ESAの探査機「ロゼッタ」、10年かけて彗星「67P /C-C」に到着


2014-08-17 松尾芳郎

 ロゼッタ撮影の彗星

図:(ESA)探査機「ロゼッタ」が2014-08-03に撮影した 彗星「67P/C-C」。この彗星は太陽系生成時の原始的な物質の小片が集まって出来たものと考えられ、今回の詳しい調査で、水を含む地球を構成する物質の元や生命発祥の起源を探る手掛かりが得られそうだ。彗星は、2個の彗星が合体して作られたか、あるいは1個が長期間の間に侵食されてこのような形になったかは不明。彗星はかなり大きく長さは2km以上ある。表面の平均的な温度は予想より20-30℃高い-70℃、これは氷が少ないことを意味すると云う。

ロゼッタと彗星の航跡

図;(ESA) 探査機「ロゼッタ」の航跡は白の点線で示す通り。彗星「67P/C-C」の軌道は“青色”の実線で示してあり、現在位置は図の頂点”白色点“にある。彗星は6.5年周期の楕円軌道で太陽を回り、遠日点は木星の軌道を越え、太陽に最も接近する近日点は火星と地球の間になる。来年(2015)夏には近日点になり、この近辺では彗星のコマが観られる筈。「ロゼッタ」はこの辺りまで彗星の至近距離を回り同伴の着陸プローブと共に詳しい観測をする予定。

 

「ロゼッタ(Rosetta)」は、エリアン5ロケットで打上げられてから(2004-03-02)、10年掛けて60億km以上を飛行し、このほど目的の彗星「67P/クリアモフ・ゲラシメンコ(67P/ Churyumov-Gerasimenko)」、以後は略して“彗星”あるいは「67P/C-C」、に到着(2014-08-06)した。現在はその周回軌道を回っていて、地球からの直線距離で4億500万kmのところを飛行中である。

「ロゼッタ」は、彗星の周回軌道に入り着陸機を降下、探査する歴史上初めての探査機となる。「ロゼッタ」はこれから彗星の回りを2ヶ月ほど周回して、探査プローブ「フィラエ(Philae)」が着陸できそうな場所を調べる。

ドルダイン(Jean-Jacques Dordain)ESA(European Space Agency)長官は、「ロゼッタ」宇宙探査機の彗星到着に付いて次ぎのように語っている。

「2004年に打上げてから10年5ヶ月と4日を掛けて64億kmを飛行し、その間太陽の周囲を5周するなどして、予定通り目的地に到着した。実際の製作を担当したエアバス宇宙防衛部門と共に、これを心から誇りに思う。」

「ロゼッタ」計画は、ESA内で1970年代後半に提案され、1993年に承認、2004年に発射、10年飛行して2014年に目的の彗星に到着し、計画完了に1年余りを残すのみとなった。「この長期に渡るESAおよび関係者の努力と国際的な協力のお陰で、新しい科学の扉が開かれようとしている」ESA幹部の談。

10年余りの飛行中、地球の引力を利用したフライバイを3回、それに火星を使ったフライバイを1回行った。この複雑な飛行の過程で、「ロゼッタ」は小惑星帯(火星と木星の間の小惑星が集まる区域)にある“ステインズ(Steins)”と“ルテチア(Lutetia)”の近くを通り、それらの写真撮影と科学データの収集に成功した。

その後2年半の冬眠期間に入り、彗星に900万kmに近付いた今年1月20日に目を覚ましている。そして数ヶ月前から「ロゼッタ」に搭載してある11基の観測機器と、探査プローブ「フィラエ」の10基の機器を作動状態にしている。

ロゼッタの想像図

図:(ESA)宇宙探査機「ロゼッタ」が目的の彗星「67P/C-C」上空で探査プローブ「フィラエ」を分離した想像図。「フィラエ」は接地速度1m/秒で彗星に着陸、サンプルを採取、分析結果を「ロゼッタ」に送り地球に伝える。「ロゼッタ」本体は、重さ2.8㌧、大きさ2.8m x 2.1m x 2m、の立方体。搭載するプローブ「フィラエ」は重さ100kg。そして大きく拡げたソーラーパネルは長さ14mに達する。

 

「ロゼッタ」は今年5月に彗星「67P/C-C」の軌道に接近し、その軌道速度に合わせるために、周囲を10回まわる調整飛行を行い、この間に速度を秒速で1,248km(775マイル)から徐々に落とし1.61km(1マイル)に下げた。これが終了したのが、到着日とされる8月6日である。

到着するまでの4月末から6月初めまで、搭載のオシリス(OSIRIS)カメラで彗星「67P/C-C」を撮影したが、この6週間の間、彗星の“コマ(coma)”と呼ぶガスと塵の尾は輝いて見えたり消えたり、を繰り返していた。また、搭載の計測器MIROからの情報で、彗星が水蒸気を300㍉リットル、つまり小さなコップ2杯分ずつ、毎秒放出していることが判った。またその彗星の平均温度は-70℃ほどで、黒く汚れていて、氷とか雪のイメージとはかなり異なる。

発表された写真(2014-08-6)のように彗星は2つの部分から成り、首のような部分で繋がっている。

「ロゼッタ」は周回を繰り返しながら徐々に高度を下げ、彗星との距離を100kmから30kmの間に下げながら飛行を続け、 探査プローブ「フィラエ」の着陸地点を決める。8月末までに候補地点を5ヶ所決め、9月中に1ヶ所を選びそこに11月初旬に着陸させる。

それから1年後になる2015年8月に彗星が太陽に最も近くなる辺りまで、「ロゼッタ」は彗星の周囲を飛び続け、探査プローブ「フィラエ」と共に彗星「67P/C-C」の様相の変化などを調べる予定である。

 

「ロゼッタ」の名前は、古代エジプト遺物として発見された3種の文字で書かれた碑文“ロゼッタ・ストーン”に由来する。また探査プローブ「フィラエ」は、オベリスクが発見されたナイル川の中州の名前から採ったもの。

彗星「67P/Churyumov-Gerasimenko」の由来は1969年に同彗星を発見したウクライナ人の名前による。

彗星の首部分

図:(ESA)我国の一般紙等でも「欧州探査機が撮影の彗星」などとして「ロゼッタ」の活動が紹介(2014-08-17)されたが、このようなESA公表(2014-08-06)の写真が使われた。これは彗星「67P/C-C」の首の部分を写したもので、左側の本体に右の小部分が千切れそうになって付いている。

–以上−

 

本稿作成の参考にした記事は次ぎの通り。

Aviation Week August 11/18,2014 page 16 “Rendezvous with a Comet”

ESA Rosetta mission“Status Reports”on 3 August 2014

AmericaSpace “Nothing so Hidden”: ESA’s Rosetta meets its Target Comet after decade-long Journey” by Emily Carney

Forbes “Rosetta Probe Chases the “Rubber Duck” Comet”5, August 2014