日航、エアバスの次世代広胴型機56機導入。同航空初のエアバス旅客機採用


ーボーイング社寡占の日本旅客機市場に風穴。シアトルに衝撃ー

2013-10-07  小河正義

日航がエアバスの次世代広胴型機A350型シリーズ、56機(仮発注を含む)の導入を決めた。契約総額は公表機体価格換算で約9,500億円と推定される。業界の慣行で、今回のような大規模な発注では最大5割近いディスカウントが見込まれるケースも少なくない。2019年からの就航開始に備え日航は運航、整備、営業など社内の準備を急ぐ。日航が欧州製の旅客機採用(合併前の日本エアシステムのA300型機のケースを除く)は今回が史上初。日本の民間航空機市場はボーイング社が数十年以上、寡占状態。日航がライバル機のボーイングB777-X(B777型機をベースにした先進技術導入改良型機で開発中)を袖にした訳で、シアトルのボーイング民間航空機部門に衝撃が走った。

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[日本航空が導入を決定したエアバスA350-900型機。写真提供:エアバス、日航]

日航のエアバスA350型機大量発注は同社、役員会の最終決定を経て日航、エアバスが10月7日午後、両社の社長が合同記者会見で発表した。エアバス旅客機の日本市場開拓が苦闘の連続と知る欧米の有力メディアは発表があるや至急報で世界へ発信した。発表によると契約は、既にテスト飛行が始まったエアバスA350-900型機が18機、派生型のA350-1000型機を13機ー合計31機が確定発注分。同時に25機の仮発注契約も結んだ事を明らかにした。実質、A350型機シリーズ、56機の大量発注となった。契約総額は双方とも明らかにしなかったが、業界関係者は額面通りだと9,500億円。実際はエアバスが相当な値引きしたと見られ、日航にとって価格面で有利な契約と見る向きは多い。

日本航空は同社の国内、国際線の主力機B777型機の後継機種としてA350型機シリーズを選定。ボーイングはB777型機の大規模な改修で事実上新型機と比肩出来るB777-Xシリーズで売り込みをはかったが、かなわなかった。ボーイングは次世代広胴型機としてB787型”ドリームライナー”を日航、全日空に売り込み今回の商戦も勝てるとの甘い読みがあったかもしれない。

全日空もB777型の経年機材の後継機種を検討中で、日航のA350型機採用が影響することは十分、考えられる。B787型機がリチュウム・イオン電池問題で運航停止処分を乗り切った後も、整備上のトラブルから抜け出せず、同型機を運航する航空会社の不満は収まっていない。日航の決定は主力旅客機を特定の一社に集中するリスクをB787型機のトラブルで味わった。このため危険分散で主力機種のメーカー複数化戦略が介在していると見られる。ボーイング製旅客機購入を貫いた米デルタ航空がエアバス製機材導入を先頃発表、ルフトハンザ航空は逆にエアバス中心の機材編成にボーイングの次世代広胴型機を組み合わせる決定を発表、世界の航空界を驚かせた。ボーイング、エアバスが一方的に航空会社の使用機種を牛耳る時代は音を立てて崩れだしたと言える。

それにしても一時、日本の旅客機市場の8割以上」を制圧したボーイングに取って日航がエアバス製旅客機に転換した事は販売戦略のミスと言えよう。エアバスが対日市場開拓で官民一体のセールス活動を展開していたのは周知の事実。ボーイングがどの程度キャッチしていたか。販売・営業戦略担当のエアバス、ジョン・リーヒーCOOに対抗可能な組織再編、人材登用がシアトルの緊急課題だろう。

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[契約調印後のエアバス、日航両首脳。写真提供:エアバス]