
本稿は木村良一氏の寄稿です。この1年の感染症を振り返ってみると、新型コロナ以外のウイルス感染症が急速に広がったように思われる。理由として考えられるのが、免疫力の低下だ。私たちはウイルスや細菌などの病原体に感染することで免疫力を高めている。子供の場合はとくにその傾向が強い。しかし、新型コロナが始まってから感染予防が社会全体で徹底され、その結果として新型コロナだけではなく、ほかのウイルスや細菌にさらされる機会が減って免疫力が下ったのではないかとの指摘である。
本稿は木村良一氏の寄稿です。 3回目の緊急事態宣言が4月25日に出された。期間はGWを挟んだ5月11日までで、感染が急拡大している東京、大阪、京都、兵庫の4都府県で人の流れを減らし、第4波ともいわれる流行を抑え込もうというわけだ。感染を急拡大させている原因は変異ウイルス。主流はイギリス由来の「N501Y」。ウイルス表面のスパイク(突起)に存在する501番目のアミノ酸(タンパク質の構成物質)が既存ウイルスのN(アスパラギン)からY(チロシン)に置き換わっていることからこの呼び名が付いている。人の細胞に取り付くスパイク部分が変異したことで、感染力が強く、発症から重症化までのスピードも速いといわれる。若年層でも重症化が指摘されている。すでに日本各地に広がり、5月中には既存のウイルスを追い出し、このN501Yに入れ替わるという。
新型コロナウイルスの発生源や感染拡大の原因を探るWHO(世界保健機関)の調査団が中国・武漢(ウーハン)市での現地調査を終了し、2月9日に中国当局と共同で記者会見を行った。武漢は世界で初めてオーバーシュート(感染爆発)を起こし、ロックダウン(都市封鎖)を経験した都市だ。調査団が武漢に入ったのは1月14日。調査団はクラスターが発生した華南海鮮卸売市場やウイルス漏洩を疑われた武漢ウイルス研究所などを視察し、関係者からも話を聞いた。世界各国はWHOのこの現地調査に注目したが、期待は裏切られた。記者会見で最初の発生についてWHOは武漢以外の見方を示し、武漢ウイルス研究所からのウイルス流出の可能性も否定した。ウイルスの発生源は中国以外で、そこから冷凍食品などに付着して中国国内に持ち込まれたという中国の主張を踏襲するものだった。