日本航空、コロナ対策で英国と米国の評価機関から最高評価を受賞


 2021-03-28(令和3年) 松尾芳郎

 

日本航空は3月22日、同社の新型コロナ・ウイルス感染症対策が、英国および米国の航空会社評価機関から個別に世界一の評価を受けたと発表した。すなわち;―

  •  英国の航空会社評価機関「SKYTRAX(スカイトラックス)」から「covid-19 Safety Rating」(コロナ対策に関わる安全度の比較)で、最高評価の5スターを獲得。
  • 米国の非営利団体「APEX(エイペックス)」の監査「Health Safety Powered by Simpli Flying Audit」で、最高評価の「Diamond(ダイヤモンド)」を獲得。

両機関の審査は、衛生・清潔性への取り組みだけでなく、非接触・自動化や航空旅行のサポートなど、感染症対策全般を評価の対象としている。

両機関から最高の評価を受賞しているのは、これまで日本航空と中東のカタール航空の2社。

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図1:(JAL)APEXの「安心・安全度」審査、およびSKYTRAXの「コロナ対策に関わる安全度の比較」審査で、世界最高水準と評価されたJALの取組み。マスク、ゴーグル、手袋だけでなく防護服を着用したJALキャビン・クルー、この姿で頻繁にラバトリーの清掃を行っている。

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図2:(Tadayuki Yoshikawa / Aviation Wire)JALキャビン・クルーはマスクとゴーグル、手袋を着用して機内サービスをする。2021-03-22の写真。

 

取組みの内容

①     衛生と清潔性

航空機客室内では、飛行中のラバトリー清掃の強化および清掃時には客室乗務員は防護服着用、夜間の消毒、こまめな清掃の実施に加え、清掃効果のモニタリング・検証など清掃体制の強化を始めている。

空港内では、チェックイン・カウンターや機器、ラウンジ、搭乗ステップ、車両など乗客の手が触れる場所全てに、抗ウイルス・抗菌コーテイングを順次実施中。使用するコーテイング液(SEIKADOU SRW-30) は、安全性が高く3~5年間、特定ウイルスを99.9 % 減少させる効果を持続できるのが確認されている。このコーテイング加工済みの機器には「SIAA抗ウイルス+抗菌認証加工」のシール(次図)が貼られている。国内各空港に順次展開中。

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図3:(SEIKADOU)「SIAA抗ウイルス・抗菌認証加工」のシール。

 

②    非接触と自動化

空港施設内では、自動手荷物預入機の導入。また、非接触センサーや、遠隔操作ロボットの実証試験を行うなど、非接触サービスの推進に最新技術を積極的に導入している。2021-03-22からはチェック・イン時の自動チェック・イン機、手荷物預入機のタッチ・パネルの非接触化を開始している。

③    航空旅行のサポート

国内線では、PCR検査機関と提携、搭乗7日前までに検査を受けられるサービス(有料¥ 2.000)を始めている。

国際線では、Allianz Travelと提携、全旅客対象に、渡航時に陽性反応となった場合、医療費、検査費、隔離費用を保証する期間限定サービス「JALコロナ・カバー」を提供する。

 

チェック・イン時のタッチ・パネルの非接触化

「JAL スマート・エアポート」取組みとして導入した自動チェック・イン機、自動手荷物預け機にタッチレス・センサー(日本エアロ・スペース社製)を取付け、操作画面に触れずに搭乗手続きや手荷物タグの発行ができるようにしている。3月22日に羽田空港国内線に設置、4月以降から札幌、大阪伊丹、福岡、沖縄の各空港に順次展開する。

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図4:(JAL) 自動チェック・イン機。赤枠の部分に赤外線タッチレス・センサーを組込み、画面から2.5 cmに指を近付けると操作できる仕組み。

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図5:(JAL) 自動手荷物預け機。赤枠部分に赤外線タッチレス・センサーを組込み、画面から4 cmに指を近付けると操作できる仕組み。

 

「APEX」

「APEX(エイペックス)」(Airline Passenger Experience Association)は、乗客の搭乗体験の向上のために、航空会社・航空機メーカー・旅行関連会社で構成するアメリカの非営利団体である。「SimpliFlying(シンプリフライング)」社は、航空会社・空港会社などのマーケテイングを専門とするコンサルテイング企業。

今回JALは、「APEX」/「SimpliFlying」の監査で、病院レベルの衛生評価とされる「ダイヤモンド」のランクを受賞した。

これとは別に「APEX」は2020年度の航空会社評価「Official Airline Ratings」を、2020-12-17に発表した。今回は5つ星エアラインとしてJALを含め42社を選定している。

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図6:(APEX / JAL) 「Health Safety Powered by SimpliFlying Audit」監査とは、「APEX(エイペックス)」と「SimpliFlying(シンプリフライング)」社が、航空会社の新型コロナ・ウイルス対策を58項目にチェックリストに基づいて検証・評価する基準。空港・機内での感染症予防対策と、安心して旅行できるサポート体制を評価する。評価は3段階で、最も優れた評価は「ダイヤモンド(Diamond)」、続いて「プラチナ」、「金」の順。

 

「SKYTRAX」

「SKYTRAX(スカイトラックス)」は、1989年に設立された世界の航空会社・空港の格付けをする会社で英国ロンドンにある。同社の「ワールド・エアライン・アワード」は世界の航空会社の評価基準とされている。

「スカイトラックス」は2020年現在、「5スター」評価の航空会社を11社認定している。日本からはANAが2013年から8年連続で、またJALが2年連続で認定されている。

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図7:(SKYTRAX) 「スカイトラックス」が「5スター」航空会社に認定した際に交付される認定証。

 

「スカイトラックス」による航空会社の衛生評価基準「COVID-19 Airline Safety Rating」で「5スター」に認定されたのは、2021年3月18日にANA、エア・バルチック、オーマン航空、カタール航空、の4社、続いて3月22日にJALの認定が発表された。

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図8:(SKYTRAX /JAL) 「SKYTRAX(スカイトラックス)」の新型コロナ・ウイルス感染症に対する監査「Covid-19 Safety Rating」は、2020年8月から始まり、コロナ・ウイルスに関わる航空会社の健康と安全対策について評価するシステム。評価は5段階の星の数で表され、、非接触化の推進、空港、機内での人々の間隔保持、衛生、清潔さ、安全な飲食サービスなどについて評価する。最高は星5つ/ 5 Star Ratingが与えられる。

 

終わりに

我が国航空2社の「武漢コロナ対策」が想像以上に進んでいることを今回の受賞で知ることができた。国内で人の集まる箇所、病院、飲食店、交通機関、オフィス、学校、劇場、一般商業施設、などでこの航空2社水準の対策が取られれば、「コロナ収束」も間近になるだろう。

 

―以上―

 

本稿作成の参考にした記事は次の通り。

 

JAL Group News 2021-03-22 “JALの「安全・安心の取り組み」が、アジアで初めて世界最高水準の評価をダブル受賞“

ANA 2021-3-15  “おかげさまで8年連続「5スター」受賞“

JAL 1011-03-22 “JALは2年連続5スターエアラインに認定されました“

Aviation Wire 2021-03-22 “JALのコロナ対策、米英2機関が最高評価APEXとSKYTRAX” by Tadayuki Yoshikawa

Fly Team 2021-03-22 “JAL、世界の衛生安全基準で最高評価スカイトラックスとAPEXで“

Fly Team 2021-03-18“ ANA、コロナ対策の評価は最高ランク5つ星SKYTRAX”

JIJI.COM 2021-03-22 ”JALの「安全・安心の取り組み」が、アジアで初めて世界最高水準の評価をダブル受賞“

Fly Team 2020-12-17 “APEX航空会社ランキング2-21、 JALが5つ星エアライン認定“