令和3年8月、我国周辺における中露両軍の活動と我国/同盟諸国の対応


2021-09-05(令和3年) 松尾芳郎

令和3年8月、我国周辺における中露両軍の活動と、我国および同盟諸国の動きに関し、それぞれの公的部門から多くの発表があった。以下にその項目と内容を紹介する。注目すべきニュースは次の通り;―

  •  岸防衛相「F-15J」能力向上型改修の推進を言明
  • 米国主催大規模広域訓練に参加
  • 中国海軍、ミサイル駆逐艦/イージス艦の増強、著しい
  • 陸自「中SAM」、空自「PAC2」共同実弾射撃訓練を実施
  • 日米豪印4か国海軍共同訓練を実施

(The military threats by Russo-Chinese Forces around Japan and Taiwan were reported as active. Following eight were noteworthy;-

  1. F-15J upgrade program proceeds as planned adding missile-carrier capability, Defense Minister N. Kishi. Said.
  2. Japan’s Self Defense Forces join the Large-Scale-Global Exercise 2021 (LSGE 2021) with U.S., UK, and Australian Forces, held on Western Pacific.
  3. Chinese Navy increases rapidly the number of its Missile Destroyer, far exceeding Japan and allied forces.)

防衛省

  • 8月10日岸防衛相記者会見:「F-15能力向上を継続、中期防策定分20機の改修は実行」

F-15は空自の主力戦闘機として現在8個の飛行隊と飛行教導隊等に約200機が配備中。三菱重工・IHI等でライセンス生産され導入以来40年になるが、基本設計が良いため数度にわたる搭載機器等の近代化改修で制空戦闘機として我国防衛の任に当たっている。

中期防(2018)に基づき2019年から「制空戦闘機から多目的戦闘機へ」すなわち対地/対艦攻撃能力を付与する改修を単座型F-15Jを対象に約70機を選び、期間中実施は20機とすると決めた(単価は35億円)。これを「能力向上型改修」または「J-MSIP機の再近代化改修」と呼んでいる。

これで予定していた長射程巡航ミサイルLRASMの搭載は、価格高騰と改修スケジュールの遅れのため見送りが決定。代わりに陸自用「12式地対艦ミサイル・改」の航空機搭載型の開発を急ぎ、F-2戦闘攻撃機(約90機)に搭載するなどの施策でスタンド・オフ対艦攻撃能力を確保する。

図1:(航空自衛隊)F-15J戦闘機。制空戦闘機として使用中だが、高い搭載能力を活かしミサイル・キャリアーとしての役割は重要。LRASM搭載は断念されたが、JASSM / AGM-158 /射程900 km以上(ロッキード・マーチン製)や「12式地対艦ミサイル改」等の搭載は2028年頃を目指して改修を進める。

統合幕僚監部

  • 8月3日発表:米国主催大規模広域訓練2021 (LSGE 21=Large-Scale-Global Exercise 2021 )への参加について
  • 8月9日発表:米国主催大規模広域訓練2021 (LSGE 21)への参加(続き)

自衛隊の戦技向上と米・英・豪・各軍との連携強化を図るためLSGE 21へ参加する。期間は8月2日から8月27日の間、珊瑚海からフィリピン東方の海空域で実施する。参加するのは;―

海上自衛隊…護衛艦「まきなみ(DD-112)」と搭載ヘリ「SH-60K」

米海軍………強襲揚陸艦「アメリカ(LHA 6)」、ドック型揚陸艦「ニューオーリンズ」

豪海軍………強襲揚陸艦「キャンベラ(L-02)」、フリゲート「バララット(FFH-155)」、哨戒機「P-8A」

図2:(統合幕僚監部)射撃訓練中の護衛艦「まきなみ」

図3:(統合幕僚監部)手前護衛艦「まきなみ」と豪フリゲート「バララット」

  • 8月17日発表:中国海軍艦艇の動向について

8月14日午後1時、対馬の南東130 kmの海域を北東、日本海に進む中国海軍ジャンダオ級フリゲート1隻を発見した。発見・追尾したのは海自佐世保基地第2護衛隊所属の「はるさめ」と厚木基地第4航空軍所属哨戒機「P-1」である。

図4:(統合幕僚監部)ジャンダオ (江島) 級小型フリゲート/056A型。現在4カ所の造船所で建造中、45隻以上の配備が確認されている。054A型フリゲート・ジャンカイII型(江凱II型)/ 4,500 ton(30隻配備)、よりかなり小型で満載排水量1,440 tonだが、兵装は同じPJ-26 60口径76 mm単装砲、対艦ミサイルはYJ-83連装発射機2機を装備、艦尾にへり発着甲板を備える。

  • 8月23日発表:中国海軍艦艇の動向について

8月22日午前零時、対馬の南西105 kmの海域を北東、日本海に向けて航行する中国海軍レンハイ級ミサイル駆逐艦1隻、ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦1隻、フチ級補給艦1隻を発見した。発見・追尾したのは佐世保基地第2護衛隊「はるさめ」、鹿屋基地第1航空群所属の哨戒機「P-1」、厚木基地第4航空群所属の哨戒機「P-1」である。

図5:(統合幕僚監部)055型「南昌級駆逐艦」、写真「南昌・101」は2020年就役、北海艦隊に所属。前級「052D型昆明級」ミサイル駆逐艦(イージス艦)から各種装備を近代化し、大型化した新鋭艦。満載排水量13,000 ton、米国防総省は「ミサイル巡洋艦」と位置付けている。同型艦は3隻が完成、3隻が建造中、追加2隻を予定。兵装は、112セルのミサイル垂直発射装置(VLS)が中心、このセルは米・西側諸国のMk.41より大きく、YJ-18対艦ミサイル、CJ-10対地巡航ミサイルも発射できる。艦砲は70口径130 mm単装砲。艦尾にはヘリ2機搭載の格納庫を備える。名称の「レンハイ」/「刃海」?は存在しない。「南昌」級が我国近海に姿を見せたのは今年3月に続き2回目である。

図6:(統合幕僚監部)「旅洋III級 / 052D型 昆明級駆逐艦で、中国版イージス艦。同型艦10隻を配備、追加7隻を艤装中。写真は「貴陽(Guiyang) / 119」、2019年就役、北海艦隊に所属。満載排水量7,500 ton、全長156 m、速力29 kts。VLS(垂直ミサイル発射装置)64セルに対空/対艦ミサイルを装備。

図7:(統合幕僚監部))福地級補給艦、903型総合補給艦とも言う。写真は「903 可可里西湖」か?であれば同級の9番艦で2020年ごろの就役。満載排水量23,000 ton、全長178.5 m、速力20 kts、物資11,000 tonを搭載。

  • 8月25日発表:推定中国機の東シナ海における飛行について

8月24日中国軍の偵察・攻撃型無人機TB-001(推定)が東シナ海、沖縄本島北東の我が国防空識別圏に飛来、空自戦闘機を発進警戒に当たった。

図8:(統合幕僚監部)偵察・攻撃型無人機 TB-001。詳細は不明。

  • 8月25日発表:中国機の東シナ機および太平洋における飛行について

8月25日中国軍情報収集機Y-9、哨戒機Y-9、無人機BZK-005、各1機ずつが沖縄本島と宮古島の間「宮古海峡」上空を東シナ海から太平洋に向け飛行、そのが反転、往路と同じ経路で東シナ海に戻った。空自戦闘機が緊急発進、領空侵犯を防いだ。

図9:(統合幕僚監部)8月25日、中国軍機3機の宮古海峡通過の航路。

図10:(統合幕僚監部)

図11:(統合幕僚監部)

図12:(統合幕僚監部)BZK-005は浙江省舟山岱山の無人機大隊に配備、中高度を長時間(40時間)滞空する多用途無人航空機、機種下部にEO/IRセンサー、機種上面のバルジに衛星通信アンテナを装備。

  • 8月25日発表;中国海軍艦艇の動向について

8月24日午前1時、沖縄県久米島の北西120 kmの海域を南に向かう中国海軍ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦、ルーヤンII級ミサイル駆逐艦、ジャンカイII級フリゲート、各1隻の合計3隻を発見した。同艦隊は宮古海峡を南下、太平洋に進出した。発見・追尾したのは沖縄基地第46掃海隊所属の「くろしま」、鹿屋基地第1航空群所属「P-1」哨戒機、および那覇基地第5航空群ちょ族「P-3C」哨戒機である。

その後同艦隊は次項記載のように往路と同じ航路で東シナ海に戻った。

  • 8月27日発表:中国海軍艦艇の動向について

8月26日午前8時、宮古島の東120 kmの海域を北西に進む中国海軍ルーヤンII級ミサイル駆逐艦1隻、ジャンカイII級フリゲート1隻を発見、その後これら2隻は宮古海峡を北上、東シナ海に入った。また同日午後1時にはルーヤンIII級ミサイル駆逐艦1隻が同じ航路で東シナ海に入った。これら3隻は8月24日に東シナ海から宮古海峡を通過、太平洋に入ったものと同じである。発見・追尾したのは那覇基地第5航空群所属の「P-3C」哨戒機である。

(写真は8月27日撮影の鮮明なものを掲載する)

(注)8月25日から28日にかけて、沖縄東方および南方の太平洋上海空域で日英米オランダの4カ国海軍が共同訓練「Pacific Crown 2021」を実施していた。海自ヘリ空母「いせ」、英海軍空母「クイーン・エリザベス」などが共同訓練を実施。中国側はその動向を偵察、電波情報収集のために艦艇、航空機を派遣したもの。

図13:(統合幕僚監部)「旅洋III級 / 052D型 昆明級駆逐艦、同型艦25隻中の14番艦「淄博(Zibo)/156」、2020年に就役、東海艦隊に所属。本級は満載排水量7,500 ton、西側のMk.41と似た、しかし大型の垂直発射装置VLS 64セルに対空/対艦ミサイルを収納する。次図「ルーヤンII級052C型蘭州級」を改良した本格的イージス艦である。

図14:(統合幕僚監部)052C型(蘭州級)ミサイル駆逐艦、本級は中国版イージス艦の原型。写真は6隻中の4番艦「鄭州(Zhengzhou)・151」。「蘭州級」は満載排水量7,000 ton、HHQ-9A艦隊防空ミサイルを6セル円筒形VLS 8基の収めている。対艦ミサイルはYJ-62射程400 kmを4連装発射機2基に収納している。

図15:(統合幕僚監部)054A型(江凱II級)ミサイル・フリゲート、同型艦は30隻建造された。フランス技術を導入、戦術情報処理装置を中核に対空・対艦・対潜の兵装を連結、艦隊防空能力を持つ。対空ミサイルHQ-16をMk.41 に似たVLS 32セルに収納、対艦ミサイルはYJ-83 4連装発射機2基に備えている。写真は同型艦7番艦「益陽(Yiyang)・548」、2010年就役で東海艦隊の所属。

  • 8月25日発表;中国海軍艦艇の動向について

8月24日午前9時、北海道西岸の奥尻島南西200 kmの海域を北に進む中国海軍ミサイル駆逐艦レンハイ級1隻、ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦1隻、フチ級補給艦1喘き、およびドンデイアオ級情報収集艦1隻の合計4隻の艦隊を発見した。同艦隊は宗谷海峡を東進、オホーツク海に向け公開した。この艦隊は8月22日に対馬海峡を通過、日本海に入ったものと同じである。発見・追尾したのは八戸基地第2航空群所属の哨戒機「P-3C」および余市分屯地第1ミサイル艇隊所属の「わかたか」である。(写真は「ドンデイアオ級情報収集艦」のみを掲載)


図16:(統合幕僚監部)「ドンデイアオ級( Dongdiao-class)/東調級・情報収集艦」別名「815型情報収集艦」は満載排水量6,000 ton、中央にパラボラアンテナ・ドーム2個を始め数十個のアンテナ・センサーを装備、弾道ミサイル/巡航ミサイルの発射・着弾の情報収集が任務。6隻程が建造され東シナ海、南シナ海で活動している。

  • 8月26日発表:中国機の東シナ海および太平洋における飛行について

8月26日、中国軍の無人偵察攻撃機TB-001、情報収集機Y-9、哨戒機Y-9、各1機が、8月25日と同様、東シナ海から宮古海峡上空を通過、太平洋に進出、再び往路と同じ航路で東シナ海に戻った。航空自衛隊では那覇基地から戦闘機を緊急発進、領空侵犯を防いだ。(写真は無人偵察攻撃機TB-101のみを掲載)

図17:(統合幕僚監部)

陸上幕僚監部

  • 8月6日発表:令和3年度ホーク。中SAM部隊実射訓練の概要について

8月9日から11月19日までの約3ヶ月間、陸自は各地に配備されている高射部隊を米国ニューメキシコ州マクレガー射場に派遣、地対空誘導弾「ホーク」および「中SAM」の実弾射撃訓練を行う。

参加部隊は;―

西部方面隊第15旅団第6高射特科群・第15高射特科連隊(中SAM改装備)

高射教導隊など

今回の訓練の特徴;―

陸自「中SAM」部隊と空自「ペトリオット」部隊の初の協同実弾射撃訓練

陸自「中SAM」部隊と「ホーク」部隊の初の協同実弾射撃訓練

陸自地対空ミサイルは長い間「MIM-23 改良型ホーク(Hawk)」が使われていたが、2003年から「03式中距離地対空誘導弾(中SAM)」が制式化、順次配備されている。これまでに16個中隊に配備完了。2017年からは性能向上型の「中SAM改」に変わってきている。。南西諸島防衛のため西部方面隊第15高射特科連隊が今年4月に沖縄県知念分屯地に展開したのを皮切りに南西諸島から配備が始まっている。「03式中SAM」の射程は未公表だが、各種情報から60 km以上と推定される。

各高射特科群は4個高射中隊編成が基準。高射特科群は、東部方面隊に第2、中部方面隊に第8、西部方面隊に第3・第6・第7の計5個群が配備されている。

図18;(陸自高射教導隊)03式中距離対空誘導弾(03式中SAM)の発射。従来の対空誘導弾「改良ホーク」の後継として開発し配備中。主契約は三菱電機、ミサイル本体は三菱重工、レーダーは東芝が担当。この後継「03式中SAM改」は、Ga-N素子使用のレーダーが追加され低空で来襲するミサイルの迎撃能力が著しく向上している。

航空幕僚監部

  • 8月6日発表:令和3年度高射部隊実弾射撃訓練について

前掲「陸上幕僚監部発表の「ホーク、中SAM発射訓練」に合わせ同時開催予定の「ペトリオット高射隊発射訓練」が航空幕僚監部から発表された。

実施期日、実施場所は“陸自発表”と同じ。参加部隊は空自高射群(部隊名は不明)と同教導隊、使用器材は「ペトリオット」対空ミサイル一式。陸自「中SAM部隊」と初めての共同射撃訓練を行う。

空自高射部隊は、1964年に広域防空を空自担当とすることになったため、陸自第101高射大隊が空自に移管され第1高射群となった。現在航空方面隊(4個方面隊)に計6個高射群を配置、各高射群は4個高射隊で編成されているので合計24高射隊が配備されている。1996年に対空ミサイル「ペトリオットPAC-2」の配備完了、そして2007年からは弾道ミサイル防衛(BMD)用「ペトリオットPAC-3」の配備が進行中。また31中期防で、現在の6個高射群を航空方面隊に合わせ、24個高射隊はそののままで4個高射群に改編される。

各高射隊は、「PAC-2発射機」(4発搭載型)3輌と「PAC-3発射機」(16発搭載型)1輌の編成。これにレーダー、電源、管制装置、アンテナ、など各種車輌が含まれる。

図19:(航空自衛隊)空自ペトリオットPAC-2発射機。写真は2発搭載型。米陸軍では倍の4発搭載型が普通。PAC-3は細いので各発射筒に4本搭載が可能なので米軍仕様では16発搭載となる。

海上幕僚監部

  • 8月16日発表:日米共同訓練について

8月14日、15日、東シナ海で海自護衛艦(イージス艦)「ちょうかい」は米海軍駆逐艦「ベンフォード」と、戦技向上・相互運用性向上のため各種戦術訓練を実施する。

図20:(海上幕僚監部)海自「ちょうかい」から見た米海軍「ベンフォード」

  • 8月23日発表:日米印豪共同訓練(マラバール2021)について
  • 8月30日発表:日米印豪共同訓練(マラバール2021)について(追加)

「自由で開かれたインド太平洋」実現のため戦技向上と連携強化を図るべく、米価軍主催で日米印豪4カ国海軍は8月23日から9月10日にかけて2段階に分け共同訓練を実施している。前段はグアム島および周辺海域で、後段はフィリピン海/西太平洋で実施中。訓練項目は対潜訓練、対空訓練、実弾射撃訓練、搭載機の相互離着艦訓練、など。

後段参加部隊は次の通り;―

日本海自……ヘリ空母「かが(DDH-184)」、護衛艦「むらさめ(DD-101)」、「しらぬい(DD-120)」、潜水艦、「P-1」哨戒機

米海軍………ミサイル駆逐艦「バリー・USS Barry(DDG-52)」、補給艦「ユーコン」/第7艦隊ニュースには「USNS Rappahannock (T-AO-204)と記載、「P-8A」哨戒機

インド海軍…フリゲート「シバリク・Shivalik (F-47)」、コルベット「カドマット・(Kadmatt (P-29)」、「P-8I」哨戒機

オーストラルア海軍…フリゲート「ワラマンガ・HMAS Warramonga (FFH-152)」

図21:(海上幕僚監部)8月下旬フィリピン東方海域で実施中の日米印豪4か国海軍の共同訓練「マラバール2021」に参加した艦艇。中央の大型艦は海自ヘリ空母「かが」手前は海自潜水艦。

  • 8月25日発表:日米共同訓練について

8月22日・23日の両日、沖縄東方の太平洋上で海自輸送艦「しもきた」は米海軍ドック型輸送揚陸艦「ニューオリンズ」と各種戦術訓練を行なった。

図22:(海上幕僚監部)手前ドック型輸送揚陸艦「ニューオリンズ」、奥は海自輸送艦「しもきた」。

  • 8月27日発表:日英米蘭共同訓練(PACIFIC-CROWN 2021-1)について
  • 8月29日発表:日英米蘭共同訓練(PACIFIC-CROWN 2021-2)について

8月25日から28日の4日間、沖縄東方および南方の太平洋および東シナ海の海空域で4カ国海軍による共同訓練を実施した。目標は「自由で開かれたインド太平洋の実現」のため、戦技向上と連携強化を図るというもの。参加部隊は次の通り;―

海自    :ヘリ空母「いせ」、護衛艦「あさひ」、「てるずき」、搭載ヘリ「SH-60K」

英国海軍  :空母「クイーン・エリザベス」、駆逐艦「デイフェンダー」、フリゲート「ケント」、補給艦「フォート・ビクトリア」および「タイド・スプリング“」

米国海軍  :駆逐艦「ザ・サリバンズ」

オランダ海軍:フリゲート「エファーツエン」

図23:(海上幕僚監部)手前ヘリ空母「いせ」甲板から見た英空母「クイーン・エリザベス」。

  • 8月31日発表:日米共同訓練(ILEX21-3)について

8月26日東シナ海で海自補給艦「おうみ」は米沿岸警備隊カッター「マンロー」と洋上補給訓練を実施した。

図24:(海上幕僚監部)海自補給艦「おうみ」が米沿岸警備隊カッター「マンロー」に燃料補給をするところ。

  • 8月31日発表:令和3年度第2回米国派遣訓練(潜水艦)について

9月15日から12月15日の3ヶ月間、海自潜水艦「こくりゅう」は、日本からハワイ諸島に至る海域および同諸島周辺海域で、米海軍と対潜水艦訓練を行う。このためハワイ州パール・ハーバー・ヒッカム統合基地を使う。潜水艦の米派遣訓練は毎年実施中で今回は82回目となる。

図25:(Wikipedia)潜水艦「こくりゅう/ SS-506」は「そうりゅう」型の6番艦、川崎重工神戸工場で建造、2015年就役、横須賀基地第2潜水隊群第6潜水隊に所属。水中排水量4,200 ton、全長84 m、スターリング・エンジン4基で水中速力20 kt。兵装は89式長魚雷およびハープーン対艦ミサイル発射用の魚雷発射管6門を装備。潜水艦艦番号は就役後すぐに消去される。

米第7艦隊ニュース

  • 8月 5日発表:強襲揚陸艦アメリカ遠征打撃群は日豪海軍との共同演習 ”CJBP= Combined and Joint-Battle Problem “を実施

日米豪3カ国共同演習「CJBP」とは、前掲の統合幕僚監部発表「米国主催大規模広域訓練2021 (LSGE 21)」の一部の演習で、米インド・太平洋軍の指揮下で日本、オーストラリア等同盟国が参加して8月5日-8日の間西太平洋海空域で行われた。「CJBP」は(Combined and Joint Battle Problem)の略、意訳すると“交戦時に生じる問題に対処するための合同演習”。

参加した部隊・艦艇は;―

・米強襲揚陸艦「アメリカ(LHA 6)」遠征打撃群(USS-America Expeditionary-Strike Group / AMA-ESG所属の艦艇および第31海兵隊遠征軍(31st-Marine Expeditionary-Unit / MEU、

・オーストラリア海軍揚陸艦「キャンベラ(L-02)」、フリゲート「バララット(Ballarat / FFH-155)、

・海上自衛隊護衛艦「まきなみ(DE-112)」、

図26:(第7艦隊) 8月初旬の「CJBP」演習に参加した艦艇。左から豪フリゲート「バララット(FFH 155)」、豪揚陸艦「キャンベラ(L-02)」、米ドック型揚陸艦「ニューオリンズ(LPD-18)」、米強襲揚陸艦「アメリカ(LHA-6)」、日本護衛艦「まきなみ(DD-112)」。

  • 8月10日発表:インド・太平洋の21カ国はSEACAT 21演習を開始

米海軍および関係機関とインド・太平洋21カ国(日本を含む)は、8月10日シンガポールで「第20回SEACAT (Southeast -Asia-Cooperation and Training) / 東南アジア共同演習」(コンピューター演習)を行なった。[SEACAT]は、地域の安全と海上での不法行為を防ぐため関係国が一致協力して対処することを目的として開催される。米第7艦隊を中心に不測の事態に対処するための共同作戦能力を向上することが確認された。

  • 8月12日発表:海自護衛艦「まきなみ」、米日豪海軍の共同演習 CJBPで旗艦任務を遂行

前述8月5日〜10日開催の「日米豪海軍共同演習”CJBP“」で、日本の護衛艦「まきなみ(DD-102)」は、演習艦隊の旗艦(SCC=Sea-Combat-Commander)の任務を遂行した。この演習は、艦隊が敵攻撃を受けた際如何にして反撃するか、を想定した訓練で、友軍間の通信連絡、共同での水上交戦、を円滑に遂行する能力を高める訓練である。

この場面で艦隊の旗艦「SCC」の役割は、艦隊の明確な誘導、戦闘状況の認識、各艦個別の戦闘能力の状況、などを把握し、艦隊として最適な行動を指揮することにある。『「まきなみ」とそ乗員は旗艦SCC)としての任務中、米艦隊と豪艦隊を統率して完璧にその役割を遂行した』。米第7遠征打撃群司令官クリス・エンダール(Chris Engdahl)提督の談話。

  • 8月16日発表:米海軍ミサイル駆逐艦ヒギンズと同ハワードは横須賀に到着、第15駆逐艦隊に編入

アーレイバーク級ミサイル駆逐艦「ヒギンズ/USS Higgins (DDG76)」と同「ハワード/USS Howard (DDG 83)」は8月16日に横須賀基地に到着した。2隻は横須賀を母港とする第15駆逐艦隊(DESRON 15=Destroyer Squadron 15)に編入され、米国と日本の防衛任務に当たる。

「ヒギンズ」は弾道ミサイル防衛[BMD]能力を備える”フライトII (Flight II)型“、「ハワード」は能力向上した”フライトIIA型“でMH-60ヘリコプター2機を搭載する。

第15駆逐艦隊(DESRON15は2隻を含む10隻のミサイル駆逐艦(イージス艦)と指揮艦「ブルーリッジ/USS Blue Ridge(LCC 19)」等、合計12隻で編成。

我海自のイージス艦は「こんごう」級4隻、「あたご」級2隻、「まや」級2隻の計8隻で、このうちBMD能力を備えるのは「あたご」「まや」級の4隻。これで膨大な隻数を擁する中国海軍に対処するのは容易ではない。

「アーレイ・バーク/USS Arleigh Burk (DDG-51)」級ミサイル駆逐艦は、1991年初号艦[DDG-51]が就役してから70隻以上が建造され、現在も建造が続いている。初号間の就役から30年が経過するがこの間フライトI、II、IIA、と改良が行われてきた。フライトIIAは2000年から始まり39隻が就役中。満載排水量9,500 ton、各種ミサイル垂直発射装置Mk.41 VLS(32+64=96セル)を装備、艦載ヘリコプター2機を搭載する。

図27:(第7艦隊)横須賀に入港したミサイル駆逐艦「ヒギンズ・DDG 76」(左)と「ハワード・DDG 83」(右).。

  • 8月25日発表:強襲揚陸艦アメリカ、英空母クイーン・エリザベスと航空機発着訓練を繰り返し実施

強襲揚陸艦「アメリカ/USS America (LHA-6)」は、8月22-24日の間英空母「クイ8ン・エリザベス/HMS Queen Elizabeth (R-08)」と航空機発着訓練を昼夜を通して実施した。2隻は合わせて「F-35B」STOVL戦闘飛行隊を3個飛行隊搭載・運用できる。訓練を通して両者は相互運用の技量向上と海上攻撃能力を高めることができた。「アメリカ(LHA-6)」では第121海兵隊戦闘攻撃飛行隊(VMFA-121)が、「クイーン・エリザベス(R-08)」では英国空軍第617飛行団が、それぞれ搭載されている。

「アメリカ」が旗艦を務める「アメリカ遠征打撃群(ESG=America-Expeditionary-Strike-Group)」と、「クイーン・エリザベス打撃群(CSG-21=Queen Elizabeth-Strike-Group)」の共同演習は、フィリピン東方の太平洋上で実施中の「米国主催大規模広域訓練2021(LSEGE 21)」の一部をなすものである。

図28:(第7艦隊)「アメリカ」と「クイーン・エリザベス」の共同訓練で、夜間「アメリカ」に着艦する第31海兵隊所属の「F-35B」STOVL戦闘攻撃機。着艦・着地では尾部エンジン排気を垂直方向に、機首の下向きファンを全開にして、両翼下面のロール・ポストの排気で姿勢を制御しながら降下する。

  • 8月25日発表:豪・印・日・米、各海軍は共同演習マラバール(MALABAR) 2021を開始

内容は海上幕僚監部8月30日発表「日米印豪共同訓練(マラバール2021)について(追加)」と同じなので省略。

  • 8月26日発表:米沿岸警備隊・日本海上保安庁、東シナ海で共同訓練を実施

米沿岸警備隊(US Coast Guard)アラメダ基地(Alameda, California)所属の巡視船(Cutter)「マンロー・Munro (WMSL-775)」排水量4,500 tonは8月20-24日の間、佐世保基地を訪問した。その後25日と26日の両日、東シナ海で海上保安庁巡視船「あそ(PL-41)」1,000 ton級と共同訓練を行なった。

「マンロー」は大型艦で、兵装はMk.110 口径57 mm単装砲1門と対空用の20 mm 多連装機関砲CIWS1基を備えている。

「あそ」の兵装は射程5kmのボフォースMk.3 口径40 mm単装機関砲1門のみ。

図29:(第7艦隊)手前が米沿岸警備隊カッター「マンロー」4,500 ton、奥が海上保安庁巡視船「あそ」1,000 ton級。

  • 8月27日発表:米海軍と米沿岸警備隊カッター「マンロー」が台湾海峡を通過

8月25、26日の両日東シナ海で海保巡視船「あそ」と共同訓練をし、海自補給艦「おうみ」から燃料補給を受けた米沿岸警備隊カッター「モンロー(wMSL-755)」は、27日に台湾海峡を通過 “航行の自由作戦”を実行した。これには米第7艦隊ミサイル駆逐艦「キッド(USS Kidd (DDG-100)が同航した。これで米国の「自由で開かれたインド太平洋」を維持する姿勢に変わりがないことを内外に示した。

図30:(第7艦隊)台湾海峡を通過する沿岸警備隊カッター「モンロー」(手前)とミサイル駆逐艦「キッド」。

  • 8月28日発表:米空母カール・ビンソンが横須賀に到着

サンデイゴ(San Diego, Calif.)を母港とするニミッツ級空母「カール・ビンソン/Carl Vinson (CVN 70)」が、8月28日に横須賀に到着した。同艦は5,000名が乗務し、最新の[F-35C]艦上戦闘攻撃機とテイルトローター輸送機[CMV-22B]オスプレイを含む70機以上の航空機を搭載する米海軍初の空母である。横須賀を母港とする同級の空母「ロナルド・レーガン(CVN-76)」が、アフガニスタン撤退作戦支援のためインド洋に展開中、その空白を埋めるため「カール・ビンソン(CVN-70)」が派遣された、と受け止められている。

図31:(第7艦隊)8月28日、18年ぶりに横須賀に到着した空母「カール・ビンソン(CVN 70)。満載排水量100,000 ton以上、全長333 m、速力30 kt以上。

ロシアニュース/ロシア海軍情報管理局

  • 8月20日発表:ロシア太平洋艦隊の最新鋭潜水艦「ペトロパブロフスク・カムチャツキー」と「ボルホフ」はでデンマーク沖を通過、ウラジオストクへ向かう

ロシア海軍プロジェクト0636・3潜水艦の1番艦B-274「ペトロパブロフスク・カムチャツキー」は2019年11月に、2番艦B-603「ボルホフ」は2020年10月に完成した潜水艦で、太平洋艦隊に配属、ウラジオストク南のウリス湾基地に駐留する。

両艦とも「キロ級潜水艦」の最新型で、通常動力型潜水艦「877型」と呼ばれる。1982年から就役、ロシア海軍20隻、中国12隻、インド9隻などが運用中。司令塔に射程5 kmの対空ミサイルを装備、浮上時に対空射撃ができる。排水量は水上/2,350 ton、水中/3,950 ton、長さ70-74 m、水中速力25 kts、潜航深度は240 m。533 mm魚雷発射管6門を装備、魚雷18発を携行する。「877EKM型」は有線誘導魚雷を発射可能で魚雷装填は自動化され、装填から発射まで3分で可能。太平洋艦隊には12隻配備されている。

「877型」を改良したのが「636型」および「636・3型」で、本件2隻がこれに該当する。スクリューを6翅から7翅に改め騒音レベルを低減している。

図32:(ロシア海軍情報局)2隻ともバルチック海サントペテルスブルグのアドミラルテイ造船所で建造され、ウラジオストクに回航、太平洋艦隊・第19潜水艦旅団に配備される。予定ではさらに4隻が建造され全て太平洋艦隊に配属される。

  • 8月24日発表:太平洋艦隊原子力潜水艦クズバスは長期任務を終えカムチャツカの基地に帰投

太平洋艦隊の原子力潜水艦「クズバス」は、長期間のオホーツク海や太平洋でのパトロール任務を終え、カムチャツカ半島ビリンチンスク基地に帰投した。

「クズバス」は「971型アクラ級」攻撃型原潜の10番艦「K-419」で改良型の「971U型で1992年末から太平洋艦隊に所属。水中排水量12,700 ton、全長110.2 m、水中速力33 kt、最大潜航深度600 m、兵装は533 mm魚雷発射管8門、携行する魚雷・ミサイルは45本、艦体は厚さ64 mmの吸音材で覆い静粛性が高い。太平洋艦隊には「971型」を含む同型艦6隻が配備中。

図33:(ロシア海軍情報局) 2021年8月24日にビリンチンスク基地に帰投した攻撃型原潜「クズバス」。ビリンチンスクはカムチャツカ半島の南部分、太平洋に面した潜水艦基地で、人口24,000人、閉鎖都市とされている。

中国軍ニュース

  • 8月17日発表:中国東方軍管区は台湾付近の海空域で実弾射撃演習を実施

中国東方軍管区所属の海軍艦艇、対潜航空機、戦闘機は台湾の南西および南東の海空域で実弾射撃訓練を実施した。最近米国政府は台湾政権と頻繁に連携、支援を強めている。これは中国の主権を侵害し台湾海峡の危機を増幅させる行為である。今回の中国軍による実弾射撃演習は、このような米国の不法行為に警告を与え、台湾独立の企みを封じる意味で実施した。

図34:(中国軍ニュース)8月17日中国軍東方軍管区が行なった実弾射撃演習に参加した「J-16」戦闘攻撃機。ロシア・スーホイ[Su-30K2]を原型にし瀋陽飛行機で国産化した機体、150機ほどが配備されている。東部戦区空軍では福建省福州基地第40航空旅団、上海基地第7航空旅団に配備。「J-16」は、推力20,000 lbsのターボファンを2基装備、最大離陸重量35 ton、最大速度マッハ2.0、空対空ミサイル、対艦ミサイル、GPS誘導爆弾などを携行する。

  • 8月19日発表:中露合同演習「Zapad/Interaction 2021」が完了、ロシア軍が帰国

中国北部、内モンゴルに隣接した寧夏回族自治区( Ningxia Hui Autonomous Region)で行われたザパッド2021演習(Zapad/International 2021)が終了し、参加していたロシア軍部隊8月17日に銀川空港から撤収した。撤収に先立ち空港では盛大な歓送式典が催された。演習では、共同実弾射撃訓練、空陸共同の攻撃訓練、パラシュート降下訓練、など20項目に及ぶ実戦さながらの訓練が一週間にわたって実施された。ロシア軍は、IL-76大型輸送機を始めSu-30戦闘機5機などが参加した。

図35:(China Military) 中露合同演習「ザパッド2021」に参加したロシア軍部隊。

図36:(China Military)中露合同演習「ザパッド2021」に参加した中国空軍J-20戦闘機。J-20は双発ステルスの制空戦闘機で、いわゆる第5世代機。最大離陸重量36 ton、速度マッハ2.2、デルタ翼で機首にカナードを待つ。これまで150機を製造。東部戦区空軍上海基地第9航空旅団、河北省滄洲滄県第172航空旅団、甘粛省酒泉金塔大176航空旅団に配備されている。

  • 8月28日発表:中国海軍艦艇と空軍は東シナ海で哨戒と戦闘訓練を実施

8月27日東部軍管区の空軍・海軍は東シナ海に爆撃機、戦闘機、艦艇からなる合同軍を出動、哨戒と攻撃訓練を行なった。

図37:(China Military) 8月27日、上海あるいは復讐の基地から東シナ海に向け離陸する「J-16」戦闘機。

台湾国防部ニュース

  • 8月18日発表:中国軍が台湾周辺で軍事演習、大陸委「強権で問題解決できない」

前掲の「8月17日発表・中国軍ニュース/中国東方軍管区は台湾付近の海空域で実弾射撃演習を実施」で述べたが、台湾国防部でも本件を取り上げ、「力ずくで問題解決はできない」と発表した。

17日午前、台湾の南西防空識別圏( ADIZ)に中国軍の対潜哨戒機、戦闘機、爆撃機延べ11機が侵入したため、無線で帰国、退去を要求した。当日は台湾の海空軍が同じ海域で軍事演習を行っていたが、これを牽制するためと思われる。

本件を含めて米国は、中国が台湾に対し軍事、外交、経済面での圧力を加えないよう求めた。米国は8月4日に155 mm自走榴弾砲「M109A6」を40両、無人攻撃機「MQ9B」などを台湾に売却することを承認したばかり。

―以上―