F-35、ファンボロー航空ショウ・英空軍タトーでの展示飛行は中止


—来年実施の「英空軍タトー(Royal Air Tattoo)」には参加を予定—

 

[本稿は「F-35エンジン火災の原因が判明、飛行停止は解除、しかしファンボロー展示は間に合うか」2014-07-16改訂、の続編]

 

2014-07-20 松尾芳郎

 待機中のF-35B

図:(NAS Patuxent River)海軍航空隊パチュージェント・リバー基地(Patuxent River, Maryland)で、「ファンボロー航空ショウ」と「英空軍タトー」に参加するため大西洋横断の飛行許可を待つ米海兵隊(USMC)の4機のF-35B(1機は英海軍向け)。今年は残念ながら見送りとなった。

 

6月23日にエグリン空軍基地を離陸しようとした空軍のF-35A「AF-27」が、F135エンジン火災のため離陸中止の事故を起こし、以後3週間の飛行停止となったのは、既報の通り。

F-35プログラムの最高責任者クリストファー・ボグデン(Christopher Bogdan)空軍中将は7月10日、英空軍タトーが行われる英空軍のフェアフォード基地で「ここでF-35の展示飛行を50回ほど行う予定だったが、残念ながら実施できそうもない。」と語った。

その6日後に制限付きで飛行が再開されたが、本格的な飛行試験を行うには更なるマージンが必要なので、そのための改修に多少時間がかかりそうだ。

 

(注)英空軍タトー(The Royal International Air Tattoo)は、世界最大の軍用機航空ショウで、毎年7月に英空軍のフェアフォード(Fairford)基地で行われる。今年(2014)は7月17〜19日に挙行。日本を含め55ヶ国が参加し、地上展示とデモ飛行が行われた。同時期の7月14〜20日には、直ぐ近くでファンボロー航空ショウ(Farnborough International Airshow)が行われている。

 

F-35の飛行再開条件はかなり厳しく設定されている。すなわちパイロットの操作は、最大速度マッハ0.9まで、最大迎角18度まで、”G”は-1から+3の範囲まで、ロール飛行時のステイック操作は半分まで、とされている。また、3時間飛行毎にエンジンのボアスコープ検査を行うことが要件となっている。この飛行制限が余り長期になるようだと、全体の開発プログラムに影響が出るかも知れない。

ボグデン空軍中将に依ると、米海兵隊のF-35B型の「初期運用能力(IOC=initial operating capability)」付与の予定は2015年7月1日で変更はない。しかし兵装テスト(いろいろな飛行条件下でのミサイル、精密誘導爆弾などの投下試験)は、まとめて実施することになろう。それよりも、海軍用のF-35C型機の空母離着艦試験が今年秋に予定されているが、これへの影響が懸念される。

さて問題のF135エンジン火災の原因だが、既報のように、デイスク・ブレード1体型の3段目ファンのファンブレード先端がエンジンケース内側に取付けた摩耗用シュラウドと過度の摩擦を起こして火災となったもの。国防総省調達部門主任のフランク・ケンドール(Frank Kendall)氏は、本件は“事故機「AF-27」に生じた特異な現象で他機に及ぼす影響は少ない。”としている。

しかし、同盟諸国や世間一般は全体の経緯について詳しい情報を求めているのも事実だ。

国防総省の報道官ジョーン・カービー(John Kirby)准将は7月15日に「英国防省と協議の結果、米海兵隊と英海軍向けのF-35B計4機を、大西洋横断飛行でファンボロー航空ショーに参加させる件は中止とした 。」と発表した。これに対し、飛行停止措置が解除されたからには、デモ飛行を実施すべし、と云う反論も出たが、ショー期末に迫っているため今回は見送りとなった。

原因となったP&W F135エンジンの3段ファンに関する詳細な破損に至る経緯と根本的な対策は未だ発表されていない。

–以上−

 

Aviation Week eBulletin July 18, 2014 “F-35 to Royal Air Tattoo: Wait Till Next Year” by Angus Batey, Amy Svitak and Tony Osborne