米海軍、早期警戒機E-2Dアドバンスド・ホークアイに「初期運用能力」を付与/配備を開始


2014-11-02 松尾芳郎

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図:(US Navy MC1 (SW/AW) Ernest R. Scott))ノーフォーク基地上空を飛ぶ新型早期警戒機E-2Dアドバンスド・ホークアイ。最大の改良点はレーダーをAN/APY-9に換装したこと。新レーダーは300MHz-3GHz UHF帯使用のAESA型なので、通常の監視モード(AAS)では10秒間で360度をモニター可能。現行E-2C機搭載のAN/APS-145に比べ探知能力が大きく向上している。もう一つの特徴は、情報伝達能力が改善され、味方艦艇や陸上基地、友軍機などにリアルタイムで情報を送ることができ、いわゆる戦場の指揮管理機能を有する点である。エンジンはE-2Cとほぼ同じT56A-427A出力5,100shpを2基。機体寸法、性能はほぼE-2Cと同じ。

 

米海軍では、この10月27日に最新型となるE-2D アドバンスド・ホークアイに「初期運用能力(IOC=initial operational capability)」の認定をした。今年は最初の早期警戒機E-2ホークアイが就役してから50年後の節目の歳となる。E-2Dアドバンスド・ホークアイはノースロップ・グラマン社が製作する機体で、試作初号機の初飛行は2007年8月。胴体上部にはロッキード・マーチン社製の最新型直径24㌳のAN/APY-9レーダーを搭載している。

現用型E-2Cとは異なりE-2DのレーダーはUHF帯を拡げ海上や地上の小さな移動目標識別、追跡がし易くなっている。新型のE-2Dで最も強く要求されたのは地上での小型目標の捕捉能力で、新レーダーはこれに対応するため開発された。前形式の E-2C搭載のAPS-145レーダーは海上目標の探知に重点が置かれていたのに対し、AN/APY-9レーダーが使うUHF帯電波は、特にステルス性を備え低空を高速で飛来する巡航ミサイルの探知性能に優れている。

IOCはノーフォーク(Norfolk, Virginia)海軍基地所属のVAW-124部隊配属の最初の5機に対し付与され、同部隊は来年には空母「セオドール・ルーズベルト(Theodore Roosevelt)CVN-71」に配属される予定。同空母はニミッツ級の4番艦、排水量105,000㌧で1986年就役、現在ノーフォーク基地に所属する。

米海軍は、現有のE-2Cホークアイを2027までに順次新型のE-2Dアドバンスド・ホークアイに更新する予定で、調達数は試験機を含み75機、10個中隊分で、総額は200億㌦(約2兆円)になる。

E-2C

図:(yahoo, GODRA)2013-12-16岐阜基地に着陸する空自三沢基地所属のE-2Cホークアイ。搭載レーダーAN/APS-145はUHF帯(400MHz-450MHz)使用でアンテナはリニア・アレイ型で回転数は6rpm、探知距離370km。(空自機はやや古いAPS-138を装備)乗員5名、エンジンはAllison/Rolls-Royce T56-A-427出力5,100shpを2基装備。最大離陸重量は26㌧。

 

我国では空自が三沢基地の飛行警戒監視隊にE-2Cホークアイ 13機を配備中である。平成26年策定の中期防衛力整備計画では、尖閣を含む南西諸島の防空能力強化のため増強する予定。すなわち、三沢基地の部隊を第1飛行警戒監視隊とし、那覇基地に第2飛行警戒監視隊を新設し、両者併せて三沢に司令部を置く飛行警戒監視群とする。また平成27年度予算にはE-2Cの後継機導入の経費を盛り込んでいる。有力な候補機の一つとしてここに紹介したE-2Dアドバンスド・ホークアイが挙げられている。

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本稿作成の参考にした記事は以下の通り。

Aviation week eBulletin OCT. 22, 2014 “NEW PICS: E-2D Preps for First Deployment” by Amy Butler

Northrop Grumman Home“E-2D Advanced Hawkeye”

防衛省“我が国の防衛と予算–平成27年度概算要求について”