ロシア海軍艦艇、相次いで宗谷海峡を東進


2015-06-12 (平成27年) 松尾芳郎

 

防衛省統合幕僚監部の一連の発表(27-06-08、27-06-10、27-06-11)によると、6月5日から同10日に掛けて、4回にわたり宗谷海峡北または北西100-200 km付近の海域を東に進むロシア海軍の艦艇を発見した。発見、追尾したのはいずれも海上自衛隊八戸基地第2航空群所属のP-3C哨戒機。海峡を通過した艦艇は、「キロ級」潜水艦が合計3隻と「タランタルIII級」ミサイル護衛哨戒艇3隻で、潜水艦はいずれも浮上して通過した。

海自P-3C哨戒機が発見した日時と対象のロシア海軍艦艇は次の通り。

 

6月5日(金)午後3時頃  :「キロ級」潜水艦1隻

6月7日(日)午前4時頃  :「タランタルIII級」ミサイル護衛哨戒艇3隻

6月9日(火)午前5時半頃 :「キロ級」潜水艦1隻

6月10日(水) 正午頃     :「キロ級」潜水艦1隻

 

「キロ級」潜水艦はいずれもロシア太平洋艦隊麾下の第19潜水艦旅団所属と思われ、同旅団には同型艦4隻(6隻との記述もあり)が配備されている。ロシア太平洋艦隊本部はシベリヤの日本海に面したウラジオストクにあるが、オホーツク海東岸のカムチャッカ半島には原潜部隊基地ペトロパブロフスクと水上艦隊基地チハケアンスキーがある。今回の一連の行動は、ウラジオストクからオホーツク海に出て演習を行うか、あるいはカムチャッカ半島の基地に移動するため、と思われる。

以下に、6月5日から10日の間に宗谷海峡を相次いで東に向け通過したロシア艦艇の写真を、日時を追って掲載する。いずれも統幕発表の海自P3-C哨戒機が撮影した写真である。

06-05キロ級

図1:(統合幕僚監部)6月5日通過した「キロ級」潜水艦(Kilo-class submarine)。艦番号は不明。デイーゼル・エレクトリック型潜水艦で1980年代から就役が始まった。初期型は“Project 877”、改良型は”Project 636”と呼ばれる。”636”型は最も静粛性が高い潜水艦の一つとの評価を得ている。主な任務は”対艦と対潜水艦攻撃”、高性能のソナーMGK-400EM、MG-519を備え、艦全体を無反響タイルで覆っている。ロシア海軍は17隻(21隻との記述もある)を保有、その他に33隻を輸出している。このうち中国海軍は旧型2隻と新型10隻を購入し配備している。艦の諸元は型式で異なるが概ね次の通り;—

排水量:水上2,300トン、水中3,500トン、長さ:72 m、速度:水上12ノット、水中25ノット、推進装置:デイーゼル・エレクトリック5,900 軸馬力、潜航深度300 m、兵装:対空ミサイルSA-N-8または-10を8基、533 mm魚雷発射管6門と魚雷18基を搭載。また魚雷発射管からは機雷を投射、敷設できる。

 06-07ミサイル艇916

図2:(統合幕僚監部)6月7日通過した「タランタル(Tarantul) III級」ミサイル護衛哨戒艇(916)。”Project 12411”と呼ばれ、初期型から大きく改良され1987年から製造が始まった対潜水艦用哨戒艇である。ロシア海軍は同型艦を20−30隻ほど運用中と見られる。排水量約500トン、長さ56 m、2基のガスタービン各出力12,000馬力、最大速度42ノット。兵装は76 mm単装砲1門、30 mmガトリング対空機関砲2基、両舷に対艦ミサイルSS-N-22などを2基ずつ計4基搭載する。

 06-07ミサイル艇971

図3:(統合幕僚監部)同じく971号艇

 06-07ミサイル艇978

図4:(統合幕僚監部)同じく978号艇

 06-09キロ級

図5:(統合幕僚監部)6月9日に通過した「キロ級」潜水艦

 06-09キロ艦橋

図6:(統合幕僚監部)同じ艦の艦橋付近

 06-10キロ潜水艦1

図7:(統合幕僚監部)6月10日に通過した「キロ級」潜水艦

06-10キロ艦橋 

図8:(統合幕僚監部)同じ艦の艦橋の様子、この写真は左が進行方向と思われる。

 

-以上-