米・知日派の軽挙盲動。急げ新たな日米ネットワーク作り


『米・知日派の軽挙盲動。急げ新たな日米ネットワーク作り』 ー北京の意向丸出しの日本の権力中枢、折伏などありがた迷惑ー                                                                                                                                                                                                                            2013-10-02        政治評論家  伊達 国重                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     やっぱりとの思いでがっかりした。日本をこれほどまで持ち上げて良いのかと記者に成りたての頃、翻訳本をたどりながら赤面しそうになった。その著者で、知日家の一人としてかねて尊敬していたエズラ・ボーゲル氏が、かくも浅薄な日中関係改善の提案を開陳しようとは。何時から北京の代弁者に転向したのか、遠慮なく教えてほしい。『日中関係険悪化の本質を見抜けない』ようでは、日米双方で知日派のトップとの評価が泣こうというものだ。

10月2日付けの毎日新聞朝刊の総合3面コラム『水説』の『英知と人脈、全開を』の記事に釘付けになった。筆者は倉重篤郎・専門編集委員。内容を紹介する。かって日本でベスト・セラーとなった『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の著者、エズラ・ボーゲル氏が中曽根康弘元首相の事務所を訪問、日中関係の改善提案をしたという。同氏は言わずと知れた米東部エリート層の知日家のトップの一人だ。

ボーゲル氏の提案の内容について倉重記者は以下のように紹介した。提案は二段構え。直ちに着手すべきこととして、日本には靖国神社参拝自粛と1995年の村山富市談話『植民地支配と侵略に対する謝罪』の再確認を求めるという。中国には尖閣諸島への武力による圧力を止め、対日デモ防止への決意を再確認するよう要求している。両国首脳に対しては双方に取って名誉ある撤退が可能な基本原則を探し、後日、平和的に解決しようという両者の決断を確認する事を進言、将来の政治指導者による少数のハイレベル協議を設ける。

今後数年でなすべきこととして、日本には戦後の日本の平和貢献の歴史を強調した声明と明治以降、日本の軍事侵略が台湾、韓国、中国、東南アジア諸国にもたらした苦痛について説明する声明を出すこと。中国に対しては、映画、テレビでの日本への敵意を誘発する表現を自粛。戦後、日本の平和への取り組みと中国の発展に日本がなした貢献について広く伝えるべきとしている。

倉重記者は内容からボーゲル提案の背後にある意図を見事喝破した。この提案は『中国側の意向を酌んだものと受け取れる———–』。さすがは外信に強い、毎日の専門編集委員だ。親中派が編集局で”実権”を握るライバル有力紙、一部TV局だとこうはいかなかっただろう。せっかくの倉重記者のお見立てに棹さしたのは見出しだ。『英知と人脈、全開』。なんだか善意の仲介者が互譲の精神を求めるかのごとき奇怪なタイトルだ。 ボーゲル提案は倉重記者が見抜いたように中国側の意向を100%ふまえて、中国代弁者として提案したものである。善意の第三者が日中関係の仲介のため取った行動とはほど遠い。だから見出しに敢えて注文をつけさせてもらった。

読者の中に見出しだけに惑わされ、『なるほど』と勘違いされては困るのだ。 日中関係が険悪化したのは中国指導部が共産党独裁支配体制を正当化するための手段をとったからだ。すなわち日本を敵国にして、中国人民の共産党への不満と怒りの矛先を北京から日本に向けさせる策略に他ならない。加えて、中国共産党内部の複雑怪奇な権力闘争も反映している。胡錦濤前主席が”親日派”とみられている(実際は程遠い)ので、権力を引き継いだ習近平主席は、権力の基盤固めを急ぐべく、日本との関係険悪化の加速で胡錦濤派の追い落としに躍起となっている。 日中関係の険悪化とは中国側が仕掛けた自作自演そのもの。やりすぎて引っ込みがつかなくなったから、ボーゲル氏を使い『メンツを立たせてくれ』と言ってきた訳だ。勝手というより自縄自縛状態からなんとか脱出口を探しているのである。

国際政治の分析は素人には難しい。元々複雑極まる上に、専門家や学者は分かりにくい抽象概念や難解な言葉を多用しがちな為だ。だから、原価の日中関係悪化の本質を誰にでも分かりやすく説明したい。いささか品のない例えだが、こういうゆうことである。

最近、急に勢力を増した無頼漢(中国)が、堅気の人間(日本)に根拠無き言いがかりや因縁をつけて、入れ墨(武力)をちらつかせながら大声を出して凄んでみせた。しかし、堅気は相手にしない。無頼漢が本当に手を出せば(尖閣諸島で武力行使すれば)、喧嘩は堅気の方が恐らく強いのだろう。しかも、このところ権威が衰えたとはいえ、本気になったら怖い警官(米国)が棍棒を持ってじっとその様子を見ている。無頼漢は振り上げた拳をおろすために、堅気に『俺のメンツを立ててくれ』と凄みながら目配せしているという所だ。このボーゲル提案なるものは、さしずめ、その目配せというべきものと見れば良い。

尖閣諸島問題は道を通りがかった無頼漢が、立派な家を見て欲しくなり突然『この家は俺の物だ』というのと同じ。家の持ち主は『私が所有権を持っています』と言っても、無頼漢はなにやら偽の権利書のような物を捏造していい募り、家に押し入る気配を見せる。家の持ち主は戸締まりをしっかりして相手にしないが、無頼漢は玄関先で立ち小便したり、やりたい放題だ。無頼漢の横暴に屈して、『話し合い』などすれば相手の思うつぼ。なにがしかの”権利”を認めた事になる。突っぱねるしか無いのである。

日本国内にも中国の代弁者のような連中が少なからずいる。ボーゲル提案に待ってましたと飛びつき、さも日中関係打開の特効薬であるかのように有り難く拝聴しそうだ。外務省のチャイナスクール、中国ネタで碌をはむ大メディアの論説委員、中国市場で儲けたいと未だに夢を追う商売人。彼らはボーゲル提案に『そうだ』言わんばかりなのが目に見える。 日中関係が悪くなった原因の大半は中国側だ。

もし我が方に反省すべき点があるとすればバブル崩壊後、防衛力整備を疎かにしてきた事だ。日本の政財界に蔓延する『日中友好の精神』の妄言が中国側に誤ったメッセージとなり『日本はいくら叩いても反撃してこない』の侮りに繋がった。かねて自主憲法制定を訴え続けた中曽根元総理に敢えてお願いしたい。ボーゲル提案を金科玉条のごとく政財界に吹聴しないでほしい。懇意な”マスコミのドン”に世論工作の手出しをさせてほしくない。勲一等旭日大授章の叙勲の名誉にかけても。