中国海・空軍、日本及び台湾近海で活発な活動続く


2018-05-02(平成30年) 松尾芳郎

 

今年に入ってから我が国及び台湾周辺における中国軍の動きは依然として高い水準で続いている。4月最後の週末を挟む数日の動きについて、ほとんどのマスコミは黙っているが、かなり注目すべき動きがあった。台湾は中国の一部と主張し、台湾の独立志向を認めず、政治的な圧力を強める中国の外交政策に呼応した中国軍の行動である。防衛省「統合幕僚監部」の発表と中国軍の英字広報紙[China Military Online]の記事を元にここに再録してみよう。

 

  1. 4月26日(木曜)中国空軍機機6機が宮古海峡を通過

6機は東支那海から飛来し宮古海峡を通過、太平洋に進出、南西に変針、台湾を周回する形でバシー海峡を通り中国本土方面に立ち去った。中国側は通常の島嶼パトロール飛行だ、と称している。航空自衛隊では那覇基地より戦闘機を緊急発進させ、領空侵犯を防いだ。

6機の内訳は;—

H-6K爆撃機     2機

Y-8 電子戦機     1機

Tu-154情報収集機   1機

J-11B 戦闘機     2機

04-26 H-6K

図1:(統合幕僚監部)4月26日宮古海峡を通過したH-6K爆撃機[20112] 。左翼下面にCJ-10K巡航ミサイルが見える。

04-26 Y-6KとJ-11

図2:(Chinamil.com. Xinhua/Wu Yuepeng) 同じくH-6K爆撃機[20119]とJ-11B戦闘機[61250]。H-6K爆撃機は2011年に配備開始、ロシアからD-30KP-2エンジンを50機分相当の輸入が決定済み。H-6Kの主兵装はCJ-10K巡航ミサイルで、翼下面に最大6発搭載できる。CJ-10K巡航ミサイルは射程1,400-2,000 km。写真では両翼に1基ずつ、2基を携行している。

04:26戦闘機2機

図3:(Chinamil.com. Xinhua/Yuan Jun) 同じくH-6K爆撃機の右側を並行して飛ぶ2機のJ-11B戦闘機。J-11B戦闘機と原型のロシアSu-27SKやJ-11と異なるのはレドームが黒色になっている点と言う。J-11Bは新型高性能レーダー1474型を搭載、兵装搭載量は4 tonから8 tonに増加している。翼端にはPL-12空対空ミサイルを搭載している。

04-26 Y-8電子戦機

図4:(統合幕僚監部)ロシアの貨物輸送機An-12が基本、Y-8輸送機として開発した。1981年から100機ほど作られた。これをベースに電子戦機を含む多くの派生型が生まれている。エンジンはWJ-6ターボプロップ4,250 hp x 4基、航続距離5,600 km。本機は前部胴体側面に電子戦装備を収めた膨らみがある。

04-26 TU-154情報収集機

図5:(統合幕僚監部)TU-154情報収集機 今も生産中のロシアのツポレフ(Tupolev)製3発旅客機で、1,000機以上が生産された。1972年から使われており、以来改良が続けられ多数の派生型が生まれた。中国空軍は民間用のTu-154Mに大型の合成開口レーダー(SAR)を取付け電子偵察機(ELINT)に改造、Tu-154MD型として使っている。Tu-154Mは、最大離陸重量は100 ton、航続距離6,600 km、エンジンはD-30KUターボファン、推力23,000 lbs (100 kN)を3基。中国空軍司令部直轄部隊の第34輸送機師団(北京南苑基地)に配備中、6機がSAR付きELINT仕様である。

04:26 中国軍機航跡

図6:(統合幕僚監部とChinamil.com.発表データをまとめ作成)中国軍機は宮古海峡を通過後、南南西に進路を変え、バシー海峡を通り中国本土に戻った。

 

  1. 4月24日から29日にかけての中国艦艇とY-9情報収集機の動き

4月24日(火)正午ごろ上対馬の北西20 kmの海域を北東に日本海に向け進む中国海軍「ルフ級駆逐艦[112]1隻を発見、その後同艦は対馬海峡を北東に進み日本海に向かった。発見追尾したのは海上自衛隊厚木基地第4航空群所属の「P-1」哨戒機と下関第3掃海隊所属の「うくしま」及び佐世保第13護衛隊所属の「さわぎり」である。

そして4月29日(日)の深夜、佐世保第3ミサイル艇隊所属の「おおたか」

が上対馬の北東70 kmの海域を南西に進む同じルフ級駆逐艦[112]を発見、

同艦はその後対馬海峡を南西に進み東シナ海に向かった。

また、4月28日(土)には、このルフ級駆逐艦を護衛するかのように同じ対

馬海峡空域をY-9情報収集機が往復飛行をした。これに対しては航空自衛

隊西部方面隊所属の戦闘機が緊急発進し、領空侵犯を防いだ。

04-24 ルフ級駆逐艦112

図7:(統合幕僚監部)対馬海峡を往復したルフ(Luhu)級駆逐艦は、西側技術を大幅に取り入れた最初の大型艦(満載排水量4,700 ton)で、フランス製クロタル対空ミサイルHQ-7を搭載、対艦ミサイルはYJ-83 4連装発射機4基を装備する。(112)は「哈爾濱(Harbin)」、1994年就役だが2010年に大規模な近代化改修を実施済み。同級艦は「青島(113)」のみ。

04-28 Y-9情報収集機

図8:(統合幕僚監部)陜西航空機が作るY-9多用途輸送機を情報収集機に改造したのが本機。Y-9は、ソビエト時代のアントノフ(Antonov) An-12輸送機を国産化した陜西Y-8Fを基本にし、胴体を延長した機体で、貨物搭載量は25 ton、人員なら100名+を運べる。西側のC-130J輸送機に相当するサイズ。2009年から中国空軍に配備が始まっている。

04-28中国機、艦

図9:(統合幕僚監部)4月24日から28日に掛けての「ルフ級駆逐艦」の航跡と28日のY-9情報収集機の飛行経路を示す。

—以上—