第51回総選挙―自民党が歴史的圧勝、立憲民主党が沈没


  令和8(2026)年02月28日    鳥居徹夫 ( 元文部科学大臣秘書官 )

◆一方的に選挙応援を求める政党・議員の傲慢

「新党(中道改革連合)については、急な動きだった。私どもの方から、いつ誰が来てどうのこうのというお話する立場にないかと思う。ただポイントポイントでは、お話をお伺いしている」

解散前日1月22日。連合の記者会見で新保政史事務局長の答弁は、歯切れが悪かった。

その質問は「中道改革連合の結成は、いつ連合本部に連絡があったのか」「政党間で決めて、急にパッと(選挙支援要請)という感じだが、どうなのか」というもの。

「中道改革連合」は、立憲民主党と公明党の衆議院議員と候補者が離党し、新たに集まって結党した政党である。「中道改革連合」は衆議院だけで、参議院議員や地方議員は、新党には加わらない。衆議院を除く立憲民主党、公明党は存続する。

この新党立ち上げは、ごく限られた立憲民主党と公明党のトップで、秘密裏に進められていた。新しい政党の構想が浮上したのは、1月解散の流れが確実視されてからである。

この総選挙に向けた情勢の中で、1月15日に新党「中道改革連合」が結成され、通常国会開催日の前日22日に結党大会が開かれた。

 それゆえ経過を知らされていない立憲民進党の現職議員や予定候補者はビックリ。ましてや支援団体まで新党結成の説明など手が回るはずがなかった。

 連合は1月の中央執行委員会で、「中道改革連合結成の受け止め」として「新党結成という判断そのものは、時間的制約がある中で、・・・立憲民主党の決断を尊重する」「連合が掲げる政策制度については、今次総選挙における連合推薦候補者を通じて実現をはかる」としただけである。

 例年、連合と支持協力関係にある政党間に「政策協定」を締結しで政治活動を展開するが、今回はなかった。

 選挙直前の新党結成になったことについて、政策なき与野党の野合、選挙互助会の指摘も多く見られ、無党派層の支持拡大が不発に終わった。

立憲民主党を支援している労働団体の連合も、公明の支持母体の創価学会も、組織内の政党名「中道改革連合」、略称「中道」の名前の浸透に時間がかかった。ましてや組織外には広げる時間もなかった。

 3カ月前まで与野党で対立関係にあった立憲民主党と公明党が、選挙対策上の野合、身勝手な政党レベルの合併劇である。政党は労働組合が選挙で動いてくれることが当たり前と思っている。

 そもそも「中道改革連合」、略称「中道」という政党の名称が、国民・勤労者、生活者の代弁者のイメージがない。むしろ宗教的な「カルト」を連想させる。これでは労働組合・勤労者の同志という認識は持てないであろうし、フル稼働の運動などは大雪や大寒波もあって望むべくもなかった。

そこに政党側のおごりがみられる。労働組合は何のために政治活動するのかが、分かっていない議員や候補者の傲慢と、労働組合と政党は独立した組織であることを、労働組合側もマスコミや社会にアピールすべきではなかっただろうか。

◆少数与党が歴史的圧勝、自民党と維新で352議席、全議席の4分の3

第51回総選挙は1月27日公示、2月8日投票で実施され、自民党の歴史的圧勝と、「中道改革連合(略称:中道)」の壊滅的惨敗となった。

自民党は300議席の大台を越える316議席(公示前198)を獲得。自民党と連立政権を組む日本維新の会は36議席(同34)。与党全体では352議席と、総議席の4分の3を占める。

自民党は、参議院で否決された法案の再可決や、憲法改正の発議に必要な、衆議院全体の465議席の3分の2にあたる310議席を上回った。衆議院で一つの政党が単独で3分の2以上の議席を獲得するのは戦後初めて。

与党は参院で過半数割れしているが、参院で法案を否決されても衆院で3分の2以上の賛成により再可決し、成立させることが可能になる。 

一方、野党側は全体で109議席と半減。うち左翼野党は、中道改革連合49、共産党4、れいわ1の54議席にとどまる。

党派別で見ると、立憲民主党と公明党の離党者が集まった中道改革連合は49議席(小選挙区7、比例代表42)。中道改革連合結成前の172議席(立憲出身148、公明出身24)から大幅に減らし惨敗。解散前の3分の1以下となった。

立憲民主党出身で小選挙区の全候補では7勝195敗。当選した7人は、野田佳彦、泉健太、階 猛、小川淳也、野間 健、神谷 裕、渡辺 創の前議員であった。

国民民主党は28議席(公示前27)、参政党は15議席(同2)、共産党は4議席(同8)、れいわ新選組は1議席(同9)で、日本保守党は公示前の1議席を失い、社民党は国政選挙で初めて議席を得られなかった。

原口一博らが立ち上げた「減税日本・ゆうこく連合」は1議席(同5)となり、衆院選に初めて臨んだチームみらいは11議席を獲得した。

惨敗した中道改革連合のうち、立憲民主党出身の前職は、共同幹事長の安住淳、共同政調会長の本庄知史、共同選対委員長の馬淵澄夫をはじめ、衆議院副議長の玄葉光一郎、民主党代表であった小沢一郎、立憲民主党を結党し初代の代表となった枝野幸男、立憲民主党の幹事長であった岡田克也、代表代行であった江田憲司、逢坂誠二らが落選した。      ◇       ◇ 

自民党は比例代表で、名簿登載者の数が足りず、14議席が他党に回った。それによっては 比例復活もできなかった前職議員が復活した。で立憲民主党出身の枠で比例復活すらできなかった長妻昭、落合貴之、早稲田夕紀、田島要、西村智奈美、菊田真紀子の6名が議席にぶら下がった。

この比例14議席が、他党に回らなかったならば、計算上は自民党が330議席、中道が43議席(うち旧立憲民主党が15議席)となる。

◆比例で自民党は約650万増、旧立憲・旧公明連合は約700万票減

選挙の帰趨と、各党の勢いを如実に表わすのが比例票である。

比例票を見ると、自民党は2102万票で、前回より644万票の増。参政党も426万票で239万票の増、日本保守党も145万票で31万票の増だった。

逆に最も票を減らしたのは、立憲民主党と公明党の離党者が合流してできた中道改革連合の1043万票で、単純計算で旧両党の合計から709万票の減。れいわ新選組は167万票で213万票減と半減以下となった。

◆衆院選比例代表の政党得票数の推移 (前回2024年→今回2026年) 【増】 自民 1458万票→2102万票(644万票増)
    参政 187万票→426万票(239万票増)
    保守 114万票→145万票(31万票増)
    チームみらい 0→381万票(381万増)
【減】 立民1156万票+公明596万票=1752万票
       →中道(立民+公明)1043万票(709万票減)
    国民 617万票→557万票(60万票減)
    維新 510万票→494万票(16万票減)
    れいわ380万票→167万票(213万票減)

自民党は、引退者を除く現職議員で落選者はなく、比例の単独下位で名簿に揃えただけの候補者も当選が相次いだ。289ある小選挙区では249人が当選、比例復活と単独比例で67人(定数176)が当選という圧勝であった。

自民党の候補者で、小選挙区で落選し比例復活ができなかった空白区は、連立を組む維新の会が強い大阪府の11小選挙区のみ。

つまり小選挙区のすべてで、自民か維新、あるいは両党の議員が存在し、与党の空白区はないのでなる。

野田佳彦は、まさしく将兵を無駄な突撃に駆り立て、死屍累々で白骨街道と化した「インパール作戦」の牟田口廉也を想起させる。そして牟田口廉也も野田佳彦も、自分だけは生還した。

 「中道改革連合」共同代表の野田佳彦・斎藤鉄夫は引責辞任し、2月13日に代表選挙が行われた。代表選挙は、当選した49名だけの投票となり小川淳也が新代表に選ばれた。

◆解散の大義は、国論を二分する政策への民意を問うこと

 総選挙を受けて、特別国会が2月18日から開催され、新総理に高市早苗氏が指名された。国会では、衆議院議長など国会役員が選出された。

与党は、自民党と維新の会と合わせ352議席。安定多数の261議席を大幅に超え、すべての常任委員会(議事運営委員会や予算委員会など)の委員長、審査会長(憲法審査会など)の会長、特別委員会(北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会など)の委員長を独占でき、すべての委員会、審査会なども過半数を確保できるが、若干の委員長ポストを中道に譲った。 

高市自民党は、維新との連立を継続し、安定した国会運営の第一歩を踏み出した。

高市首相は選挙戦で提起したことは、国論を二分する政策への民意を問うことであった。外交で高市政権がまず取り組むべきは、日本の独立と繁栄の基盤である外交・安全保障の追求である。

国内では「責任ある積極財政か」「無責任の緊縮財政か」であり、「拡大基調の経済成長か」が「縮み志向の惰性か」の選択を問いかけた。

さらに「高市早苗が総理大臣でよいのかどうか。主権者たる国民の皆さまに決めていただく」と訴えた。 

 そして国民の審判が下った。高市早苗首相(自民党総裁)は自民党公約や、維新の会との連立合意の実現に、全力を挙げることを訴え、国民の信任を得た。

 昨年10月に高市政権が発足してから4カ月。高市内閣の支持率は、どの調査を見ても7割前後あり、国会の議席の配分数(選挙前)とは大きく食い違っている。 

世論調査では、自民党や維新の会はもとより、反左翼の野党である国民民主党や参政党の支持層では8~9割が高市内閣を支持している。

 外交防衛、安全保障や経済政策などで、高市政権の足を引っ張る左翼野党は、選挙前の立憲民主党や公明党などの議席数は4割を占めていた。この国会議員構成はいびつであり、これを問い直し是正するのも、今回の解散総選挙となった。

この間、公明党が自民党との連立解消で政権離脱し、新たに維新の会が閣外協力で与党となるなど、政権の枠組みが大きな変わったことも、国民の信を問う大義名分であった。 

◆高市旋風というよりも中道改革連合の自滅

 総選挙では、4カ月前まで与野党で対立していた公明党と立憲民主党の離党者が集まり、「中道改革連合」を作った。

中道は、ビジョンも希望もなく、どういう日本を作りたいのか不明で、選挙対策の互助会とみられていた。

憲法9条や安全保障政策などについて「丁寧に議論を進める」 とか、食料品の消費税減税の財源とか、提起したジャパン・ファンドや給付付き税額控除のイメージについて、中道改革連合の斎藤鉄夫共同代表は「総選挙後に議論」というありさま。また野田佳彦共同代表も、普天間基地(辺野古移設)について「総選挙後に政策を論議する」と述べるにとどまった。

中道改革連合は、自らの政策は曖昧でありながら、政府や自民党への攻撃、憎悪感だけは強く、マスコミに取り上げられやすい政府批判が目立つ。

 また、これまで立憲民主党に投票していた層は、自民党に距離を置く層や、自民党にお灸を据えたいという層であり、盤石な立憲民主党の支持層ではなかった。つまり漠然とした支持が多かった。

また両党の離党者が合流し新党を立ち挙げたことで、立憲民主党の支持層から創価学会に距離を置く宗教票が抜けた。

中道改革連合の結成をめぐる混乱と失望から、立憲民主党の票が自民党にだけでなく、国民民主党や参政党、チームみらいにも流れていた。労働組合票を除くと立憲民主党に岩盤支持層は少ない。

中道改革連合が惨敗となった選挙の敗因を、野党やマスコミは、高市旋風という言葉で説明しようと躍起である。

たしかに高市人気の追い風はあったが、熱狂とは言えなかったのではないか。むしろ中道改革連合への嫌悪感から、怒涛のように支持者離れが起きた。それを高市旋風が吹き荒れたという弁明にしたいようである。

この選挙で立憲民主党を離党したが、中道改革連合に参加しなかった議員候補者がいた。茨城県第6区の青山やまと候補は、選挙区事情もあり無所属で出馬し、次期大臣有力といわれた自民党候補に僅差で惜敗した。

無所属候補は、ポスターや選挙ビラの枚数もなども少なく、政見放送枠も比例復活もない。にもかかわらず相手の自民党候補を脅かした。

自民党としては、中道改革連合の公認の方が闘いやすかったのではないだろうか。

 新しい党の立ち上げには、大義名分と理念や政策はもちろんだが、政党のネーミングと、政党トップのキャラクターも成否を分ける。

◆陣営を引き締めた自民党。増えた期日前投票 

今回は1月23日に衆院が解散され、2月8日の投開票までの期間が戦後で最も短かった。投票所入場券の発送遅れや大雪の影響で、公示直後は期日前投票の出足は低調だった。

選挙期間は、大寒波・大雪が重なった。しかも事前報道では「自民過半数の勢い」(共同)「自民、単独過半数をうかがう」(読売)と与党優勢である。  

この大寒波・大雪の中、有権者が本当に投票所に足を運んでくれるか、自民党は最後まで不安を隠せなかった。

しかも悪天候の中、高市政権を支持する有権者にも、逆転されるのではないかとの不安もあった。それが投票所に行こうという有権者の行動につながった。

 自由民主党の古屋圭司選挙対策委員長は、2月2日に檄を飛ばし「危機感を持った相手陣営の、死に物狂いの運動が予想され、一人でも多くの有権者に働きかけ、一人でも多くの有権者が実際に投票所に足を運ぶよう、全力で取り組もう」との呼びかけを全国で展開した。

投票日の2月8日は、大雪が予想されたこともあり、終盤にかけて期日前投票は大きく増えたとみられる。そして左翼野党に失望した多くの国民が自民党に投票した。

一昨年2004年の総選挙と昨年2005年の参議院選挙では、保守票が参政党や国民民主党に浸食された。今回も保守票が自民党から離れ、漁夫の利で中道改革連合が有利になるとの危機感が自民党にあった。また各選挙区に1~2万票あるという公明票が、小選挙区の中道改革連合の候補者に上乗せされれば、逆転されるという危機感もあった。

自民党の躍進と中道改革連合の苦戦のマスコミ予測が報道される中、公明党の支持母体である創価学会は2月1日、小選挙区108を重点区とし、票の掘り起こしを指示した。投票日の一週間前である。

 しかし、中道改革連合という政党名の徹底も含め、支持拡大はコアの層にとどまり、フレンド票対策(組織外の友人への働きかけ)が十分ではなかった。

この自民党の危機感に比べて、中道改革連合は、当初からマスコミ報道で浮足たっていた。しかも当初から「投票促進呼びかけ」が弱かった。とりわけフワッとした立憲支持者は、魅力のない野合に二の足を踏んでいた。

結果的に投票率は56.3%で、前回2024年の53.9%を上回った。なかでも期日前投票利用者は2,702万人(26.1%)と、前回の2,096万(20.2 %)より大幅にふえた。

◆労働組合と政党は、それぞれ独立した組織

連合は、選挙結果が確定した2月9日に、第51回衆議院選挙結果についての神保政史事務局長の談話を発出した。

神保事務局長談話は、「高市政権継続の是非が最大の争点となり、物価高対策をはじめとした働く者・生活者に関わる政策課題から、わが国が抱える構造的課題まで、幅広くかつ本質的な議論が深まらなかったことは極めて残念である」と指摘した。では本質的な議論とは何なのか。連合や支援政党の運動や政策が、勤労者や国民のニーズと合致しているかどうかであろう。

連合の綱領には「社会正義を追求」「完全雇用の達成、労働基本権の確立、労働諸条件の改善、国民生活の向上を実現する」とあり、企業内労使で解決しない国民的課題に挑戦するのが連合の政治活動である。

ましてや政党に振り回されっぱなしであってはならない。今回の中道改革連合をめぐる騒動では、①連合幹部が、国民民主党に中道改革連合への参加を呼びかけた、②連合推薦の候補がいる福井県第1区に候補を擁立した国民民主党に抗議文を突き付けた、③国民民主党に中道改革連合の批判を抑制するよう連合幹部が要請した、などである。

立憲民主党と国民民主党は、ともに連合が支持協力関係にあるが、両党は外交・防衛・安全保障や経済政策では大きく食い違っており、ましてや選挙のための候補一本化を求めることは、選挙目当ての野合に、労働組合が圧力をかけたことになる。

労働組合と政党は独立した組織であり、相互不介入である。ましてや政党の言いなりになるとか、逆に労働組合が政党の下部組織であってはならず、双方が主体性をもった取り組みが必要である。

連合は政治活動を展開するが、あくまでも政治活動は手段であって目的ではない。

2026年度予算の3月末までの成立も視野に。

政府は、衆議院選挙を受けた特別国会を1月18日に召集し、直ちに総理大臣指名選挙が行われ、第2次高市内閣が発足した。国会は、7月17日までの150日間。

これに先立ち高市総理は、「(政府予算案の)年度内の成立を諦めていない」「国民生活のために頑張ってほしい」と述べ、令和8年度予算案の早期成立を目指すよう自民党幹部らに指示した。

野党が、これまでの国会戦術のように、予算や法案を人質にとっての審議引き延ばしなどの抵抗戦術、スケジュール闘争を放棄すれば、年度内成立は十分可能である。

左翼野党は、今回の解散を「年度内の政府予算の成立が見込めず、国民生活無視の党利党略」と攻撃していたが、その中道改革連合などは総選挙で大惨敗を喫した。国民民主党や参政党、そして中道改革連合も、審議促進に協力すれば年度内成立は見込める。また連合も、年度内3月末までの予算成立の後押しをすべきであろう。

経済安保や食料・エネルギー安保の強化などの危機管理投資や成長投資を進め、「強い経済」を実現することが、高市総理はもとより日本国民全体の国益にかなっている。

むしろ高市首相の方が、勤労者や連合組合員の方を向いている、ということであるならば、労働団体の連合も、高市路線の推進を後押しすべきであろう。(敬称略)