLS(垂直発射装置)に装備、対艦用に3M24ウラン対艦ミサイルを4連装発射筒2基に搭載している。艦番号[333]は2017年就役の3番艦「ソベルシェンヌイ」、太平洋艦隊に配属。同型艦は6隻で、現在2隻が艤装中なので合計8隻になる。今年4月3日にも対馬海峡から東シナ海に向け航行した。

06-17 335

図4;(統合幕僚監部)艦番号(335)は「グロムキー」、2018年12月に太平洋艦隊で就役。これも艦番号[333]と共に4月3に対馬海峡から東シナ海に入っている。

 06-19 548

図5:(統合幕僚監部)ウダロイ(Udaloy) I級駆逐艦「アドミラル・バレンテーエフ」(548)。本級5は「1155型大型対潜艦」と呼び、満載排水量8,500 ton、強力なソナー、長射程の対潜ミサイル、ヘリコプター2機、SA-N-9型個艦防空ミサイルを装備。1980-1991年に作られ8隻が就役中で太平洋艦隊には内4隻を配備。イージス艦に近い性能を持つ。

 

6月22日公表:中国機の東シナ海および日本海における飛行について

6月22日(水)中国海軍「Y-9」情報収集機1機が対馬と九州の間の対馬海峡を、東シナ海から日本海に入り竹島南で反転、往路と同じ経路で再び東シナ海に戻った。航空自衛隊では戦闘機を緊急発進させ、領空侵犯を防いだ。

06-22 海軍Y-9

図6:(統合幕僚監部)中国海軍Y-9情報収集機。陜西航空機が作るY-9多用途輸送機を情報収集機に改造した機。Y-9は、アントノフ(Antonov) An-12輸送機を国産化した陜西Y-8Fを基本に胴体を延長し、貨物搭載量は25 ton、人員なら100名+を運べる。西側のC-130J輸送機に相当するサイズ。

06-22 Y-9航跡

図7:(統合幕僚監部)6月22日、中国海軍Y-9情報収集機の飛行経路。

 

6月22日公表:中国海軍艦艇の動向について

6月20日(土)午前7時、宮古島東130 kmの海域を北西に進む中国海軍ルーヤンII級ミサイル駆逐艦1隻、ジャンカイII級フリゲート1隻、およびフチ級補給艦1隻を発見した。発見・追尾したのは海上自衛隊沖縄基地第46掃海隊所属掃海艇「くろしま」および那覇基地第5航空群所属哨戒機「P-3C」である。これら艦艇は5月29日(金)に沖縄本島と宮古島間の宮古海峡を南下、太平洋に出たものと同一である。

中国政府を代弁するメデイア「環球時報」は、防衛省統合幕僚監部のこの発表を受けて、次のように伝えた。

『宮古海峡を通過し東シナ海に入った中国艦は、052C型ミサイル駆逐艦「済南」、054A型フリゲート「湘潭」、総合補給艦「千島湖」だ。これは中国軍の正当な訓練活動であるが、日本は騒ぎすぎる。日本は気持ちの整理ができていない。これまで宮古海峡を通過する中国の軍艦が少なかったのが原因なら、今後我々はもっと多くを通過させる。そうすれば日本は慣れてくるだろう。』

残念なことに大半の我国のマスコミは、「環球時報」の思惑通り、沖縄列島を通過する中国艦隊をいちいち報道してはいない。6月分について大きく報道したのは後述の6月20日の「潜没潜水艦の奄美大島付近海域の通過」問題だけである。国防意識の欠如以外の何物でもない。嘆かわしい限りだ。

06-20 152

図8:(統合幕僚監部)「旅洋(Luyang)型」は、「旅洋I型:広州級(052B型)」、「旅洋II型:蘭州級(052C型)」、「旅洋III型:昆明級(052D型)」に大別される。「旅洋I型」は試作。「旅洋II型」は中国版イージス艦(Chinese Aegis)と呼ばれ僚艦防空能力を持つ、6連装回転式VLSを8基搭載し、6隻が建造された。このうちの5番艦が写真の[済南/Jinan」[152]」で東海艦隊に所属している。2014年に就役。満載排水量7,000 ton、速力30 Kt。なお「旅洋III型」は最新モデルで、2018年初めまでに18隻が製造中で、うち13隻が就役済み。

06-20 531

図9:(統合幕僚監部)「ジャンカイII/江凱II」型は「054A」フリゲートで、2008年に1番艦が就役。満載排水量4,500 ton、全長137 m、速力27 kt。米国のMk41 VLSに似た32セルVLSに、射程120 km のHQ-16対空ミサイルを搭載。対艦ミサイルは艦中央部にYJ-83型射程180 km、を4連装発射機2基に格納している。[045A]フリゲートは外洋艦隊用で防空能力を強化している。写真[531] 湘潭/Xiangtan」は2016年就役、東海艦隊に所属。同型艦はすでに30隻+が建造されている。

06-20 フチ補給艦

図11:(統合幕僚監部)903型「福地」級補給艦、写真の[886]は2005年就役の1番艦「千島湖/qiandaohu」。[903]型は満載排水量20,500 tonで同型艦2隻が作られた。その後改良型の903Aとなり、こちらは7隻が就役すみ。いじれも航続距離10,000 n.m.の大型艦。フランス製SEMT 16PC2-6V400エンジン2基を搭載、速力20 kt.で同型艦は7隻。

 

6月22日公表:ロシア海軍艦艇の動向について

6月21日(日)午前9時、北海道宗谷岬北西80 kmの海域を日本海からオホーツク海に向け東進するロシア海軍タランタルIII級ミサイル護衛哨戒艇2隻を発見した。発見・追尾したのは海上自衛隊の北海道夜市防備隊第1ミサイル艇隊所属「くまたか」である。

06-21 924

図12:(統合幕僚監部)タランタルIII級ミサイル護衛哨戒艇。超音速対艦ミサイルSS-N-22連装発射筒を両舷に備える。現役は25隻、満載排水量462トン、速力36ノット、兵装はSS-N-22対艦ミサイル4基と76 mm単装砲1門。SS-N-22は西側呼称で、ロシアでは「P270」モスキートと呼び、全長約10 m、直径0.74 m、重量4.5 ton、弾頭は300 kg HEまたは200 k ton核弾頭。射程は最大で250 km、速度はマッハM2.2~M3。推進はインテグラル・ロケット・ラムジェット(IRR)。ソブレメンヌイ級駆逐艦、ウダロイII級駆逐艦にも搭載している。今は[P-270]の後継として[P-800]ヤーホント/オーニクスが実用化されている。

06-21 940

図13:(統合幕僚監部)前図の説明を参照。

 

6月23日公表:中国海軍艦艇の動向について

6月21日(日)午前3時、下対馬の南西200 kmの海域を北東に進む中国海軍ジャンカイII級フリゲート1隻を発見した。同艦は対馬海峡を北上し日本海に入ったが23日(火)に再び対馬海峡を南下、東シナ海に戻った。発見追尾したのは海上自衛隊佐世保基地第3ミサイル艇隊所属「おおたか」と鹿屋基地第1航空群所属哨戒機「P-1」と「P-3C」である。

06-21 598

図14:(統合幕僚監部)江凱II級フリゲート「日照/Rizhao」(598)は、2018年就役、北海艦隊に所属中。「江凱II級」については図9の説明を参照する。

 

6月28日公表:中国機の東シナ海および太平洋における飛行について

6月28日(日)中国空軍「H-6」爆撃機2機が沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を東シナ海から太平洋に向け通過、南西に変針、台湾東部の空域に接近してから往路同じ航路で東シナ機に戻った。航空自衛隊では中吉から戦闘機を緊急発進させ、領空侵犯を防いだ。

06-28 H-6

図15:(統合幕僚監部)最近H-6K爆撃機編隊がしばしば宮古海峡を通過する。さる2月9にも台湾を周回飛行した。H-6はロシアTu-16バジャー爆撃機を西安航空機でライセンス生産した機体。以来改良が重ねられ現在のH-6K型となり巡航ミサイル搭載機として対地・対艦用巡航ミサイルCJ-10Kを6基搭載する。乗員3名、全長35m、翼幅34.4m、最大離陸重量76 ton。複合材使用率を高め、エンジンは国産WP-8型からロシア製のD-30KP-2型に換装、推力を30 %アップ、燃費は20 %向上した。H-6Kは2007年1月に初飛行、2011年5月から配備。巡航速度790km/hr、戦闘行動半径3,500 km、兵装搭載量は9 ton。搭載するCJ-10K巡航ミサイルは、車載型のDH-10の系列で、長さ約7 m、重さ1,350 kg、弾頭炸薬300 kg、速度マッハ0.9、射程は280 kmもしくは2,000 kmと言われる。米国のトマホークに匹敵する。昨年4月15日にも全く同じ航路で数機が飛行した。

06-28 H6の航路

図16:(統合幕僚監部)6月28日、中国空軍H-6K爆撃機2機の航跡。

 

6月29日公表:中国海軍艦艇の動向について

6月26日(金)午後8時、沖縄県久米島の北西300 kmの海域を東シナ海から太平洋に向け南東に進む中国海軍ジャンカイII級フリゲート1隻を発見した。その後同艦は宮古海峡を南下、太平洋に出たが28日(日)に再び往路同じ航路で東シナ海に戻った。発見・追尾したのは那覇基地海上自衛隊第5航空軍所属「P-3C」哨戒機である。

06-26 515

図17:(統合幕僚監部)江凱II級フリゲート「浜州/Binzhou」(515)」は2016年就役、東海艦隊に所属中。「江凱II級」については図9の説明を参照する。

 

  1. 防衛省発表の潜没潜水艦の動向

 

6月20日 防衛省発表(お知らせ):潜没潜水艦の動向について

6月18日(木)午後、海上自衛隊は、鹿児島県奄美大島の北東の横当島との間の海域、幅10 kmほどの狭い接続水域内を潜水艦が潜没したまま太平洋側から東シナ海に向けて西に進むのを発見した。その後20日にかけて同潜水艦は、横当島の西の海域で接続水域を出、西方の東シナ海に向け脱出した。

本件について河野防衛大臣は「警戒・監視に万全を期せ」と指示をした。

当該潜水艦が中国海軍所属であることは明らかなので、海上自衛隊では出動可能な艦艇、航空機を動員し、監視・追尾を行なった。

海上自衛隊第1航空群鹿屋基地所属の「P-1」哨戒機、第5航空群那覇基地所属の「P-3C」哨戒機、呉基地第4護衛隊所属のヘリ空母「かが」、佐世保基地第5護衛隊所属の護衛艦「あきずき」および佐世保基地第2護衛隊所属のイージス艦「あしがら」が出動、終始追跡して、深度、速度、騒音、スクリュー音など必要な情報を収集し、警戒・監視を行なった。

「かが」DDH-184は、満載排水量26,000 tonのヘリ空母で平成29年就役。艦首水面下に対潜用ソナー・ドームを備え、SH-60K哨戒ヘリを多数搭載する。

「あきずき」DD-115は、満載排水量6,800 ton、平成24年就役の僚艦防空能力を持つ艦で、対潜魚雷アスロックを装備する。

「あしがら」DDG-178は、満載排水量10,000 tonのイージス艦で平成20年就役。弾道ミサイル防衛能力と対潜能力向上の改修を昨年完了した。対潜魚雷アスロックと最新型曳航ソナーMFTAを搭載している。

「SH-60K」哨戒ヘリコプターは、「SH-60J」哨戒ヘリ(103機製造)の後継機で、75機が配備され17機が製作中。対潜魚雷を2本搭載、胴体格納式の低周波発信周波数を使う新型デイッピング・ソナー[HQS-104]、胴体右に磁気探知装置(MAD)、などを備え、対潜探索能力が向上している。さらに、世界初の自動着艦装置「着艦誘導支援装置(SLAS)」を備え、夜間、荒天時でも容易に着艦できる。

「P-1」哨戒機は、IHI製「F7」ターボファン4基装備の中型哨戒機で川崎重工製、平成25から就航、これまでに27機が配備済み。操縦系統は、センサーや電子機器との干渉を避けるため光ファイバー使用の“フライ・バイ・ライト”方式。「P−3C」同様に機首下部のウエポンベイに対潜爆弾、魚雷を収納する。ソノブイ発射口は主脚後方にあり38本を搭載する。

接続水域

図18:領海・接続水域・排他的経済水域・公海の関係。2020年6月18日の中国潜水艦は、奄美大島と横当島の間の接続水域を潜航して通過した。潜水艦が領海を航行する場合は浮上し国旗を掲揚しなければならない。

人間に指紋があるように、潜水艦にはスクリューの回転音など独特の音紋がある。中国は60隻以上の潜水艦を保有しているが、海上自衛隊は多くについて音紋を把握しているのでどの艦なのかを判定できる。

海自の潜水艦捕捉能力は「P-3C」や新型の「P-1」哨戒機を合計約100機運用するなど米海軍と並んで世界一のレベルにある。今回の中国潜水艦の行動は、複雑な海底地形の中での操艦技術を誇示するためとか、海自の潜水艦探知能力を試すためとか、いろいろ推測されている。

しかし、今回は海自の艦艇、航空機から予想以上に強力な探知を受け、ようやく脱出できたというのが本当ではないか。中国軍広報サイト”China Military”や中国政府系のサイト“環球時報”は、作戦が成功した場合はすぐに成果を報道するのが普通だが、本件に関しては無言のまま。防衛省は艦種、艦名を把握していると思われるが発表していない。

奄美大島・横当島

図19:(Google)鹿児島県奄美大島とその北東にある横当島の関係位置。両島の間にある接続水域内の狭い水道(幅10 km)を中国海軍潜水艦が6月18日潜航して太平洋側から東シナ海に向け通過した。

 

中国海軍の潜水艦は60隻を超えるが、大半は旧式・高騒音で探知されやすく、近代戦には適応していない。その中で注目されるのは現在も増勢が続いている次の2つ。

094型原潜「晋」Jin級;-

093型「商」級・排水量7,000 ton、が「晋」級の基本とされる。「商」級は射程400 km程度の中距離巡航ミサイルを10数機搭載でき、4隻が就役している。今回の潜没航行事件の前、2018年1月10日、11日の両日にも同じ事件があったのは忘れている人も多いだろう。この時も中国潜水艦が沖縄県尖閣諸島周辺の接続水域を潜没航行しているのを海自護衛艦が探知発見した。そして海自護衛艦からアクテイブ・ソナーの繰り返し探索(攻撃)を連続して受け、たまらずに浮上、中国旗を掲げて退散した事件である。防衛省の発表によるとこれは「商」級潜水艦であった。

「商」級を大型化し全長137 m、排水量12,000 tonにしてSLBM発射型潜水艦にしたのが「晋」級である。これまでに5隻が就役している模様。ロシアのルビーン海洋研究所の技術協力で作られた。潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)・「巨浪2型(JL-2)」(射程8,000 km)を12基搭載する大型艦である。

039A型攻撃潜水艦「元」Yuan級

ロシアから輸入した「キロ」級を基にした攻撃型通常動力潜水艦。533 mm魚雷発射管6門を備える。水中排水量2,400 ton、全長72 m、形状は涙滴型、1軸推進式、潜没時の最大速力は23 kt、最大潜航深度は300 m、機関はドイツMTU製のデイーゼル・スターリング・エレクトリック方式でいわゆる非大気依存推進(AIP)方式である。12隻が就役済み。

 

  1. 米第7艦隊発表;―3空母打撃群が“自由で開かれたインド・太平洋作戦”に従事中

、空母「ニミッツ(Nimitz) CVN-68」打撃艦隊および空母「ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)(CVN-76)」打撃艦隊は、6月初めからフィリピン海および南シナ海に展開・訓練を行い、“自由で開かれたインド・太平洋作戦(a free and open Indo-Pacific)”に従事している。さらに6月21日からは空母「セオドア・ルーズベルト(Theodore Roosevelt) CVN-71」打撃艦隊が新たに加わり、合計3空母打撃艦隊が同海域に展開している。

一方中国軍ウエブサイト「China Military online」は6月末から7月5日に西沙諸島(Xisha Islands)海域で軍事演習を実施するので、同海域への進入を禁止すると発表した。

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図20:(U.S. Navy Mass Communication Specialist Seaman Dylan Lavin)「セオドア・ルーズベルト(CVN 71)」、「ニミッツ」両空母打撃群が6月23日にフィリピン海で合同演習を行っている様子。これより先6月17日「セオドア・ルーズベルト」で飛行訓練中の第11空母航空団 (Carrier Air Wing 11) 所属の艦上攻撃機F/A-18Fスーパーホーネットが墜落、乗員2名は脱出、救助されるという事故があった。

 

  1. 米第7艦隊および海上幕僚監部発表;―

 

6月15日 海上幕僚監部発表:日米共同訓練について

6月15日(月)、海上自衛隊ヘリ空母「かが」は米陸軍との連携強化のため、米陸軍の「UH-60L」ヘリコプター2機の発着艦訓練を関東地方南方海域で実施した。

06-15 かが離発着訓練

図21:(海上幕僚監部)6月15日、海自ヘリ空母「かが」DDH-184 に着艦する米陸軍「UH-60L」ヘリコプター。

 

6月24日海上幕僚監部発表:日米共同訓練について

6月23日(火)に、海上自衛隊の練習艦「かしま」、「しまゆき」は米海軍の沿海域戦闘 (LCS=Littoral Combat Ship)「ガブリエル・ギフォース」と南シナ海で戦術運動および通信訓練を実施した。

沿海域戦闘艦(LCS)とは、沿海域での作戦用に作られた排水量3,000 ton、全長127 m程度の小型艦。44 kt (80 km/hr)の高速航行ができるトリマラン(3胴)型、MH-60R/Sヘリコプターや無人ヘリなどを搭載する。兵装は、BAE製Mk 110  57mm砲1門、対空Sea RAM CIWS 1基、30 mm Mk44 機関砲2門、対戦車ミサイルAGM-114Lヘリファイヤー24発、など対地上戦用兵装を多く搭載している。

[LCS]には「インデペンデンス級(Independence-class)」と「フリーダム級(Freedom-class)」の2つがあり、「ガブリエル・ギフォーズ(Gabrielle Giffords) LCS-10」は前者で、2017年6月就役、母港はサンデイゴ(San Diego, Calif.)。米海軍は昨年末までに20隻を配備済み、さらに18隻の建造を予定している。

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図22:(US Navy Petty Officer 2nd Class Brenton Poyser) 6月23日、合同演習中の右から米海軍沿海域戦闘艦「ガブリエル・ジフォーズ(LCS 10)」、海自練習艦「かしま」と「しまゆき」。

 

―以上―