令和5年3月、我国周辺での中露両軍・北朝鮮の活動と我国/同盟諸国の対応


2023(令和5年)-04-12 松尾芳郎

令和5年3月、我国周辺における中・露・両軍の活動と、我国および同盟諸国の動きに関し各方面から多くの発表があった。3がつの注目すべきニュースは次の12項目。

  1. 北朝鮮、弾道/巡航ミサイルを連続発射、対抗して日本海で日米海空軍が演習
  2. 中国海軍艦艇2隻宮古海峡を通過、太平洋へ
  3. 中国海軍艦艇1隻が奄美大島・横当島間を通過太平洋に進出、その後与那国島・台湾間を通過、東シナ海へ
  4. 陸自特殊作戦群、米国で米陸軍特殊作戦コマンドと演習
  5. 海自・空自の電子戦情報収集機、米豪空軍と九州周辺海空域で共同訓練
  6. 海自、米ワシントン州で電磁機動戦演習
  7. 海自フリゲート「みくま・FFM-4」および潜水艦「はくげい」が完成、引渡し
  8. 海自、インド洋で多国間訓練「ラ・べルーズ23」に参加
  9. 海自、グアム周辺で多国間訓練「シー・ドラゴン23」に参加
  10. 海自、南シナ海で米海軍と共同訓練、続いて米海軍は航行の自由作戦を実施
  11. ロシア海軍、日本海で巡航ミサイル射撃演習
  12. 米空母、釜山入港、続いて東シナ海で日米韓海軍が合同演習

(Military threats from China, Russia and North Korea are tensed up in March. Japan and Allies conducted multiple large scale exercises as retaliation. Following twelves were major issues.

  1. North Korea successive launches variety of Ballistic and Cruise missiles into Sea of Japan. The allied forces conducted military drills in Japan Sea.
  2. Two Chinese naval vessels sail through Miyako strait to Pacific.
  3. One Chinese naval ship sail through Amami-strait to Pacific, and return back to East China sea via Yonakunijima-Taiwan strait.
  4. Japan’s Army Special Operations Command conducts military exercises with counter part of US Army’s ARSOC(A) in unspecified location in USA.
  5. Japan’s Air Force and Naval Reconnaissance aircraft conducts joint exercise with USAF and Australian reconnaissance aircraft over the western Japan’s airspace.
  6. JMSDF conducted Dispatched Electromagnetic Maneuver Warfare Training in US Naval Air Station of Whidbey Island, Washington.
  7. JMSDF announced the commissioning of Hakugei, the second Taigei-class submarine, and Mikuma, the fourth Mogami-class frigate.
  8. JMSDF participated in multinational exercise La Perouse 23 in east of Sri Lanka.
  9. JMSDF join multinational war game Sea Dragon 2023 in and around Guam.
  10. JMSDF conducted a joint exercise with US Navy in south China Sea, the USN vessel go on conducting Freedom of Navigation Operation in the area 
  11. Russian Navy conducted cruise missile launching trial in Sea of Japan.
  12. USS Nimitz(CVN-68) and the carrier strike group 11, sailed to Pusan, and go-on tri-national maritime exercise in East China Sea with Korean and Japanese.)

以下に各項目について説明する。

  1. 北朝鮮の弾道/巡航ミサイルを連続発射、対抗して日本海で日米海空軍が演習

3月の北朝鮮による弾道/巡航ミサイル発射は7回に達し、規模はこれまでで最大になった。これは繰り返し実施された米韓合同演習に反発する姿勢を示したもの。以下に内容を示す。

  • 3月9日:小型短距離弾道ミサイル6発を日本海北部に向け同時発射
  • 3月12日:咸鏡南道・新浦沖の潜水艦から巡航ミサイル2発を発射、変則軌道で飛翔
  • 3月14日:平壌西の長淵からKN23と見られる固体燃料小型短距離弾道ミサイル2発を日本海に向け発射、射程620 km、変則軌道で飛翔
  • 3月16日:長距離弾道ミサイル「火星17型」1発を首都平壌近くの順安空港からロフテッド軌道で発射、北海道西沖の渡島大島沖200 kmのEEZ外に落下。飛行時間70分、距離1,000 km、最高高度6,000km以上、「火星17号」は射程15,000 kmで米本土を攻撃可能。
  • 3月19日:潜水艦から短距離弾道ミサイル(SRBM)1発を日本海に向け発射、800 km先の目標上空で爆発
  • 3月22日:咸鏡南道・咸興付近から巡航ミサイル4発を日本海に向け発射
  • 3月27日:弾道ミサイル2発を日本海に向け発射
  • 3月28日:戦術核弾頭多数を公開

図1:(北朝鮮労働新聞)3月16日、片側11輪の移動式発射台で北朝鮮最大のICBM「火星17」が平壌近くの順安空港滑走路に移送され、日本海に向け発射された。「火星17」は、第1弾は液体燃料ロケット4基を装備、今年2月の軍創設75周年記念行事には10基以上が参加している。

図2:(jiji.com)3月16日北朝鮮ICBM「火星17」のロフテッド軌道を使い飛翔、北海道西岸我が国EEZ内に落下した。通常軌道で飛行すれば射程15,000 km、米本土大半を攻撃可能

米韓両軍の対応

米韓両軍は、朝鮮半島有事を想定して3月23日まで11日間の日程で合同演習「フリーダム・シールド(freedom Shield)」を実施、その後も4月3日まで大規模な上陸演習を実施している。北朝鮮のミサイル発射訓練は、これに対抗するためのだと声明している。また北朝鮮は、3月24日に新兵器「核無人水中攻撃艇」の実験を日本海で実施したと発表した。

図3:(産経news)3月13日、南北境界線に近い蓮川で、フリーダム・シールド渡河演習を行う米韓両軍。米韓両軍による野外機動演習は5年振りで、上陸作戦を含む20項目の訓練がおこなわれた。

日米両国の対応

北朝鮮のミサイル連続発射の事態を受けて、3月17日、空自と米空軍は日本海上空で共同演習を行なった。参加部隊は;―

空自:千歳基地・第2航空団・第201飛行隊および第203飛行隊(いずれもF-15J/DJ)からF-15戦闘機4機

米空軍:三沢基地・第35戦闘航空団(35FW)・第13戦闘飛行隊(13 F Sq)および第14戦闘飛行隊(14 F Sq)からF-16C/D戦闘機4機、これらには尾翼にWWマークがある。WWとは「wild weasel・いたち」の略。35FW所属のF-16CMはBlock 50型、敵防空網制圧 (SEAD=Suppression of Enemy Air Defense)」が主任務である。すなわち、最新の合成開口レーダーAN/APG-68とエンジン・エア・インテイク横にASQ-213 HARN照準制御装置を備え、敵レーダーを感知するとAGM-88 対レーダー・ミサイル(HARM=High-speed Anti-radiation Missile)を発射、撃破する。

図4:(航空自衛隊)3月17日、日本海上空で行われた空自千歳基地F-15と米空軍三沢基地F-16の共同演習。

図5:(JASDF/USAF Misawa) 米太平洋軍・第5空軍・第35戦闘航空団・第13戦闘飛行隊のF-16CM 戦闘機。尾翼のWWマークに注意。(2019-1-28撮影)

3月18日と19日両日に、日本海で海自ミサイル駆逐艦(イージス艦)と米海軍ミサイル駆逐艦が共同演習を行い、北朝鮮による弾道/巡航ミサイル攻撃に直ちに対処できる体制にあることを示した。

参加したのは海自舞鶴基地・第3護衛隊群第3護衛隊所属のミサイル駆逐艦「あたご/DDG-177」と米第7艦隊配下の第15駆逐艦隊(DESTRON15)所属の「ミサイル駆逐艦「ミリウス(USS Milius)/DDG-69」である。

「ミリウス /DDG-69」満載排水量8,400 tonは、1996年就役で20年を経過しているが、2017年頃にアーレイ・バーク級」の7隻と共に近代化改修が行われ、[Baseline 9C]が組み込まれた。これで最新のイージス艦に生まれ変わり、対空ミサイルSM6の運用も可能になった。現在横須賀には同級の「シュープ(USS Shoup/DDG-86」、「ベンフォード(USS Benfold /DDG-65」が配備され、都合3隻が最新鋭イージス艦となり、対北朝鮮、対中国へ睨みを利かせている。

図6:(統合幕僚監部)左写真は手前が「あたご」奥が「ミリウス」。右写真は左が「あたご」右が「ミリウス」。「あたご/DDG177」は満載排水量1万ton、Mk.41 VLS ・96セルにSM-3 対弾道ミサイル、SM-2対空ミサイルなどを装備する、イージス武器システム(AWS)はBaseline 9になっている。

  • 中国海軍艦艇2隻宮古海峡を通過、太平洋へ

3月2日早朝中国海軍艦艇2隻、ソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦(139)とジャンカイII級フリゲート(531)、が宮古島―沖縄本島間の宮古海峡を抜け太平洋に向け航行した。発見・追尾したのは佐世保基地第5護衛隊所属の「あけぼの/DD-108」(むらさめ型護衛艦の8番艦)と那覇基地第5航空群所属の「P-3C」哨戒機。

図7:(統合幕僚監部)ロシアで19隻が建造され、内4隻を中国に譲渡。中国は長距離対艦ミサイルを装備「空母キラー」として米空母接近を阻止する。満載排水量8,000 ton、速力32 kts、130 mm 連装砲2基、30 mm CIWS対空機関砲4基、VLS 32セルに対空ミサイルHHQ-16および対潜ミサイルYU-8を装備。対艦攻撃用に射程150km以上の超音速巡航ミサイルYJ-12の 4連装発射機2基を装備する。同型は「杭州(136)」,「福州(137)」、「泰州(138)」「寧波(139)」の4隻。就役は1999年から2006年で新しい。

図8:(統合幕僚監部)「ジャンカイII/江凱II」型は「054A」フリゲート、満載排水量4,000 ton、全長134 m、速力27 kt、HQ-16対空ミサイルを32セルVLSに収納。対艦ミサイルYJ-83型を艦中央にある4連装発射機2基に搭載する。本型は外洋艦隊用で防空能力を強化している。同型艦はすでに30隻が就役済み。

  • 中国海軍艦艇1隻が奄美大島・横当島間を通過太平洋に進出、その後与那国島・台湾間を通過東シナ海へ

3月16日午前、中国海軍ジャンカイII級フリゲート(515)が奄美大島―横当島間の海峡を通過太平洋に進出した。発見追尾したのは厚木基地第4航空群所属の「P-1」哨戒機、沖縄基地第46掃海隊所属の「ししじま/MSC-691」(すがしま型掃海艇の11番艇)および佐世保基地第13護衛隊所属の「じんつう/DE-230」(あぶくま型護衛艦の2番艦)。

図9:(統合幕僚監部)3月16日午前「P-1」哨戒機が撮影した「ジャンカイII級フリゲート(515)。

3月18日午前、同じ中国海軍ジャンカイII級フリゲート(515)が、与那国島と台湾の間の海峡を太平洋から東シナ海に向けて航行した。これを発見追尾したのは同じ沖縄基地第46掃海隊所属の「ししじま/MSC-691」(すがしま型掃海艇590 tonの11番艇)である。

この他に、ロシア艦艇、中国艦艇の活発な動きがあったので付記する。

  • 3月23日ロシア海軍情報収集艦ヴィシニヤ/Vishnya(535)が太平洋から宮古海峡を通過、東シナ海に向け航行した。
  • 3月27日に同艦は東シナ海から対馬海峡を通過、日本海に向かった。

図10:(統合幕僚監部)1986年ごろポーランド・グダニスク造船所で建造された情報収集艦。満載排水量3,400 ton、速力16 kts。今回現れたのは「カレリヤ(SSV-535)」。

  • 3月25日夕刻中国海軍のルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(123)、ジャンカイII級フリゲート(598)およびフチ級補給艦(903)の3隻が、太平洋から大隅海峡を西に進み、東シナ海に入った。発見・追尾したのは鹿屋基地・第1航空群「P-1」哨戒機、阪神基地・第42掃海隊「なおしま/MSC-684」 (すがしま型の4番艇)。

図11:(統合幕僚監部)ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦 (123) 「准南(Huainan)は、2021年就役で北海艦隊所属。「旅洋III級/052DL型」昆明級駆逐艦で、中国版イージス艦。同型艦10隻を配備、追加7隻を艤装中。満載排水量7,500 ton、全長156 m、速力29 kts。VLS(垂直ミサイル発射装置)64セルに対空/対艦ミサイルを装備。

図12:(統合幕僚監部)

図13:(統合幕僚監部)福地級補給艦は903型総合補給艦。本級には903型/20,500 tonと903A型/23,000 tonがある。全長178.5 m、速力20 kts、物資や燃料を11,000 ton搭載。903型は2005年に2隻が就役、以後大型の903A型が7隻完成済み。写真は「可可西里湖(Kekesilihu /903)」。

  • 3月27日、中国海軍ドンデイアオ級情報収集艦(796)が、五島列島西の東シナ海から対馬海峡を通過、日本海に向け航行した。発見・追尾したのは厚木基地第4航空群「P-1」哨戒機、佐世保基地第3ミサイル艇隊「しらたか」。

図14:(統合幕僚監部)ドンデイアオ級情報収集艦(艦番号796)は、昨年12月12日~14日にかけても、鹿児島県沖永良部島西から沖縄本島西・東シナ海から宮古海峡を通過太平洋に出た。

  • 3月28日、中国海軍ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(121)、レンハイ級ミサイル駆逐艦(103)、およびフチ級補給艦(889)の3隻が東シナ海から対馬海峡を通り日本海に向け航行した。発見・追尾したのは鹿屋基地第1航空群「P-1」哨戒機、厚木基地第4航空群「P-1」哨戒機、佐世保基地第3ミサイル艇隊「しらたか」および下関第43掃海隊「とよしま」掃海艇。

図15:(統合幕僚監部)

図16:(統合幕僚監部)

図17:(統合幕僚監部)903A型フチ級補給艦、「太湖(Taihu) 889」。同型艦は9隻ある。

  • 3月30日、中国海警局艦艇が尖閣諸島領海内を80時間以上遊弋。那覇基地第11管区海上保安本部によると3月30日午前11時ごろ海警局艦艇4隻が尖閣諸島魚釣島付近の領海内に侵入、領海内を航行中の我が国漁船3隻の動きに合わせ航行した。その後4月1日午後8時半から同2日午後7時44分までにかけて4隻は順次領海から接続水域に向け退去した。今回の領海侵犯は4日間で連続80時間36分に達する。尖閣周辺で、領海を含め接続水域で海警局艦艇が確認されたのはこれで67日間連続となった。

図18:(日テレNews/仲間均石垣市議)3月30日から4月2日まで連続80時間半尖閣諸島領海内を侵犯した海警局艦艇4隻のうちの1隻「1401」。満載排水量5,200 ton、固定武装は持たないが高圧放水銃、ヘリポートを装備する。2014年6月就役。

  • 陸自特殊作戦群、米国で米陸軍特殊作戦コマンドと演習

陸自は2023年1月から2月の間、「陸上自衛隊特殊作戦群」の作戦遂行能力の向上のため、米国で米陸軍特殊作戦コマンド「グリーンベレー」と実動訓練を実施した。米特殊作戦群との共同訓練はこれまで非公開だったが、今回は初公開で13回目となる。

「陸自特殊作戦群(JGADF Special Operation Group)」は、米陸軍の「特殊作戦部隊・グリーンベレー」や英陸軍の「特殊空挺部隊SAS」、ドイツ陸軍の「特殊戦闘団KSK」などに倣って2004年3月に設立された部隊、習志野駐屯地に本部がある。人質救出や特殊空挺作戦など米グリーンベレーに準じた任務遂行をする。

共同訓練をしたのは「米陸軍特殊作戦コマンド/ U.S.ARSOC(A)=U.S. Army Special Operations Command (Airborne)」傘下の「グリーンベレー第1特殊部隊(Green Berets 1st Special Operations Group)」でアメリカ・インド太平洋軍担当部隊。区域の不正規戦争、関係国の治安維持、対反乱作戦、特殊偵察、対テロ作戦、情報作戦、大量破壊兵器の拡散防止、治安部隊の支援、などが任務である。基地はノースカロライナ州フォートブラッグ(Fort Bragg, North Carolina)。この基地は米第18空挺軍団も駐屯する敷地面積650平方キロ、5万人が勤務する世界最大の軍事基地である。

図19:(陸上自衛隊)高高度からパラシュート降下する特殊作戦群隊員、フォートブラッグ演習場らしい。

図20:左は「米陸軍特殊作戦コマンド/ U.S.ARSOC(A)=U.S. Army Special Operations Command (Airborne)」、右は「陸自特殊作戦群(JGADF Special Operation Group)」、の記章。

  • 海自・空自の電子戦情報収集機、米豪空軍と九州周辺海空域で共同訓練

3月6日〜8日の間、東シナ海を含む九州周辺の空域で、海自・空自、米空軍およびオーストラリア空軍の電子戦情報収集機は「ISR=Intelligence , Surveillance and Reconnaissance 

 /情報収集・警戒監視・偵察」に関する共同訓練を実施した。これは「自由で開かれたインド太平洋」の実現・維持のための訓練である。参加した電子戦情報機は次の通り。

海上自衛隊:EP-3、OP-3C

航空自衛隊:RC-2

米空軍  :RC-135

オーストラリア空軍:P-8A

図21:(航空自衛隊)空自・電波情報収集機「RC-2」は現在3機が配備されている。機体各所に大型アンテナ・ドームが配置され、航続距離は5,700 km。原型の輸送機「C-2」を改造した機体。詳しくは「TokyoExpress 2020-10-25掲載、2021-12-15改訂・空自、入間基地航空戦術教導団へRC-2電波情報収集機を配備」を参照されたい。

  • 海自、米ワシントン州で電磁機動戦演習

2月24日〜3月7日の間、岩国基地の海自第31航空群・第81航空隊EP-3電子戦機は、米海軍のウイッビー・アイランド航空基地(Naval Air Station Whidbey Island, Washington)および周辺空域で米海軍航空部隊EP-3EおよびEA-18Gと電磁機動戦演習を行なった。

ウイッビー・アイランド海軍航空基地(NAS Whidbey Island)は、ワシントン州の太平洋北西部にあり、海軍全体の電子戦攻撃機EA-18Gグロウラー中隊の基地。さらにP-3オライオン、P-8ポセイドン、およびEP-3EアリエスIIを運用する8個の巡視・偵察中隊(Patrol and Reconnaissance squadrons)の駐留基地でもある。

今回、共同演習をしたのはVQ-1飛行中隊(Fleet Air Reconnaissance Squadron 1)所属の電子信号偵察機(SIGINT=signals intelligence)[EP-3E Aries II]である。

図22:(US Navy) ウイッビー・アイランド海軍航空基地・VQ-1飛行隊所属のEP-3E II アリエスII電子信号偵察機、12機が配備中。世界中どの戦域にも進出、高利得の大型デイッシュ・アンテナ(胴体下に2つ見える)で敵の電子情報を受信、その解析データと映像をリアルタイムで友軍に伝える。

図23:(海上自衛隊)ウイッビー・アイランド海軍航空基地(Naval Air Station Whidbey Island, Washington)で、海自第81航空隊EP-3 電子戦機と派遣隊員の写真。

  • 海自フリゲート「みくま・FFM-4」および潜水艦「はくげい・SS-514」が完成、引渡し

3月7日、三菱重工長崎造船所でフリゲート「みくま」の引渡し式、および3月20日、川崎重工神戸工場で潜水艦「はくげい」の引渡し式が行われた。

図24:(三菱重工)3月7日就役した海自「もがみ」型フリゲート4番艦「みくま(FFM-4)」。昨年末に就役した3番艦「のしろ」と共に佐世保基地護衛艦隊第13護衛隊に配備される。「もがみ」型は令和5年度(2023)計画艦まで12隻が建造されて終了、その後は新型FFM 10隻が建造される予定。「もがみ」型には対機雷戦用として、日立製ソナー・システム「OQQ-11」を搭載、これは無人機雷排除システム用無人水上走行体(USV)と無人水中走行体(UUV)で構成されている。

図25:(川崎重工神戸工場)3月20日就役した「たいげい」型潜水艦の2番艦「はくげい・SS-514」は、呉基地第1潜水隊群第1潜水隊に配属される。たいげい型は、基準排水量3,000 ton、探知性能が向上したソナー・システムを装備、潜水中の動力源はリチウム・イオン・バッテリーで、長時間の静粛な潜水行動を可能にしている。全長84 m、幅9.1 m、乗員70名、デイーゼル・エレクトリック推進。

  • 海自、インド洋で多国間訓練「ラ・べルーズ23」に参加

3月13日-14日、海自護衛艦がスリランカ東方の海空域で行われたフランス海軍主催の日仏米豪印英加ニュージランド共同訓練「ラ・ペルーズ23/ La Perouse 2023」に参加した。演習では、実弾射撃を含む対水上射撃訓練、対空射撃訓練、戦術運動などが行われた。参加部隊は次の通り;―

海上自衛隊 :護衛艦/駆逐艦「すずつき(DD 117)」

フランス海軍:強襲揚陸艦「デイクスミュード(Dixmude / L9015)」、フリゲート「ラファイエット(FS La Fayette / F-710)」

アメリカ海軍:沿海域戦闘艦「チャールストン(USS Charleston / LCS-18)」、本艦は第7駆逐艦隊(DESTRON 7)に所属しシンガポールを母港にしている。、

オーストラリア海軍:フリゲート「パース(HMAS Perth / FFH 157)」

インド海軍 :フリゲート「サヒャドリ」(Sahyadei / F49)、補給艦/タンカー「ジョッテイ(INS Jyoti / A58)」

イギリス海軍:沿岸哨戒艦「テイマー(HMS Tamar / P233)」

カナダ海軍:カナダ海軍司令部

ニュージーランド海軍:ニュージーランド海軍司令部

図26:(海上自衛隊)写真は、スリランカ東方のインド洋上で行われた多国籍合同演習「ラ・ペルーズ23」で、フランス海軍強襲揚陸艦「デイクスミュート/ L9015」(右)を海自護衛艦「すずつき(DD-117)」から撮影した。「デイクスミュート」は仏海軍のミストラル級強襲揚陸艦の3番艦、2012年就役、満載排水量21,000 ton、上陸用舟艇2隻、車両60輌、兵員1個大隊、貨物1600 tonを搭載する

図27:(US Navy photo)米海軍沿岸海域戦闘艦「チャールストン/LCS-18」は「インデペンデンス」級の6番艦。3胴型で同じ沿岸海域戦闘艦「フリーダム」級の単胴型とは形が異なる。排水量3,000 ton、40 ktsの高速で航行する。

図28:(海上自衛隊)護衛艦「すずつき/DD-117」は、あきづき級の3番艦で、2014年就役、佐世保基地第4護衛隊群第8護衛隊所属、満載排水量6,800 ton、Mk 41 VLS 32セルに対空ミサイルを装備する。BMD(弾道ミサイル防衛)任務中のイージス艦こんごう級の防空を担当する僚艦防空が主任務。同級は4隻建造された。

  • 海自、グアム周辺で多国間訓練「シー・ドラゴン23」に参加

3月13日〜30日の間、海自哨戒機はグアム島および周辺海空域で行われた米海軍主催の固定翼哨戒機多国間共同訓練「シー・ドラゴン(Sea Dragon) 2023」に参加、対潜水艦線訓練を実施した。参加部隊は鹿児島県鹿屋基地の第1航空群・第11飛行隊所属の「P-1」哨戒機。第1航空群は、第11飛行隊{P-3C, P-1}、第12飛行隊[P-3C]の2個飛行隊で編成されている。

米海軍からは、第72空母打撃群(CTF-72)・第10哨戒飛行隊(Patrol Squadron /VP 10 )から「P-8A」ポセイドン(Poseidon)哨戒機2機が参加。そのほかにカナダ空軍(RCAF)からCP-140 オーロラ/Aurora、インド海軍(INN)からP-8I ネプチューン/Neptune、韓国海軍(ROKN)からP-3 オライオン/Orion、が参加した。

「シー・ドラゴン23」は、グアム島アンダーセン空軍基地を拠点に行われた「対潜水艦戦(ASW=anti-submarine warfare)」競技で、海中を潜行する模擬敵潜水艦を探知、正確に攻撃する技量を競う演習である。米海軍によると海自「P-1」は4回の攻撃で、魚雷の展開速度と精度で高いスコアを獲得、参加5カ国の中で優勝し、チャンピオンベルト(Sea Dragon Championship Belt)を獲得した。海自の潜水艦への対処能力の高さを証明された競技であった。

余談:我が国の某評論家は「P-1は設計が旧式で米軍のP-8Aには遠く及ばない、輸出商談が全く纏まらないのがその証拠」と酷評していたが、本競技会で海自はそれを見事に覆した。

図29:(US Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd class Tiffany Savoie)3月23日グアム島アンダーセン(Anderson)空軍基地に集まった「シー・ドラゴン23」対潜戦競技参加の各國哨戒機。中央の4発ジェット機が川崎重工製「P-1」哨戒機である。

  1. 海自、南シナ海で米海軍と共同訓練、続いて米海軍は航行の自由作戦を実施

3月24日〜25日海自護衛艦「きりさめ・DD-104」は南シナ海で米海軍ミサイル駆逐艦「チャンフーン/DDG-93」、同「ミリウス/USS Milius・DDG-69」と対水上戦を含む共同訓練を行なった。

海自護衛艦「きりさめ・DD-104」は、むらさめ型護衛艦9隻中の4番艦、1999年就役、佐世保基地第4護衛隊群第8護衛隊に所属、満載排水量6,100 ton、全長151 m、速力30 kts、2本の煙突の間に短SAM発射用のVLS Mk.48 mod. 4 16セルを装備する。近接防空用としてCIWS Mk. 15 mod.12 20 mm機関砲2基を搭載している。対水上戦用に90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)やハープーンを発射可能な4連装発射筒2基を備える。

図30:(海上自衛隊)「きりさめ・DD-104」。満載排水量6,100 ton、1999年就役。

「ミリウス」は1996年就役で満載排水量8,850 ton、「チャンフーン」は2004年就役で満載排水量9,500 ton。対空装備としてMk.41 mod.15 VLS  96セルを装備、イージス武器システム(AWS)は最新Baseline 9に改修済み、SM-3、SM-6などを装備。対弾道ミサイル(BMD)、対巡航ミサイル能力を備える。さらにトマホーク巡航ミサイル4連装発射筒2基を持ち十分な対地攻撃能力を持っている。

図31:(海上自衛隊)海自「きりさめ・DD-104」から撮影した米ミサイル駆逐艦「ミリウス/ DDG-69」手前と「チャンフーン /DDG-93」。アーレイ・バーク(Arleigh Burke)級ミサイル駆逐艦で、1991年から就役が始まり、現在も建造が続いている、総計90隻になる予定。

3月24日、米ミサイル駆逐艦「ミリウス/USS Milius・DDG-69」は中国が不法に軍事基地を建設した南シナ海パラセル諸島海域に進出「航行の自由作戦 / Freedom of navigation Operation」を実施した。

図32:3月24日、米ミサイル駆逐艦「ミリウス/USS Milius・DDG-69」が「航行の自由作戦」を行なったパラセル諸島の位置。ここのウッデイー島(Woody Island)に中国軍が対艦・対空ミサイル基地を設営している。

図34:(BBC News 2016-03-13) パラセル諸島(西沙諸島)のウッデイー島を占領した中国が設営した大型機離発着用滑走路の写真。ここに対艦ミサイル、対空ミサイルが設置されている。

  1. ロシア海軍、日本海で巡航ミサイル射撃演習

ロシア国防省は3月28日、太平洋艦隊(TOF)所属のタランタルIII級12411型ミサイル・コルベット(490 ton級のミサイル艇から対艦巡航ミサイル「モスキート」2発を発射、100 km離れた標的に命中した、と発表した。ロシアは軍事演習の一環だとしている。ロシアは日本が米国と軍事面で連携を強化する動きに反対しており、今回のミサイル発射はロシアの軍事能力を誇示するため。

「P-270 モスキート」は速度マッハ2~3で飛翔する超音速対艦巡航ミサイルで射程はタイプにより異なるが100~200 km。全長約10 m、直径0.74 cm、重量4,500 km、誘導は巡航中はINS+指令、ターミナル段階では電波ホーミング方式。推進方式はインテグラル・ロケット・ラムジェット(我国の空対艦ミサイルASM-3Aと同じ方式)。

図35:(読売新聞on line /ロシア国防省映像から作成)3月28日、ウラジオストク沖合のピョートル大帝湾で、タランタル級ミサイル・コルベット(490 ton)が対艦巡航ミサイル「P-270モスキート」2発を発射した写真。

  1. 米空母、釜山入港、続いて東シナ海で日米韓海軍が合同演習

図36:(統合幕僚監部)東シナ海で演習をする米空母「ニミッツ」と海自ヘリ空母「いせ」

以後省略。

―以上―