『4,5年以内に民間航空機メーカー、No1奪還。エアバス、ボーイングに挑戦状』


『4,5年以内に民間航空機メーカー、No1奪還。エアバス、ボーイングに挑戦状』

ー”ボーイング寡占の日本市場”で、A350型機売り込み成功で勢い。次世代B777-Xシリーズ開発決定での反撃に注目ー

2013-10-16    ジョン・ボスニッチ(ベオグラード)

『4,5年以内に民間航空機メーカー、No1の地位を奪還』ーエアバスのファブリス・ブレジュエCEO兼社長がボーイングに挑戦状を突きつけた。独の有力メディアが報じた。ボーイング製旅客機が寡占していた日本市場で、次世代広胴型機、A350XWB型機大規模売り込み成功が同社を勢いずけている。自信の背景はA350XWB型が先行していたライバルのB787″ドリームライナー”を完全に射程内に捉え、加えて次世代狭胴型機売り込み競争でエアバスA320neoシリーズが、ボーイングB737MAXシリーズに 現時点で、6対4の大差をつけた事だ。守勢に回ったボーイングはドル箱機体、B777型機で革新技術採用の次世代型への飛躍を決め来月、有力航空会社を取り込み、反撃に出る。”ボーイングvs.エアバス戦争”は世界市場制圧の主導権をめぐり火がつきそうだ。

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[民間航空機No1の地位奪還を宣言したエアバスCEO兼社長、ファブリス・ブレジュエ。写真提供:エアバス]

民間航空機メーカーの実力の指標は年間引き渡し機体数と受注残機体数、それに年間、新規発注機体数。このうち受注残と新規発機数は内外経済情勢の変化で変動が大きい。そこで確実な実績に繋がる年間機体引き渡し数が最も信頼性が高い実力判定指標と言える。ボーイングは2012年、宿敵エアバスに奪われたままの年間引き渡し機数でトップに立った。601機とエアバスの580機を押さえ込んだ。2002年以来、失った民間航空機メーカーNo1の地位を10年ぶりに奪還。米国メディアは半ばお祭り騒ぎのはしゃぎようでボーイングの勝利を祝福した。鍔迫り合いを制したのは、ボーイングが、21世紀の戦略機体と位置ずけた、B787型機の本格生産体制の確立。『ボーイングの天下はこれで2020年ごろまで盤石』(有力航空機リース会社)と見られた。

ところが、エアバスのファブリス・ブレジュエCEO兼社長はこのほど『エアバスは4~5年後、2017~18年に民間航空機メーカー、No1の地位を奪還する』と宣言した。自信の背景は次世代狭胴型機、エアバスA320neoへの航空各社からの人気だと言う。9月下旬段階で『同型機は仮発注、合意メモを含め3,570機(確定発注、1567機)。一方、ライバルのボーイングB737MAX型機は2,440機(同、834機)』。エアバスが6対4で圧勝だ。次世代広胴型機ではボーイングB787型機の受注機数,979機に対しライバルのエアバスA350XWB型機、750機。両者で一時の400機以上の差が一気に縮小した。3年以上先行していたB787型機の輝きが失速しだしたと見る向きもある。エアバスのボーイング打倒は現実目標になってきた。『世界最大の旅客機A380型機も500~620機の需要が見込まれ、B747型機の最新シリーズ-8型機のニーズが160機に留まる』(欧州航空産業界)と推定され、エアバスは完全にボーイングを攻め立てる立場だと言う。ブレジュエ発言は決して”大風呂敷”ではないように見える。

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[ジャンボ機を蹴落とし世界最大の旅客機となったエアバスA380型機。写真提供:エアバス]

ボーイングへにわかに”逆風”が吹き出したのは、運航開始直後からB787型機を襲ったトラブル発生の連続。ついには2013年1月、リチューム・イオン電池発火連続事故で改修完了迄、約4ヶ月弱運航停止に追い込まれた。想定外の事態で、航空会社のB787型機のイメージは『夢の機体から悪夢の旅客機』(欧米の有力メディア)と評判を落とした。

こうした厳しい環境の中で、日航、ルフトハンザ、エミレーツ航空等が次世代広胴型旅客機の後継機種選定時期と重なった。ボーイングはB787型機の胴体ストレッチ型派生機種、-9、−10プロジェクトの実行、B777型機の先進技術採用の次世代型、-Xシリーズの投入決断でエアバスとの売り込み競争で優位と見なす業界関係者は多かった。

しかし新鋭機体の採用で航空会社の基本姿勢に構造変化が起きだしていた。特定航空機メーカーの機体に依存するリスクの大きさを、航空各社はB787型機のトラブルで最大の教訓にした。整備費の節約、乗員養成の単純化で使用する機体メーカーを集約する『ボーイング・ファミリー』、『エアバス・ファミリー』といった流れにストップがかかったと言っていい。

日本航空が10月上旬、エアバスA350XWB型機、56機(公表機体価格換算、9,500億円)の発注で航空界に衝撃波が走った。ボーイングが四半世紀以上、寡占下に置いた日本のマーケットで後発のエアバスが完勝するとは想像すらできなかっと言う。三菱、川崎、富士の日本の機体メーカー3社がボーイングの世界製造ネットワークでがっちり組み込まれ、雇用創出、ハイテク技術トランスファーで日本の産業界の得たメリットは計り知れない。

ボーイングは日航への売り込み敗北で戦線立て直しを急いでいる。エアバスの勢いを封じこめるためB777型機次世代シリーズの立ち上げを急ぎ次世代広胴型機の市場でイニシャチブを握るしか無い。B777型機の最大のユーザー、エミレーツ航空や大手有力リース会社と組み11月中に機体の開発計画の詳細を公表する。ボーング機が圧倒するアジア有数のエアライン、全日空への働きかけに一段と力が入るだろう。ボーイングvs.エアバス戦争が地球規模で勃発しそうだ。