防衛省、次期政府専用機に『B777-300ER』を最終決定。整備など後方支援業務を全日空に委託。


次期政府専用機の機種が正式決定した。防衛省は8月12日、新たな機種としてボーイングのB777-300ER型機を選定したと発表した。ANAホールディングス(伊東信一郎社長)の提案を受け入れ、整備などの後方支援業務を同社に委託する。現用のB747-400型機の運航では、日航が支援体制を就航以来、担当していたが、ライバルの全日空に明け渡す事になった。政府専用機の支援業務は、日本を代表するフラッグ・キャリヤーの地位にも繋がり、全日空が今後、No1の地位を名実共に不動のものとした。

次期政府専用機の後継機種選定は防衛省内に『政府専用機検討委員会』をもうけ、内閣と一帯で作業を進めてきた。候補機の整備作業の委託先を含め、全日空、日航両社から提案書を受けつけた。

機体の性能、機内使用、後方支援、教育訓練、納期、経費等選定項目すべてで、全日空の提案が日航をしのぎ、最高の評価を得たという。日航も同型機を提案したが歯が立たなかったという。

新たに航空自衛隊が導入を決めたB777-300ER型機は全長:73.9㍍、全幅:64.8㍍、全高18.5㍍、胴体部の横幅:6.2㍍。双発ジェット旅客機としては世界最大。エンジンは米GEのGE90-115BLの採用が決定した。航続距離は約14,000㌔、巡航速度は0.82。標準座席数は365席。

政府専用機は日米間の貿易不均衡是正もかね1993年導入が決定。米国の力の象徴、「エアフォース・ワン』に勝るB747-400型機を選び、2機を購入。航空自衛隊千歳基地駐屯の、特別輸送航空隊に運航をがまかされた。いきなりジャンボ機運航はハードルが高すぎた。そこで日常の整備、部品補給、操縦訓練等全般で日航への業務委託が決定した。同社が世界屈指のジャンボ機運航会社で、海外の支援ネットワークが充実していたからだ。

今回、全日空に政府専用機運航支援業務の座を譲り渡した背景には、日航が経営破綻後、目下再建途上にある。過去最大の債務切り捨て、法人税減免等への批判が、今でも渦巻いている事が影響している。同時に、民主党時代に再建策が決まった事と、安倍内閣の航空政策への批判もマイナス材料に繋がったらしい。

全日空は次世代省エネ広胴機、B787『ドリームライナー』のローンチカスタマーに当初から名乗りを上げ、ボーイング製旅客機の整備技術面での能力、識見ではライバルをリードしているという。政府専用機の支援業務の座が入れ替わった事は、国内航空界の主導権が全日空に移る”前触れ”だ。

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[(Boeing)全日空が運用中のB777-300ER型機]