令和3年1月、我国周辺における中露両軍の活動と我国の対応


2021-02-04(令和3年) 松尾芳郎

Revised 2021-01-05(要約の追加)

 

令和3年1月、我国周辺における中露両軍の活動と、我国防衛省および同盟諸国軍の動きに関し、それぞれの公的部門から多くの発表があった。以下にその項目と内容を紹介する。中露両軍による我国の防空識別圏(ADIZ)や領海侵入事件はなかったが、台湾周辺、南シナ海では緊迫した状況が続いている。今月の注目すべき項目は3つ;―

①  陸自水陸機動団と米第31海兵機動展開隊との上陸訓練、

②  コープ・ノース2021グアム島周辺空域出の日米豪共同訓練、

③  中国軍機28機が2日連続で台湾南西の台湾防空識別圏に侵入、

(On January 2021, the military threats in the Indo-Pacific region brought by Russo-Chinese Forces were reported busy, in particular around the Taiwan and its coastal waters. Take note three items as follows;- 1) Japan’s Amphibious Rapid Deployment Brigade and U.S. 31st Marine Expeditionary Unit conducted joint exercise in Okinawa’s islands. 2) Cope North 2021, sponsored by U.S. Pacific Air Force, conducted at Andersen AFB, Guam. to enhance interoperability among U.S., Australian and Japanese forces. 3) China dispatched two large formations of warplanes entering to the south-west of Taiwanese ADIZ )

 

防衛省

1月22日公表  新たな重要装備品の選定/「12式地対艦誘導弾能力向上型」開発決定、令和3年度予算案への追加要求事項とする決定をした。

 

統合幕僚監部

大雪、鳥インフルエンザなど災害派遣活動、中東地域での海賊対処活動のみ。中露軍の活動については言及はなし。

 

陸上幕僚監部

1月21日公表  米第31海兵機動展開隊との共同訓練の概要について

 

海上幕僚監部

1月13日公表  令和2年度第2回米国派遣訓練(潜水艦)について

1月14日公表  令和2年度米海軍主催、固定翼哨戒機多国間共同訓練(シードラゴン2021)への参加について

1月16日公表  日米共同訓練について

1月21日公表  令和2年度機雷戦訓練(伊勢湾)および掃海特別訓練(日米共同訓練)について

1月21日公表  日米共同訓練について

 

航空幕僚監部

1月15日公表  コープ・ノース21における日米豪共同訓練等の実施について

1月16日公表  米軍との共同訓練の実施について

1月22日公表  PAC-3機動展開訓練の実施について

 

米第7艦隊ニュース

1月11日公表  米海軍と同盟諸国海軍でSea Dragon 2021演習を開始

1月15日公表  米海軍セオドア・ルーズベルト(Theodore Roosevelt)空母打撃群は日本海上自衛隊と共同訓練を実施

1月23日公表  セオドア・ルーズベルト空母打撃群は南シナ海に航行

1月28日公表    CTF-72 Sea Dragon 2021演習を終了

 

ロシア海軍情報管理局ニュース

1月26日公表  太平洋艦隊の遠距離対潜哨戒機Tu-142M3、ベーリング海およびチュクチ海上空で長時間飛行を実施

 

中国軍ニュース(China Military Online)

1月15日発表  中国海軍駆逐艦隊は南シナ海で演習

1月19日発表  大型輸送機「Y-20」が西部戦区へ導入

1月23〜24日発表 中国軍爆撃機および戦闘機合計28機が台湾南西の防空識別圏(ADIZ)に侵入、台湾に接近飛行

 

以下に各項目の詳細を述べる。

 

防衛省

 

1月22日公表 「12式地対艦誘導弾能力向上型」開発決定

令和3年度予算案への追加要求を決めた。ライフサイクル・コストとして約3,200億円を見積もる。これには誘導弾の経費は含まない、理由は経費から保有数量を推定できるので公開しない。

本件については、TokyoExpress 2021-01-10 「12式地対艦誘導弾(改)の後継、長射程の12式地対艦誘導弾能力向上型の開発が決定」に述べているので参照されたい。

中国国防省の公式サイト[China Military Online]は、本件に関し1月12日付けで次のように報じている。「日本政府は12式地対艦ミサイルを改良しステルス性形状にし、射程を2,000 kmに伸ばすことを決めた。日本はこれで “防衛に専念する政策” を切り替え攻撃能力を備えることになる。さらに空自戦闘機の搭載する新型の超音速対艦ミサイル[ASM-3A]の発注を予算化した。これらは地域の安定を脅かす動きで見過ごすことはできない」。

何時ものことだが、中国は自国の覇権主義を棚に上げ、日本を見下した言い方をする。承服できない。

 

陸上幕僚監部

 

1月21日公表  米第31海兵機動展開隊との共同訓練の概要について

(2020年2月にも同様演習を実施した)

1月28日から2月6日にかけて沖縄県と周辺海域で日米両軍による共同の着上陸訓練、陸自ヘリによる日米艦艇を使った昼夜間の発着訓練を行い、戦術技量の向上と共同作戦能力の向上を図る。

参加部隊は;―

陸上自衛隊から、水陸機動団、第1ヘリコプター団、西部方面航空隊で、これら部隊が保有する偵察用ボート、AAV7水陸両用兵員輸送車、CH-47ヘリコプターなどを使う。

米海兵隊からは第31海兵機動展開隊、米海軍からは第11水陸両用戦隊が参加する。

海上幕僚監部・同日付け公表「日米共同訓練について」によると、海自からは輸送艦「おおすみ」が、米第7艦隊からは強襲揚陸艦「アメリカ(LHA 6)」、ドック型揚陸艦「ニューオルリンズ(LPD 18)」、および同「アシュランド(LDS 48)」が演習に参加する。(前回の演習では「ジャーマンタウン(LSD 42)」が参加した)

「水陸機動団」:2018年(平成30年)、長崎県佐世保市相浦駐屯地に陸上総隊の直轄部隊として創設された。「31中期防」に基づき、現在2個連隊の水陸機動連隊は3個連隊に増強され、合計約3,000人規模になる予定。水陸機動団・戦闘上陸大隊(佐世保市崎辺分屯地)がAAV7水陸両用兵員輸送車(58輌を調達)を装備している。

航空輸送は陸上総隊直轄の第1ヘリコプター団輸送航空隊(千葉県習志野市)が担当する。この輸送航空隊はCH-47ヘリコプターを装備するが、現在V-22テイルトローター機(17機)を導入中で、数年後にはV-22が主力となる。

「第31海兵機動展開隊」/[ 31st MEU= 31st Marine Expeditionary Unit ]:[31st MEU]は、海兵隊の「MEU /機動展開隊」の中で唯一常時海外に展開し “インド・太平洋”で紛争が起きた場合、最初に対応する部隊。[ 31st MEU ]の任務は、「水陸急速展開旅団」/[ ARBD=Amphibious Rapid Deployment Brigade] の兵員や陸自の「水陸機動連隊」の兵員を、海軍のドック型揚陸艦で輸送、ゴムボートなどで発進、敵前上陸させること、である。

「第11水陸両用戦隊」/ PHIBRON 11=Amphibious Squadron 11」:「31st MEU」と共に“インド・太平洋”で紛争が起きた時、即時対応する海軍の部隊。第7艦隊の強襲揚陸艦「アメリカ(LHA 6)」、ドック型揚陸艦「グリーンベイ(LPD 20)」、水陸両用ドック型揚陸艦「ジャーマンタウン(LSD 42)」、ドック型揚陸艦「ニューオルリンズ(LPD 18)」、水陸両用ドック型揚陸艦「アッシュランド(LDS 48)」に乗務、一旦緩急あるときは[海兵隊の31stMEU]と共同で上陸作戦を行う。[PHIBRON 11 ]は海兵隊「31stMEU」と共に、米国の「遠征打撃グループ/ESG=Expeditionary Strike Group」の中核を務めている。

演習に参加する日米海軍の揚陸艦について以下に簡単な紹介をする。

おおすみ

図1:(海上自衛隊)輸送艦「おおすみ (LST 4001)」。1998年3月就役、第1輸送隊に所属し母港は呉。満載排水量14,000 ton、甲板には陸自輸送ヘリコプター [CH-47] の離着艦スポット2箇所がある。LCAC (Landing Craft Air Cushion)上陸用エアクッション艇2隻を搭載し、上陸兵員330名、90式戦車18両などを乗せ、艦尾ウエルデッキから発進・揚陸を行う。対空兵装は20 mm Phalanx CIWS機関砲2基。同型艦は「しもきた (LST 4002)」、「くにさき (LST 4003)」の2隻。速力は米海軍の揚陸艦と同じく22ノット。写真は「おおすみ」が、搭載するLCAC エアクッション艇2隻と並走する様子。

アメリカ2

図2:(US Navy) 強襲揚陸艦「アメリカ/America (LHA 6)」。F-35B STOVL戦闘機、MV-22オスプレイ、その他ヘリを搭載する。2014年4月就役。佐世保が母港、米国の「遠征打撃グループ/ESG=Expeditionary Strike Group」の旗艦を務める。艦種は「LHA=Landing Helicopter Assault (ヘリコプター使用強襲揚陸艦の意)」。満載排水量46,000 ton、上陸兵員約1,700名を輸送する。搭載航空機は、F-35B STOVL(短距離離陸・垂直着陸)戦闘機を20機、MV-22Bオスプレイ輸送機、その他ヘリコプターなどで、LCACなどを発進させるウエルデッキはない。実質は航空母艦である。対空兵装は、20 mm Phalanx CIWS機関砲2基、SeaRAM (Rolling Airframe Missile)ミサイル2基(各21発)など。同型艦は「トリポリ(Tripoli)」が昨年就役、「ブーゲンビル(Bougainville)」が建造中。

ニューオルリンズ

図3:(US Navy) ドック型揚陸艦「グリーンベイ/Green Bay (LPD 20)」2009年1月就役、同型艦「ニューオルリンズ(LPD 18)」と共に佐世保が母港。艦種は「LPD=Landing Platform, Dock」、(前身の [LSD]よりウエルデッキの容積を減らし貨物搭載を増やした型)。満載排水量25,000 ton、LCAC (Landing Craft Air Cushion)上陸用エアクッション艇2隻を搭載、上陸兵員700+100名を輸送する。対空兵装は20 mm Phalanx CIWS機関砲2基、SeaRAM (Rolling Airframe Missile)ミサイル2基(各21発)。CH-46 Sea Night 双発ヘリを4機またはMV-22オスプレイを2機搭載する。同型艦は11隻が就役中で、追加4隻が予定されている。

アシュランド

図4:(US Navy) 水陸両用ドック型揚陸艦「アシュランド/Ashland (LSD-48)」1992年5月就役、母港は佐世保。艦種は「LSD=Landing Ship ,Dock(ドック型揚陸艦の意)」。満載排水量17,000 ton、LCAC (Landing Craft Air Cushion)上陸用エアクッション艇5隻を搭載、上陸兵員400+100名を輸送する。対空兵装は20 mm Phalanx CIWS機関砲2基、SeaRAM (Rolling Airframe Missile)ミサイル2基(各21発)。同型艦は8隻就が役中。

 

中国共産党サイト環球時報は、今回の日米合同上陸演習を事前に察知してか今年1月3日付けで次のように報じた。題名は「急ピッチで強襲揚陸艦の建造を進める中国、台湾海峡や南シナ海で優位に」。その中で、中国軍は075型を8隻を発注済みで、うち現在建造中の3隻は2021年末までに完成する。075型は30機の攻撃ヘリと900名の上陸兵員を収容する。075型が揃えば、台湾やその近辺の日本の島嶼に対する軍事作戦で威力を発揮できる、と述べている。

中国075

図5:(Wikipedia) 中国海軍の「075型強襲揚陸艦」。満載排水量35,000~40,000 ton、艦種は「LHD=Landing Helicopter, Dock (ヘリコプター使用ドック型揚陸艦の意)」。ヘリコプター30機、70 ton級のLCU大型エアクッション艇2隻を搭載、上陸兵員1,600名を輸送する。配備開始は今年から。

 

海上幕僚監部

 

1月13日公表  令和2年度第2回米国派遣訓練(潜水艦)について

1月14日から4月1日の間、米海軍の協力を得て、潜水艦の洋上訓練および施設利用訓練を行い、戦技向上を図る。派遣する潜水艦は「せとしお」、訓練海域は日本からハワイ諸島に至る海域である。

潜水艦の米国派遣訓練は昭和38年から実施中で、今回が80回目となる。

「せとしお( SS 599 )」は「おやしお」型潜水艦の10番艦として2007年2月就役、横須賀基地第2潜水隊群第4潜水隊に所属中。「おやしお型」は11隻建造され、次級「そうりゅう型」に引き継がれた。

スクリーンショット 2021-02-04 15.14.13

図6:(海上自衛隊)「せとしお」/「おやしお」型は、艦首にバウ・ソナー、艦尾に曳航式ソナー(TASS)、艦側面にフランク・アレイ・ソナーを備える。水中排水量4,000 ton、水中速力20 kt、533 mm魚雷発射管6門から89式長魚雷および「ハープーン」対艦ミサイルを発射できる。同型艦は11隻だが内2隻は除籍され練習潜水艦になっている。

 

1月14日公表  令和2年度米海軍主催、固定翼哨戒機多国間共同訓練(シードラゴン2021)への参加について

令和2年度米海軍主催の固定翼哨戒機による多国間共同訓練(Sea-Dragon 2021)に参加、戦技向上と参加国海軍との連携強化を図る。訓練空域はグアム島周辺で1月14日から1月28日の間行った。派遣したのは[P-1]哨戒機2機とその要員で、訓練項目は対潜水艦訓練。

米第7艦隊発表(2021-01-28) 「三沢基地の[CTF-72 ]部隊は”シードラゴン2021演習“を終了」と題して次のように報じた。

グアム島で2週間に渡り行われた5カ国による250時間に及ぶ多国籍軍演習シードラゴン2021は米海軍潜水艦を探索するという形で、1月27日に成功裏に終了した。参加したのは三沢基地第72機動軍配下の「P-8A」ポセイドン(Poseidon)哨戒機2機と、オーストラリア空軍、日本海上自衛隊、インド海軍、カナダ空軍所属の航空機等で、対潜水艦戦闘演習(ASW=Anti-Submarine Warfare)を実施した。今回は3回目の演習で、これを通じて同盟国間の戦技向上が進展、インド・太平洋海域の安全確保を内外に示すことができた。シードラゴン最終日は、米海軍ロスアンゼルス級潜水艦「プロビデンス/Providence SSN 719」を探索・追跡する訓練で締め括られた。

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図7:(US 7th Fleet, by Lt. Cmdr. Kyle Hooker) グアム島アンダーセン空軍基地で「シードラゴン2021」演習終了の記念写真 (1月28日)で、参加した乗員と哨戒機の一部が写っている。写真右から2機目が海自「P-1」哨戒機。

 

「P-1」は、川際重工が製造、エンジンはIHI製造の「F7-10」ターボファン推力13,500 lbs ( 6.1 ton)を4基装備する。最大離陸重量80 ton、巡航速度830 km/hr、航続距離8,000 km.。兵装は空対艦ミサイル、短魚雷、対潜爆弾など9 ton以上を搭載する。

これまでに36機が配備されている。

P-1哨戒機

図8:(海上自衛隊)「P-1」は、翼下面などにハードポイント8箇所があり、胴体爆弾倉(bomb bay)には対艦ミサイル「ハープーン(AGM-84)、「91式対艦誘導弾 (ACM-1C)」、新型で長射程の[12式改良型]空対艦ミサイル、などを搭載できる。

 

1月16日公表  日米共同訓練について

1月15日沖大東島周辺海空域で、海自艦艇と米海軍艦艇で戦技向上と両海軍の連携強化のため共同訓練を実施した。参加したのは海自護衛艦「あさひ(DD 119)」と「こんごう (DDG 173)」、米海軍からは空母「セオドア・ルーズベルト(CVN 71)」、巡洋艦「バンカー・ヒル(CG 52)」、駆逐艦「ジョン・フィン(DDG 113」である。

米第7艦隊ニュース(1月15日)は「空母セオドア・ルーズベルトを中心とする第9空母打撃群(CSG-9=Carrier Strike Group Nine) は日本海上自衛隊と共同訓練を実施」と題し次のように報じている。

参加した米艦は空母「セオドア・ルーズベルト/Theodore Roosevelt(CVN 71)」、巡洋艦「バンカー・ヒル/Bunker hill(CG 52)」、駆逐艦「ジョン・フィン/John Finn(DDG 113」。両海軍の共同訓練は、これまでの同盟関係の強化、技量の向上、そして“自由で開かれたインド・太平洋”を維持する決意を内外に示すために行われた。「第9空母打撃群」はハワイ真珠湾を母港とする太平洋艦隊に所属、旗艦は「セオドア・ルーズベルト(CVN 71)」で、横須賀第7艦隊と共に“インド・太平洋”海域の秩序を保つのが任務。

演習終了後「セオドア・ルーズベルト」と護衛の3隻のイージス艦からなる第9空母打撃群(CSG 9)は西に向かい、1月23日に台湾南のバシー海峡を通過して南シナ海に入った。

沖大東島

図9:(Wikipedia) 1月15日に日米両海軍が共同演習をした「沖大東島」周辺海空域の位置。

スクリーンショット 2021-02-04 15.15.54

図10:(海上幕僚監部)1月15日撮影。米空母「セオドア・ルーズベルト(CVN 71)」を先頭に、向かって右が海自護衛艦「あさひ(DD 119)」と「こんごう (DDG 173)」、左側が米海軍の巡洋艦「バンカー・ヒル/ Bunker Hill (CG 52)」、駆逐艦「ジョン・フィン/ John Finn (DDG 113」。「第9空母打撃群 (CSG 9)」にはもう1隻、駆逐艦「ラッセル(Russell (DDG 59)が加わっている。「あさひ」を除く他は全てイージス艦である。

01-15 米空母とこんごう

図11:(USS Theodore Roosevelt Public Affairs photo by PO 3rd Class Dartanon) 空母「ルーズベルト」艦上から併走する「こんごう(DDG 173)」と「あさひ(DD 192)」を見たところ。

1-15ルーズベルト

図12:(Wikipedia)「セオドア・ルーズベルト(Theodore Roosevelt(CVN 71))は「ニミッツ」級原子力空母の4番艦、1986就役、満載排水量97,000 ton、全長333 m、最大幅77 m、速力30 kt以上、乗員3,200 名と航空要員2,480名が乗務、90日分の食料を搭載。搭載航空機は「第11空母航空団 (Carrier Air Wing 11)」所属の約70機(F/A-18など戦闘攻撃機44~48機、電子戦機5機、早期警戒機5機など)。

 

1月21日公表  令和2年度機雷戦訓練(伊勢湾)および掃海特別訓練(日米共同訓練)について

2月1日から2月10日の間伊勢湾海空域で、海自は機雷戦訓練および米海軍を含めた掃海特別訓練を実施する。海自側から参加するのは掃海母艦2隻、掃海艦1隻、掃海艇13隻の合計16隻と掃海ヘリコプターMCH-101が3機である。米海軍からは第7対機雷戦隊・水中処分員10名である。

掃海母艦うらが

図13:(海上自衛隊)海自が保有する掃海母艦は「うらが (MST 463)」と「ぶんご(MST 464)で、共に機雷敷設艦の機能を持つ。就役は1997年。満載排水量6,900 ton、速力22 kt、機雷敷設装置3型、Mk105航空磁気掃海具、Mk104航空音響掃海具、を備える。ヘリコプター甲板があり、MH-53E掃海ヘリ、MCH101掃海ヘリの離着艦ができる。艦尾の扉は、中央は航空掃海用具用、両側は機雷敷設敷設用で、機雷は230発搭載できる。兵装は76 mm単装速射砲、後日Mk 61 20 mm CIWS高性能機関砲を装備する。

MCH-101

図14:(海上自衛隊/丸紅)海自が運用する掃海・輸送機「MCH-101」は速力150 kt、全備重量14.6 ton、エンジンはロールス・ロイスRTM322型2,150馬力3基を搭載。イギリス/イタリア合弁企業アグスタ・ウエストランド(Agusta Westland)製の「AW 101」汎用ヘリコプターが基本。海自は「MCH-101」として掃海及び輸送用に調達し、川崎重工がライセンス生産、2006年から運用中で11機を保有している。他に砕氷艦「しらせ」の艦載機として「CH-101」を3機を調達済み。メイン・ローター及びテール・ローターは折り畳み式で艦載用に適した機体。

 

1月21日公表  日米共同訓練について

1月31日から2月4日の間、沖縄県米訓練場およびその周辺で、海自は、陸上自衛隊・水陸機動団と米海兵隊・第31海兵機動展開隊などが行う日米共同訓練を支援する。海自から参加するのは輸送艦「おおすみ」、米海軍第7艦隊から強襲揚陸艦「アメリカ」、ドック型揚陸艦「ニューオルリンズ」および同「アシュランド」が」参加する。

本項については「陸上幕僚監部 1月21日公表…米第31海兵機動展開隊との共同訓練の概要について」に紹介済みなのでこちらを参照されたい。

 

航空幕僚監部

 

1月15日公表  コープ・ノース21における日米豪共同訓練等の実施について

1月18日〜2月28日の間、グアム島アンダーセン米空軍基地、ファラロン・デ・メデイニラ空対地射爆場ならびに周辺空域。それとパラオ共和国バベルタオブ島ロマン・トメトウチェル空港およびアンガウル島で、日米豪3カ国空軍の共同訓練を実施し、戦技向上を図る。

空自からの参加部隊は、第2航空団(千歳基地)、第8航空団(築城基地)、警戒航空団(浜松基地)から、「F-15J/DJ」戦闘機6機、「F-2A」戦闘機3機、「E-767」早期警戒機1機、合計人員150名が参加する。この他に第3航空輸送隊(美保基地)から「C-2」輸送機1機と人員100名が参加する。

訓練項目には、各種戦技訓練、空中給油訓練、物量投下訓練などを含む。

また同期間に、日米豪にフランスを含めた4カ国共同で、同地域で人道支援、災害救援の訓練を行い、共同運用性の向上を図る。これに参加するのは基地警備教導隊(百里基地)10名と第3輸送航空隊(美保基地)の「C-2」輸送機1機、人員100名。訓練は、航空輸送の他に患者搬送、飛行場応急復旧訓練を含む。

米太平洋空軍(pacific Air Force)によれば「コープ・ノース (Cope North) 2021」は、太平洋空軍が主催し、グアム島アンダーセン空軍基地(Andersen AFB) で毎年行われている演習で、同盟諸国空軍と戦技訓練、輸送訓練を共同で行い、日本、オーストラリアとの連携を深めるための訓練とされる。

米空軍からは、イールソン空軍基地 (Eielson AFB, Alaska)から「F-35」戦闘機、三沢空軍基地から[F-16]戦闘機がグアム島アンダーセン空軍基地に飛来、すぐ隣にある不整地ランウエイでの発着訓練を実施する。

グアムの基地は、米国から遠く離れた前線で中国と対峙する位置にあり、米本土の防衛のみならず、日本をはじめとする極東の同盟諸国を守る要である。これに対し、中国は昨年H-6K爆撃機を度々グアム島近くまで飛行させ、いつでも攻撃可能と脅迫を繰り返してきた。

このような情勢の変化を踏まえて、今年の演習はより実戦を想定した形で行われている。

アンダーセン基地が使用不能になった場合に備え、近くの不整地ランウエイを使う訓練、ランウエイ破損時の応急復旧訓練などがそれである。

Cope21不整地ランウエイ

図15:(Air Force Magazine News)コープ・ノース21演習で、F-35、F-16、F-15、F-2など戦闘機が使う不整地ランウエイ(Andersen’s Northwest Field)。これまでC-130輸送機が使ったことがある。全長8,000 ft ( 2,400 m )で、不完全なタキシーウエイと駐機場が付いてる。近年中露両軍のミサイル攻撃能力が著しく向上して、どこの空軍基地でも安全が確保出来なくなってきた。そのため、このような不整地ランウエイでの訓練の必要性が高まっている。

 

1月16日公表  米軍との共同訓練の実施について

1月12日、日本海、東シナ海および沖縄周辺空域で日米両空軍の共同演習を実施した。参加したのは、、米空軍「B-1」爆撃機1機と、第5航空団(新田原)「F-15」戦闘機4機、第6航空団(小松基地)「F-15」戦闘機4機、第8航空団(築城基地)「F-2」戦闘機4機、第9航空団(那覇基地)「F-15」戦闘機4機。

訓練項目は編隊航法訓練および邀撃戦闘訓練。

1-12 B-1と空自戦闘機

図16:(航空幕僚監部)1月12日日本海上空でB-1爆撃機と編隊を組む空自F-15戦闘機。

 

1月22日公表  PAC-3機動展開訓練の実施について

2月2日、弾道ミサイル迎撃に関わる戦技向上と、自衛隊の即応体制を国民に示すために、第4高射群(岐阜基地)は、弾道ミサイル迎撃ミサイル「PAC-3」機材の展開から撤収までの訓練を行う。今後同様訓練を全国各地で実施する予定。

 

ロシア海軍情報管理局ニュース

 

1月26日公表  太平洋艦隊の遠距離対潜哨戒機Tu-142M3、ベーリング海およびチュクチ海上空で長時間飛行を実施

1月26日、ロシア太平洋艦隊海上航空隊の遠距離対潜哨戒機「Tu-142M3」2機は、米国アラスカ州に隣接するベーリング海およびチュクチ海上空で計画した飛行を行った。この飛行は11時間を超え飛行距離は8,000 km に達した。途中同じ海上航空隊の高空戦闘機「MiG-31B」が護衛のため同行した。飛行はアラスカのADIZ(防空識別圏)を侵犯せずに、空域使用に関する国際法規に沿って行われた。

01-16 Tu-142M3

図17:(ロシア連邦国防省)ロシア海軍の遠距離対潜哨戒機「Tu-142」は空軍の戦略爆撃「 TU-95」の海軍型で1972 年から配備開始、1994年までに100機が生産された。現在北方艦隊と太平洋艦隊に各12機が配備され、太平洋艦隊所属機は「カーメニ・ルチェイ飛行場」/モンゴフトに配備されている。

ベーリング海

図18:(Google)遠距離対潜哨戒機「Tu-142」が配備されている「カーメニ・ルチェイ」飛行場は、極東連邦管区ハバロフスク地方の東端「モンゴフト」にある。ここは間宮海峡を挟んで樺太がある。その南は北海道で我が国の至近距離にある、ということ。

カーメニ・ルチェイ

図19:(ロシア海軍情報管理極)モンゴフト近郊にあるロシア海軍太平洋艦隊海軍飛行隊が使う「カーメル・ルチェイ飛行場」。タキシーウエイには多数の駐機場がある。

 

中国軍ニュース(China Military Online)

 

1月15日発表    中国海軍駆逐艦隊は南シナ海で演習

中国補給艦

図20:(China Military /Photo by Li Wei) 補給艦901型 「査干湖 (Caganhu) 967」は2020年頃就役したばかり最新型。その左のドック型揚陸艦「崑崙山 (Kunlunshan) 998」・25,000 tonに物資燃料の補給中の写真で、2021年1月14日に南シナ海で撮影したもの。この2隻は、演習中の中国南部戦区 南海艦隊所属の駆逐艦隊に随伴、補給活動をしている。「査干湖(Caganhu) 967」の大きさは不明だが、写真から3万トン級以上と推定できる。

 

1月19日発表 大型輸送機「Y-20」、西部戦区へ初導入

Y-20初飛行

図21:(China Military/Photo by Liu Shu) 2021年1月4日、中国西部戦区で最新型の大型輸送機「Y-20」の初飛行が行われた。「Y-20」は西安航空機が製造、2016年6月から配備開始、20機以上が空軍で運用中。機体構造には複合材を多用、3Dプリント製法で軽量化している。いずれもエンジンはロシア製ソロビエフ(Soloviev) D-30KP-2、推力12 ton級を4基装備するが、中国製の推力14 トン級の「瀋陽(Shenyang) WS-20」への更新が始まっている。これにより貨物搭載量は66 tonに増加する。軍事情報サイト ”ジェーン(Jane’s)“ は、「中国はY-20輸送機1,000機の配備を目論む」と報じている。

 

1月23〜24日発表 中国軍爆撃機および戦闘機が両日に渡り合計28機で台湾南方域の防空識別圏(ADIZ)に侵入、台湾に接近飛行

 

中国共産党公式サイト「環球時報」2021-01-17は次のように報じている。

「中国空軍は台湾海峡で演習を行い、独立志向を強める台湾政府とそれを支援する米国に対して厳しい警告を発した。」台湾のメデイアは、1月23、24両日に渡り中国軍機28機が台湾南西の防空識別圏(ADIZ)に飛来した。これはこれまでで最大の規模となる侵犯だ、と報じた。

中国国防省の呉謙報道官は、本件に関し「台湾独立勢力の挑発と米国の干渉に対する我々の厳正な対応だ、台湾独立は戦争を意味する。中国は独立阻止のために武力行使を辞さない」と言明した。

台湾国防省によると、台湾防空識別圏(ADIZ)を超え台湾南西海上に侵入した中国軍機は、1月23日に13機、1月24日に15機、1月31日に1機である。

23日:戦闘機「J-16 (殲 16)」4機、爆撃機「H-6K (轟 6) 」8機、対潜哨戒機「Y-8(運8)」1機。

24日:戦闘機「J-10 (殲 10)」6機、「J-16 (殲 16)」4機、「Su-30」2機、対潜哨戒機「Y-8 (運8)」2機、電子戦偵察機「Y-8 RECCE (運8)」1機。

31日:戦闘機(機種不詳)6機、対潜哨戒機「Y-8(運 8)」1機、同時に米軍偵察機(機種不詳)1機が同じ空域を飛行した。

海幕公表「1月16日日米共同訓練について」で記述したが、1月15日沖大東島周辺海空域で、海自艦艇と「セオドア・ルーズベルト」および3隻のイージス艦からなる「第9空母打撃群(CSG 9)」が共同訓練を行なっている。その後同空母打撃群は西に向かい、1月23日に台湾南のバシー海峡(Luzon Strait)を通過して南シナ海に入った。

中国はこれに対し、異常な数の空軍機を発進させ、米空母群を目標に攻撃訓練を行なった。中国機の通信を傍受した米空母は危険を察知、F/A-18戦闘攻撃機を発進させ警戒に当たった。

米空母を標的に攻撃訓練をした中国軍爆撃機「H-6K」8機には、空母攻撃用の「YJ-12」超音速対艦巡航ミサイルを4発ずつ搭載できる。「YJ-12」はマッハ3の速度で400 kmを飛行、空母攻撃ができる。8機からだと合計32発を一斉に発射できるわけだ。1月23日の米空母と「H-6K」の距離は400 km以上離れていたが、もう少し接近(100 km程度)していれば危険性は一挙に高まる事態だった。

「YJ-12」超音速対艦巡航ミサイルは「H-6K」爆撃機だけでなく中国海空軍が多数保有する他の戦闘攻撃機にも搭載可能。

「YJ-12」超音速巡航ミサイルに関しては、「TokyoExpress 2014-06-26 “米空母打撃群(CSG)に挑戦する中国の巡航ミサイル”」に紹介してあるので参照されたい。

1−23 中国軍機

図22:(台湾国防省)台湾国防省発表の1月23日における中国軍機の台湾防空識別圏侵犯の航路。

1-24中国軍機

図23:(台湾国防省)同じく24日における中国軍機の台湾防空識別圏侵犯の航路。

1-23 Y-8対潜哨戒機

図24:(China Military)Y-8対潜哨戒機、23日、24日に各1機が台湾ADIZ南西部を侵犯。

 1-23 Y-8偵察機

図25:’china military) Y-8電子戦偵察機、24日に台湾ADIZ南西部を侵犯。

1-23 H-6K

図26:(China Military)H−6K爆撃機は、23日に8機が台湾ADIZ南西部を侵犯、米空母に対し攻撃演習を行なった。「H-6」初期型は、ソビエトのTu-16爆撃機を国産化した機体で1968年の初飛行。順次改良され現在の「H-6K」は巡航ミサイル搭載型で2007年に初飛行、その改良型の洋上対艦攻撃型「H-6J」は、「YJ-12」対艦ミサイル4発を搭載できる、今回飛来したのはこの型式と思われる。最大離陸重量76 ton、爆弾/ミサイル搭載量9 ton、航続距離6,000 km.。配備機数は不明だが50機以上か。

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図27:(China Military) [YJ-12](輸出用はCM-302)。固体燃料ロケット・液体燃料ラムジェットの統合型エンジンで飛行、マッハ3級の超音速で400 kmを飛び、目標近くの終末航程では高度15 m位を飛行。全長6.3 m、直径75 cm、重さ2.5 ton。2009年から配備中。

1-23 Su-30戦闘機

図28:(China Military) Su-30戦闘機、24日に2機が台湾AIDIZ南西部を侵犯。中国向けは「Su-30MKK」で、中国は約100機を保有しいている。複座で最大離陸重量34.5 ton。

1-23 J-16戦闘機

図29:(China Military))J-16戦闘機は、23日に4機、24日に4機が台湾ADIZ南西部を侵犯。「J-16」はロシア製「Su-30MKK」のエンジンを国産のWS10A型に換装、アビオニクスなどを近代化した中国製の戦闘機。2014年から配備が始まり140機ほど配備されている。

 1-24 J-10B

図30:(Wikipedia)2018年珠海航空ショーで展示された J-10B戦闘機。24日に6機が台湾ADIZ南西部を侵犯。単座、複座の両形式があり、最大離陸重量20 ton、450機以上が生産されている。

 

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