"秘密警察の父"、ジェルジンスキーの銅像元通りで復活


『”秘密警察の”、ジェルジンスキーの銅像元通りで復活』

ーモスクワ中心部で市民睥睨(へいげい)。シロビキ国家鮮明にー

2013-10-12   ジョン・ボスニッチ(ベオグラード)

ソ連崩壊で一旦撤去された”秘密警察の父”、フェリックス・ジェルジンスキーの銅像が元通りにモスクワ中心部に復活する。泣く子も黙るKGB(国家保安委員会)本部をそっくり引き継いだFSB(連邦保安局)前の広場に 二十数年ぶりに姿を現すという。モスクワ市の議会関係者が明らかにしたとノーボスチ通信が10月12日、報じた。再建の予算措置も取られた言う。プーチン大統領は”クレムリンの主”に返り咲くや、着々、警察・軍部中心の”シロビキ体制”を一層、強化している。アンチ社会主義の市民が、たたき壊したはずのジェルジンスキー銅像の復活は、プーチン大統領の強権政治、推進の行方を暗示しているようだ。

20080916-KGB前ジェルジンスキー像

[旧ソ連時代、KGB本部前のルビヤンカ広場にそそり立つジェルジンスキーの銅像]

旧ソ連共産党の”盾”と言われた『KGB(国家保安委員会)』の基礎は、レーニンの側近と知られるポーランド系ロシア人、フェリックス・ジェルジンスキーが築いた。その功績で巨大銅像(高さ5・75m、重量約11㌧)がフルシチョフ時代の1958年、モスクワ中心部ルビヤンカ広場に面するKGB本部ビル前に建設された。モスクワ市民はKGBの影に怯え、記念写真すら取らず銅像前を立ち去ったという。『銅像は夜間はKGB本部の方に向く』と何時、裏切るか分からない秘密警察の怖さを喝破したアネクドートがはやったほどだ。

1991年8月20日、当時のヤナーエフ副大統領を首謀者とする秘密警察・軍部強硬派がクデータを企て失敗した日、モスクワ市民はルビヤンカ広場に集結、ジェルジンスキーの銅像を引き倒した。銅像は何処かへ持ち去られたが、ノーボスチ通信によるとモスクワ市内の保管所で十数年近く秘匿されていたという。

合わせて8体の歴史的に由緒ある像が今回、当時のまま復元される計画。既に費用として160万ドルが計上されているという。

ルビヤンカ広場には銅像の台座そのまま残っており、工事はさほど手間、暇がかかりそうにない。ただジェルジンスキー銅像の再建工事着工時期はは明らかではないが、元通りに復元する基本方針には変更はなさそう。

『今回の決定の背後に、プーチン大統領の意思が働いている』とは反体制派に通じるジャーナリスト。米国が進めたシリア空爆の動きを国際世論をバックに切り返し、このところ自らの路線に自信満々だ。レニングラード大卒後、KGBに直行し海外工作員の経歴を持つプーチン大統領はスパイ人生の呪縛から簡単に抜け出せそうにない。しかしジェルジンスキー銅像の復元か吉と出る凶と出るかはほどなく分かるだろう。