令和4年2月、我国周辺における中露両軍の動向と我国/同盟諸国の対応


           2022-3-10 (令和4年) 松尾芳郎

令和4年2月、我国周辺における中露両軍の活動と、我国および同盟諸国の動きに関し、それぞれの公的部門等から多くの発表があった。以下にその項目と内容を紹介する。注目すべきニュースは次の通り;

  1. ロシア海軍、北海道周辺海域で演習:2月1日から15日の間、ロシア海軍は北海道に隣接する日本海およびオホーツク海南部の海域で、戦車揚陸艦を含む艦艇24隻で演習を行なった。また2月16日には、9隻の艦艇が宗谷岬をオホーツク海から日本海に向け通過した。
  2. 陸上自衛隊主催の多国間サイバー防護競技会:3月1日久里浜駐屯地通信学校で米・仏・オーストラリアなどと陸海空3自衛隊が参加してサイバー戦防衛競技会を開催する。
  3. 陸自水陸機動団と米海兵機動展開部隊が共同演習:3月4日から同25日の間、陸自水陸機動団・第1ヘリコプター団は米海兵隊第31海兵機動展開隊・第1海兵航空団と共同演習を実施する。
  4. 米空母打撃群と海自が共同演習:2月4~7日、同16,17日、および同19~22日、米空母打撃群が東シナ海および西太平洋で行なった演習に、海自艦艇が参加した。

(The military maneuvers by Russo-Chinese forces close around Japan and Taiwanese islands are increasing ever. Against the threat, Japan and its allies move to take a farther counter measure. Following four were noteworthy;-

  1. During the February 1st thru 16th period, Russian Navy conducted maritime maneuvers in Sea of Japan and south of Okhotsk Sea close to Hokkaido with 24 vessels including several Tank Landing Ships, 
  2. Japan’s Army will hold multi-national competition regarding protection of Cyber-terrorism on March 1st , participating with six nation’s counter parts including U.S., France, and Australia.
  3. Japan’s Amphibious Rapid Deployment Brigade together with US 31st Marine Expeditionary Unit will conduct landing operation exercise, joining with Japanese  V-22 Ospray first time.
  4. US Abraham Lincoln Carrie Strike Group have conducted maritime exercise in Est China Sea and Western Pacific during early thru middle of February, Japanese navy participated the exercise.)

以下に詳細を述べる。

  1. ロシア海軍、北海道周辺海域で演習:

2月1日から中旬にかけて、北海道に近い日本海およびオホーツク海南部の海空域でロシア海軍は合計24隻の艦隊で大演習を実施した。参加したのは、太平洋艦隊のウダロイ級駆逐艦2隻、ステレグシチー級フリゲート4隻、グリシャV級フリゲート3隻、キロ級潜水艦3隻、戦車揚陸艦3隻、オビ級病院船など合計24隻の大艦隊。

海自八戸基地第2航空群「P-3C」哨戒機、大湊基地第7護衛隊護衛艦「しらぬい」が警戒監視に当たった。

ロシア・プーチン大統領は数年前に「北海道のアイヌ人はロシアを構成する一部族、虐待されているので解放する必要がある。時期を見て解放作戦を実行したい」と発言した。今回の演習で注目すべきは戦車揚陸艦3隻が随伴している点、プーチンの発言を思い起こし、今回の演習を重ね合わせると、根室付近へのロシア軍の上陸・侵攻作戦の恐れが現実味を帯びてきた。

1945年8月15日の日本の敗戦前後、当時のソ連は日本領だった樺太や千島列島のみならず北海道占領をも企図したが、日本陸軍の毅然とした対応で断念した経緯がある。現代のロシアは、ウクライナ侵攻が示す通り自国の版図拡大を目指す点で旧ソ連と全く同じ。北海道防衛の一層の強化が望まれる。

以下に「P-3C」哨戒機等が撮影した写真のうち鮮明なもの数枚を掲載する。

図1:(統合幕僚監部)海自八戸基地第2航空群「P−3C」哨戒機が、オホーツク海南部で撮影したロシア艦隊。写真手前黄色い船は砕氷艦「カピタン・クレブニコフ」、以下順に「グリシャV」級フリゲート(323)、「マルシャル・ネデリン」級ミサイル観測支援艦(331)、「ステレグシチーII」級フリゲート(337)、「ゴーリン」級航洋曳船(SB-522)、[ロプチャーI]級戦車揚陸艦(066)。

図2:(統合幕僚監部)ウダロイI級駆逐艦(548)、(543)。大型対潜艦・満載排水量7,500 ton、全長163 m、速度35 kt、強力なソナー、長射程の対潜ミサイル、ヘリコプター2機、SA-N-9型個艦防空ミサイルを装備。8隻が就役中で太平洋艦隊に4隻を配備。

図3:(統合幕僚監部)写真はステレグシチー級フリゲート(339) 「アルダー・ツイデンジャポフ(339)」2020年就役、太平洋艦隊に所属、他に(333)、(335)、同II級(337)。同級艦は排水量2,200 ton、全長104,5 m、速力27 kt、マスト頂部はSバンド3次元レーダー、マストは閉囲型で各種レーダーを内臓。兵装は、対空用GSh-630M 30 mm ガトリング砲 2基、陸上用対空ミサイルS-400を艦載化しVLS(垂直発射装置) 12セルに装備、対艦用3M24ウラン・ミサイル4連装発射筒2基に搭載。同型は6隻で追加2隻が艤装中。

図4:(統合幕僚監部)グリシャV級フリゲート(390)、他に(323)、(375)

図5:(統合幕僚監部)ナヌチカIII級ミサイル護衛哨戒艇(418)

図6:(統合幕僚監部)キロ級潜水艦3隻。「キロ級/877型」を改良したのが「キロ改級/636型」潜水艦。水中排水量4,000 ton、全長52 m。水中速力25 kts、通常動力型、スクリュウを6枚から7枚ハイスキュード型に変更、回転数を半減し騒音を抑えている。艦橋に対空ミサイル18発を搭載し浮上時に発射する。魚雷発射管は6門、装填は自動、有線誘導魚雷のほか各種ミサイルも発射可能。「キロ改級/636型」は16隻が完成、太平洋艦隊に8隻配備中。

図7:(統合幕僚監部)アリゲーターIV級戦車揚陸艦(081)、他にロプチャーI級戦車揚陸艦(055)および(066)。

図8:(統合幕僚監部)マルシャル・ネデリン級ミサイル観測支援艦、複合測量艦「マルシャル・クルイロフ」(331)は、ミサイル追跡艦で「ネデリン」級2番艦で太平洋艦隊に所属。満載排水量24,000 ton、2015年に近代化改修を終え、「ネデリン」が退役したのでロシア海軍唯一のミサイル追跡艦になっている。

図9:(統合幕僚監部)イゴリ・ベロウソフ級潜水艦救難艦

図10:(統合幕僚監部)オビ級病院船

ロシア艦隊の動きに連動するかのようにロシア空軍/海空軍の哨戒機「IL-38」が2月2日と同4日に2機ずつ飛来し、北海道西岸から本州西岸の日本海上の我が国防空識別圏(ADIZ)を侵犯した。航空自衛隊では戦闘機を緊急発進させ、領空侵犯を防いだ。両日とも同じ機体で同じ航路を飛行した。

図11:(統合幕僚監部)2月2日「IL-38」哨戒機2機の航跡。2月4日の航跡も同じ。

図12:(統合幕僚監部)2月4日撮影の「IL-38」哨戒機。

図13:(統合幕僚監部)2月2日撮影の「IL-38」哨戒機IL-18型旅客機を対潜哨戒機にしたのがIL-38。58機が製造されロシア海軍は35機を受領、5機がインド海軍に引渡された。IL-18の胴体を4m伸ばし、主翼を3 m前方に移し前部胴体のみが与圧室。尾部に潜水艦探知用のMAD(磁気探知装置)、前部胴体下のドームはレーダー。胴体ウエポンベイに、ソノブイ・対潜魚雷を収納。機首上部のアンテナは電子情報収集システム(Electronic Intelligence System)[ノベラ(Novella)P-38]。写真は新型のIL-38N型で太平洋艦隊に8機を配備。

  • 陸上自衛隊主催の多国間サイバー防護競技会:

2月26日、トヨタ自動車系列の小島プレス工業がサイバー攻撃を受けサーバーが停止した。この影響でトヨタ自動車では数日間に渡り国内全工場の生産がストップした。ロシアが関与した模様。

ロシアのウクライナ侵攻で、日本でもサイバー攻撃で擾乱が起きる懸念が高まっている。このような事態に対処するため、防衛省では3月末までに陸自隷下に「サイバー防衛隊(仮称)」を設置し人員540名体制にすることを決めた。当面は防衛省関連のシステムの防衛に当たる。

手始めに陸自では、3月1日に、久里浜通信学校で「多国間サイバー防護競技会」を開催、これに米国、フランス、オーストラリアなど6カ国が参加する。久里浜通信学校は旧日本海軍・通信学校の後継組織である。

日本側から競技会に参加するのは、防衛省のほぼ全組織、すなわち、統合幕僚監部、陸海空3自衛隊、防衛大学校、防衛装備庁、である。

競技内容は、各チームは「競技統裁官から攻撃された状況を与えられ、その原因を解明し対策を出す」という形で行われる。

我が国のサイバー防衛体制は他国に比べ遅れているが、遅まきながらやっと体制整備に本腰を入れることになった。これでも米国防総省の6,000名、中国のサイバー攻撃隊3万名、などに比べはるかに手薄である。

図14:(陸上自衛隊)陸自久里浜通信学校は横須賀市久里浜駐屯地にある。昭和14年(1939)年開設の「海軍通信学校」を受け継ぐ組織で、通信・電子教育の中核である。

  • 陸自水陸機動団と米海兵機動展開部隊が共同演習:

3月4日から同25日の間、陸自の東富士演習場および沼津海浜訓練場で、陸自水陸機動団 (Amphibious Rapid Deployment Brigade) は米第31海兵機動展開隊 (31st Marine Expeditionary Unit) と共同訓練を実施する。

演習目的は、島嶼奪回、敵前上陸で共同作戦を実施、相互連携の強化を図る。

参加部隊は、陸自から水陸機動団第1水陸機動連隊および第1ヘリコプター団、米海兵隊からは第31海兵機動展開隊及び第1海兵航空団。

  • 水陸機動団は、2018年(平成30年)3月に新編された組織で3個連隊3,000名規模を予定する旅団、長崎県相浦駐屯地および海自佐世保基地崎辺地区の配備されている。このうち第1水陸機動連隊は相浦駐屯地にある。水陸機動団は、水陸両用車AAV7(米国製)58両、120 mm迫撃砲などを装備している。航空輸送は木更津駐屯地・第1ヘリコプター団輸送航空隊保有の「CH-47J」ヘリコプターおよび「V-22」テイルトローター機が担当する。
  • 第31海兵機動展開隊 (31st MEU)は、米第3海兵遠征軍の隷下の部隊で、海兵隊が海外に恒久的に配備している唯一の機動展開部隊である。地上戦闘部隊は、約2,000名の海兵隊員などで編成、沖縄県キャンプ・ハンセンに司令部を置く。31st MEUに所属する航空戦闘部隊は、同じく沖縄県キャンプ・ホスター内に司令部を置く第1海兵航空団 (!st MAW)から派遣される。1st MAWは、配下に第12海兵航空群・岩国基地 /「F-35B」戦闘攻撃機を運用、および第36海兵航空群・普天間基地「MV-22B」テイルトローター機を運用、などを持つ。

今回の演習の特徴は、

  1. 水陸機動団と第31海兵機動展開による、国内での水陸共同演習である。
  2. 陸自第1ヘリコプター団・輸送航空隊の「V-22」テイルトローターが初めて演習に参加し、米第1海兵航空団の「MV-22B」テイルトローター機と共同演習を行う。

図15:(陸上自衛隊) 水陸機動団が運用する水陸両用車AAV-7 (Assault Amphibious Vehicle 7)。AAV-7はFMC社(現在のBAEシステムズ)が1964年に開発した水陸両用の装甲兵員輸送車。重量25.7 ton、乗員は3名プラス兵員25名を収容。速度は地上で70 km/hr、水上で13 km/hr。かなり旧いので防衛装備庁/三菱重工が新型車両を開発中。

図16:(陸上自衛隊)木更津駐屯地第1ヘリコプター団の「V-22」テイルトローター機。陸自は、は海兵隊向け最新型[MV-22C]と同じ仕様で17機を配備予定。詳細は「TokyoExpress 2020-05-15 初飛行から30年、ベル・ボーイングV-22オスプレイの近況」を参照。

  • 米空母打撃群と海自が共同演習:

海自は、日米同盟の抑止力・対処力を強化するため、米海軍艦艇と日本、台湾などの周辺海空域で頻繁に共同演習を行なっているが、今年2月にも空母打撃群や強襲揚陸艦で構成する米艦隊と3回にわたって共同演習を実施、戦技向上と相互運用性の向上を図った。すなわち;―

  • 2月4~7日:東シナ海および西太平洋で実施。

海自からの参加 :駆逐艦「こんごう」、哨戒機「P-3C」

米海軍からの参加:空母「エイブラハム・リンカーン」、強襲揚陸艦「アメリカ」および「エセックス」、ドック型輸送揚陸艦「グリーン・ベイ」、ドック型揚陸艦「アシュランド」および「パール・ハーバー」、巡洋艦「モービル・ベイ」、駆逐艦「スプルーアンス」および「デユーイ」、掃海艦「ウオーリア」、遠征用海上基地艦「ミゲル・キース」、哨戒機「P-8」。

  • 2月8日 陸上幕僚監部発表「日米共同訓練について」

、2月6日、木更津基地・陸自第1ヘリコプター団の「CH-47」ヘリは、木更津から相浦駐屯地に向かい、ここで水陸機動団兵員を搭載、沖縄周辺海域で演習中の米強襲揚陸艦(アメリカ/LHA-6と思われる)に着艦訓練を実施した。これで米揚陸艦への着艦・展開要領を確認した。

  • 2月16~17日:沖縄東方の太平洋上で実施。

海自からの参加 :護衛艦「いなずま(105)」、練習艦「はたかぜ」

米海軍からの参加:空母「エイブラハム・リンカーン」、巡洋艦「モービル・ベイ」、駆逐艦「スプルーアンス」

  • 2月19~22日:東シナ海および西太平洋で実施。

海自からの参加 :駆逐艦「みょうこう」

米海軍からの参加:空母「エイブラハム・リンカーン」、巡洋艦「モービル・ベイ」、駆逐艦「スプルーアンス」

図17:(海上幕僚監部)2月4日~7日の演習。大型艦3隻は、左から強襲揚陸艦「アメリカ」、空母「エイブラハム・リンカーン」、強襲揚陸艦「エセックス」の順。それに随伴する小さく見える6隻は、左から駆逐艦「デユーイ」、ドック型揚陸艦「アシュランド」、海自駆逐艦「こんごう」、巡洋艦「モービル・ベイ」、遠征用海上基地艦「ミゲル・キース」(やや大きい)、駆逐艦「スプルーアンス」。手前白波を蹴立てて進むのはエアクッション揚陸艇か。

図18:(Wikipedia)「遠征海上基地艦 (Expeditionary Mobile Base)ミゲル・キース (USS Miguel Keith)/ESB-5」。2021年5月就役の最新型で、同型のルイス・B・プラー(USS Lewis B. Puller)/ESB-3級の3番艦。基準排水量81,000 ton、全長249 m、最大幅50 m、CH-53大型ヘリ2機を搭載する大型艦。指揮通信施設、ヘリ甲板、Mk.105磁気掃海具を装備する海上基地である。同型艦は2隻建造中で、合計5隻になる。中国の台湾侵攻に備えて第7艦隊指揮下に入った模様。

図19:(US Navy) 「強襲揚陸艦(amphibious assault ship)」の中で「LHA= Landing Helicopter Assault」つまり「ヘリコプターを使う強襲揚陸艦」の分類の1番艦「アメリカ/USS America (LHA-6)」は、2014年10月就役、佐世保を母港としている。排水量45,000 ton、全長261 m、速力22 kt 以上、海兵隊兵員1,700名を搭載、揚陸する。揚陸用航空機は、MV-22Bオスプレイ、MH-60Sヘリ、CH-53K大型ヘリなど、さらに揚陸支援用にF-35B STOVL戦闘機を最大20機搭載する。揚陸用エアクッション艇は搭載しない。しかし建造中の2番艦「ブーゲンビル(USS Bougainville (LHA-8))からはウエルデッキを復活させ、揚陸艇を搭載することになった。同級艦は11隻を建造予定。

図20:(海上幕僚監部)2月16日~17日の演習。左から、護衛艦「いなずま」、巡洋艦「モービル・ベイ」、駆逐艦「スプルーアンス」、空母「エイブラハム・リンカーン」、練習艦「はたかぜ」。

(注)用語の説明

  • 駆逐艦と巡洋艦:いずれもイージス・システムを搭載し、対空ミサイルや対弾道ミサイルを装備する艦種で、ヘリコプター離発着ができる甲板を備えている。海自は、護衛艦/イージス艦(例えば「こんごう」「みょうこう」)などと呼んでいる。米海軍では、排水量1万トンくらいを境にしてそれより大きい艦を巡洋艦(例えばタイコンデロガ級)、小型を駆逐艦(例えばアーレイバーク級)と呼ぶが、明確な区別はない。5千トンより小さい艦はフリゲートと呼ぶようだ。
  • 揚陸艦:以前は直接海岸に乗り上げ戦車などを揚陸する戦車揚陸艦(LST)が多かった。その後時代が変わり、大型で上陸用舟艇を搭載するドック型揚陸艦 (LSD/LPD)、やヘリコプター空輸能力のあるヘリコプター揚陸艦(LPH)、さらにウエルドックをも備えた強襲揚陸艦(LHA=Landing Helicopter Assault)、の呼び名が使われるようになった。

ドック型揚陸艦は、艦内のウエルドックに上陸用舟艇を収容する「ドック型揚陸艦(LSD=Landing Ship Dock)」、とウエルドックを狭くし輸送能力を増やした「ドック型輸送揚陸艦(LPD=Landing Platform Dock)」に分類される。

[強襲揚陸艦/amphibious assault ship・(LHA)]の代表格は「アメリカ(LHA 9)」満載排水量46,000 tonで、ヘリコプターだけでなく「MV-22B」テイルトローター機や「F-35B」STOVL戦闘機を多数運用し空母に近い。

余談だが、先の大戦で日本陸軍は1942年初めに、全通飛行甲板を持つ揚陸艦「あきつ丸」9,000 tonを作り、三式小型偵察機を搭載し、上陸時の敵情偵察、あるいは航空機の輸送等に使っていた。これは現代の強襲揚陸艦の先駆的存在だったと言える。

  • その他

中国軍の活動/統合幕僚監部

前項「米空母打撃群と海自が共同演習」に連動するように中国海空軍の動きも活発であった。いずれも沖縄周辺の広い海域で演習中の米第7艦隊及び参加した海自艦艇に関わる情報収集、及び2月15~17日の行われた空自「F-15J」戦闘機と米海兵隊の「F-35B」STOVL戦闘機、米空軍沖縄基地の「F-15C/D」戦闘機で行われた共同訓練の情報収集を目的としたものと思われる。

統合幕僚監部の発表によると;―

  • 2月15日 中国機の東シナ海および太平洋における飛行

中国海軍Y-9情報収集機1機が沖縄本島―宮古島の間、宮古海峡を抜け太平洋に進出、偵察飛行を行った後、東シナ海に戻った。空自・南西航空方面隊・第9航空団所属のF-15J戦闘機が緊急発進、領空侵犯を防いだ。

  • 2月16日 中国機の東シナ海および太平洋における飛行

前項に引き続き翌日16日に同じ機体番号「24」の哨戒機が同じコースを飛来した。

図21:(統合幕僚監部)2月15日、Y-9情報収集機の飛行経路。

図22:(統合幕僚監部)Y-9情報収集機。FWJ-6Cターボプロップ・5,100 HP 4基を装備する陜西航空機製Y-9輸送機が原型。最大離陸重量65 ton。海軍が使っているのは「Y-9G」。

  • 2月15日 中国海軍ミサイル駆逐艦が宮古海峡を通過、太平洋に進出

2月14日、中国海軍「ルーヤンIII級」ミサイル駆逐艦1隻が宮古海峡を通過、太平洋に進出した。発見追尾したのは海自那覇基地第5航空軍所属の哨戒機「P-3C」と大湊基地第7護衛隊所属の護衛艦「まきなみ」である。

  • 2月17日 中国海軍ミサイル駆逐艦が宮古海峡を通過、東市内に戻る

2月16日、前項の「ルーヤンIII級」ミサイル駆逐艦が、太平洋から宮古海峡を通過、東シナ海戻った。海自「P-3C」哨戒機と呉基地第1海上補給隊所属「とわだ」が警戒監視に当たった。

図23:(統合幕僚監部)2月14日及び16日、ルーヤンIII級駆逐艦「太原」が往復した宮古海峡。

図24:(統合幕僚監部)「旅洋III級 / 052D型 昆明級駆逐艦で、中国版イージス艦。同型艦10隻を配備、追加7隻を艤装中。写真「太原(Taiyuan) / 131」は2018年就役、東海艦隊に所属。満載排水量7,500 ton、全長156 m、速力29 kts。VLS(垂直ミサイル発射装置)64セルに対空/対艦ミサイルを装備。

  • 2月28日 中国海軍フリゲート「ジャンカイII級」1隻が宮古海峡を通過、太平洋に進出

2月27日に「ジャンカイII級」フリゲート(548)が宮古海峡を通過、海自那覇基地第5航空群所属の哨戒機「P-3C」と鹿屋基地第1航空軍所属の哨戒機「P-1」が警戒監視を行なった。

図25:(統合幕僚監部)「ジャンカイII/江凱II」型は「054A」フリゲート、2008年に1番艦「舟山・529」が就役。写真は「益陽/Yiyang (548」東海艦隊所属で2010年就役。満載排水量4,500 ton、全長137 m、速力27 kt、HQ-16対空ミサイルを32セルVLSに収めている。対艦ミサイルは艦中央にYJ-83型を4連装発射機2基に搭載している。[045A]型フリゲートは外洋艦隊用で防空能力を強化。同型艦は30隻が就役済み。

  • 2月28日 中国海空軍の哨戒機「Y-9」が宮古海峡を往復

28日中国海空軍の哨戒機「Y-9」が宮古海峡と通過太平洋に進出、しばらくして往路と同じ経路で東シナ海に戻った。空自南西航空方面隊・第9航空団所属のF-15J戦闘機が緊急発進、領空侵犯を防いだ。

前項のように27日に江凱II級フリゲート「益陽」が宮古海峡を通り太平洋に進出したのでそれと連動した飛行と思われる。

図26:(統合幕僚監部)2月28日「Y-9」哨戒機の飛行経路。

図27:(統合幕僚監部)Y-9対潜哨戒機。尾部ブーム先端に磁気探知機 (MAD=magnetic anomaly detector)を備えている

航空幕僚監部

  • 2月18日 米海兵隊、米空軍との共同訓練

2月15~17日の間、那覇南東の太平洋上の空域で、那覇基地の空自南西航空方面隊・第9航空団所属の「F-15J」、南西航空警戒管制団は、米海兵隊第1海兵航空団 (!st MAW=First Marine Air Wing)所属のSTOVL機「F-35B」及び嘉手納基地の米第5空軍・第18航空団 (Fifth Air Force, 18th Wing)所属の「F-15C/D」戦闘機と共同訓練を行なった。

(注)米「第5空軍 (5AF)」は太平洋空軍 (PACAF) の傘下で、司令部は横田基地。第5空軍司令官が在日米軍司令官を兼務する形になっている。第5空軍の主要部隊は;―

  1. 第18航空団 (18th Wing)/沖縄県嘉手納飛行場に展開、「F-15C/D」戦闘機、「KC-135」給油機、「E-3B/C」AWACS早期警戒管制機、「HH-60」救難ヘリコプターなどで編成。米空軍組織の中で最大の戦闘航空団である。数年前、中国から突然のミサイル攻撃を受けた場合の脆弱性が指摘され、以後ミサイル防衛システムの大幅な強化に取組んでいる。
  2. 第35戦闘航空団 (35th Fighter Wing)/青森県三沢飛行場に展開、「F-16C/D」戦闘機を装備している。
  3. 第374空輸航空団 (374th Airlift Wing)/横田飛行場に展開、「C-130J-30」輸送機を装備している。

―以上―