中国空軍機が公海上で我が自衛隊機に異常接近し威嚇


2014-06-12 松尾芳郎

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図:(防衛省)6月11日昼前、東シナ海上空で我が空自機YS-11EB、同海自機OP-3Cに異常接近した中国空軍戦闘機Su-27、機番は40747。本機は輸出用のSu-27SK型と見られ、旧ソビエトから複座型を含め48機を輸入したものの1つ。これを1995年からライセンス契約で「殲-11(J-11)」として96機生産した。その後の調達を入れ中国空軍のSu-27系列機は172機と云われている。

翼端に対空ミサイルが装備されている。

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図:(防衛省)5月24日、東シナ海上空で我が空自機および海自機に異常接近した中国空軍戦闘機Su-27、機番は40547で6月11日の機体とは異なる。

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図:我が空自機YS-11EBと海自機OP-3Cに対し、中国空軍機Su-27が至近距離に接近、威嚇飛行を行った場所は、沖縄本島西北西の日本の防空識別圏内の公海上。沖縄本島から400kmほど離れた空域と推定される。

 

防衛省は、昨日(6月11日)昼前、東シナ海の公海上空で航空自衛隊の電子情報蒐集機YS-11EBと海上自衛隊の画像情報蒐集機OP-3Cが、中国空軍の戦闘機Su-27 の2機による異常な接近を受けた、と発表した。これは去る5月24日に起きた事件に続くもの。

最も接近した距離はOP-3Cに45m、YS-11EBには30mで、前回とほぼ同じ。

小野寺防衛相は、前回の件を含め中国機の一方的な行動は、偶発的な事件に繋がりかねない大変危険な飛行と断じ、外務省を通して中国側に厳重な抗議を行った。

今回異常接近した戦闘機は機番40747で前回の40547とは異なる機体。

当時、我が自衛隊機OP-3CとYS-11EBは、東シナ海上の我国防空識別圏内の公海上で通常の警戒監視飛行を行っていた。この空域は、最近中国が一方的に自国の防空識別圏と主張した部分とも重なっている。

度重なる異常接近の背景には、中国側の主張する防空識別圏の既成事実化を図る狙いがある。事実、中国空軍の馬暁天司令官は先ごろ「空軍の任務を伝統的な国土防空から、海洋権益の保護に踏み出す」と明言、「海上での核心的戦力となる空軍力を作る」と強調した。

我国の一部のメデイアは、前回の事件も含め「中国空軍の指揮統率の不備」とか「一部の跳ね上がりパイロットの仕業ではないか」と云い、「中央政府の意思ではなさそう、お互い話し合い丸く収めるべき」などと甘い意見を述べている。

政府はこのような一部の親中派の迷い言に惑わされることなく、事実を直視し、我が国土、住民の安全確保にこれ迄以上力を注ぐべきだと考える。

OP-3C画像情報蒐集機

図:(防衛省)海自OP-3C画像情報収集機。P-3C対潜哨戒機を改造した機種で4機を運用中。尾部のMADブームを卸し、前部下面にバルジが増設されている。側方画像監視レーダー(SLAE)または長距離監視センサー(LOROP)を装備。岩国航空基地第31航空群第81航空隊に配備されている。

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図:(防衛省)航空自衛隊YS-11EB電子戦支援機(電子情報蒐集機とも云う)。民間用YS-11を改修し電子測定・情報蒐集機とした機体で、航空機搭載電子機器や地上電子機器に関する各種情報の収集を担当する。4機あり入間基地の電子飛行測定隊に配備されている。

 

防衛省が6月11日夕刻、本件に関する小野寺防衛大臣の記者会見概要を発表した、質疑応答を含んでいるので冗長だが参考迄に記載する。

 

大臣臨時会見概要 平成26年6月11日(17:54〜18:03)

 

1      発表事項

今日、日豪の防衛相会談ということで、ジョンストン・オーストラリア国防大臣と、この1ヶ月あまりで3度目の2国間会談を行いました。両国は今後とも様々な共同訓練、また防衛装備の協力について関係を深め、この東アジアを含めた世界の平和に貢献するという、そういうことについては合意を得たということだと思います。また、その会議の中で私の方から触れさせていただきましたが、本日11時頃から12時頃にかけて、東シナ海の公海上におきまして、通常の警戒監視活動を行っておりました海上自衛隊及び航空自衛隊の航空機に対して、中国の戦闘機Su-27による異常な接近事案が発生いたしました。これは先月24日に引き続きの事案ということになります。前回の事案を含む中国軍機の一方的なこの行動というのは、これは偶発的な事故に繋がりかねない大変危険な飛行であります。決してあってはならないことと認識をしております。今回の事案を通じまして、政府として、改めて外交ルートを通じて、中国側に厳重な抗議を行い、そして本件について公表をさせていただきました。防衛省・自衛隊としては、引き続き今後とも日本の領土・領海・領空を断固として守っていくという考え方の下、警戒監視を引き続き続けていきたいと思っています。また、今回の事案を含めて、やはり日中防衛当局間の海上連絡メカニズムの構築、これは重要だと思っています。いずれにしても、このような繰り返しの危険な行為、これは決してあってはならないことだと厳重に抗議をしたいと思っています。

 

2質疑応答

Q:中国機の異常接近事案ですけれども、前回は日本の防空識別圏(ADIZ)と中国側の「防空識別区」の丁度重なる部分での発生で、30メートル、50メートルの距離でしたけれども、今回どういった場所だったのかという点と、距離との点で具体的にお話しできる点があったらお願いできますか。

A:今回も東シナ海の公海上であります。そして私どもが通常警戒監視を行っている場所ということであります。前回と同じように航空自衛隊及び海上自衛隊の警戒監視の任務にあたっている航空機に対して、中国の戦闘機が30メートル、45メートルといった大変近接するような危険な飛行がありました。また飛行の仕方についても、やはり日本側のパイロットが危険を感じるような、そういう大変荒い、危険な飛行の状況だったということは報告を受けています。

Q:接近事案があった空域としては、前回と同じような場所なのでしょうか。

A:私どもとしては、通常警戒監視を行っている公海上でありますので、前回と同じような状況の中で発生したことだと思っています。

Q:荒い危険な飛行というのは、近接した距離以外にまた何か特殊な事があったのでしょうか。

A:実際操縦していたパイロットの感覚として大変危険だという印象を持つような飛行の状況だったということだと思います。

Q:当該戦闘機なのですけれども、前回と同じものという認識ですか。

A:機種は同じ機種だと思います。具体的な内容については、これから更に詳細を検討することになると思います。

Q:この件、冒頭でも大臣お話になっていましたけれども、ジョンストン国防大臣の方からは何かお言葉はありましたか。

A:これは、先ほど冒頭で初めてオーストラリア側にお話をさせていただきましたので、ジョンストン国防大臣の方からは個人的な考えとして、「やはりこのような危険な行為、挑発的な行為については、これは個人的には非難する必要がある」というようなことをお話しされました。ただオーストラリアとしては今後「2+2」(日豪外務・防衛閣僚協議)が終わった後、これは丁度ビショップ外務大臣も来られておりますので、外務大臣と相談をして、オーストラリア側としての考え方については、そこで正式に話が出来るようにしたいことでありますが、個人的にはやはり、このような危険な一方的な飛行が事実であれば非難されるべきだというお話をされておりました。

Q:大臣これは、30メートルと40メートル。

A:30メートルと45メートルです。

Q:これは2度あったということ。

A:正確には、海上自衛隊のOP-3Cとの間で45メートル。航空自衛隊のYS-11EBとの間で30メートルの飛行があったということであります。

Q:いずれも同じスホーイ戦闘機。

A:これは、当然複数で行動するのが通常の航行になります、中国側の戦闘機。同じスホーイということでありますが、機種が同じかどうかはわかりません。いわゆる航空機の型は同じSu-27ということになります。

Q:先月24日に起きて厳重に抗議して、シャングリラでもかなり発信をされて国際世論にも訴えられたのですけども、にもかかわらずまた今回起きたということに対して、中国側の意図ですとか、日本側も抗議したということですが、どのような思いで今いらっしゃるのですか。

A:このような危険な行動を許すということ。これはやはり中国の軍当局もしっかりしたモラルを持っていただきたいということに尽きると思います。おそらくこの事案について、世界の空軍の関係者が感じることは、通常は、このような危険な飛行は行わないということに尽きるのだと思います。通常ではない今の中国の軍当局の状況ではないかと思います。

Q:この日豪「2+2」のタイミングでこの事案が起きたことに対してどのように思われますか。

A:これは、何か外交的な意図があるというふうにはあまり感じられないと思います。とにかく軍当局があれほどシャングリラで、国際社会の中で様々な発言を中国側にされた中で、またこのような事を起こすということ、これは本当に中国側には重くこのような事実を受止めていただきたいと思っています。

Q:中国側に抗議をしたということですが、今回軍事演習が行われていないと思うのですけれども、中国側はそれに対して日本側の抗議に対する反応はあったのでしょうか。

A:これは夕方行ったばかりであります。具体的には外務省から外交ルートを通じての抗議であります。この後の「2+2」の中でもこのような話が出ると思います。私もまだその事案について、外交ルートでの抗議について、この後報告を受けたいと思います。

以上