だったら結婚しなくてよい‼ 愛も信頼もない国民民主党と立憲民主党


2020年02月01日(令和2年)

元 文部科学大臣秘書官   鳥居徹夫

 

通常国会が1月20日から始まった。

23日の衆議院本会議で、国民民主党の玉木代表が質問で選択的夫婦別姓に言及したときに、本会議場から「だったら結婚しなくていい」とのヤジ(ツッコミ)があった。

野党議員らは、ヤジは「自民党の杉田水脈(みお)議員ではないか」と議員の特定と謝罪を求めたという。

その直前の20日には、立憲民主党と国民民主党が昨年来協議を続けていた両党の合流を見送った。このタイミングでのヤジは、まさしく「愛も信頼もない国民民主党と立憲民主党」だから、「結婚しなくてよい」という皮肉にも聞こえる。

そのうち共産党との浮気・不倫にまで発展するのだろうか。

 

対等合併か吸収合併か 

民進党から枝分かれした立憲民主党と国民民主党、そして野田佳彦らの院内会派社会保障を立て直す国民会議」は、昨年秋の臨時国会で統一会派が結成をし、共同で国会活動を展開した。

この旧民進系の統一会派は安倍内閣の菅原経済産業大臣や河井法務大臣を辞任に追い込み、さらには桜を観る会をも取り上げ安倍内閣を追及した。

ところが野党の支持率は伸びるどころか低下傾向が継続。

国会統一会派の活動と並行して、旧民進党の合流の動きが活発になり、社民党も含めて遅くとも今年1月20日の通常国会の開会前には紆余曲折があっても合流するものと、多くのマスコミは想定していた。

ところが今年に入り1月5日、立憲民主党の枝野代表は記者会見で、野党合流について「新党を作る呼びかけをしたことは一切ないし、新党を作るつもりは100%ない」と述べ、立憲民主党に国民民主党が加わる「吸収合併方式」を前提とする考えを改めて強調した。

つまり合流後の存続政党は「立憲民主党」というスタンスである。

一方の、国民民主党は「吸収合併はあり得ない。新党を作っていく」(1月4日の玉木代表記者会見)という姿勢で、合流協議は座礁したまま、通常国会になだれ込んだ。

立憲民主党で愛知選出の赤松広隆・衆院副議長は1月5日、名古屋市中区での会合の挨拶で、両党の合流に関し「三つの原則」があると次のように述べた。

「一つは、立憲民主党という名前だけは絶対に変えちゃいかん。」

「二つ目は脱原発をはじめ色々な基本政策がある。基本の政策は絶対に変えちゃダメだと。」

「三つ目は、代表は枝野でいいからその代わり、党が一緒になったから幹事長よこせとか、政調会長、国対委員長よこせとか言ってくるかもしれないが、骨格の人事は絶対に変えちゃダメだ。」

「向こうも何もないとかわいそうだから、(国民民主党の)玉木(雄一郎)も代表代行ぐらいで、ちょっと横に置くぐらいの形で最後は決着をつけたらどうか、と枝野代表にきつく言った」と述べたという。(2020.01.05 朝日新聞デジタル)

これに猛反発したのが、国民民主党の愛知選出の伊藤たかえ参議院議員で、自らのツイッターで次のように猛反論した。

「国民民主党の玉木代表はおためごかしに代表代行におき、立憲民主党の党名、基本政策、人事は絶対に変えない。これが今話し合われている対等な合流協議の全貌なのだとしたら言葉を失ってしまう。」

「この国を良くしていく主体としての野党を作るため、大きな塊が必要だから、今歩み寄ろうとしているのではなかったのか。」

「対話を許さない姿勢は、我々が変えなければいけないと心底思っている、今の政治そのものではないか。」

このように東京のメディアの感覚と、競合対立している地方(この場合愛知県)の現場の実情は大違いであった。

 

どの党の候補者が、比例復活枠に入るのか 

解散の機運が強かった昨年秋には、解散総選挙が年明けか予算成立後の春とも言われていた。

昨年夏の参議院選挙以降、国民民主党の比例復活の中堅・若手が中心となり、立憲民主党との早期合流の交渉を玉木代表に要求した。

衆議院の比例代表の当選者数は、政党名の得票数で決まる。支持率が1%程度の国民民主党よりも、5%程度の立憲民主党の方が比例当選者数は多い。

国民民主党は比例代表での獲得議席が期待できず、国民民主党所属では惜敗率が高くとも、比例復活はできない。

国民民主党の看板では、衆院選は戦えない。2017年10月の衆議院選では、立憲民主党の衆議院議員の惜敗率が低い候補者、比例単独の候補者の当選が多かった。

国民民主党の衆院議員に合流推進派が多いのは、両党が合流すれば次期衆院選を有利に戦えるからである。というのは小選挙区で落選しても比例復活で議席がとれる可能性が強いからである。

それは国民民主党の候補者の方が、立憲民主党の現職議員よりも惜敗率が高いからである。

たとえば前回2017年10月の総選挙では、立憲民主党所属の当選議員の惜敗率は低かったし、単独比例で当選した議員も多かった。

つまりベテラン議員や一部を除いて、選挙地盤すら存在しなかった立憲民主党所属の候補者まで、低い惜敗率で当選したのであった。

立憲民主党の候補者は、風だのみのイメージ選挙であったのに対し、国民民主党の候補者は一定の選挙基盤がありながらも、風が吹かなかったため比例当選者数が少なかった。実際、比例で惜敗率の高い候補者(当選議員、落選者)が、国民民主党に多くいた。

一方、立憲民主党の選挙に弱い議員にとって、比例復活枠を国民民主党系の議員や候補者が多く占めることとなると、立憲民主党系の候補者に比例当選枠が回ってこないのである。

国民民主党の候補者からすれば、支持率が1%程度と低迷する国民民主党の看板では衆院選は戦えないが、支持率が5%程度の立憲民主党の看板があれば、比例復活の上位で当選、あわよくば小選挙区での議席獲得も、というのが本音かもしれない。

 

解散風がなくなり、合流そのものが頓挫 

とくに国民民主党の参議院議員には、立憲民主党への不信が強い。

昨年夏の参議院選挙で、国民民主党の現職がいる静岡選挙区で、立憲民主党が知名度のある新人を擁立したが、国民民主党が議席を死守した。

この感情的しこりも尾を引き、立憲民主党への反発が強い。

ところが国民民主党の衆議院議員は、いつ解散総選挙となるかもわからないことから、参議院議員とは温度差がある。

両党は、昨年秋から合流に向けた協議を重ね、衆議院では国会議事堂の両党の控室の壁をぶち抜いたものの、進展が見られなかった。

そして通常国会が始まる今年1月20日には、合流そのものが頓挫した。

それは総選挙が遠のいたからである。

安倍総理は、野党の選挙態勢が整う前の早期解散を視野に入れていたと言われていた。ところが作秋の臨時国会終了後にカジノ疑惑で、中国企業が複数の国会議員らに金銭をばらまき元副大臣の現職国会議員が逮捕に発展した。

さらには通常国会が開会された1月末に、中国の湖北省・武漢から広がった新型肺炎(コロナウィルス)の感染拡大もあって、解散総選挙どころではなくなった。

したがって、議員生活の生き残りを賭けた総選挙対策は遠のいた。

つまり解散風がなくなれば、野合の必要性もないし、遠心力が強まるのである。

 

議員でありたい症候群、国会議員の劣化が止まらない 

そもそも立憲民主党と国民民主党とは、政府攻撃では文書管理などで共同歩調をとるが、原発問題ひとつとっても基本政策の一致はない。

国民民主党の衆議院議員は、前回の衆議院議員選挙(2017年10月)では、小池百合子らの「希望の党」から立候補し当選した議員である。

そして、希望の党の選挙公約である①憲法改正、②平和安保法制の適切に運用、③外国人への地方参政権付与反対、などの政策文書に署名し公認され選挙に臨んだ。そこには比例復活した議員も多かった。

にもかかわらず希望の党や、のちに結党した国民民主党からも離党し、立憲民主党の会派に加わったのが、今井雅人、山井和則、柚木道義の3議員である。

立憲民主党の比例復活議員も含め、多くは「議員でいること、議員になりたいことが目的」のようである。

これは自民党の「魔の三回生議員」にも共通する。政権交代となった2012年の総選挙の際、政権党の民主党は候補者公募を行わなかった。というのはどの選挙区も現職議員や候補者が埋まっていたからである。

一方、野党自民党は候補者難であった。野党自民党の候補者公募に応じ当選したのが、いわゆる魔の三回生議員なのである。

なかには複数の政党で、候補者公募に応じた強者もいた。

自民党と民主党の公募に応じ、めでたく2009年に民主党議員となった後藤英友は連座制を問われる裁判を前にして議員辞職した。

つまり「議員になることが目的」という病理現象が、与野党を問わず蔓延していると言っても過言ではないのではないか。

解散総選挙がないならば、議員ほど社会的ステイタスがあり、しかもこれほど優雅な職業はないということであろう。(敬称略)