「A320neo」秋に初飛行、続いて“A320neo プラス”の検討へ


2014-05-28   松尾芳郎

 1st A320neo

図:(Airbus)今年4月末撮影の完成間近いエアバスA320neo の1号機MSN6101。今年(2014)10月に初飛行、2015年10月の就航を目指して準備が進んでいる。

 

エアバスは成功した狭胴機A320シリーズの後継として、2006年にA320neoの開発をスタートしたのはご承知の通り。A320neoは、A319neo、A320neo、A321neoの3機種から成り、新型エンジンへの換装、新しいウイングレットを取付け、重量の軽減、客室の改良、などをした改良型機である。

この結果A320対比で燃費は15%改善、運航費は8%低減する。併せて騒音、窒素酸化物(NOx)が少なくとも10%少なくなる。

エンジンはP&WのPW1100GまたはCFM製Leap-1A、のいずれかを顧客が選定できる。推力はシリーズ各機種に対応して24,000lbsから33,000lbsが使われる。2010年12月に受注を始めてから、これまでに2,660機を超える注文を獲得した。

そしてA320neoの1号機は間もなく完成、今年(2014)10月に初飛行を予定、就航は2016年春の予定を早めて2015年10月と発表している。これを受けてエアバスの関心事は、A320neoのアビオニクス、キャビン、その他のシステム改良にシフトし、2020年以降にも競争力を確保すべく検討を始めた。

関係筋の話として、エアバスはこの5月末にサプライヤーとの会議を開き、席上A320neoの性能向上策について話し合われる。これは「単通路機の逐次改善 (SAID=Single Aisle Incremental Development)」計画、あるいは単に「A320neoプラス」計画と呼ばれている。

これによると、A320neoの就航予定の直後になる2016年春の生産型機からシステムと客室仕様を順次改良を進め、就航後4年になる2019年には性能仕様を一新したA320neoを登場させようと云うプラン。これでA320neoの競争力を2030年代初めまで維持し、その後の新型の狭胴型機の出現に繋げたいと考えている。

これについてエアバスは口を閉ざしており、単に“全く新しい機体の開発に資金を使うより、現存の機体を段階的に改良して行く方が合理的”(CEOファブリース・ブレゲール氏(Fabrice Bregier)談)と述べるに止めている。

「SAID」あるいは「A320neoプラス」計画に沿って、エアバスでは早くもシステム開発に欠かせない地上試験装置“アイアン・バード(iron bird)”の新規開発に着手した模様だ。この装置は実機用の装置とソフトを使い、あらゆる場面を想定してシステムの適否を調べる機能を備える。先ず考えられるのは、将来の電力多用型の航空機で使われる「電動油圧アクチュエータ(electro-hydraulic actuator)」の検証だ。A320は元来「フライ-バイ-ワイヤ」操縦システムを採用しているが、これは電子的に信号を伝えるのみで、舵面の作動は殆ど油圧アクチュエータで行っている。

エアバスでは、「SAID」あるいは「A320neoプラス」計画およびそれ以降の狭胴型機には、システムを電力多用型に改めることが内定済みで、このため消費電力と油圧、ニューマテイック、それに客室要件、との間の最適化が課題となっている。

EUの「欧州クリーンスカイ研究計画」に協力して、エアバスではA320の1機を電力多用型に改造して2015年に飛行試験する予定。この試験機は、高電圧直流電源を中心に、空調は50kw型パックを使い電動化し、翼には2種類の電気式防氷装置、それに新しいレーザー使用の氷結センサーを備える。並行してフラップ、ランデイングギヤ等の電動化の研究も進められている。

しかしこれ等は直ぐに実用化できる訳ではなく、A320neoの当面の改良は客室に焦点が当てられている。すなわち、大型手荷物が収納できる大型ビンの設置、それにスリムシートの採用である。前者は、デルタ航空からの強い要望で、61cm L x 40cm W x 28cm Hサイズの手荷物が楽に出し入れできるビンに改められる。後者のスリムシートに替えることでA320では2列の座席を増設できる。この次の段階で、電動油圧アクチュエータへの更新が行われるだろう。

–以上−

 

本稿作成の参考にした記事は次ぎの通り。

Aviation Week April 21, 2014 page 35 “Next Steps” by Guy Norris and Jens Flottau

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