4月中旬、ロシア軍機と中国軍機の活動が著しく活発化


2018-04-23(平成30年)  松尾芳郎

2018-04-26 改定(冒頭4行を追加)

統合幕僚監部が4月13日から20日に掛けて発表した6件のニュースによると、この1週間我国周辺におけるロシア軍機と中国軍機の活動が著しく活発になった。4月12日頃海南島三亜沖で行われた中国海軍の艦艇48隻、航空機76機が参加する大演習が行われたが、一連の中国軍機の活動はこれを補完し、併せて台湾、日本を威圧する目的で行われたもの、と軍事筋では推測している。ロシア軍機は直接中国軍機の行動に参加したわけではないが、中国軍の動きに応えて我国の対応を牽制する目的があったものと考えられる。

我国の安全保障を揺るがす大問題であるにも関わらず、例によって大半のメデイアはこの報道を黙殺した。代わりに反安倍の某紙が仕組んだと噂される「色仕掛け(美人局つつもたせと云う) 」まがいの手法で高官を失脚させたニュースで持ちきりだ。

統幕発表の記事を次に記す。機種についてはChina Military Com.の記事を基に修正してある。

  1. 4月13日 ロシア機の日本海における飛行について

[IL-38哨戒機1機]

  1. 4月17日 ロシア機の日本海における飛行について

[TU-142哨戒機1機]

  1. 4月18日 推定中国機の東シナ海における飛行について

[BZK-005無人機1機]

  1. 4月18日 中国機の東シナ海及び太平洋における飛行について

[H-6K爆撃機2機]

  1. 4月19日 中国機の東シナ海及び太平洋における飛行について

[H-6K爆撃機2機、Y-8電子戦機1機、TU-154情報収集機1 機、

SU-30戦闘機1機、J-11戦闘機1機]

  1. 4月20日 中国機の東シナ海及び太平洋における飛行について

[H-6K爆撃機2機]

04-13 IL-38哨戒機

図1:(統合幕僚監部)イリューシンIL-18型4発ターボプロップ旅客機を対潜哨戒機に改装したのがIL-38。1967年初飛行、40機近くがロシア海軍で使われている。IL-18の胴体を4m伸ばし、主翼を前方に移し、尾部には潜水艦探知用のMAD(磁気探知装置)を装備。前部胴体の下のドームはレーダー。胴体前後の兵装庫には対潜魚雷などを収納する。これまで2017年4月、8月に日本海沿岸に飛来している。

04-17 TU-142哨戒機

図2:(統合幕僚監部)ロシア空軍の戦略爆撃機TU-95型機を対潜哨戒機に改造したのがTU-142。新型のTU-142MZは北極海、太平洋で活動するロシア戦略原潜の位置を特定できる能力を持つ。ロシア海軍では27機を運用している。

軸馬力14,800hpのクズネツオフNK-12MPターボプロップを4基、最大離陸重量185㌧、最高速度925km/hr、航続距離は6,500km。

04-13、-17 ロシア機]

図3:(統合幕僚監部)4月13日/IL-38哨戒機及び4月17日/TU-142哨戒機の我国日本海沿岸における飛行経路。

無人機BZK-005

図4:(統合幕僚監部)BKZ-005無人機は北京大学航空研究所とハルビン航空機工業が共同開発した高高度、長距離飛行可能な無人偵察機で中国海軍が使用中。胴体前部には衛星通信機材、下部には電子光学センサー(EO sensor)があり、巡航高度は8,000 m、重量は1,200 kg、速度170 km/hr、連続40時間飛行が可能。

04-18 H-6K 2機

図5:(統合幕僚監部)H-6はロシアTu-16バジャー爆撃機を1959年から西安航空機でライセンス生産した機体。以来改良が重ねられ現在のH-6K型となり巡航ミサイル搭載機として配備中。長距離巡航ミサイルを6基搭載できる。乗員3名、全長35m、翼幅34.4m、最大離陸重量76 ton。複合材使用の率を高め、エンジンは国産WP-8型からロシア製のD-30KP-2型に換装、推力を30 %アップ、燃費は20 %向上した。2007年1月に初飛行、2011年5月から配備。巡航速度790km/hr、戦闘行動半径3,500 km、兵装搭載量は9トン。搭載の巡航ミサイルCJ-10Kは射程2,000 km、米国のトマホークに匹敵するもので、我国領空に接近せずに公海上どこからでも目標を攻撃できる。

04-19 H-6K爆撃機2機

図6:(統合幕僚監部)説明は図5を参照。

0419 Y-8電子戦機

図7:(統合幕僚監部)ロシアの貨物輸送機An-12Bを基本にしY-8輸送機として開発した。Y-8は1981年から生産が始まり100機弱が作られた。これをベースに早期警戒機、洋上哨戒機、電子戦機などの多くの派生型が作られた。エンジンはWJ-6ターボプロップ4,250 hp x 4基、航続距離5,600 km。本機は前部胴体側面に電子戦装備を収めた膨らみがあるので「高新四号」と呼ぶ機体か。

04-19 TU-154情報収集機

図8:(統合幕僚監部)Tu-154は、今も生産中のロシアのツポレフ(Tupolev)製3発旅客機で、1,000機以上が生産された。1972年から使われており、以来改良が続けられ多数の派生型が生まれた。中国空軍は民間用のTu-154Mに大型の合成開口レーダー(SAR)を取付け電子偵察機(ELINT)に改造、Tu-154MD型として使っている。Tu-154Mは、最大離陸重量は100 ton、航続距離6,600 km、エンジンはD-30KUターボファン、推力23,000 lbs (100 kN)を3基。中国空軍司令部直轄部隊の第34輸送機師団(北京南苑基地)に配備中、6機がSAR付きELINT仕様である。

04-20 H-6K爆撃機

図9:(統合幕僚監部)説明は図5を参照。

SU-30戦闘機

図10:(統合幕僚監部)ロシア製Su-30戦闘機。双発、複座、高機動性で、米空軍のF-15Eに匹敵する制空戦闘機。中国向けはSu-30MKKとSu-30MK2。中国空軍ではSu-30MKKを73機、中国海軍はSu-30MK2を24機それぞれ使用中。

J-11戦闘機

図11:(統合幕僚監部)1995年末ロシアとSU-27SK戦闘機のライセンス生産契約を結び瀋陽航空機で生産、名称を「J-11(殲撃11)」とした。2004年からは改良型のJ-11Bが生産されている。J-11Bは兵装搭載量が8 tonになり、対地、対艦攻撃能力が強化されている。防衛白書平成25年版によると中国はSu-27SKのライセンス生産を95機で打ち切り、J-11Bを136機製造したとされる。

18-04 宮古海峡付近

図12:(統合幕僚監部、China Military News)4月18日から20日に掛けて宮古海峡を通過/往復した中国軍機。これだけ大量の航空機が3日間で通過したのは初めてのことである。戦闘機と無人機を除く中国軍機は、このあと台湾・フィリピン間のバシー海峡を抜け、台湾に威圧を加えて本土に立ち去った。

 

—以上—