2026-4-24(令和8年) 松尾芳郎
令和8年度防衛予算
令和8(2026)年4月7日に令和8年度予算が成立した。一般会計総額は122兆3000億円、防衛予算は9兆353億円と決まった。この中で、令和8年度に結ぶ契約額として「多用途ドローン」を含む「無人アセット防衛能力」構築に関わる費用は2,800億円と決定した。(算定方法の違いでは3128億円)
注:「アセット(asset)」:経済資源、価値あるもの、資産、の意味。
4月13日には、陸上自衛隊に「無人アセット防衛能力推進室」と「無人装備室」を新設した。陸自は昨年3月までに偵察用無人機を主に1200機を保有するが、新部署では、攻撃型無人機だけでなく、無人陸上車両(UGV)、無人水上艦(USV)、無人潜水艦(UUV)などを含め、検討することになる。
小泉防衛相は新部署開設行事で「ロシアのウクライナ侵攻を念頭に、諸外国ではすでに無人アセットを用いた新しい戦い方の構想、実現に着手している。無人装備は、兵員の命を危険に晒すリスクを減らし、危険・過酷な環境下で活動する能力がある。海洋国家である我が国の地理的特性を踏まえ、新しい戦闘方式を早急に実現する必要がある」と語っている。

図1:(防衛省)「無人アセット防衛能力推進室」、「微塵装備室」新設行事。
防衛省は数年前から「多用途ドローン/UAV」の検討を進めているが、令和8 (2026)年度予算書に、その概要が示されている。すなわち;―

図2:(防衛省令和8年度予算概要)「無人アセット防衛能力」の進捗状況

図3:(防衛省令和8年度予算概要)無人アセットによる多層的沿岸防衛体制(SHIELD)構築の概要。
「無人アセット防衛能力」として構築を目指す「シールド」とは、「SHIELD (Synchronized, Hybrid, Integrated and Enhanced Littoral Defense)/シールド」の略語で、「多層的沿岸防衛体制」を言う。つまり「同期化され、ハイブリッドされ、統合化された強化型沿岸防衛構想」と言ったような意味。この中で陸自が構築を目指す主な項目は、図中①モジュール型UAV、②小型攻撃用UAV I型、③小型攻撃用UAV II型、④小型攻撃用UAV III型、の取得である。

図4:(防衛省報告/我国における軍事用UAV国産化政策の必要性・永石健著) 2023年11月30日作成の報告書にあるUAVの分類表。ここに「該当する海外製UAV」として「「Heron(イスラエル)」と「TB 2(トルコ)」が示されている。
各項目の候補機種は公表されていない。しかし「図4」にあるように、テストや評価の実施が報じられているUAVとしてトルコ製とイスラエル製がある。2機種の概要を述べてみよう。
バイラクタル(Bayraktar)TB2S (トルコ・バイラク社/Bayraktar Technologies)
「バイラクタルTB2S」無人機は、ロシア侵攻を食い止めるウクライナ軍に供与されて大きな戦果を挙げ有名になった「バイラクタル」の改良型で、中高度・長時間滞空のUAVである。エンジンはボンバルデイア社の子会社ロータックス(Rotax)製「Rotax 912」100馬力(その後ウクライナの「モートル・シーチ製に変更」を1基、L3社製電子光学(EO)センサー、イギリス製のミサイル・ラック4箇所を装備する。ラックには長距離対戦車ミサイル[L-UMTAS]、小型精密誘導爆弾[MAM]などを搭載する。
地上操縦装置で3名で操縦する。長さ6.5 m、翼幅12 m、離陸重量650 kg、ペイロード150 kg。

図5:(Baykar)TB2は対空性能を生かした「情報集・監視・偵察・ターゲテイング(ISRT) および「近接航空支援・対地攻撃」を任務としている。MQ-9リーパー(5000万ドル)がヘルファイア、Paveway、JDAM など大型弾などを携行するのに対し、TB2(500万ドル)は小型弾しか搭載できずNorthrop Grumman)製「Hatchet」などを携行する。性能はMQ-9にずっと劣るが小型、低価格で成功している。
注:MQ-9についてはTokyoExpress 2026-3-20 [MQ-9無人機、イラン攻撃で偵察・爆撃の活躍、しかし損失も]を参照。

図6:(Baykar)TB2を正面から見たところ。
「バイラクタルTB2の諸元は次のとおり;―
地上操縦要員3名、全長6.5 m、翼幅12 m、最大離陸重量650 kg、ペイロード150 kg、エンジンはウクライナ製100 hpピストンエンジン、最大速度220km/hr、巡航速度130 km/hr、交信距離は目視可能な範囲、運用高度5500 m、航続時間27時間。
2023年4月1日、在トルコ日本大使館・鈴木量博大使は、バイカル・テクノロジー社を訪問、同社が作る無人航空機(UAV)に関する最新情報を受領、と公式ツイッターで明らかにした。そして同社開発のステルス戦闘機「バイラクタル・クズルエルマ」をバックにしてバイラクタル最高技術責任者セルチュク・バイラクタル氏と一緒に記念写真に収まった。「バイラクタル・クズルエルマ」は2022年12月に初飛行し、現在開発の最終段階にある。(大使のツイッターでバイラクタルTB3 としているが誤記か?)
防衛省は2023年度防衛予算で「バイラクタルTB2」の試験導入を行い、陸上自衛隊で評価試験を行なっている。

図7:(Baykar)在トルコ鈴木量博 大使は2023年4月1日にバイカル・テクノロジー社を訪問、セルチェク・バイラクタル技術担当責任者と会談、同社が開発中の新型無人機「バイラクタル・クズルエル」の前で記念撮影をした。
2026年3月25日イタリア海軍ジュセッペ・ベルッテイ・ベルゴット参謀総長は、トルコのバイカル社が開発する艦載型UAS(無人機)「バイラクタルTB-3」を導入、空母「カブール(Cavour)」で運用することを決定した、と発表。2026年第3四半期に契約し、イタリア北部の工場(ロンキ・デイ・レジオナーリ)で生産する予定(数は不詳)。「バイラクタルTB-3」は「TB-2」の艦載型で、主な任務は長時間・長距離の偵察用、同空母で運用する第6世代戦闘機[F-35B]と一緒に使われる予定である。
空母「カブール (C550)」は2008年就役、満載排水量27,000 ton、飛行甲板は長さ220 m、幅34m、で速力28 kts、で、海自の空母「いずも(DDH-183)」級(満載排水量26,000 ton、長さ248 m、幅38 mとほぼ同サイズである。
ヘロン Mk. II (イスラエル IAI社製)
「ヘロン(Heron) Mk II」は、イスラエル軍で実戦投入されている最新型UAVである。エンジンはRotax 915型ピストン・エンジン出力141 hp、時速 278 km/hrで最大45時間の飛行が可能と言われ、広域監視システムの搭載で自国領空を超えることなく広大な地域の監視ができる性能を持つ。また、主翼下面のハードポイントに精密誘導爆弾を搭載でき、イスラエル軍では偵察・攻撃・電子戦用に使っている。
和歌山県白浜空港ではヘロン Mk. IIが飛行する様子が目撃されており、防衛省が導入、評価試験を行なっていたと見られる。川崎重工が代理店として評価試験の実務を担当、試験に参画している。防衛省は、評価試験は2025年初めに完了した、と言っている。
「ヘロン(Heron) Mk. II」は「イスラエル・エアクラフト・インダストリーズ(Israel Aircraft Industries)」の無人機開発部門「MALAT」が開発したUAVで、中高度・長時間滞空型(MALE)に相当する。
形式は双胴型で推進エンジンを装備する。GPSを使い事前に入力したコースを自動飛行するのが基本だが、地上パイロットによる遠隔操縦も可能で衛星通信にも対応している。装備するセンサーは、EO/IR(電子光学・赤外線)、合成開口レーダー、SIGINT(通信・電波・信号を傍受する活動)用の装置類、などである。
防衛装備庁では、ヘロンMk. IIをベースにして、日本製センサーを搭載する無人偵察機を検討中、と言われる。

図8:(Defense News)2025年11月、南紀白浜空港で撮影されたヘロン Mk. II。
[ヘロン]の諸元は次の通り。

図9:(Wikipedia) 「ヘロン」は、全長8.5 m、翼幅16.6 m、最大離陸重量1,250 kg、ロータックス914エンジン出力115 hpを1基、最大速度222 km/hr、運用高度9,100 m以上、航続時間約40 hr、行動半径 約1,000 km、ペイロード250 kg。
防衛省は2026年度から、1~2年、国産化が軌道に乗るまでの間、外国製 UAVの導入を進める方針で、候補として、既述のトルコ製「バイラクタルTB2S」およびイスラエル製「Heron Mk. II」を挙げている。この他にイスラエルのエルビット(Elbit Systems)製「Sky Striker」、IAI子会社Uvision製「HERO 120」等の購入についても検討中と言われる。

図10:(Elbit Systems)エルビット製「スカイ・ストライカー(Sky Striker)」は車載ランチャーから発射される大型UAV、航続時間 2時間、最大100 kmの行動半径を持つ。III型の自爆型ドローンの候補。

図11:(IAI)II型に相当する 自爆型ドローン、イスラエルIAI/Uvision製「HERO 120」UAV。全長1.34 m、重さ18 kg、60 kmの行動範囲を持つ。II型は、これまでの資料で「令和7年度装備化を目指す」としているので、発注済みかもしれない。
国産UAVについて
国産UAVについては、日経新聞の小泉防衛相単独インタビュー記事(2026-4-23)で「ドローンの国産化は不可欠。ウクライナは年間700万機を製造すると言われているし、米陸軍は2〜3年間に数百万機を調達する予定だ。日本は海で使う水上・水中ドローンを含め、独自の新しい戦い型を構築しなければならない」と話している。
我国でも三菱、川崎、SUBARUなど大企業から発足まもない小規模企業まで多くのドローンメーカーがあるが、その中で、スタートアップ企業「テラドローン」と「ACSL」について紹介する。
テラドローン(Terra Drone):―
テラドローン(Terra Drone)株式会社(本社は東京都渋谷区、代表取締役は徳重 徹 氏)はドローンの開発およびソリューションを提供する企業で、世界中で測量、点検、農業、などの分野で3000件以上の実績を持つ。産業用ドローン・サービス企業として2024年には世界1位を獲得、経済産業省主催「日本スタートアップ大賞2025」では「国土交通大臣賞」を受領した。今後、防衛分野のドローン領域で更なる業務の拡大をすべく取り組んでいる。日本だけでなく米国、ウクライナ、NATOで事業を展開し、2026年度内に米国法人「Terra Defense」を設立する。徳重社長は何度もウクライナに足を運び現地で活躍する多くのドローン・メーカーを視察、協議をし、最終的に「アメイジング・ドローンズ(Amazing Drones)」を相手に選んだ。
2026年3月31日に、ウクライナで迎撃ドローンの開発製造を行っている「Amazing Drones LLC」社(ウクライナ・ハルキウ)に出資を決定、資本・業務提携契約を締結した。ウクライナ戦線では、100万円以下のドローンが数億円規模の高額兵器を無力化する事例が多数あり「防衛の経済合理性」が根本から見直されている。
[Terra Drone]と[Amazing Drones]の提携で、両社が培ってきた知見を基に、迅速・低価格・高機能な迎撃ドローン[Terra A1]を生産、これからウクライナでの事業拡大と、NATOを含む西側同盟諸国への防衛支援を行う。
ロシア外務省幹部は、数日前に武藤 顯 駐ロシア大使を呼び、「テラ・ドローン」が「アメイジング・ドローン」に出資したことに抗議したが、全く論外な話だ。

図12:(Terra Drone)「テラドローン」が開発した偵察・攻撃用ドローン。

図13:(Terra Drone)迎撃ドローン「Terra A1」は従来の高価な迎撃ミサイルに変わる新たな防衛手段として注目されている。低コスト・大量生産性・即応性の特徴を備える。[Terra A1]は、シリアやイランが使うUAV[シャヘド]の速度200 kmを超える時速300 km/hrで32 kmの範囲をカバーできる。電動モーター推進で低騒音・低熱源で飛行、15分間の飛行で空域の監視・標的の探知・攻撃までを行う。
株式位会社ACSL;―
[ACSL]は、早川研介氏、寺山昇志氏の二人が共同代表者で、2013年11月に千葉県で自律制御システム研究所として設立、現在は東京都江戸川区ヒューリック葛西臨海ビル2階にある。事業内容は、産業用ドローンに製造販売およびAI技術を用いた無人化に関わるサービス提供など、である。2021年6月に「株式会社ACSL」に商号を変更、日本郵便(株)と資本提携、同年9月にインドで[Aeroarc]と共同出資子会社[ACLS India]を設立。2021年12月に小型空撮ドローン[SOTEN]の受注を開始。2022年12月に米国市場進出に向け[ACSL. Inc]をカリフォルニア州に設立。2024年12月に「村田製作所(株)」と業務提携を締結している。
2018年11月には、「日本郵便」と協力し日本で初めてLevel 3(補助者無し目視外飛行)を実現、ドローンを使った郵便局間の輸送を実施している。
小型空撮ドローン[SOTEN(蒼天)]は、「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「安全安心なドローン基盤技術開発」事業で完成したドローンで、国際基準のセキュリテイ対策を実施、データの漏洩・抜取り防止を実現済みで、2022年から市販し多くの分野で活用されている。防衛省も[SOTEN]の評価試験を実施、性能を確認している。

図14:(ACLS) [SOTEM]の外観。寸法はアーム展張時64 cm x 56 cm、アーム収納時16 cm x 36 cm、機体重量 1.7 kg、最大離陸重量 2 kg、飛行時間 25分、標準カメラ、IRカメラ、光学ズームカメラなどを搭載する。標準送信機、94 W-hrバッテリー、などが付属する。
ACLSでは、[SOTEN]を改良・搭載量・飛行時間を大幅層した[次世代空撮機]を2026年下半期に完成する計画。別途並行して物流用機体として、高搭載量、高空力性能と長時間飛行をするモデル[PF4]を完成、2025年10月から市販を開始している。
ACLSは4月14日、防衛省から小型空撮機を総額10億円で受注、2026年12月までに納入する。続いて4月16日に防衛省から小型空撮機2件を総額4億2000万円で受注、2026年12月と2027年12月にそれぞれ納入する。防衛省に納入するモデルは不詳だが、「次世代空撮機」や「PF4」を改良した機体になると思われる。

図15:(ACSL) [PF4]の外観。ペイロード5 kg、航続距離40 kmの高性能ドローン。大きさは、アーム展張時2.3 m x 2.5 m、アーム収納時 1.7 m x 0.9 m、機体重量(バッテリーを含む)19.4 kg、10 mm/hrの降雨で飛行可能。
終わりに
冒頭に述べたが、我が国の今年度ドローン関連予算は3000億円規模。これに比べ、米国は12兆円、イギリスからウクライナへのドロン支援は6600億円規模になる。
米国防総省は4月21日、2027会計年度(26年10月〜27年9月)予算教書を発表した。国防費総額は前年度対比42 %増の1兆5000億ドル(240兆円)となる。このうち無人機(ドローン)関連費は従来の3倍の740億ドル(12兆円)を要求した。ウクライナやイラン戦争で効果を発揮しているドローンを重視する対応だ。
対中国抑止力強化のための「太平洋抑止イニシアテイブ」には前年度対比17 %増の117億ドル(1兆9000億円)を盛り込んだ。中国に対抗するため日本などの防衛費増を求める方針を明示した。
イギリス政府は「2026年にウクライナに対しこれまでで最大規模の少なくとも12万機のドローンを供与する」と発表した(2026年4月15日)。供与するドローンは、長距離攻撃型ドローン、情報収集・偵察(intelligence & reconnaissance)ドローン、戦術ドローン、及び海軍用ドローンで構成される。一部は4月からウクライナ戦線で使用されている。3月のロシアからのドローン攻撃は約6,400発になり2月から大幅に増加している。今回のイギリスの支援は総額30億ポンド(約6600億円)規模になり、多くのドローン関係企業が繁忙に追われることになる。
―以上―
本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。
- 防衛省 “防衛力抜本的強化の進捗と予算―令和8年度予算の概要”
- 2023年11月30日作成・防衛省報告/我国における軍事用UAV国産化政策の必要性・永石健史
- J Defense Hews 2026-4-9 “陸自の空中火力を変える「多用途UAV」―令和8年度防衛予算で調達か?” by 影本賢治
- 2025-01-05 Motor Fan “巨大な十字架!?奇抜なデザインの無人機「V-BAT」を海上自衛隊が導入、さらに「自爆ドローン」を陸上自衛隊が配備!”by 綾部剛之
- 航空万能論2026-4-8 ”NATO演習で実力を示したトルコ製無人機、イタリアが間も無くTB3を発注”
- 読売.on line 2026-4-23トランプ政権、ドローンに従来の3倍の12兆円予算要求―対中抑止力強化は18 %増で日本に負担増求める方針も“
- Tera Drone株式会社2026-3-23 “テラドローン、ドローンが防衛のゲームチェンジャーとなる時代に、防衛装備品市場へ本格参入”
- ニュースイッチ2026-4-14 “受注額は約10億円・・・ACSL、防衛省から大型案件”
- ニュースイッチ2026-4-16 “総額は約4億2000万円・・・ACLS、防衛省から小型空撮機2件受注”
- Global Security.com 2025-4-10 “UK announces biggest ever drone package for Ukraine to push back Putin”