中国の衛星破壊兵器開発にペンタゴン警戒強める。戦略軍司令官憂慮を表明。


2014年8月14日(JST.17:50)                                  Aaron Terruli       中国の衛星破壊兵器開発の動きにペンタゴンが重大関心を寄せている。核戦力を統合する米戦略軍(STRATCOM)の司令官、セシル・ヘイニー(Cecil Haney)提督がこのほど核抑止力、露戦略爆撃機の北米ADIZ(防空識別圏)侵入多発に関する報道関係者向けシンポジュームで明らかにした。共和党系、安全保障問題を最重視するウェブ・サイト『ワシントン・フリー・ビーコン』の編集副主幹、ビル・ガーツ記者が8月13日、トップ記事で報じた。 中国がこのまま、衛星破壊兵器開発で実用化の扉をこじ開ければ、プーチン政権も旧ソ連時代に手がけていたこの分野での研究開発計画を再浮上させるのは必至だという。宇宙空間の軍事利用の歯止めが利かなくなり世界は新たな不安定要因を抱え込む事になりかねない。 ペンタゴンが憂慮する中国の衛星破壊兵器開発実験が行なわれたのは7月23日。中国当局は実験の全体像を隠し、一部だけを公表しした。しかし、米軍はその後の詳細な分析で実験が衛星破壊兵器開発推進の本格的な内容で、実戦段階に達したか否か、見極め中。 ペンタゴンの分析では同実験で衛星を破壊可能な弾頭が、固体推進の一段ロケット『DN-2』で発射。地球周回の低軌道に乗り、その後、運動エネルギ、つまり標的に直接命中、その衝撃(KINETIC ENERGY)で衛星を破壊、無力化する実験だったらしい。2007年1月、中距離弾道弾『東風1号』を打ち上げロケットに使用。高度850~860㌔を周回中の気象衛星『風雲1号』に弾頭を命中させ、数千個の破片に粉砕した実験でその実力の一端を見せつけた。しかし数千個の膨大な破片が国際宇宙ステーション『ISS』を危険に陥れ、米露を含む偵察監視、軍事通信衛星の活動に重大な障害となり、批判をかわすため、実験を非破壊型の弾頭に変更し、その後も実験を継続していた。 2012年には打ち上げロケットを改良型の『DN-2』に切り替え、技術的進歩が確認されたという。 中国の衛星破壊兵器システムは迎撃用にロケットを使用する一方、地上のレーザー基地から、強力なレーザー光線を発射、目つぶしを加える装置も同時並行で実用化を急いでいる。 2014年7月の実験の持つ意味は主導権を中国の航空宇宙産業、人民解放軍第2砲兵師団のいずれが握っていたかだ。もし、第2砲兵師団が遂行したとなれば事は重大。『衛星破壊兵器が実戦段階にある証拠』とワシントンの核戦力分析家は指摘する。 米側は、中国が衛星破壊のため、標的発見、ロックオン、追尾、照準、攻撃、最終破壊実効の精密なシステムを既に作り上げつつあると見る。 米国は衛星破壊兵器誕生が宇宙空間を軍拡の場にしかねないとして、中国に開発自粛を再三再四、求めている。事態が新たな段階を向かえる状況だと当然対抗手段の確保が急がれる。 現時点で実用化の見通しが立っているのは、F15『イーグル』を発射台にした衛星破壊兵器と、無人で再使用が可能なミニシャトル『X-37B』での監視偵察衛星打ち上げ機能を実用化することだろう。 プーチン政権も旧ソ連時代から衛星破壊兵器開発の実用化で先鞭をつけていただけに、指を銜えるだけでは済まない。当然この競争に加わると見られる。 中国が衛星破壊兵器の”禁断の実”を齧ったツケは意外に大きそうだ。

thumb_ADM Haney, Cecil

[(US NAVY)米戦略軍司令官、セシル・ヘイニー海軍提督]