東支那海で実弾射撃演習、中国海軍の駆逐艦とフリゲート


2018-02-04(平成30年) 松尾芳郎

 

中国軍英文広報サイト“China Military”によると、中国海軍のミサイル駆逐艦とミサイル・フリゲートからなる小艦隊は、1月下旬に東支那海で実戦を想定した実弾射撃訓練を実施した、として一連の写真を公表した。日本を標的にした演習と見られる。以下にその主な写真を紹介する。

益陽548

図1: (eng.chinamil.com.cn/Photo by Lin Jian)2018-01-26に東支那海で行われた実弾射撃演習に参加したミサイル・フリゲート「益陽/Yiyang (艦番号548)」の姿。「益陽/Yiyang (艦番号548)」は、2008年就役開始の「054A型/ジャンカイ(江凱)II型」で、同型艦25隻中の7番艦、2010年に就役し東海艦隊に所属している。

満載排水量4,500 ton、主機はドイツまたはフランス製のデイーゼル4基で最大速力は27 kts。対空兵装は、ロシアの)M-38Mを改良したHQ-16(紅旗16)・射程25-42 kmを、アメリカのMk-41垂直発射装置( VLS)に似た32セル に収め、僚艦防空能力を持つ。対艦兵装は艦中央部にYJ-83対艦ミサイル4連装発射機を2基搭載している。対潜兵装にも優れており、艦尾にはヘリコプター1機を搭載する。フリゲートだが4,000 tonを超える大型艦で外洋航行性能が優れている。

益陽の艦首

図2: (eng.chinamil.com.cn/Photo by Lin Jian) 1月26日ミサイル・フリゲート「益陽/Yiyang(艦番号548)」が東支那海の波浪を蹴立てて進む様子。艦首の砲は、ロシア製AK-176単装砲を元にした中国製PJ-22型 76.2 mm単装砲。射撃操作は前部マスト基部の管制レーダーで行う。砲の後部に見えるのが対空ミサイルHQ-16を装填する垂直発射装置(VLS)で8セル型ユニット4基、合計32発を収納できる。HQ-16ミサイルは、全長5.5 m、直径40 cm、重量715 kg、速度マッハ4、高度10 -17,000 m範囲内の目標を捕捉、炸薬70 kgで半径18 m以内の目標を破壊する。射程は25-42 kmとされる。

長春150艦首

図3: (eng.chinamil.com.cn/Photo by Lin Jian) 1月25日、東シナ海で実弾射撃をするミサイル駆逐艦「長春(Changchun)艦番号150」の写真。艦砲は87式55口径100 mm単装砲である。「長春(150)」は「旅洋(Luyang ) II型」駆逐艦の6隻中の3番艦で2013年に就役した。「旅洋II型」は「052C型防空駆逐艦」と呼ばれ、2004年から就航が始まった最新鋭のミサイル駆逐艦で本格的な僚艦防空能力を備える。特徴は艦橋4面に中国製H/LJG-346型アクテイブ・フェイズドアレイ・レーダー・アンテナを装備している。このため中国版イージス艦と呼ばれている。

H/LJG-346型レーダーはウクライナの企業が協力して開発したとされ、探知距離は約450 km、米国/日本のイージス艦が装備するSPY-1Dレーダーの探知距離500 kmに僅かに及ばない。米国製イージス・システムは、あらゆる戦闘場面で、自動的に脅威度を判定し僚艦を含めてデータ・リンクを通じ最適の迎撃/攻撃方法を決め、実行する統合戦闘システムを備えている。「旅洋II型」・「052C」でもこれに準じた“自動指揮系統”を持っている。

前甲板の100 mm単装砲の後ろには、長射程対空ミサイルHQ-9Aを装填する垂直発射システム(VLS)が見える。このVLSはHQ-9Aを6発円形に収納する形式で、これを前甲板に6基、後部ヘリ格納庫前部に2基備えている。HQ-9Aミサイルは、全長6.8 m、重量1.3 ton、弾頭180kg、射程6-120 km、最大速度マッハ6、高度50 mから30,000 mまでの範囲の目標を攻撃できる。

済南152全景

図4: (eng.chinamil.com.cn/Photo by Lin Jian)1月27日ミサイル駆逐艦「長春(Changchun)艦番号150」の艦首上から見た同級ミサイル駆逐艦「済南(Jinan)艦番号152」の全景。「済南(Jinan)艦番号152」は「旅洋(Luyang ) II型」駆逐艦6隻中の5番艦で、2014年末に就役の最新型。「長春(150)と同じく東海艦隊に所属している。

済南手前と長春

 図5: (eng.chinamil.com.cn/Photo by Lin Jian)1月27日東支那海を進むミサイル駆逐艦「済南(Jinan)艦番号152」手前と「長春(Changchun)艦番号150」。前述のように写真の2隻は「旅洋II型」・「052C」防空駆逐艦。

 

中国海軍ではこれに続く改良型の「旅洋III型」・「052D」を2014年就役の1番艦「昆明(Kunming) 172」から配備を進めている。「旅洋III型」・「052D」はすでに6隻が就役し、さらに7隻の追加建造が進められている。

「旅洋III型」・「052D」は、満載排水量7,500 ton、改良型のフェイズド・アレイ・アンテナを装備、対空ミサイル発射VLSは日米両海軍が使うMk-41 VLSと同じ形式に変更。また前甲板の単装砲は新型のH/PJ38型130 mmになっている。

「旅洋II型」・「052C」の6隻に加え「旅洋III型」・「052D」の6隻プラス建造中7隻が揃うと、中国海軍の“イージス艦”は間も無く19隻に達する。

 

—以上—

 

本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。

China Military Online 2018-01-31 “Frigates and destroyers steam in East China Sea” by Huang Panyue Time

日本周辺の軍事兵器2016-07-17 “054A型フリゲイト(ジャンカイII型/江凱II型“

Jane’s 360 21 July 2017 “China commissions sixth Type 052D-class destroyer into East China Sea Fleet”