大西洋上空でパイロット全員居眠り。機長らが英航空当局に告白


『大西洋上空でパイロット全員居眠り。機長らが英航空当局に告白』

ー今年8月、英国籍の大型機、エアバスA330型機で発生。2日間で5時間の睡眠が原因?ー

2013-09-26   ジョン・ボスニッチ(ベオグラード)

座席数325人乗りの大型旅客機(エアバスA330型機)で今年8月、大西洋上空を飛行中、機長らパイロット全員が一時、寝込んでいた事が明らかになった。英国の大衆紙『ザ・サン』が9月26日、”こちら操縦室。ただいま居眠り中”のセンセーショナルな見出しで”特ダネ”として報じた。BBC、ガァーディアン、デーリー・メールなどの有力メディアや米国の三大ネットワークも追っかけ報道した。乗員が英航空当局に文書で提出し明らかになったが、乗員は『2日間で睡眠時間は5時間だった』たいう。英国のパイロット組合は飛行を伴う連続勤務拘束時間の改正は空の安全を損ねると目下、反対運動を展開中だ。

英有力メディアの報道を総合すると、機長ら全員が飛行中、一時、居眠りしていたのは8月13日、英国に向け大西洋上空を飛行中だった英国籍の大型旅客機、エアバスA330型機(座席数325人乗り)。所属する航空会社名はCAA(英間航空局)がいっさいヒントすら与えていない。英国籍の航空会社で同型機を運航する航空会社は絞られ、デーリ・メール紙は直接、該当の航空会社へ事実の有無を確認したが、機長からはこの種の機長報告は上がっていないと否定の談話が返ってきたという。

しかし、CAAは事態の重大性に鑑み、航空関連業界に事実の報告を回覧したと言い、運航乗員が寝込んだまま飛行した機長報告の存在を認めた。それによると該当機は当時、自動操縦で飛行中。機長、副操縦士が交互に操縦席で短時間の仮眠を取る事にしていたが、いずれか一方がうたた寝から目を覚ますと片方の乗員が寝込んでいた事に気ずいたという。パイロット全員が寝たまま大型機は大西洋上空を自動操縦まかせで英国に向かっていた事になる。乗客にはショッキングな事態だった訳だが、どのくらいこうした異常が続いたかは機長報告に記載は無いという。

操縦桿を預かる乗員が睡眠に襲われると危険な飛行に繋がる具体的事例がカナダの航空当局から最近、暴かれた。問題のフライトはトロント発スイス・チューリッヒ行きカナダ航空878便(ボーイングB767-300型機)で2011年1月13日発生した。大西洋上空を夜間飛行中、うたた寝からふと目覚めた副操縦士(ファースト・オフィサー)が操縦室の風防ガラス前方に輝く金星を接近する米空軍の大型輸送機C-17『グローブマスターⅢ』と誤解。空中衝突を避けようと急降下したせいで乗客十数人が座席から投げ出され負傷する騒ぎとなった。相手機が存在しないのに目覚め直後の意識もうろうの中で操縦を誤ったという。操縦中の睡眠、恐るべしだ。

今回、操縦室で機長ら全員が一時的に寝込んだ理由は、飛行前、2日間いずれも睡眠時間が5時間と極端に少なく、疲労が影響したと見られる。英国操縦士協会(BALPA)、ロンドン・カレッジ(ULC)の調査ではパイロットの半数近くが疲労に伴う睡魔を操縦任務の際、経験しているという。欧州航空安全庁(EASA)が長時間の夜間飛行容認等、連続飛行拘束時間の改正の動きにBALPは強く反発している。今回、批判承知で操縦室での乗員の居眠りの不祥事を機長が敢えて公表した背景に世論の喚起を諮ったとの見方もあるが、長距離直行便の増加でパイロットの疲労が予想以上に深刻との現場の声も否定出来ない。パイロットの疲労が及ぼす空の安全への影響を改めて医学的見地からメスを入れても良さそうだ。