ボーイング、空母搭載用無人タンカーMQ-25Aを受注


2018-09-02(平成30年) 松尾芳郎

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図1:(Boeing) ボーイングMQ-25Aの完成想像図。運用が始まると、F/A-18E/FおよびF/A-18Gの給油を担当するF/A-18E/Fの任務が解かれ、MQ-25AがF-35Cを含む全ての艦上機の給油を行うことになる。

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図2:(Boeing) MQ-25Aを使うことで、F/A-18E/Fの空中給油無しの場合の戦闘行動半径830 kmを1,300 kmに伸ばすことができる。海軍の目標は、MQ-25Aに15,000 lbs (6,800 kg)の燃料を積み、F/A-18E/F/Gの4機から6機に給油すること。図はMQ-25A給油ポッド(図の右)からドローグ・ホースが伸び、F/A-18E/Fの受給プローブに接続される様子を描いた想像図。

 

米海軍は、空母搭載用の無人タンカーにボーイング提案のMQ-25Aステイングレイ(Stingray/赤えい)を選定した。契約内容は、8.05億ドル以内でMQ-25Aを開発、2024年までに4機を完成、空母戦闘航空団に配属し“初期運用能力(IOC=initial operational capability)”を取得する、と云うもの。この契約は、固定価格・奨励金付き( fixed-price-incentive-firm-target)方式で、期限以内にIOCの認定取得に成功すれば報奨金が貰える仕組みである。

海軍はF/A-18E/F戦闘攻撃機を運用する際、一部の機体を空中給油業務に充てているが、MQ-25が実用化されればその必要がなくなる。またボーイングにとっては、最終的に72機を約130億ドルで納入する契約につながり、大変な朗報である。

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図3;(Boeing) ボーイングのファントム・ワークス部門が設計、試作したMQ-25原型機。間も無く試験飛行が始まる。ボーイングではMQ-25Aの開発、製造をセントルイス工場(St Louis, Missouri)で行う予定。MQ-25は、“多目的ステルス無人艦載機”(Uclass )計画用に研究した機体を基本にし、タンカー向けに直線翼を採用するなどした機体。

 

海軍作戦部長ジョン・リチャードソン提督(Adm. John Richardson)は、8月30日のボーイングとの契約発表に際して、次のように語った;—

「今日は歴史的な日。有人機と無人機を統合運用し、空母航空団の戦闘能力を高める決定を下した初日となる。我々は、この決定に参画したことを誇りに思うと共に、責任の重さを痛感しその実現に邁進しようではないか」。

海軍航空の将来を決める無人タンカーMQ-25の選定には次の3社が参加した。ボーイング・ファントム・ワークス(Boeing Phantom Works)、ゼネラル・アトミックス・エアロノーチカル・システムス(GA-ASI=General Atomics Aeronautical Systems)、およびロッキード・マーチン(Lockheed Martin)である。

海軍は1999年から検討を開始し、2017年に要件を取りまとめ、3社はそれぞれ革新的な案を提案してきた。ボーイングとGA-ASIは主翼、胴体、尾翼付きを、ロッキード・マーチンは無尾翼機型をそれぞれ提案した。

GA-ASIは、MQ-25のような複雑な機体の開発の経験がないため、3社のうち最も遅れて提案をだした。ロッキード・マーチンは、配備が始まったばかりの艦載用F-35C戦闘機開発の主契約社で、十分な経験がある。ボーイングは唯一の空母艦載機メーカーとして、戦闘攻撃機F/A-18E/Fスーパー・ホーネットおよび電子戦機EA-18Gグローラーを独占供給している。ボーイングは入札に際し、まだ初飛行はしていないが、ただ1社だけ原型機を製作している。

ボーイングMQ-25は、細長い主翼と太めの胴体で、海軍の要求する給油用燃料を搭載でき、航続距離も十分にある。原型機は間も無く初飛行する段階にある。

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図4:(Boeing) ボーイングMQ-25原型機、海軍の要求する航続距離と搭載燃料に合致する。米海軍では12隻の大型空母にMQ-25Aをそれぞれ6機ずつ、合計72機配備する予定。

 

ボーイングでは、海軍が使用中の“GPS誘導全天候着艦システム”Joint Precision Approach and Landing System(JPALS)“を含む一連の要件との適合性の検討を完了している。

契約前に、ボーイングは搭載するソフトウエア、ミッション・コンピューター、および機体管制システムの現状を海軍向けに実演済み。エンジンはロールスロイスAE3007を搭載、給油装置はコブハム(Cobham aerial refueling pod)を使う予定だ。

“コブハム”は給油装置のサプライヤーとして80年間世界中に2,000以上のシステムを供給している。同社のシステムは“プローブ・アンド・ドローグ(probe -and-drogue)”方式で、米海軍、海兵隊の標準装備である。もう一つの方式は、伸縮式パイプを使う“フライング・ブーム(flying boom)”で高速給油が特徴、米空軍の装備である。我が3自衛隊は両方式を併用している。

Teal Groupのアナリストの意見;—「ロッキード・マーチンはF-35で大量の仕事を抱えているため熱意が無かった。唯一の競争相手はGA-ASIだったが、こちらは有人機開発は未経験の企業。これに対しボーイングは今回失注すれば国防部門の生産に大きな空きが生じるため十分な準備をして受注に臨んだ」。

海軍当局は、MQ-25A初号機の引渡しは2020年、初飛行は2021年、そして配備開始は2024年と予想している。

海軍では、これまで偵察・監視・攻撃を任務とする“多目的ステルス無人艦載機”(Uclass=Unmanned Carrier-Launched Airborne Surveillance and Strike)の開発に取り組んできた。しかし2016年に海軍、国防総省、議会で、要件設定の合意が得られず廃案とした経緯がある。

これに対しMQ-25は空中給油に限定したプログラムで、「空母艦上での運用能力」と「洋上でのタンカー能力」の二つの実現が要点とされる。

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図5:(Rolls Royce) MQ-25に搭載されるロールスロイスAE3007Nターボファン。

推力は9,000 lbs。カタパルト発射を含む空母運用の要件は試験済み。我が空自が導入するノースロップ・グラマン製無人偵察機RQ-4グローバルホークにも採用されている。AE3007は米国でF137として生産中。幅広ファン1段・高圧コンプレッサー14段・高圧タービン2段・低圧タービン3段の構成。

 

ボーイングの国防・宇宙・セキュリテイ部門のリーネ・カレット(Leanne Caret)社長兼CEOは声明を発表し「無人機の開発は進んでおり2021年には初飛行を実施する。担当チームは米海軍と会合を開き、給油要件のみならず世界初の空母艦上での無人機の運用について、詰めの話し合いを始めている」と語った。

従来の国防総省の新規調達は、初期運用能力/IOC取得までかなりの長期間を費やしていたが、MQ-25開発プログラムは開始から6年以内と相当短縮されている。これはタンカーの早急な配備が必要なためで、特に事務手続きで大幅な簡略化が図られている。

 

—以上—

 

本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。

The National Interest Aug 31, 2018 “Here Comes the MQ-25A Stingray: Boeing Wins Big(and so do Navy Aircraft Carriers)” by Dave Majumdar

Aviation Week Aug 31, 2018 “Boeing Wins Navy’s Lucrative MQ-25 Contract” by Lee Hudson

Defense News Aug. 31, 2018 “US Navy selects builder for new MQ-25 Stingray aerial refueling drone” by Falerie Insinna and David B. Larter

Defense Update Aug 31, 2018 “Boeing Selected to Develop Refueling Drones for the US Navy” by Tamir Eshel