小惑星探査ミッション、JAXA「はやぶさ2」とNASA「オシリス・レックス(OSIRIS-Rex)」


2018-11-07(平成30年)  松尾芳郎

2018-11-12改訂(誤字を訂正)

 最近「はやぶさ2」が小惑星「りゅうぐう」に到達したと云うニュースに接するが、同じような探査機NASAの「オシリス・レックス」も同じ小惑星帯の「ベニュー」に間も無く到着する。探査機を小惑星帯に送る目的は、ここにある太陽系生成の過程から取り残された小さな惑星や岩石のかけらを調べることで、地球の歴史、生命創造の過程を知る手がかりを得ようと云うことにある。

 

小惑星帯

小惑星帯(asteroid belt)とは、火星と木星の間に平面状に分布するドーナツ状の小惑星の集まり。小惑星帯は、メインベルト(main belt)と他の集団、例えばトロージャン小惑星群(Trojan asteroids) 、等とを分けて扱うことが多い。小惑星帯の全体の質量は、月のわずか4 %にしか過ぎず、その半分はセレス(Ceres)、ベスタ(Vesta)、パラス(Pallas)、ハイジア(Hygiea)の4つの小惑星が占めている。ちなみに月の質量は地球の1 %である。最大の小惑星はセレスで直径950 km、他の3つはいずれも直径600 km未満である。今回調べる「りゅうぐう」や「ベニュー」はずっと小さくいずれも1 km未満である。2017年までに発見され、軌道が推定されている小惑星は74万個ほどもある。

大型の小惑星は時折衝突して細分化して同じ軌道を回るようになる。小惑星は組成により、C型(炭素系)、S型(シリカ系)、M型(金属系)、に分類されている。

太陽系が誕生した46億年前に、太陽を周回する無数の岩の小片やガスはお互いの重力で引き寄せられ纏まり惑星となった。しかし火星と木星の間では、木星の重力摂動のため個々の小片/小惑星の軌道速度が早まり、衝突で合体するより、破壊し合うことが多くなったため惑星になれなかったと考えられている。

こうして太陽系誕生直後この区域に存在した質量の殆どが最初の1億年ほどの間にここから失われた。74万個にも達する小惑星の一部分、約16,000個は太陽系の内側に入る軌道を取るようになり、地球の軌道と交わる「地球近傍小惑星群(NEO=Near-Earth Object)」になっている。直径1 km 以上のNEO(約1000個)の一つでも地球に衝突すれば、6,500万年前の恐竜絶滅の例を出すまでもなく、その衝突エネルギーで陸上生物は大きな被害を受ける。

太陽系内にある小惑星群は、ここで述べた「小惑星帯」、「地球近傍小惑星群(NEO)」、などの他に、太陽系外周の海王星の軌道のすぐ外から始まって冥王星を含む幅45億kmにも及ぶ氷の小惑星の巣「カイパー・ベルト(Kuiper belt)」がある。ここにも惑星の軌道を横切って内部太陽系に入る天体がある。彗星の中で最も有名なハレー彗星もその一つである。

カイパー・ベルトの遥か彼方には、彗星が球状に集まった「オールトの雲(Oort cloud)」と呼ぶ領域があり、隣の恒星との中間まで広がっている。ここからも時折太陽系内部に入る彗星があり、1990年代に地球に来訪したヘール・ホップ彗星や百武彗星がその例として知られている。

小惑星帯

図1:(Wikipedia)太陽系内部の様子。太陽—地球の距離は1億5千万kmこれを「1 天文単位(AU=Astronomical Unit)」と呼ぶ。火星(Mars)までは2億3千万km、太陽—木星(Jupiter)間は7億8千万km。つまり幅5億5千万kmの範囲となる“火星—木星”の間に広がるのが「小惑星帯(Asteroid belt)」である。JAXA「はやぶさ2」が探査する「りゅうぐう」とNASA「オシリス・レックス」が探査する「ベニュー」はいずれもこの小惑星帯にある。

 

「はやぶさ2」

ここで「はやぶさ2」の解説をJAXAの最新情報を基にしてまとめてみよう。小惑星探査機「はやぶさ2」は「はやぶさ」の後継機で、炭素質からなるC型小惑星「りゅうぐう」に着地、サンプルを採集、地球に持ち帰ることを目的に開発された。これで太陽系の起源・進化と生命の原材料を解明しようと云うもの。前身の「はやぶさ」が探査したのは同じ小惑星帯にあるS型小惑星「いとかわ」だったが、C型小惑星は、より始原的な天体で有機物や含水鉱物を多く含んでいると見られる。

はやぶさ2 1

図2:(JAXA / 池下章裕)小惑星「りゅうぐう」に接近する「はやぶさ2」の想像図。本体両側には太陽電池パネル。大きな円盤2つは地球との通信用高利得アンテナ、左はKaバンド、右はXバンド用。その下にある柱状はXバンド中利得アンテナ。底部の四角部にはイオンエンジン4基があり、うち3基が作動していることを示めしている。

 

「はやぶさ2」は2014年12月3日に種子島宇宙センターからH-IIAロケット26号機で打上げられ、小惑星「りゅうぐう」に2018年6月27日に到達した。

打上げられてから地球の太陽周回軌道とほぼ同じ軌道で太陽を1周し、1年後に地球の近くに戻ってきた。そして2015年12月3日に地球をスイングバイして「りゅうぐう」の軌道に近い軌道に入り、太陽を2周した後2018年夏に「りゅうぐう」に到着した。

到着後は「りゅうぐう」が太陽周囲を1周する間、約18ヶ月間に渡り探査活動を続ける。そして2019年末までの「りゅうぐう」を出発、地球に向かう。帰還は2020年末で、サンプルを収めたカプセルを海上で回収する。

はやぶさ2軌道

図3:(JAXA)紫色で示す「はやぶさ2」の往路の軌道を示す図。

りゅうぐうの岩石

図4:(JAXA、東京大、高知大、立教大、名古屋大、千葉工大、明治大、会津大、産総研) 6月30日に高度20 km (ホームポジションと呼ぶ)から撮影した「りゅうぐう」の写真。「りゅうぐう」の表面には予想以上に多くの岩塊がある。見かけ上8 m〜10 m以上の岩に緑色のマークしたのがこの写真。「りゅうぐう」はこま(独楽)型で赤道直径は約1 km、質量約4.5億トン、自転周期は7.6時間、太陽公転周期は1.3年。

fig2

図5:(JAXA、東京大、高知大、立教大、名古屋大、千葉工大、明治大、会津大、産総研)2018年10月15日、高度49 mで、ONC-W1で撮影した「りゅうぐう」表面。黄色の四角が次の図の部分。その右にあるのは「はやぶさ2」の影。着陸・サンプル採取をする予定地点はこの中間になるようだ。

fig1-1

図6:(JAXA、東京大、高知大、立教大、名古屋大、千葉工大、明治大、会津大、産総研) 前図の黄色の四角部分の拡大写真。望遠光学航法カメラ「ONC-T」で高度42 m付近から撮影した、これまでで最高の解像度の写真である。直径2-3 mmの石ころまでも確認できる。これで分かることは、レゴリス(砂状の物質)がないということ。

 

「はやぶさ2」の主要諸元

燃料を含む重量は600 kg、本体の大きさは1m x 1.6 m x 1.25 m。太陽電池展開時の幅は6 m。サンプリング機構、地球帰還カプセル、光学カメラ、レーザー高度計、近赤外線/中間赤外線・観測機器、衝突装置、それにMINERVA-II(3台)とドイツ/フランスが開発したMASCOT小型ローバーを搭載している。

「はやぶさ」からの主な改良点は;—

  1. 地球との高速通信のため、Xバンド(8 GHz)送受信にKaバンド(32 GHz)通信系を追加し、高利得アンテナを改良、通信速度を8 kb/secから32 kb/secに早めた。
  2. イオンエンジンの耐久性を増し、推力を8 mNから10 mNに増強した。(イオンエンジンは小惑星との往復飛行の軌道変更に使うもので、キセノンガスを使い、消費する推進剤の重量は化学推進の10分の1で済む。「はやぶさ」と同様「マイクロ波放電方式」で、「直流放電方式」で必要なカソードが不要。1万5千時間の耐久運転を実施済み。キセノンは60 kgを搭載し使用する)
  3. 衝突装置を搭載、「りゅうぐう」表面に2 kgの銅塊を衝突させ、人工クレーターを作り地下の物質の採取を試みる。
  4. 化学推進系を改良、配管からの燃料漏れをなくし、姿勢制御の信頼性を高めた。(化学推進系は姿勢制御と軌道の微調整に使うシステムで燃料/ヒドラジンと酸化剤/MON-3、で推力を発生する2液式、推力20 Nのスラスター12基が本体周囲に取り付けられている。推進剤は48 kgを搭載する。)
  5. 正確な着地のため、あらかじめ目標地点に発射・設置するターゲット・マーカー(TM)を3個から5個に増やした。(TMは直径10 cm、弾まないように“お手玉”構造にし、表面は光をよく反射する素材にしてある。探査機はフラッシュを照射しTMを確認しながら降下・着地する。)
  6. 姿勢制御装置(reaction wheel) を3台から4台に増やし、冗長性を増した。(はやぶさでは3台中2台が故障したのに対応したもの)

はやぶさ2-1

図7:(JAXA、東京大、高知大、立教大、名古屋大、千葉工大、明治大、会津大、産総研)サンプル採取用「サンプラホーン」は、筒状で先端が惑星表面に触った瞬間に内部から小弾丸を打ち出し、表面の砂礫が舞い上がるのを捉えキャッチャー室に収める。キャッチャー室は3個あり、採取ごとに分離収納する。

はやぶさ2-2

図8:(JAXA、東京大、高知大、立教大、名古屋大、千葉工大、明治大、会津大、産総研) 「衝突装置」は2 kgの銅塊を秒即2 kmに加速して表面に衝突させ、人工クレーターを作る。

 

「はやぶさ2」のミッション・スケジュール

JAXAが2018年10月29日に発表したスケジュールは次の表の通り。これによると10月25日にタッチダウンのリハーサルを終え、現在は「はやぶさ2」が太陽の影に入り通信ができない期間に入っている。来年1月には通信が再開され活動が始まる。

はやぶさ2予定表

図9:(JAXA) 10月30日の発表では、タッチダウン1リハーサル3 (TD1-R3) は前回のTD1-R1-Aと同じ地点に降下し、近距離用レーザー(LRF=Laser Range Finder)で距離を測定しながら高度12 mで自動的にホバリングする試験に成功。その後ターゲットマーカー(TM=Target Marker)を投下、これをフラッシュランプで照射、明るくなったTMを画像認識して暫くホバリングしてから上昇した。すなわちタッチダウン寸前までの飛行を実施、成功したと云う事。

 

「オシリス・レックス(OSIRIS-Rex)

「オシリス・レックス」探査機は炭素を多く含んだC型小惑星「ベニュー(Bennu)」に向かうが、この小惑星は地球の海洋や生命の初期の兆候を含んでいると見られ、また同時に22世紀には地球に衝突する可能性がある危険な天体でもある。「オシリス・レックス」は「ベニュー」の物理的、化学的素性、さらに水分や有機物、貴金属成分を調査し、将来宇宙飛行の中継基地になり得るかを調べる。

オシリsレックス

図10:(NASA/Goddard Space F light Center) NASA探査機「オシリス・レックス」が小惑星「ベニュー」上空を飛行する想像図。

 

「OSIRIS-Rex」とは「Origins Spectral Interpretation Resource Identification Security – Regolith Explorer」の略。NASAによると意味は「Origins:純粋な炭素を多く含む小惑星のサンプルを採取・解析する。Spectral Interpretation:小惑星群全体を搭載の望遠鏡で直接観察する。Resource Identification:炭素の多い小惑星の化学組成・金属組成を調べる。Security:小惑星の軌道に太陽光が及ぼす影響(Yarkovsky effect) を調査する。Regolith Explorer:サンプル採取で、表層から数ミリ単位の層状でサンプルを試みる。」

 

「オシリス・レックス」は米国東部夏時間(EDT)2016年9月8日にケープ・カナベラル(Cape Canaveral, Florida)からアトラスV411ロケット打上げられた。その後太陽を一周、2017年9月22日に地球の重力を利用・スイングバイして目標の小惑星「ベニュー」に進路を採り、2018年8月「ベニュー」に到着した。

探査機はこれまでに10月1日と10月15日に「ベニュー」に接近する飛行(AAM=Asteroid Approach Maneuver )を行なっているが、2018-10-30には3回目の接近飛行/ AAM-3を行い、探査機と「ベニュー」の相対速度を5.13 m/秒に落とした。AAM-4は11月12の予定で、これで探査機は12月3日に「ベニュー」から20 km 位置に到着する(いわゆるランデブー(rendezvous)・ミッション)。

今後の予定は次の通り。

「予備的調査(Preliminary Survey)」段階;—

2018年12月3日からで探査機はスラスターを噴射しながら微調整を繰り返し、「ベニュー」に接近・同行を開始する。高度7 kmで2ヶ月間同行しながら「ベニュー」表面の詳しい調査をして着陸地点となり得る場所を探す。サンプル地点が決まったら、予行練習を繰り返す。

  1. 「オービタルA (Orbital A)」段階;—

2019年1月末ごろから開始、「ベニュー」の周回を繰り返し航法システムの慣熟をする。高度は1.4 – 2 kmを維持し50時間をかけて1周する。

  1. 「詳細検討(Detailed Survey)」段階;—光学系観測装置で「ベニュー」表面の詳しい地図を作ると共にOTES熱放射分光計を使って詳細な化学物質の分布状況を調べる。これでサンプル採取に好適な地点を“野球の内野”ほどの面積に絞り込み、その中に12箇所の着地候補点を設定する。
  2. 「オービタルB (Orbital B)段階;—

「詳細検討」段階が終わると高度1 kmで周回しさらに詳細な調査を行い、サンプル採取予定点について、安全性、採取の容易さ、科学的な価値、について検討しサンプル地点を2箇所選定する。

  1. 「最終偵察(Recon)」;—

2箇所の予定地点上空、高度225 mで直径2 cm位までの岩石の分布状態を調べ、その後525 m上空の軌道に戻る。

  1. リハーサル(Rehearsal);-

リハーサルは2回実施する。1回目は目的地点上空125 mまで降下し再び上昇、軌道に戻る。2回目は着地寸前まで降下して上昇する。

  1. タッチ・アンド・ゴー(TAG=Touch-and-Go);-

「オシリス・レックス」搭載の「サンプル採取器(TAGSAM= Touch-and-Go-  Sample-Acquisition-Mechanism)」を使い、サンプルを採取する。TAGSAMはサンプル・アームの先端に取り付けられた円盤状採取器で、地表に接触すると5秒ほど窒素ガスを噴出して表面を掘り起こし、サンプルを採取する、ガスは放出する。搭載する窒素ガスは3回のサンプル採取作業分の量になる。サンプル量は60 -2000 gr (2 – 70 オンス) を予定している。予定量が採取できたらTAGSAMから地球回収用カプセル内に投入する。

TAGSAM_HEAD-1

図11:(NASA/Lockheed Martin) TAGSAM先端の採集器。上部の左右に描かれているダクトは窒素ガスのパイプ。ガス化仮面に向け噴射し地面を掘り起こしガスとともに採取器内に取り込む。ガスはその後周囲の穴から放出される。

2021年3月に「ベニュー」を出発し、地球に向かい2年半後の2023年9月に帰還する。サンプルを収めカプセルは大気圏突入時に探査機から分離され、パラシュートでユタ州にある広大な国防軍演習地に降下、回収される。採取したサンプルは75 %をNASAで分析し残りの25 %は広く世界中の科学者に提供される。

 

「オシリス・レックス」に搭載する計測機器は5種類あり、これで「ベニュー」の表面を詳しく調べる。

  1. オシリス・レックス・カメラ・システム(OCAMS):3つのカメラからなり、ベニューの地図を作成する。「マップカム(MapCam)」は4色で表面の撮影用。「ポリ・カム(PolyCam)」は口径20 cm望遠鏡で200万kmから小惑星を撮影。「サム・カム(SamCam)」はサンプル採集の様子を1.6秒毎に撮影。
  2. オシリス・レックス・レーザー高度計(OLA):カナダ宇宙局が用意した装置で、ベニュー表面との距離を測定する。
  3. オシリス・レックス熱放射分光計(OTES):アリゾナ州立大学が用意した熱赤外線を調べる装置で、ミネラルと温度情報を計測する。
  4. オシリス・レックス可視光線・赤外線分光計(OVIRS):NASAゴダート・センターが準備した装置、ベニューから出る可視光線・赤外線を測定し無機物と有機物の判別をする。
  5. レゴリッシュX線撮影分光計(REXIS):MITとハーバート大の学生の提案するX線分光計で、ベニュー表面の岩石の組成を調べる。

「オシリス・レックス」探査機の概要は次の通り。

長さ:6.2 m(ソーラーパネルを開いた時)、幅:2.4 m、高さ:3.15 m、重さ(燃料なし):880 kg、重さ(燃料搭載時)2,110 kg、パワー:ソーラーパネル2枚で1,226 – 3,000 watts(太陽の距離で異なる)。

サンプル採取装置(TAGSAM=Touch-and-Go-Sample-Acquisition-Mechanism)」は、ロッキード・マーチン」が開発したロボット・アームで長さ3.35 mで先端に円盤状採取器がついている。

推進システムは次のようになっている;—すなわち、これまでの「火星周回探査機(Mars Reconnaissance Orbiter)」や「木星探査機ジュノー(Juno Spacecraft Exploring Jupiter)」のそれと同じである。4グループに分けた合計28個のスラスターで構成されている。すなわち、高推力の4基の主スラスター、中推力の6基のスラスター、16基の姿勢制御用スラスター、それにタッチ・アンド・ゴウのサンプル採取時に使う低推力の2基のスラスター、である。

燃料は、中央にあるヒドラジン(Hydrazine (N2H4) )燃料タンクから必要に応じプログラムに従って全スラスターに供給される。つまり、ヒドラジンを加熱、気化してスラスターに送り推力を生じる方法である。燃料タンクは高さ150 cm、直径124 cmで容積は1,300 リットルある。

地球重力によるフライバイや「ベニュー」到着時のブレーキ時および地球帰還出発時に使う主スラスター4基は探査機本体の底部(回収カプセルの裏側の面)にある。主スラスターは“エアロジェット・ロケットダイン”製で、1基あたり85 – 360 Newtonの推力を出せる。

osirisrex-8

図12:(Orisis-REx Project) 観測機器、主要構成部品の位置を示す図。

機器名称

図13:( NASA/Goddard/ University of Arizona)「オリシス・レックス」に搭載する各種計測機器の位置。左右に伸びるのはソーラーパネル。中心の白色コーンは、回収カプセル。その下の切り欠きにある四角は、折りたたまれたサンプル採取装置/TAGSAM。

TAGSAM1

図14:( NASA/Goddard/ University of Arizona)折りたたまれていたTAGSAMが展張する様子。先端には円盤状の採取器が描かれている。サンプル採取がおわると、TAGSAMがたたまれ、回収カプセルの白色の蓋が開き、その中にサンプルを投入する。

10-29ベニュー

図15:(NASA/Goddard/University of Arizona) 2018年10月29日に330 km離れた地点から撮影した小惑星「ベニュー」の姿。ポリ・カム(PolyCam)カメラで撮影した写真。「ベニュー」は自転周期4.3時間、直径約500 m、太陽公転周期は1.2年。「りゅうぐう」の半分の大きさ。

 

「オシリス・レックス」ミッションは、メリーランド州グリーンベルト(Greenbelt, Maryland)にあるNASAのゴダード宇宙飛行センター(Goddard Space Flight Center)が主管し、アリゾナ大学(Univ. of Arizona)のダンテ・ロレッタ(Dante Lauretta)氏が指揮を執る。探査機の製作はロッキード・マーチン・スペース・システムズ(Lockheed Martin Space Systems)」が担当した。「オシリス・レックス」はNASAの「ニュー・フロンテア・プログラム(New Frontiers Program)」の3番目のミッションになる。

 

終わりに

JAXAの「はやぶさ2」とNASAの「オシリス・レックス」は共に同じ時期に小惑星探査を行うが、中身は多少異なる。すなわち、“サンプル採取”の方法、“主エンジンの原理”など、が異なり興味深い。またサンプル回収は「はやぶさ2」の2020年末から2021年に対し、「オシリス・レックス」は2023年9月になっている。多少のズレはあるが、結果に期待したい。

 

—以上—

 

本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。

NASA “NASA’s OSIRIS-Rex Asteroid Sample Return Mission”

NASA Goddard Media Studios Aug. 24, 2018 “OSIRIS-Rex Approach Media Telecom”

Spaceflight IOI.Com Space News and Beyond Nov. 7, 2018 “OSIEIS-Rex Spacecraft”

JAXA 2018-04-19 “はやぶさ2情報源—小惑星到着直前版“by はやぶさ2プロジェクトチーム

JAXAプレスリリース“小惑星探査機「はやぶさ2」とは”

JAXAプレスリリース平成30年10月25日“小惑星探査機「はやぶさ2」搭載ターゲットマーカーのりゅうぐうへの投下について”

JAXAはやぶさ2プロジェクト2018-10-26“りゅうぐうの最高解像度の画像”

JAXA 2017-07-12 “小惑星探査機「はやぶさ2」プロジェクト/ミッション概要“

早川書房2018-09-18発行「忙しすぎる人のための宇宙講座」ニール・ドグラース・タイソン著、渡部潤一監修、田沢恭子訳