トマホークと12式地対艦巡航ミサイルの配備を急ぐ


2023年10月19日(令和5年) 松尾芳郎

木原稔防衛大臣は10月5日、米国ワシントンD.C.のウイラード・インターコンチネンタル・ホテル (InterContinental The Willard Washington D.C.) で、日米防衛相会談後に記者会見を開き、次のように語った。

同日午後1時10分から2時5分までの約1時間に渡りオーステイン国防長官 (Lloyd James Austin III)と会談した(オーステイン国防長官の最終軍歴は陸軍大将)。会談の内容は「日米統合抑止力の強化・前進」を急ぐことで合意した。要点は次の通り;―

  1. 鹿屋基地に展開中の米空軍MQ-9無人偵察機は嘉手納基地に移駐
  2. MG-109トマホーク巡航ミサイルの導入は1年前倒し
  3. 12式対地・対艦ミサイル能力向上型の開発を促進

以下にそれぞれの内容を述べる。

  • MQ-9無人偵察機は沖縄県嘉手納基地に移駐

鹿児島県海上自衛隊鹿屋基地に昨年11月から展開している米空軍・第319遠征偵察中隊(319th Expeditionary Reconnaissance Squadron)に所属するMQ-9無人偵察機8機を沖縄県嘉手納基地に移駐して、11月から緊張高まる南西太平洋域でのISR運用を開始する。米軍は10月13日に鹿屋基地で移駐式を行った。

[ISR]とは「Intelligence, Surveillance and Reconnaissance」・「情報・監視・偵察」の略で戦闘に必要とされる要素をいう。

日米で「グライド・フェイズ・インターセプター/Glide Phase Interceptor」と名付ける無人機運用の協力を拡大し、南西太平洋域での両国の共同情報分析組織の一層の強化を図る。このために我国の情報保全・サイバーセキュリテイの抜本的強化が必要で、そのための国内法整備を急ぐ。

 MQ-9 リーパー(Reaper)はジェネラル・アトミックス社(General Atomics)が製造する無人機(UAV=Unmanned Aerial Vehicle)で、主に米空軍が2007年から運用中。これまでに300機以上が製造されている。

運用は、パイロットとセンサー・オペレーターの2名が地上操縦装置(GCS)を使って離陸から巡航・偵察/攻撃そして着陸までを行う方式である。

エンジンはハニウエル製(Honeywell)「TPE331-10GD」ターボプロップ900馬力を1基、最大速度は390 km/hr。作戦行動半径は1,850 km、つまり6時間進出して10時間ほど対空・偵察を行い、6時間で帰還する飛行をいう。1,850 kmの距離とは、鹿屋基地から西は中国大陸の奥深く、南は台湾からバシー海峡を超え、フィリピン・ルソン島の北部までをカバーする範囲になる。

高度5万フィート(15,000 m)の高空を飛び、偵察飛行の滞空時間は30時間、兵装はハードポイント9箇所に対地攻撃用ブリムストーン(Brimstone)ミサイル10発、またはペイブウエイ(Paveway) IVレーザー誘導ミサイル(230 kg)を最大1.7 tonまで搭載可能、対地攻撃運用時の滞空時間は23時間になる。

ユニット単価は、センサー付きMQ-9無人機4機、地上操縦装置(GCS)、プリデーター・プライマリー・サテライト・リンク、を含み5,650万ドル(約80億円)。

MQ-9を嘉手納基地に移駐する最大の目的は、東シナ海および南シナ海にまたがる広大な区域での「ISR」ミッションを強化するため。

「MQ-9」は「MQ-9A」とも呼ばれるが、これを改良大型化し海上移動目標の監視用に使う「MQ-9Bスカイ・ガーデイアン(SkyGuadian)/シー・ガーデイアン(SeaGuardian)」がある。

海上保安庁は「MQ-9Bシー・ガーデイアン」を導入済みで2022年10月から3機体制で、海上自衛隊八戸航空基地をベースに、不審船の領海侵入、尖閣諸島周辺の警備強化などを始めている。2024年からは5機の運用となる。

また海上自衛隊は、同機の性能に着目、2023年5月から海上保安庁が導入した3機目の機体を使い試験運用を開始、2000時間の試験を行い、購入を決める。

「MQ-9Bシー・ガーデイアン(SeaGuardian)」は、センサーとして逆合成開口レーダー(ISAR)、マルチ・モード海洋表面探査レーダー、自動船舶識別装置(AIS)情報受信機、光学・赤外線カメラ付き高精度ビデオ・センサー等を装備している。

図1:海上自衛隊鹿屋基地で公開された米空軍のMQ-9無人偵察機。翼幅20.1 m、長さ11 m、最大離陸重量4.8 ton、航続距離延長のER型では5.3 ton。 ER は380リットル燃料タンクを翼下に取付けるので離陸重量は5.3 kgに増え、滞空時間は37時間になる。

図2:(海上保安庁)海上自衛隊八戸航空基地に配備中の海上保安庁「MQ-9B シー・ガーデイアン」。「MQ-9A」に比べ大型になり翼幅24 m、長さ11.8 m、翼端にはウイングレット、センサーなど各種装備も一段と充実している。

図3:(Mono Magazine web)MQ-9Bシー・ガーデイアンの地上操縦装置(GCS)、パイロットとセンサー・オペレーターの2名でコントロールする。

  • 「xMG-109トマホーク/Tomahawk」巡航ミサイルの導入は1年前倒し

敵のレーダー、対空ミサイル、対艦ミサイルの射程外の遠方から攻撃できる「スタンド・オフ・ミサイル/Stand-off Missile」の早期整備は、厳しい安全保障環境のためできるだけ早める必要がある。後述する国産の「12式対地対艦ミサイル能力改善型」の早期取得を検討中だが、その補完として米海軍が運用する巡航ミサイル「xMG-109トマホーク/Tomahawk」の導入を早めるよう米側と折衝をしてきた。これまでの予定では2026年度-2027年度に「ブロックV」を400発導入となっていたのを、半数を「ブロックIV」に変更、2025年度からの導入に改め、前倒しして導入することにした。導入促進の「ブロックIV」は全て海自護衛艦に装備、侵攻抑止力の向上に役立てる。

「ブロック(Block) IV」と「ブロック(Block) V」はいずれもスタンド・オフ」防衛能力として十分な性能があり、発射システムも共通である。

「xMG-109トマホークBlock IV」:

米海軍では「TACTOM /タクテイカル(Tactical)トマホーク」と呼ばれ、2004年から配備が始まった。「Block IV」の価格は、製造コストの低減で「Block III」の半分になり、2004年から2015年まで生産された。4,000発以上が調達されたが、10 %は実戦に投入・あるいは試験で使ったので、現在の配備数は3,600発程度である。

「Block IV」では「双方向UHF SATCOMデータ・リンク」が搭載されたので、発射母体から衛星リンク経由で、発射後でも素早く目標を変更したり、途中で待機飛行をするなどの、指示できるようになった。

「Block IV」は、弾頭は「Block III」と同じ(炸薬454 kg)だが、構造の軽量化で燃料搭載量が増え、射程は1,000マイル+/1,600 km+、発射準備に要する時間(目標の選定、飛行経路の指定などのソフト搭載に要する時間)が1時間以内になり、実戦での対応力が向上している。弾頭は、貫徹力の高い二重構造で、着弾すると一次爆発で大きな破口を開け、そこに炸薬弾頭が飛び込み2時爆発を起こし目標を完全に破壊する「JMEWS(Joint Multi -Effect Warhead System)の搭載が可能。陸上・海上の移動目標攻撃用に新型のパッシブ・レーダー・シーカー(passive radar seeker)で、目標が発する電波を受感、追跡する。

水上艦発射型「RGM-109 VLS」と潜水艦発射型「UGM-109」がある。

ミサイルの誘導には、「TERCOM (Terrain Contour Matching)/地形照合システム」、「DSMAC (Digital Scene Matching Area Correlator)/デジタル映像照合システム」、それに「INS (慣性航法システム)」および「GPS(全地球測位システム)」の4つのシステムを使っている。

「xMG-109トマホークBlock V」:

2020年から「トマホーク」のさらなる近代化を開始、保管期限(recertification /使用のための再認証を必要とする期間)を現在の15年から30年に延長する新たな「Block V」シリーズの開発が開始された。保管期限に達すると全ての装備品は検査・試験する規定なので、これは大きな改善になる。射程はBlock IVより多少延びる。Block Vの単価は200万ドル(2億8000万円)。

「Block V」は次のモデルで構成される。

Block V:Block IV / TACTOMの航法・衛星通信システムを改良、精度が一層向上している。

  1. Block Va:洋上を航行する移動目標・艦艇を攻撃する。「海洋打撃トマホーク」・「MST=Maritime Strike Tomahawk」と呼ばれ、最新の終末誘導用のシーカーで敵艦艇を識別、精密攻撃ができる。
  2. Block Vb:高強度の炸薬を搭載し、厳重に防護された地上目標を攻撃・破壊できる。

Block VaとVbに分かれているが、両者はほとんど同じで搭載する炸薬の違いだけで、実質的には「Block Va」/「MST」は対地・対艦両用の巡航ミサイルと云って良い。

図4:(Raytheon Missiles & Defense) トマホーク巡航ミサイル、1983年配備開始、改良を続け現在はBlock Vの生産が始まっている。長さ5.67 m、直径52 cm、円筒形で折畳式主翼・翼幅2.67 mの基本は変わらない。重量は1.5 ton位。エンジンはWilliams製ターボファン、推力は順次アップされ700 lbs以上。巡航速度はマッハ0.8、高度30~50 mで飛行し、射程は1,000 mile/1,600 km+だが明らかにされていない。

図5:(US Navy)MG-109トマホークの概要。

  • 12式地対艦ミサイル

「12式地対艦ミサイル(12SSM)」は、陸上自衛隊が装備するシステムで、「88式地対艦誘導弾」の後継として2012年から配備が始まった。これまでに陸自西部方面隊の熊本県健軍駐屯地・第5地対艦ミサイル連隊を中心に配備されている。第5ミサイル連隊配下には4個中隊があり、第301中隊(瀬戸内駐屯地)、第302中隊(宮古島)、第303中隊(石垣島)、第304中隊(建軍駐屯地)、で構成されている。

一個ミサイル中隊は;―

捜索標定レーダー搭載車2両、中継装置搭載車1両、指揮統制車両1両、発射機車両4両(各車ミサイル6発を搭載)、弾薬運搬車両4両、等で編成される。

12式地対艦ミサイル/12SSM / SSM-1改は、空自F-2 戦闘機に搭載する「80式/ASM-1]」を地上発射型に改良した対艦ミサイルである。

「88式」の誘導は、予め目標艦の位置データを入力、発射後は慣性誘導(INS)で目標に接近、終末航程で搭載レーダーから電波を照射・着弾する、アクテイブ・レーダー・ホーミング方式(ARH)で着弾する。これに対し後継の「12式/SSM-1(改)」では、中間誘導に[GPS誘導]を追加、発射後目標艦が移動してもGPSでコースを修正できるので命中精度が向上している。さらに、目標更新能力、識別機能、地形追随機能が改良され、ブースターが推力偏向ノズル付きとなり垂直発射が可能、88式では難しい周囲が山岳などに閉ざされた地形からの発射が可能となり、安全性が向上した。

12式地対艦ミサイル/ SSM-1(改)は、全長5 m、直径35 cm、重さ700 kg、推定射程距離は200 km。動力は、ターボジェット(巡航時)+ロケット・ブースター、誘導は、巡航時/INS, GPS、終末航程/ARH方式である。

海自用「17式艦対艦ミサイル/ SSM-2」を原型にして、2017年から陸自用「12式地対艦ミサイル(改)」と海自向け「哨戒機用新空対艦ミサイル」が開発されている。

改修内容は、両者とも飛翔演算装置が新しくなり、「12式(改)」では慣性航法装置(INS)、艦船情報受信部およびジェットエンジンが新型に変更され、「哨戒機用」では誘導弾・航空機間のコネクタ、エンジンスターター、などが追加されている。

図6:(防衛省資料を基に作成)陸自の「12式地対艦ミサイル/ SSM-1(改)」を原型に改良した「17式艦対艦ミサイル/ SSM-2」。そしてこの「17式艦対艦ミサイル」を基にして陸自用「12式地対艦ミサイル(改)」と「哨戒機用 新空対艦ミサイル」が開発されてた。

図7:(防衛省資料を基に作成)海自の「P-3C」および「P-1」哨戒機に搭載する新しい「空対艦ミサイル」である。「17式艦対艦ミサイル/ SSM-2 」をベースが基本、空中発射型なので「17式」にあるブースターはない。

図8:(防衛省)防衛省資料に加筆した図。国産「対艦ミサイル」の始まりは1980年空自「80式・ASM-1」。以来43年、中国ロシアの軍事圧力が高まると共に開発が加速され、現在では「12式能力向上型」の開発が急がれている。

  • 「12式ミサイル能力向上型」

「12式ミサイル能力向上型」(射程1,000 km以上)は、2021年度(令和3年)に地発型(地上発射型)の試作が始まり、2022年度(令和4年)には艦発型(艦上発射型)および空発型(空中発射型)の試作が開始されている。予定では地発型の試作、1発目の発射試験が2025年度末、量産開始がその1~2年後となっていた。木原防衛大臣は、今回の記者会見で、スタンドオフ能力に優れた[12式ミサイル能力向上型]のうち「地発型」の完成を急ぎ2025年(令和7年)の実用化を目指す、と述べた。

従来型の12式ミサイルは普通の円筒形だが「能力向上型」は、大型化され形状もステルス性を高めレーダー反射面積を減らす姿になり、射程距離は1,000 km以上(1,500 km程度?)に延伸し、衛星データ・リンクで通信機能を高度化、UTDC (up-to-date command)化をする。

防衛省では本件を「島嶼防衛用高速滑空弾(能力向上型)の開発」として2023年6月1日に三菱重工業と契約を締結した。

また、翌6月2日にはこれを補完するためとして「島嶼防衛用新対艦誘導弾の要素技術の研究」として川崎重工と契約を締結した。

図9:(防衛省 令和5年度概算要求の概要)「12式地対艦ミサイル能力向上型(地発型)」として掲載されたイメージ/風洞実験模型の写真。地発型は早期部隊配備のため量産を開始、と記されている。

図10:(Tokyo D&A Review) 川崎重工業、小型ターボファン「KJ300」を幕張メッセで開かれたDESI Japan 2023(防衛・セキュリテイ総合エベント)に出品・展示した。「KJ300」は長さ95 cm、外径35 cm、重さ90 kg、推力365 kg。「12式地対艦ミサイル能力向上型」のエンジンとして搭載される見込み。

終わりに

2023年10月5日、ワシントンで行われた木原防衛大臣とオーステイン米国防長官の会談後に発表された木原防衛相の会見要旨を調べてみた。我が国周辺の軍事情勢は、ますます緊迫の度合いを深めている。これに対処する体制作りは、一刻の猶予も許さない状況になっている。

海自へのMQ-9リーパー改良型MQ-9Bの導入促進で「ISR」体制の強化、MQ-109トマホークBlock IVの前倒し導入で反撃能力の向上、さらに陸自各方面隊への12式地対艦ミサイル能力向上型の配備促進で中露北朝鮮の侵攻を思いとどまらせることが、我国国民の生命財産暮らしを守る手段、と言って良い。

―以上―

本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。

  • 防衛省2023年10月5日「木原防衛大臣、日米防衛相会談後の記者会見発表」
  • 防衛省 令和5年度の概算要求
  • Air Force official website “MQ-9 Reaper”
  • The Diplomat October 11, 2023 “US Air Force will Relocate MQ-9 Reaper Squadron to Okinawa” by Takahashi Kosuke
  • Mono Magazine 2023-08-07 “海自が無人機導入へ、MQ-9Bシーガーデイアン 菊池雅之のミリタリーレポート“
  • US Navy Public Intelligence July 4, 2011 “U.S. Navy Tomahawk Cruise Missile Weapon System Technical Manual”
  • Navy , updated 27, Sep, 2021 “Tomahawk Cruise Missile
  • Tokyo D &A Review 2023-3-20 “川崎重工業、小型ターボファン・エンジン「KJ300」をDSEI JAPAN 2023に出展」
  • TokyoExpress 2021-01-10 “12式地対艦誘導弾(改)の光景、長射程の「12式地対艦誘導弾能力向上型」の開発が決定“
  • TokyoExpress 2022-08-15 “12式地対艦誘導弾(能力向上型)開発の現況“
  • TokyoExpress 2022-11-21 “反撃力のシンボルBMG-109トマホーク巡航ミサイル“
  • TokyoExpress 2023-02-22 “政府、トマホーク巡航ミサイルの大量発注を決定”