2015-06-14(平成27年) 松尾芳郎
防衛省統合幕僚監部の発表(27-06-10、27-06-12、27-06-13)によれば、沖縄列島周辺を警戒中の我が海上自衛隊の護衛艦、航空機は、6月10日以降3日連続して活動する中国艦隊を発見した。いずれも宮古島あるいは与那国島の南方の西太平洋上で演習を行ったことを確認している。
艦隊は2万トン級の大型揚陸艦「玉昭」を中心に、中国版イージスの「旅洋I」および「旅洋II」型などの防空艦を護衛として伴っていることから、島嶼上陸作戦を想定した訓練を行ったものと推測される。統幕監部は、海自哨戒機や偵察衛星を通じてその詳細を把握している筈だが公表していない。
3回にわたる中国艦艇の行動は次の通り。
6月10日正午：
海自横須賀基地第６護衛隊所属の護衛艦「おおなみ」が、宮古島の南約700 kmの太平洋上を北西に進む「ルーヤンI級」ミサイル駆逐艦１隻、「ユージャオ級」揚陸艦１隻、及び「ダンヤオ級」補給艦1隻を発見。
6月12日午前0時：
海自佐世保基地第２護衛隊所属の護衛艦「くらま」および那覇基地第５航空群所属の「P-3C」哨戒機が、宮古島の北北西270kmの海域を東シナ海から太平洋へ向け南東に進む「ルーヤンII級」ミサイル駆逐艦1隻と「ジャンウエイII級」フリゲイト艦１隻を発見。
6月13日午前4時：
12日と同様、海自護衛艦「くらま」および「P-3C」哨戒機が、与那国島の南南西290 kmの海域を南西に進む「ルーヤンII級」ミサイル駆逐艦1隻と「ジャンウエイII級」フリゲイト艦１隻を確認した。これら２隻は1２日に発見した艦と同じである。
参考までに沖縄本島から先島諸島にかけての地図を添付しておく。
図１：沖縄本島と先島諸島付近を示す地図。那覇(右上)と宮古島(中央)の距離は約300 km、宮古島と与那国島(左)は約200 km。地図に表示はないが大型機の訓練飛行場のある下地島は宮古島のすぐ左。なお石垣島と尖閣諸島の魚釣島間の距離は170 kmである。
図2：（統合幕僚監部）ミサイル駆逐艦「旅洋I」(Luyang I )型「武漢」艦番号169。6月10日正午ごろ宮古島の南700 kmを北西に進む。本艦は2007年就役、南海艦隊に所属。満載排水量7,000トン、兵装は艦首に100 mm単装砲１門、対空ミサイル(SAM)発射機２基を艦の前後に、中央には対艦ミサイル(SSM)4連装発射機が4基。艦尾にはZhi-9Aヘリ１機を搭載する。
図3：（統合幕僚監部）ドック型揚陸艦「玉昭」(Yuzhao)型艦番号999。同型艦３隻が就役済み、さらに２隻が建造中。「玉昭」は2007年末就役の新鋭艦で本級３隻はすべて南海艦隊に配属されている。排水量20,000トン、全長210 m、時速22ノット、航続距離11,000 km、大型ホーバークラフト4隻を搭載、戦車を含む装甲車20両、武装兵員800名を輸送でき、島嶼上陸作戦を行うのが任務である。
図4：（統合幕僚監部）904型補給艦の改良型「904A」の一つと思われる。満載排水量1,1000トン、全長156 mの大型艦。
図5：（統合幕僚監部）図１の「旅洋I」型「武漢」に対し洋上補給を行っている「ダンヤオ級」補給艦。我が国を含む西側海軍では並走して補給するのが普通。
図6：（統合幕僚監部）「旅洋II」(Luyang II) 型／052C型ミサイル駆逐艦「鄭州」艦番号151。中国版イージスと呼ばれる最新の防空艦で6隻が就役中。満載排水量7,100トン、長さ155.5 m、速力29ノット。外見の特徴は、艦橋４面に取り付けられた348型レーダーの多機能型フェーズド・アレイ・アンテナである。本レーダーは米国のAN/SPY-1レーダーに匹敵すると言われる。これに続く改良型の「旅洋III」型／052D型は、2014年から建造が始まり8隻が作られる。052C型の兵装は；—対空ミサイルHQ-9用6連装発射機(VLS) 8基、HQ-9ミサイルは射程200 km。対艦ミサイルはヘリコプター格納庫のすぐ前にYJ-62ミサイル4連装発射機2基を備える。
図7：（統合幕僚監部）「江衛II」(Jiangwei II)型／053H3型フリゲイト艦「三明」艦番号524。満載排水量2,300トンの小型だが、フランス製クロタルHQ-7 短SAM対空ミサイル8連装1基、YJ-83対艦ミサイル4連装発射機2基を備え、後甲板にはZhi-9Cヘリコプターを搭載できる。1998年以降10隻が就役中。なお本艦「三明」は東海艦隊に所属している。
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