露、巡航ミサイル原潜火災事故で刑事責任追及へ。核汚染は皆無だったが15人が負傷(続報)


『露、巡航ミサイル原潜火災事故で刑事責任追及へ。核汚染は皆無だったが15人が負傷』(続報)

ー原因究明と責任追及の政府委員会立ち上げ。修理作業の安全管理に重大な過失浮上?ー

2013-09-16  ジョン・ボスニッチ(ベオグラード)

露・沿海州のウラジオストック近くの造船所で、9月16日起きた巡航ミサイル原子力潜水艦の火災事故で、ロシア政府が事故原因究明と刑事責任追及へ向け動き出した。ノーボスチ通信が報じた。火災事故そのものは核汚染等の事態には至らず、ことなきを得た。消火作業の段階で15人が一酸化炭素中毒で病院に運ばれ治療を受けたという。セルゲイ・ショイグ国防相は『火災の原因は(同潜水艦)修理作業の安全管理に問題があった』と厳しく批判した。刑事責任追及を含めた政府の委員会が今後、現地で捜査のメスを入れるが国内関連法では最高4年の収監の規定がある。

火災事故に見舞われたのは露海軍、太平洋艦隊所属巡航ミサイル搭載型のオスカー級原潜『トムスク』(最大排水量、19,400トン)。極東ロシアの玄関口、ウラジオストックから25キロはなれたボリショイ・カーメン地区にある『ズベズダ造船所』の浮きドックで原子炉冷却装置の動力部分で修理を受けていた。修理工事は2010年末からの長期戰だったという。

火災が発生したのは9月16日、午前7時から8時(現地時間)の間と報ぜられている。出火と同時に地元の海軍、非常事態省傘下の13の消防隊が出動、懸命の消火活動にあたった。『YOUTUBE』が流した映像では、一時、黒煙が一帯に立ちこめヒヤリとさせる雰囲気だった。実際、造船所の関係者も急ぎ避難する騒ぎだったという。原潜の2基の核動力炉は修理作業の過程で完全に停止状態で防火構造の隔壁に覆われている。核弾頭の装填が可能な巡航ミサイル、魚雷等も艦内から外部の貯蔵庫に移送済みで誘爆の危険は最初から無かったという。露国防省は『火災に伴う放射能漏洩は全くなかった』との声明で、周辺の一般市民がパニックに陥るのを防いだ。

消火作業の過程で15人の消防隊員などが一酸化炭素中毒症状を示し、近くの病院に運ばれ治療を受けたという。原潜火災に伴う核汚染発生は未然に食い止められたが、露国防省は事態を重視し、直ちに原因究明と再発防止策の策定に取りかかった。同時にロシア政府内に事故の刑事責任追求の委員会が発足した模様だ。

セルゲイ・ショイグ国防相は『火災の原因は(同潜水艦)の修理作業の安全管理に問題があった』と”人的ミス”を強く示唆した。工事関係者に近い筋は原子炉冷却装置の修理で隔壁内のケーブル、ゴム製防音装置等に溶接の高温の火花が引火した可能性が火災原因として有力。

露原潜の最近の火災事故としては、2011年12月29日(現地時間)、SLBM(水中発射弾道ミサイル)原潜『エカテリンブルグ』が北極圏のムルマンスクに近いロスルヤコボの造船所浮きドックで修理中、発生したケースがある。隣接する市街地に有毒ガスが流れ、炎と黒煙の凄まじさに大惨事を危惧する場面もあった。艦内に当時、兵器を搭載していたとの情報が後で判り、周辺国をギクリとさせたという。事故原因は溶接のバーナーが火災の火源。今度の火災事故と酷似している。

原潜の修理工事での安全対策確立が露海軍の喫緊の課題だ。