B787"ドリームライナー"開発の最高責任者、ボーイングを去る


『B787″ドリームライナー”開発の最高責任者、ボーイングを去る』                                                                                       ーシアトルで何かが起きている?ー                                                                                               2010-10-09     マーク・デブリン(米フロリダ州マイアミ)                                                                                          次世代旅客機の先陣を切った、B787『ドリームライナー』開発の最高責任者がボーイングを去る。地元有力紙『シアトル・タイムズ』でボーイング・ウォッチャーとして知られるドミニック・ゲーツ記者が署名入り記事で報じた。マイケル・ベア副社長(57)が渦中の人物。社内規定では定年迄、十分すぎる時間がある。ライバル、エアバスに対抗する新機種開発で技術分野の不可欠の人材との高い評価を得ている。一時、機体の運航停止に発展したリチューム・イオン電池問題で担当のマイク・シネット上級部長が先頃、別のポストへ転出したばかりだ。民間航空機のメッカ、シアトルの技術陣で何かが起きているのか?航空界は次の動きを固唾をのんで見守っている。                          bair_n

[ボーイング社を去る、マイケル・ベア民間航空機副社長。写真:ボーイング重役略歴より]

シアトル・タイムズ(電子版)10月9日付けによるとマイケル・ベア副社長の退任について民間航空機部門のレイモンド・コナーCEO兼社長が社内向けのEメールで認めたという。同社長はベア副社長の卓越した才能を讃えたが、将来の転出先については言及していない。ボーイング社は傑出した旅客機を開発したエンジニアは社内で長く遇する伝統がある。ジャンボ・ジェット機の生みの親、ジョー・サター氏は現在もコンサルタントとして同社内にオフィスが用意してある。B727 、B737クラシック型機のチーフ・デザイナーだったジャック・スタイナー氏(故人)も副社長退任後、長く社内で遇されたという。 ベア副社長はボーイングの今後の戦略機材、B787シリーズの派生型機、B737型機の先進技術採用のMAXシリーズ開発でその才能は余人を持って替えがたい存在だ。第一、年齢的にも技術者として油が乗り切った世代だ。今回の退任の背景は民間航空機部門の複雑な勢力争いも絡んでいると見なす市場アナリストもいる。親会社のジェームス・マクナニーCEO兼会長ー民間航空機部門のレイモンド・コナーCEO兼社長のコンビに飽き足らぬ声がシアトルの技術陣からもれ聞こえる。B787型機トラブルでの収拾過程で現経営陣の指導力不足が一部大株主から噴き出した事からも伺われる。 そうしたせいかB787型機のリチューム・イオン電池問題で技術部門の責任者だったマイク・シネット上級部長が今年夏ひっそりと転出した。手際の悪さで”詰め腹”を切らされたとの情報も流れている。しかし、ベア副社長の退任はシネット上級部長更迭の比でない。A380型機でジャンボジェット機をしとめ、今またA350XWBでライバルのB787、B777-X型機を激しく追うエアバスに対抗するため、フォード復活の立て役者となったアラン・ムラリー、フォードCEO兼会長のボーイングへの復活を望む声は無視出来ない。ムラリーの愛弟子、ベア副社長の退任決定でこうした動きに先手を打ったのだろうか。 マイケル・ベア副社長はシアトル州立大学で物理学等を学んだ後、1979年ボーイング社に入社。2003年開発が正式決定したB787プロジェクトで開発の最高責任者に任命された。2007年7月、初号機のロール・アウト式典をシアトル郊外のエバレット工場で開催、スター技術者としてマスコミでもてはやされた。期待に反し航空会社への引き渡しは予定の3年遅れとなりボーイングの評判は揺らいだ。