岸田総理を選出‼再エネ狂奏の湘南グレタ隊は座礁


2021-10-04 (令和3年)元文部科学大臣秘書官 鳥居徹夫

 10月4日召集の臨時国会で、岸田文雄が第100代目の首相に指名された。それに先立ち自民党総裁が、菅義偉から岸田文雄に交替した。

 自民党総裁選挙(任期満了)の結果を受けて、自民党の役員人事が行われ、幹事長に甘利明、政策調査会長に高市早苗が選出された。

 自民党は、11月中旬とみられる総選挙に向けて、政策づくりに取り組むが、その責任者は政調会長の高市早苗議員である。

 自民党の総選挙アピールには、日本の国家観、日本のあるべき姿、日本の進むべき道を、国民の生命と財産を守ることを基本姿勢とすべきである。

 高市議員は政策調査会長として、目前に迫った衆議院総選挙の自民党の公約づくりに作業に着手しており、『美しく、強く、成長する国づくり』、『日本経済強靱化計画』などを基軸に提示するとみられる。

◆議員票でも、岸田候補や高市候補に引き離された河野太郎

 安倍晋三前首相の病気辞任で、残りの任期を務めた菅義偉首相が自民党総裁選挙に不出馬を表明し、定期の総裁選挙は4候補の争いとなった。

 党員投票の資格者は約110万人、投票率は党員の関心も高く69%と高水準となった。

 総裁選挙は、国会議員票、党員票それぞれ382で計764票。どの候補者も過半数に満たないときは決選投票となり、議員票382票と都道府県票47票を上位2候補で争われる。

 第1回目の投票は、1位は岸田候補で256票(国会議員票146票、党員票110票)、2位は河野太郎行政改革担当大臣で255票(国会議員票86票、党員票169票)、3位は高市早苗前総務大臣で188票(国会議員票114票、党員票74票)、4位は野田聖子幹事長代行で63票(国会議員票34票、党員票29票)。

 いずれの候補も過半数に達しなかったため、上位2人による決選投票となり、岸田候補は257票(国会議員票249票、都道府県票8票)、河野候補は170票(国会議員票131票、都道府県票39票)で、岸田候補が自民党総裁に選出された。

 マスコミ等の事前予想では、第一回投票で河野候補は、番狂わせの2位となった。1位は岸田候補であり、その勢いで決選投票は河野候補に大勝した。

 当初、第一回投票でトップと予想されていた河野候補は、地方党員の得票の6割をとれば議員票も大きく流れ、決選投票に持ち込むことなく勝利を予測していた。ところが党員票は44%と伸び悩んだ。それどころか議員票では岸田候補、高市候補に大きく差をあけられた。

◆双方向の「オンライン政策討論」で、自民党が活性化 

  河野候補は菅義偉首相の支持を受け、石破茂元幹事長や小泉進次郎環境相とも連携し、知名度の高さを武器に支持拡大を図った。河野陣営は、石破茂元幹事長や小泉進次郎環境相の支援を受けて党員票を集め、「選挙の顔」を求める議員心理に訴える戦略を描いていた。

  じっさい衆院選を直前に控える中で、選挙基盤が脆弱な若手議員からの支持も、当初は高かった。

  総裁選挙後の10月1日河野太郎は大阪府で、「人事をやらないといけないから(講演に)行けない」と、講演依頼をいったんは断っていたことを明らかにした。

  河野候補は告示前までは有利に戦いを進めたが、選挙戦中盤に行われた自民党主催の4日間連続「オンライン討論会」やテレビの候補者討論会で、脅威を増す中国への対応、最低保障年金構想、エネルギー政策などが論争となり、河野候補からは失言や前言訂正ばかりでなく、品性を疑う言動が続出した。

  潮目が変わったのである。

  総裁選挙の最終日に投票した国会議員は、当初の河野候補の支持から潮が引くように他の候補へと支持が流れた。

  新型コロナにより全国各地を巡る街頭演説会は、今回はなかった。従来は各地で街頭演説会を行っていたが、それは候補者側からの主張の一方通行であった。

  今年の自民党の「オンライン討論会」では、3才の子供さんから大人まで、海外からも多数が参加した。そして4候補は多岐にわたる質問に対して回答した。4候補は、ほぼ2時間出ずっぱりであった。

  各候補は、オンラインで政策論争を展開した。双方向の「オンライン討論会」は自民党を活性化させた。 

◆菅おろしの当選3回以下の議員が、今度は河野太郎ばなれ

  河野候補にとって致命的であったのが、選挙中盤の9月21日、衆院当選3回以下の自民党議員でつくる「党風一新の会」との意見交換会での言動である。

  河野候補は「(党の)部会でギャーギャー言っているよりも副大臣、政務官チームを半ば非公式に作ったらどうか」と発言した。これが若手議員の猛反発を招いた。

 菅義偉首相では選挙を戦えないとして、菅おろしに走った若手議員が、この討論会で河野候補に違和感を覚えたのである。

 「党風一新の会」には、たしかに選挙に弱い議員が多いが、岸田支持も高市支持の議員も多い。メディアで報道されたような河野候補支持グループではない。

 自民党政策調査会の各部会で論議しないとなると、大臣、副大臣、政務官として政府に入った者以外は、政策論議に加わることが出来ない。

 かつて民主党政権で、小沢一郎幹事長(当時)が「政権を守ることが議員の任務」と民主党の政策審議会を廃止した。

 要するに党内議論の否定である。

 この高圧的・権力的な姿勢は、河野陣営に多く見られた。

 選挙戦でBS番組の4候補の討論で高市候補が、政府の「エネルギー基本計画(中間報告)」は、最終決定に向けて大幅修正・見直すべきと発言した。

 これに環境大臣の小泉進次郎が、9月17日の会見で「再エネ最優先の方向性をひっくり返すということがあるなら、間違いなく全力で戦っていかなければならない」と発言し、「原発派と再エネ派の二者択一の戦いだ」と反発した。

 この「全力で戦う」と言い切った小泉進次郎の発言に対し、自民党総合エネルギー戦略調査会の会長代理の山本拓議員は「閣議後の会見という公式の場において自民党総裁選に介入し、高市候補をおとしめる発言をした」と、環境省に公開質問状まで送ったという。

 自民党のエネルギー戦略調査会は、「現在の化石燃料すべての発電量を、太陽光で賄うのに必要な設備面積は、東京ドーム13万個分」と指摘していたが、小泉大臣には「聞く力」がなかった。

 自民党の調査会や部会での自由闊達な論議は、「ギャーギャー言っている」という感覚で、批判すらも許さないという姿勢である

 山本拓議員は「原発か、再エネかと二者択一かのような争点に誘導する、悪意ある意図を環境大臣として発言しているとしか思えない」と、厳しく小泉進次郎を批判した。

 菅義偉、河野洋平、小泉進次郎、そして小沢一郎にとって、内閣・省庁と与党間の論議、内閣と与党のキャッチボールは邪魔ということである。

 そのくせ内閣は野党に配慮していた。国会では法案や予算が、野党の国会対策の人質に取られているのである。

 内閣は野党とのキャッチボールを重視し、従来から与党を軽視していた。民主党政権時も含めてそうである。

 ちなみに山本拓議員は、高市候補の元ご主人であったという。

◆太陽光など再生エネルギー推進派は、冷静な議論をブロック

 小泉進次郎にとって環境政策とは、再エネを口実に、太陽光パネルを農地や斜面にも敷き詰めて、環境破壊を行うことではないのか。

 しかも河野太郎のファミリー企業が、太陽光発電に必要なコネクターの製造などを通じて、中国企業と合弁会社を設立していることなどが露見した。

 再エネ・太陽光推進・脱原発の高圧的な強要は、太陽光など再生エネルギー推進派の利益誘導にもなりかねない。

 菅義偉は首相就任直後の所信表明演説(2020年10月26日)で「自然エネルギー電力目標を45%程度に引き上げ、全ての石炭火力発電をフェーズアウトすることが必要」と強調したが、その菅義偉は首相を退いた。

 そして菅内閣の閣僚だった小此木八郎は横浜市長選に敗北、河野太郎も総裁選に大敗した。

 さらに小泉進次郎が進めた「エネルギー基本計画(中間報告)」は、最終報告で大幅な修正を余儀なくされる。そもそも自民党の政策調査会長には、ブレない高市早苗が就任したばかり。再エネのウエイト見直しは不可避である。

 菅義偉、小泉進次郎、河野太郎ら湘南グレタ隊、そしてあの環境運動家を自称するスウェーデンのグレタも、高圧的で批判拒否的な言動が顕著にみられる。彼らにとって「冷静な議論」は、有害無益なのであろう。

◆政策討論の後の党員投票ならば、投票行動は変わった 

 メディアの世論調査で、次期総裁にふさわしい人物には河野候補がトップだった。

 党員への投票用紙は、告示日に送付された。党員から早く返信された投票には、各種討論会の河野候補のボロが露見する前のものが多かったという。

 党員票で河野候補は、投票総数の約44%にあたる約33万5千票、37都道府県でトップだったが、国会議員票で岸田候補や高市候補と大差をつけられた。

 党員投票が、政策討論を終えた後であれば、おそらく党員の多くが投票行動を変えたであろう。党員投票も、国会議員票に近かったのではないだろうか。

 実際、河野太郎に投票した後に、高市候補に投票し直したいという党員も多かったという。

 再エネ狂奏の湘南グレタ隊‼ は座礁を余儀なくされた。

 党員票と国会議員票のねじれは、投函・投票した期日の違いによるものであり、河野候補の実態がわかる前の投票か、その後の投票かの違いではないか。(敬称略)