令和5年1月、我国周辺での中露両軍の活動と我国/同盟諸国の対応


令和5年1月、我国周辺での中露両軍の活動と我国/同盟諸国の対応

2023(令和5年)-02-09 松尾芳郎

令和5年1月、我国周辺における中・露・両軍の活動と、我国および同盟諸国の動きに関し各方面から多くの発表があった。注目すべきニュースは次の通り。

  1. 中国軍機57機が台湾海峡で活動、一部が中間線超え
  2. 中国軍無人偵察機、数回宮古海峡を通過・太平洋を往復
  3. 中国海軍空母「遼寧」艦隊、12月中旬-1月初旬の間太平洋上で大規模演習
  4. 中国海軍情報収集艦、しばしば沖縄列島近辺を航行
  5. アラビア海で仏空母と共同訓練
  6. 2022年第3四半期までの緊急発進、対中国機が75 %
  7. 2022年12月、H-6爆撃機、太平洋に進出、グアム攻撃の演習
  8. 陸自、第5回に続き第6回大規模実働対抗演習を実施
  9. 海自、令和4年度インド太平洋中東派遣 (IMED23)を実施
  10. 海自、数回にわたり日米共同各種訓練を実施

(Military threats from Russia & Chinese Forces to Japan and Taiwan, are increases ever. Countermeasures proceeded by Japan and Allies. Following 10 were major issues in January.

  1. Chinese increased militant pressure to Taiwan, including 57 fighter flew into Taiwan’s Air Defense Zone, some of them across the midline of Taiwan straits.
  2. Chinese unmanned reconnaissance plane flew to Pacific several times thru Miyako strait.
  3. Chinese carrier strike group conducted a month long military drill in western-Pacific.
  4. Chinese Dongdiao-class Electronic Reconnaissance Ship sails around Okinawan islands.
  5. Japanese Naval vessels conducts military drill together with French carrier in Arabian Sea.
  6. Number of Scramble flight in first nine months of 2022 fiscal year, exceeded 600, of which 75 % for Chinese war planes. 
  7. Dec. 19, 2022, China’s H-6 bombers with cruise missiles flew, to be simulated mission for striking Guam.
  8. Japanese Army plan a large scale war game, following the previous month again.
  9. Japanese Naval vessels sail to “IMED23 : Indo-Pacific and Middle East Deployment 23” operation, started mid-January extend to May.
  10. Japanese Navy conducted war game with U.S. Navy several times in south-east Pacific 

以下にそれぞれを紹介する。

  1. 中国軍機57機が台湾海峡で活動、一部が中間線超え

台湾国防省は、1月9日午前6時から24時の間、中国軍機延べ57機と艦艇4隻が台湾海峡周辺で活動、と発表した。このうち28機が台湾海峡中間線を越えたり台湾南西の防空識別圏(ADIZ)に侵入した。来襲した中国軍機は、無人機「BZK-005」3機、戦闘機「J-11」6機、「スーホイ30」2機、「J-10」2機、「J-16」12機、爆撃機「H-6」2機、早期警戒機「空警500」1機。このうち無人機「BZK-005」の一部と「H-6」爆撃機はバシー海峡を通過、台湾南東の空域を飛行した。

台湾軍は、戦闘機の緊急発進と沿岸防備用巡航ミサイル部隊で対処した。

図1:(CNS=共同) 2022年11月撮影の中国軍戦闘機「J-16」。本機は、「Su-27SK」を基にした「J-11BS」を改良した機体なので外見上は「J-11BS」とほぼ同じ、乗員2名、全長21.9 m、翼幅14.7 m、最大離陸重量35 ton、航続距離3,900 kmの大型機。

  • 中国軍無人偵察機、しばしば宮古海峡を通過・太平洋を往復

1月1日午前から午後にかけて中国軍無人偵察機「WZ-7」が東シナ海から宮古海峡を通過、太平洋に進出、先島諸島(宮古島、石垣島など)の南を旋回飛行したのち、反転して往路と同じ経路で東シナ海に戻った。これに対し空自南西航空方面隊の戦闘機が緊急発進、領空侵犯に備えた。「WZ-7」を確認したのは今回が初めてである。

図2:(統合幕僚監部)1月1日の中国軍無人偵察機「WZ-7」の航跡

図3:(統合幕僚監部/航空自衛隊戦闘機撮影)写真は空自戦闘機の上空を飛ぶ無人偵察機「WZ-7」。巡航速度700 km/hr、高度20,000 mを連続10時間飛行可能で、行動半径は2,500 km。グローバルホークよりやや小型で性能も劣るが、高空からの長時間偵察に適した機体。

図4:(第13回中国航空ショー/珠海2021年9月27日・奥寺淳氏撮影)無人偵察機「WZ-7・翔龍」。空自三沢基地配備の無人機「グローバルホーク」級のUAV。2022年台湾海峡を通過中だった米ミサイル巡洋艦上空を飛行したことがある。

1月19日午後、別の無人偵察機「BZK-005」が宮古海峡を通過太平洋に進出、沖縄本島南東の空域を飛行した後、往路と同じ経路で東シナ海に戻った。これに対しても空自南西航空方面隊から戦闘が緊急発進、対処した。

「BZK-005」は中高度で40時間対空して偵察・監視ができるUAVで2004年珠海航空ショーで姿を現した。双胴、双尾翼、推進式プロペラを装備、エンジンはピストン型、離着陸距離は600 m、離陸重量は1,250 kg、巡航速度は180 km/hr、高度5~6,000 mに滞空、偵察する。

2018年の珠海航空ショーでは、派生型「BZK-005C」が展示された。これは攻撃型で、重量300 kgまでの誘導爆弾、ミサイルを装備する。

図5:(統合幕僚監部)1月19日の中国軍無人偵察機「BZK-005」の航路

図6:(日本周辺の軍事兵器)統幕発表の写真は不鮮明なので、別の写真を掲載する。[ BZK-005]は、主翼は高アスペクト比で後退翼、双胴、双尾翼、推進プロペラの構成である。

  • 中国海軍空母「遼寧」艦隊、12月中旬-1月初旬の間太平洋上で大規模演習

本項は、既報「令和4年12月、我が国周辺における中露両軍・北朝鮮の活動と我が国/同盟諸国の対応」(2023-01-08)[4項]で紹介した件の続報。

1月1日、空母「遼寧 (16)」、「ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦 (120)」、「レンハイ級ミサイル駆逐艦2隻(103)および(104)」、「ジャンカイII級フリゲート(542)」、および「フユ級高速戦闘支援艦(901)の合計6隻が、沖縄本島と宮古島の間、宮古海峡を通過北上、東シナ海に入った。これらの艦艇は12月16日に、宮古海峡を南下、太平洋に出たものと同一である。

海自は佐世保基地第5護衛隊護衛艦「ありあけ」、那覇基地第5航空群哨戒機「P-3C」が監視に当たった。

図7:(統合幕僚監部)中国海軍空母「遼寧 (16)/Liaoning」

図8:(統合幕僚監部)ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦 (120) 「成都 (Chengdu)」

図9:(統合幕僚監部)レンハイ級ミサイル駆逐艦(103)「鞍山 (Anshan)」

図10:(統合幕僚監部)レンハイ級ミサイル駆逐艦(104)「無錫 (Wuxi)」

図11:(統合幕僚監部)「ジャンカイII/江凱II」「棗荘 (Zaozhuang)・542」

図12:(統合幕僚監部)「呼倫湖 (Hulun-hu)・901」

1月2日深夜、与那国島南東160 kmの海域を北西に進む「レンハイ級ミサイル駆逐艦(102)」、「ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(124)」、および「フチ級補給艦(889)」の3隻を発見、これらは1月3日に、与那国島と西表島の間の海峡を抜け、尖閣諸島魚釣島の西70 kmの海域を北に進んだ。発見・追尾したのは鹿屋基地第1航空群「P-1」、那覇基地第5航空群「P-3C」哨戒機および呉基地第12護衛隊護衛艦「とね」である。

図13:(統合幕僚監部)レンハイ級ミサイル駆逐艦「拉薩 (Lhasa / 102)」

図14:(統合幕僚監部)ルーヤン(旅洋)III級ミサイル駆逐艦「開封 (Kaifeng)124」

図15:(統合幕僚監部)

図16:(統合幕僚監部)1月2日、3日に与那国島、西表島海域を抜け北上した3隻の功績。

  • 中国海軍情報収集艦、しばしば沖縄列島近辺を航行

1月4日早朝、宮古島東60 kmを北に進む「ドンデイアオ級情報収集艦(796)」を発見、その後東シナ海に向け立ち去った。

1月19日昼、久米島西80 km を南東に進む「ドンデイアオ級情報収集艦(798)」を発見、その後太平洋に向け航行した。同艦は1月26日午前10時太平洋から沖縄本島―宮古島間の宮古海峡を抜け、東シナ海に戻った。

いずれの場合も海自哨戒機および護衛艦が追尾・監視に当たった。

「ドンデイアオ級情報収集艦」は「東調級情報収集艦/815型情報収集艦(Dongdiao-class Electronic Reconnaissance Ship)」と呼び、9隻が配備中。艦尾にヘリコプター甲板、中央部に大型レーダー、艦橋上部には小型追跡レーダーおよび四角錐型マルチバンド無線アンテナがある。満載排水量6,000 ton、長さ130 m、速力20 kts、兵装は、対空機関砲3基などを装備する。 

図17:(統合幕僚監部)1月4日早朝宮古島近くに現れた「ドンデイアオ級情報収集艦(796)」。

図18:(統合幕僚監部)1月19日および同26日宮古海峡を往復した「ドンデイアオ級情報収集艦(798)」。

  • アラビア海で仏空母と共同訓練

1月9日から14日にかけて、アデン湾西部およびアラビア海北部の海域で、第8護衛隊護衛艦「すずつき」はフランス海軍空母「シャルル・ドゴール(R 91)」、ミサイル駆逐艦「フォルバン(D 620)」、アキテーヌ級駆逐艦「プロバンス(D 652)」、補給艦「マルヌ」、および米海軍駆逐艦「トランクストン」と共同訓練を実施した。

「シャルル・ドゴール(Charles de Gaulle / R 91)」は、フランス海軍初の原子力水上艦で2001年の就役。満載排水量43,000 ton、全長261 m、最大幅64.4 m、原子炉はK15加圧水型原子炉が2基、スクリュウ2基で最大27 ktsで航行する。飛行甲板は8.5度のアングルド・デッキ、カタパルトは離陸甲板とアングルド・デッキに1基ずつ配置、これは米海軍ニミッツ級空母と同じもの。搭載機は「ラファールM艦上戦闘機」が30機前後、「E-2C同期警戒機」が2機、その他ヘリコプター4機程度。

図19:(Wikipedia)フランス海軍空母「シャルル・ドゴール(Charles de Gaulle / R 91)」。同型艦は無く仏海軍唯一の空母である。

「フォルバン級(Forbin-class)ミサイル駆逐艦」は、2008年就役の「フォルバン(D620)」と2009年就役の「シェバリエ・ポール(Chevalier Paul D621)」の2隻。満載排水量7,000 ton、全長153 m、最大速力31 kts、

「アキテーヌ級(Aquitaine-class)駆逐艦[プロバンス(Provence / D 652)]」は、2016年就役の新造の対潜艦。同型艦は対空艦2隻を含め8隻になる。満載排水量6,100 ton、全長142 m、最大速力27.5 kts、

「デユランス級(Durance-class)補給艦[マルヌ(Marne/ A 360)]」は、同型艦建造5隻中の4番艦、なお現在就役中の同型は3隻、1987年就役、満載排水量17,800 ton、全長157 m、速力20 kts、

米海軍駆逐艦「トランクストン」の名前はない。名が似ている「トラクスタン(USS Truxtun DDG 103)」であれば、本艦は「アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の53番艦(DDG-103)で2009年の就役、満載排水量9,600 ton、全長153 m、最大速力31 kts、

「あきずき級護衛艦「すずつき(DD 117)」は、BMDが主任務であるミサイル駆逐艦(通称イージス艦)を護衛、僚艦防空をする駆逐艦、同型艦4隻中の3番艦で2014年の就役。佐世保基地第8護衛隊に配属。満載排水量6,800 ton、全長150.5 m、Mk 41 VLS 32セルに対空ミサイルを装備する。

図20:(統合幕僚監部)フランス海軍補給艦「マヌル(A 360)」から給油を受ける海自駆逐艦「すずつき(DD 117)」(手前)。

  • 2022年第3四半期までの緊急発進、対中国機が75 %

2022年4月から12月末までの第3四半期における空自機の緊急発進は612回、昨年同期(785回)より減っているが、それまでの数年間とほぼ同一の水準で推移している。対象国は中国機が75 %、ロシア機が15 %。

空自航空方面隊別では、北部航空方面隊が88回、中部航空方面隊が21回、西部航空方面隊が91回、そして南西航空方面隊が414回、の緊急発進を行なった。

特徴は中国機に対する緊急発進が462回で、高い水準で推移している。対ロシア機の回数は133回で昨年の199回より大きく減っている。

2022年度第3四半期中の特異な飛行として30件を公表した。この中には、中国「H-6」爆撃機とロシア「Tu-95」爆撃機の長距離編隊飛行の2件、中国「H-6」爆撃機および無人偵察機の宮古海峡通過・往復飛行、および太平洋上での中国空母「遼寧」で行なった300回以上の搭載機の発着訓練、などが含まれている。

図21:(統合幕僚監部)2022年度第3四半期までの航空方面隊別の緊急発進回数を最下段に表示してある。他年度12ヶ月間の実数と比較されたい。対中国を正面とする南西航空方面隊に回数が集中している。

図22:(統合幕僚監部)2022年度第3四半期における緊急発進の対象となったロシア機(黄色)および中国機(赤色)の飛行パターンを示した図。このうちの1例を次項に示す。

  • 2022年12月、H-6爆撃機、太平洋に進出、グアム攻撃の演習

【この項目は本来先月掲載した「令和4年12月、中露両軍の活動……」に記載すべき内容】

2022年12月19日午後、中国「H-6K」爆撃機2機が東シナ海から沖縄本島―宮古島間を通過太平洋に進出、沖大東島南東で反転、往路と同じ帰路で東シナ海に戻った。空自南西航空方面隊戦闘機が緊急発進し対応した。

これに関し米航空宇宙誌は「Aviation Week Jan 16-29, 2023 page 38-40 “A Guide to China’s Bomber Fleet” by Bradley Perrett」として大要以下のように報道した。すなわち;―

『H-6Kは現在102機配備されており2022年に生産を終了し、H-6JおよびH-6Nの生産に移行している。

H-6Kはトマホークに似たCJ-20巡航ミサイルを搭載する。CJ-20ミサイルは射程約2,000 kmと推定される。CJ-20を搭載したH-6Kの戦闘行動半径は2,000 km、これでグアム攻撃が可能だ。しかし攻撃を試みても、日本空自の戦闘機が容易に捕捉、撃墜される。仮にJ-11、J-16あるいはJ20など戦闘機の護衛で生き残り射点まで進出できて、CJ-20巡航ミサイルを発射しても、グアムの対空防衛網で防御できる。

中国はH-6Kのウエポンベイを改良・大型化しDF-21D地対艦ミサイル(射程1,500 km)にブースターを付けたモデル(西側呼称CH-AS-X-13)を搭載する機体「H-6N」の生産を開始した。2022年末で4機完成した模様。

2020年に空対地超音速滑空ミサイル「DF-17」射程1,800-2,500 km、速度マッハ5、が完成しているので、これを搭載すれば、H-6Nは東シナ海上空からグアムを攻撃できる。問題は「DF-17」は「DF-26」級のミサイルは極めて高価格だということだ。高価格のため生産が限られ備蓄量が少ない。したがって、これらを運搬できる「H-6N」の生産は2027年に24機で打ち切られると見られる。これで68年続いたH-6の生産は終了する予定だ。H-6の後継として、米空軍のB-2 Spiritに似た「H-20」超音速ステルス爆撃機の開発が進められている。これは航続距離4,500 kmの機体で未だ設計途上にある。

これらを総合的に勘案すれば、当面、中国爆撃機によるグアム攻撃はかなり困難で、過度に恐れる必要はない。』

図23:(統合幕僚監部)2022年12月19日、2機の「H-6K」爆撃機が沖縄本島―宮古島間から約750 kmまで太平洋に進出した。この地点からグアム島までは約1,600 km、「H-6K」が搭載する巡航ミサイル「CJ-20」の射程とほぼ同じ。

図24:(統合幕僚監部)12月19日、空自機が撮影した「H-6K」爆撃機、翼下面のパイロンに「CJ-20」巡航ミサイル6基が搭載されている。

図25:(統合幕僚監部)12月19日の他の「H-6K」。同じく巡航ミサイル6基を搭載している。

図26:珠海航空ショーで公開された「CJ-20 (長剣-20)」巡航ミサイル。核弾頭を搭載でき、射程は1,500 km以上2,000 km程度とされる。

  • 陸自、第5回に続き第6回大規模実働対抗演習を実施

1月20日陸上幕僚監部は、1月に実施した第5回実働対抗演習に続き、1月末から2月中旬にかけて第6回実働対抗演習を実施する、と発表した。前回同様大分県「日出生台(ひじゅうだい)演習場」を中心にして第4師団および第12旅団が参加して行われる。期間は1月28日から2月15日の間。

参加部隊の概要は次の通り。

第4師団;―福岡県春日市福岡駐屯地に司令部を置く「地域配備師団」の一つ。第16普通科連隊(大村市)、第40普通科連隊(小倉市)、第41普通科連隊(別府市)の3個普通科連隊が基幹で、久留米市第4高射特科大隊、目逹原駐屯地第4飛行隊、対馬警備隊などで構成され、九州北部4県(福岡、佐賀、長崎、大分)の防衛を担当する。兵員総数8,000名。第4高射特化大隊は「93敷金距離地対空誘導弾」および「81式短距離地対空誘導弾」を装備する。

「93式近距離地対空誘導弾」:[SAM-3]あるいは「近SAM」とも呼ぶ自走式8連装発射筒に「91式携帯地対空ミサイル(SAM-2)」を装備したシステム。射程は5,000 m、トヨタ製高機動車後部に発射筒を搭載、3名で操作する。113セットが配備済み。後継として陸自新近距離地対空誘導弾と空自向け基地防空用地対空誘導弾(改)が2026年を目標に開発中。

「81式短距離地対空誘導弾」:「SAM-1」と呼ばれ、空自基地防空用として全師団に配備済み。射程は7,000 m、射高は3,000 m、3トン半トラックに4発の対空ミサイルを装備する。

第12旅団;―群馬県相馬原駐屯地が本拠群馬、栃木。新潟。長野。4県の防衛が任務、兵員約4,000名で、空中機動旅団として編成されたが、2023年3月に機動旅団に改編される。現在の編成は、第2普通科連隊、第12普通科連隊、第30普通科連隊、第12ヘリコプター隊、第12高射特化隊などで構成される。

今回の演習:―我が国周辺で非友好国の軍事活動が活発化する情勢に対応するために、不測の事態に備え戦力を強化するために行う。具体的には、群馬県など中部4県に展開する機動旅団「第12旅団」を大分県「日出生台(ひじゅうだい)演習場」に急速展開し、対峙する第4師団と実働演習を行う。この場で戦車部隊・野戦特科部隊を含む普通科連隊等が適切な判断と適切な行動ができることを検証し、併せて戦技向上を図る。

実施要領は次表の通り。

図27:(陸上幕僚監部)陸自第6回大規模実働対抗演習の内容。

8A  陸自、令和4年度第3回米海兵機動展開部隊と共同訓練(Iron Fist 23)を実施

2月16日〜3月12日の間、大分県「日出生台(ひじゅうだい)演習場」、徳之島、鬼界ヶ島、沖縄本島キャンプ・ハンセン、高遊原分屯地等で、陸自、海自部隊は米海兵隊、米海軍と共同訓練(Iron Fist 23)を行う。

参加部隊は;―

  • 陸上自衛隊:陸上総隊配下の水陸機動団、第1空挺団、第1ヘリコプター団、および西部方面隊配下の西部方面航空隊
  • 海上自衛隊:輸送艦「おおすみ」
  • 米海兵隊:第31海兵機動展開隊
  • 米海軍:第7艦隊配下の強襲揚陸艦「アメリカ」、ドック型輸送揚陸艦「グリーンベイ」、ドック型揚陸艦「アシュランド」、1998年就役、満載排水量14,000 ton、全長178 m、

「Iron Fist 23」は、日米共同の水陸両用作戦に第1空挺団MV-22オスプレイによる空挺作戦を組み込み、両国部隊間の連携を向上させる演習。

輸送艦「おおすみ」:1998年就役、満載排水量14,000 ton、全長178 m、速力22 kts、上陸用揚陸艇LCAC 2隻を搭載、兵員330名を輸送できる。90式戦車なら18両を輸送できる。ヘリコプター甲板にはCH-47輸送ヘリの着艦スポット2箇所がある

第31海兵機動展開部隊:正しくは「第31海兵遠征部隊 (31st MEU=31st Marine Expeditionary Unit)」。沖縄本島キャンプ・ハンセン(Camp Hansen)に常駐。海兵隊に7個遠征部隊があるが、第31海兵遠征部隊は唯一の海外派遣部隊。兵員2,000名、上陸用地上戦闘部隊、航空戦闘部隊および兵站戦闘部隊で構成され、航空戦闘部隊はMV-22Bオスプレイと攻撃飛行隊からなる。

強襲揚陸艦「アメリカ (USS America LHA-6)」:2014年就役、満載排水量45,600 ton、全長257 m、速力22 kts、F-35B STOVL戦闘機なら20機、MV-22Bオスプレイなら42機を搭載する。ウエルドックを廃止したので輸送用舟艇LCACはない。上陸用部隊約1,700名をMV-22Bで前線に輸送する。

ドック型輸送揚陸艦「グリーンベイ(USS Green Bay/LPD-20)」:2009年就役で佐世保が母港、満載排水量14,300 ton、全長208 m、速力22 kts、上陸用揚陸艇LCAC 2隻を搭載、CH-46ヘリコプターなら4機、MV-22Bオスプレイなら2機を搭載する。上陸用部隊約700名を輸送できる。

ドック型揚陸艦「アシュランド(USS Ashland/LSD-48)」:1992年就役で佐世保が母港、満載排水量16,900 ton、全長186 m、速力20 kts、上陸用揚陸艇LCAC 4隻あるいはAAV-7装甲兵員輸送車64輌を輸送できる。上陸用部隊約400名を輸送できる。

  • 海自、「令和4年度インド太平洋中東派遣 (IMED23)」を実施

海自は1月19日から5月23日までの間、掃海母艦「うらが (MST-463)」と掃海艦「あわじ (MSO 304)」を、「令和4年度インド・太平洋・中東方面派遣 (IMED 23=Indo-Pacific and Middle-East Deployment 23)」として当該地域に派遣する。途中、インド、カンボジア、シンガポール、バングラデッシュ、バーレン、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、モルデイブの各地に寄港、米国主催の国際海上訓練 (IMX / CE 23 = International Maritime Exercise / Cutlass Exercise 2023)に参加して機雷戦訓練等を行う。「IMX / CE」演習は2012年から開催され今回は8回目。

IMX / CE 23:世界最大の海事演習で、IMX/CE 22の場合は、米海軍中央軍 (NAVCENT)と米第6艦隊 (US 6th Fleet)が主催し、多数の関係国海軍が参加して実施された。目的は通商輸送の安全とインド太平洋での航行の自由の確保のため、各國海軍の協力・運用能力増進を図るためである。

掃海母艦「うらが (MST 463)」:1997年就役、満載排水量6,850 ton、速力22 kts、同型艦は「ぶんご (MST 464)」がある。中央にはウエル・デッキ、両側に機雷庫、艦尾には門扉3個があり、中央が航空掃海具用、両側は機雷敷設用となっている。艦尾上はヘリコプター甲板、MH-53E重輸送ヘリコプター1機を搭載する。

掃海艦「あわじ (MSO 304)」:「あわじ型」掃海艦の1番感、2017年就役、排水量690 ton、「えのしま型」に続く繊維強化プラスチック(FRP)製の鑑。機雷探知用に米国製「リーマス600」水中無人機「OZZ-2」、「OZZ-4」、などを装備する。探知した機雷は三井造船製の自走式機雷処分用弾薬「EMD」で爆破、処分する。同型艦は3隻が完成、最終的には9隻建造する。

図28:(海上自衛隊)掃海母艦「うらが (MST-463)」満載排水量6,850 ton

図29:(海上自衛隊)掃海艦「あわじ (MSO 304)」排水量690 ton

  1. 海自、数回にわたり日米共同各種訓練を実施

海自は1月に、米海軍との共同演習について、次の通り数回の発表を行った。

  • 1月24日発表:伊勢湾における機雷戦訓練、掃海訓練

2月1日から2月10日の間、伊勢湾で、海自輸送艦1隻、掃海艦2隻、掃海艇7隻および「MCH-101」掃海ヘリコプター3機は、米海軍水鳥処分員およびUUV捜査員とともに対機雷戦演習を実施する。

  • 1月24日発表:四国南方太平洋上で日米艦隊の共同訓練

1月15日-1月23日の間、四国南方沖縄本島にかけての太平洋海域で、海自ミサイル駆逐艦(イージス艦)「あしがら」は、米海軍ミサイル巡洋艦「アンテイータム」、同「チャンセラーズビル」、同「シャイロー」、ミサイル駆逐艦「ラファエル・ベラルタ」、補給艦「ジョン・エリクソン」、貨物弾薬補給艦「ワシントン・チャンバース」と共同で対空戦、対水上戦、対潜戦、および洋上補給の各種訓練を行なった。

  • 1月24日発表:沖縄周辺で日米艦の共同訓練「ILEX 23」

1月26日沖縄周辺海域で、海自補給艦「おうみ」は米海軍ミサイル巡洋艦「アンテイータム」と洋上補給訓練を行なった。

  • 1月30日発表:日本海で海自・空自と米海軍・海兵隊の航空機が共同訓練

1月27日日本海で、海上自衛隊「P-3C」哨戒機、航空自衛隊「F-35A」戦闘機、米空軍「F-16」戦闘機、米海兵隊「F-35B」STOVL戦闘機が参加して、各種戦術訓練を実施した。

図30:(海上幕僚監部)三沢基地に着陸した海自「P-3C」哨戒機

  1. その他(航空自衛隊の演習)
  • 1月12日発表:沖縄周辺で日米共同訓練

1月10日沖縄周辺の空域で、那覇基地第9航空団F-15戦闘機2機、南西航空警戒管制団(レーダー基地)は、米空軍サウスダコタ州エルスワース空軍基地第26爆撃航空団「B-1」爆撃機2機と各種戦術訓練を行なった。

図31:(航空幕僚監部)米空軍「B-1」爆撃機と共同訓練を行う空自戦闘機。

  • 1月13日発表:第2航空輸送隊の運航訓練、パラオ・マニラを訪問

1月12日同13日、第2輸送航空隊は「U-4」多用途支援機でパラオ空港、およびフィリピン・マニラ空港への運航訓練飛行を行った。

図32:(航空幕僚監部)第2輸送航空隊「U-4」多用途支援機、パラオ空港撮影のようだ。

  • 1月23日発表:沖縄周辺で空自機と米空軍機および米海軍機が共同訓練

1月19日東シナ海を含む沖縄周辺の海空域で、日本側から16機、米側から15機、合わせて31機となる大量の航空機を動員して共同訓練を行なった。

空自築城基地第8航空団「F-2」戦闘機3機、那覇基地第9航空団「F-15」戦闘機12機、浜松基地警戒航空団「E-767」警戒管制機1機、および那覇基地南西航空警戒管制団(レーダー基地)が参加、米空軍からは嘉手納基地第18航空団「F-15」戦闘機10機、「KC-135」空中給油機1機、「E-3」早期警戒管制機1機、「HH-60」ヘリコプター2機が参加。米海軍から嘉手納基地第10哨戒飛行隊「P-8A」哨戒機1機が参加して各種戦術訓練を実施した。

  • 1月27日発表:グアムを含む太平洋空域で、日米豪およびフランス、カナダの各国空軍で共同訓練「Cope North 23 Exercise」を実施

1月23日〜3月4日の間、グアム島を中心にパラオ共和国首都空港・海自硫黄島航空基地およびその周辺海空域で行う演習。空自各部隊および米軍、オーストラリア軍、などが参加し各種訓練「Cope North 23」として行う。目的は「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化のため。

参加部隊は、空自から築城基地第8航空団 (F-2戦闘機6機)、那覇基地第9航空団(F-15戦闘機6機)、百里基地航空戦術教導団、入間基地航空救難団、浜松基地警戒航空団 (E-767早期警戒管制機1機)、小牧基地第1輸送航空隊 (KC-767空中給油機1機)、入間基地第2航空輸送隊、美保基地(鳥取県)第3航空輸送隊、府中基地航空保安管制群、府中基地航空気象群および小牧基地航空機動衛生隊、

米軍からは総計1,000名を超える海軍、海兵隊、空軍の兵士が参加、そして日本空自、オーストラリア空軍、フランス空軍、合計で1,000名が参加して行われる。

「Cope North」演習は1978年三沢基地で日米で実施されたのが最初、1999年からはグアムに移り大規模演習に発展した。

図33:(航空自衛隊)「E-767」早期警戒管制機はボーイング767-200ER旅客機を改修した機体。1999年に導入、浜松基地警戒航空団に4機が配備されている。単価は555億円。

  • 1月31日発表:空自、日印共同演習を実施

1月16日〜同26日の間空自戦闘機は来日したインド空軍戦闘機と初めての共同訓練を行なった。来日したのは4機の「Su-30MKI:戦闘機、複座機で双発、支援のため「C-17」輸送機2機、隊員150名が参加した。空自からは百里基地「F-2」戦闘機4機と小松基地から[F-15」戦闘機4機が参加した。

「Su-30MKI」はロシアスーホイ(Sukhoi Co.)が生産する「Su-30」多目的戦闘機をヒンドスタン航空機がライセンス生産した機体。これまでに50機のロシアからの納入を含め270機以上が製造された。乗員2名、長さ22 m、高さ6.35m、翼幅14.7 m、重量34 tonの大型機。エンジンはAL-31FP推力(アフトバーナー時)28,000 lbsが2基。

図34:(航空自衛隊)左からF-2戦闘機、F-15戦闘機、Su-30MKI戦闘機。F-2とSu-30では、全長で5 m、重量で12 tonも違うので並べるとSu-30の大きさ良く判る。

図35:(航空自衛隊)空自F-15とSu-30

図36:(航空自衛隊)空自F-2とSu-30

―以上―