日・米・豪・など同盟国軍、大規模な共同訓練を連続実施―サザン・ジャッカルー、バリアント・シールド、レゾリュート・ドラゴンー



2026-06-30(令和8年)松尾芳郎

2026年5月末から7月初めにかけて日米豪を主体とする同盟国軍は太平洋、日本、オーストラリアを含む広大な区域で次の3件の2026年度大規模共同訓練を行なっている。目的は、自由で開かれたインド太平洋の維持・強化に寄与するため。

「サザン・ジャッカルー(Southern Jackaroo)」

期間は5月29日〜7月3日、オーストラリア・クイーンズランド州タウンズビル(Townsville, Queensland)演習場で実施中。

「バリアント・シールド(Valiant Shield)」(勇敢な盾)

期間は6月22日〜7月1日、日本全国自衛隊施設。在日米軍施設区域、我国周辺海空域、ハワイ州パールハーバー・ヒッカム統合基地(Joint Base Hickam, Pearl Harbor , Hawaii)、グアム島(Guam)及び周辺海空域で実施中

レゾリュート・ドラゴン(Resolute Dragon)」(断固とした竜)

期間は6月20日〜6月30日、九州各県及び沖縄県の自衛隊施設及び在日米軍施設とその周辺海空域で実施中。

以下に各訓練内容を紹介する。

「サザン・ジャッカルー(Southern Jackaroo)」

参加部隊は次の通り。

陸上自衛隊:第7普通科連隊、中部方面特科連隊、中部方面情報隊

(注):「5月22日 陸上幕僚監部発表 には「第7普通科連隊」参加とあるが、6月3日Marine Newsは「第46普通科連隊」と記載。ここでは後者の説明によった」

米海兵隊 :海兵隊ダーウイン・ローテーション軍麾下の第5海兵連隊・第1大隊及び同第5戦闘支援大隊 (1st Battalion, 5th Marine Regiment and Combat Logistics Battalion 5, both with Marine Rotational Force- Darwin 26.)

米陸軍  :第11空挺師団

オーストラリア陸軍:第3旅団 (3rd Brigade)

日米豪3軍は6月3日タウンズビル演習場で公式な開会式を行い、5月29日から7月3日の共同訓練の開催を宣言した。

訓練を指揮するオーストラリア陸軍第1師団長アッシュ・コリングバーン(Ash Collingburn)大将は参加兵士を前に「この訓練は公園の散歩ではない、本気で取組め(Let me be blunt, this will not be a walk in the park)」、「訓練は実戦さながらのリハーサルで、地上戦での相互連携を向上させるものだ」と叱咤激励した。

多数の装甲車両、大砲、航空機に支援された数千名の兵士がこれまでで最大の「サザン・ジャッカルー」に参加した。

4週間以上にわたり兵士たちは、数百km間隔にある都市間を車両や航空機で移動しながら、過酷な環境のもとで頑強な仮装敵と実弾射撃を交えて交戦する。

図1:(Photo: Corporal Guy Sadler左から米海兵機動部隊司令ニコラス・フォースト(Nicholas Foust)大佐、オーストラリア陸軍第3旅団長ベン・マクレナン(Ben MacLennan)准将、陸自第46普通科連隊長 森田 裕哉 中佐

図2:(陸上幕僚監部)中部方面特科連隊(姫路駐屯地)155 mm榴弾砲 [FH70] を発射する日米豪3軍の兵士。

図3:(陸上幕僚監部)中部方面特科連隊(姫路駐屯地)155 mm榴弾砲 [FH70] を発射する日米豪軍の兵士。 この部隊は20243月に新編された特科(砲兵)連隊で、大量の火力を随時随所に集中させ、広い地域を制圧することが任務の火力戦闘部隊。連隊本部および第1特科大隊は姫路駐屯地(兵庫県)に、第2特科大隊は豊川駐屯地(愛知県)に、第3特科大隊は日本原駐屯地(岡山県)に、第4特科大隊は松山駐屯地(愛媛県)に駐屯する。

図4:( US Marine Photo: Lance Bombardier Christien Vestergaardオーストラリア陸軍第3旅団と米海兵機動展開部隊、日本陸上自衛隊の車両群、タウンズヒルのラバラック兵舎でパレードを行うため集結している。

「バリアント・シールド(Valiant Shield)」(勇敢な盾)

“バリアント・シールド”は米軍が主催、西太平洋区域で2年毎に行う実働訓練で2024年に開始、今年で2回目。期間は6月22日〜7月1日。訓練区域は、日本全土の日米両軍基地、ハワイ・パールハーバー(Pearl Harbor, Hawaii)統合基地、北マリアナ諸島(Northern Mariana Islands)、グアム島基地、及びその周辺海空域となっている。

”バリアント・シールド26 (以下[VS26]と略称)“は、様々な領域での多国籍軍の相互運用能力の訓練を目的としている。すなわち、海上・空中・宇宙・地上・サイバー空間で敵と遭遇する事を想定し、多国籍軍が連携して対処、発見・追跡・交戦を迅速に行う訓練である。

米太平洋艦隊司令官ステイーブ・コーヘラー(Steve Koehler)提督は次のように語っている。「[VS26]訓練は “自由で開かれたインド太平洋の維持”に関与する我々の約束を示すものであり、多分野に広がる様々な交戦場面での同盟諸国軍の能力を一層向上させるものだ。」

バリアント・シールドは2006年に米軍単独で開始、2024年から多国籍軍訓練に変貌、今回は通算で11回目となる。日本が本格参加(heavily integrated)してからは2度目である。

[VS26]では、日米共同作戦で中国などから来襲する艦艇を迎撃する想定で行われるもので、後述する「タイフォン」や「HIMARS」ミサイル・システムは立ち上げから発射までの作業の訓練をするだけで実弾射撃はしない。

小泉防衛相は6月19日「これは米軍の機動展開能力を向上させ、日米両軍の即応性や相互運用性を向上させるものだ」と語った。

訓練に参加するのは次の通り。

自衛隊:統合幕僚監部、 統合作戦司令部、 陸上総隊、 北部方面隊、 東北方面隊、東部方面隊、中部方面隊、西部方面隊、自衛艦隊、航空総隊、航空支援集団、航空教育集団、航空開発実験集団、宇宙作戦団、航空中央業務隊、航空自衛隊幹部学校、航空自衛隊補給本部、自衛隊中央病院、自衛隊入間病院等

米軍:太平洋統合軍(U.S. Pacific Command joint forces)で、海軍、海兵隊、陸軍、コーストガード、宇宙軍等、

図5:(U.S. Pacific Fleet Public Affairs)「バリアント・シールド26」訓練のロゴ。米国・日本の他にオーストラリア、カナダ、ニュージランドが参加している。

図6:2026年6月24日、空自松島基地で離陸待機中のF-2B戦闘機2基。

図6A:(陸上幕僚監部)佐賀基地に配備されている陸自V-22 オスプレイ輸送機3機が海兵隊普天間基地に初めて展開、レゾリュート・ドラゴン訓練に参加した。訓練で宮古島、石垣島への飛行も行った。陸自では[V-22]オスプレイを17機運用している。

図7:(US Navy photo)6月21日西太平洋フィリピン海で撮影。バリアント・シールド(VS26)における日米両海軍の訓練の様子。

「図7」の説明;―

手前の航空機編隊は、米第5空母航空団(Carrier Air Wing 5 (CVW 5)FA-18E/F戦闘機と米空軍F-35A Lightning II戦闘機。海上には左端が空母「ジョージ・ワシントン(USS George Washington) CVN-78」と右端が海自軽空母「かが(DDH-184)」。両空母の間の2列の先頭には、グアム基地の攻撃原潜「ミネソタ(USS Minnesota (SSN-783))と海自潜水艦「じんげい(SS515)」が並走。続いて米巡洋艦「ロバート・スモールス(USS Robert Smalls/CG-62)」、駆逐艦「ベンホールド(USS Benfold(DDG-65)、同「シャウプ(USS Shoup (DDG-86))、海自駆逐艦「ふゆづき(DD-118)」が2列で航行している。

空母「ジョージ・ワシントン(USS George Washington) CVN-78」は、現在インド太平洋警備に就いている唯一の空母(イラン戦争前は常時2隻体制だった)。

海自からは、既述の「かが」、「ふゆづき」、「じんげい」に加えて燃料輸送艦「ましゅう(AOE-425)」が参加している。

図8;(US Navy photo) 海自たいげい型通常動力潜水艦「じんげい(SS 515)」(奥)と米海軍バージニア( Virginia)級攻撃型原子力潜水艦「ミネソタ(USS Minnesota (SSN-783))(手前)が並走する写真。

「図8」の説明:―

「たいげい」型通常動力潜水艦は基準排水量3,000 ton、全長84 m、速力20 kts、リチウム・イオン電池を搭載、兵装は533 mm魚雷発射管6門で18式魚雷及びハープーンBlock2に対応している。同型艦は5隻完成、3隻建造中。「じんげい(SS-515)」は3番艦。

「バージニア( Virginia)」級攻撃型原子力潜水艦は水中排水量 7,800 ton、全長115m、水中速力25 kts、GE S9G加圧水型原子炉1基、533 mm魚雷発射管4基、「ミネソタ(USS Minnesota (SSN-783))」は同級10番艦Block IIで、ミサイル垂直発射筒(VLS)を12基装備し、トマホーク巡航ミサイルを装備する。同型艦はBlock I~Vで26隻が就役、建造予定を入れると60隻以上になる。

図9:US Marine photo)左は指揮統制装置(BOC=Battery Operation Center) 、右が発射装置(Typhon launcher)、のトレーラー。1個砲兵中隊は、指揮統制装置車両1両と発射装置4両で編成される。写真は海兵隊岩国基地に展開した「タイフォン」システム。

バリアント・シールド26[VS26]では、米陸軍の中距離ミサイル・システム「タイフォン(Typhon)」と高機動ロケット砲システム「ハイマース(HIMARS)」をC-17大型輸送機に搭載、鹿児島県にある海自鹿屋航空基地に展開している。[VS 26]訓練は7月1日終了するが、9月予定の訓練「オリエント・シールド(Orient Shield)」にも参加するため、配備は当分続くことになる。

タイフォンは米陸軍の要求でロッキードマーチンが開発した「SM-6」対空ミサイルと「トマホーク」対艦・対地巡航ミサイル(射程1,600 km)を発射する輸送型垂直発射装置(transporter erector launcher)である。40フィート(12 m) ISO標準コンテナにMk,41 垂直発射筒4基を収納する。2023年に両ミサイルの発射試験に成功したばかりの最新兵器。2024年4月に海外として初めてフィリピン・ルソン島に配置された。九州・沖縄から発射すれば中国本土東部の大部分を攻撃できる。

米海軍では、「タイフォン」の海軍版として「Mk. 70 Mod 1」ミサイル発射装置の開発を進めている。これは対空ミサイル「Standard Missile SM-3」を発射する装置で、沿岸戦闘艦(Littoral Combat Ship)「USS Savannah / LCS-28」で試験を実施、成功。海自では「さくら」型哨戒艦基準排水量1,900 tonを建造中だが、これに搭載する対艦ミサイル発射装置「コンテナ式SSM」を進めている。

図10:写真はポーランドが480基購入中のHIMARS。ウクライナ、オーストラリア、オランダ、台湾など各国が導入している。

高機動ロケット砲システム「M142 ハイマース(HIMARS)」(High Mobility Artillery Rocket System)は装輪式自走他連装ロケット砲で、ロッキード・マーチン(Lockheed Martin Missile and Fire Control)製、これまでに750基が生産された。米空挺部隊・海兵隊など緊急展開部隊に配備されている。C-17、C-5はもちろんC-130ハーキュリーズ輸送機でも輸送できる。車体後部に、M26ロケット弾なら6発、MGM-140 ATACMS対地ミサイルなら1発を搭載できる。

レゾリュート・ドラゴン(Resolute Dragon)」(断固とした竜)

陸上幕僚監部は6月22日、熊本県建軍基地で、米海兵隊との共同訓練「レゾリュート・ドラゴン」Resolute Dragon)」を九州及び沖縄諸島で6月20日〜30日に実施すると発表した。近隣諸国からの軍事圧力の高まりに対処するため、日米両軍の相互運用製を向上させ抑止力を確固たるものにするため行うもの。

訓練区域は大分県・日出生台及び十文字原演習場、佐賀県・目達原駐屯地、熊本県建軍駐屯地等、徳之島、奄美大島、沖縄本島、宮古島、石垣島、与那国島に及ぶ。

自衛隊からは、陸自の西部方面隊第8師団、第15旅団を主に多方面隊富士学校などから参加している。

米海兵隊からは、沖縄中流の第3海兵師団(3rd Maline Division)、ハワイ・ホノルルの第3海兵遠征旅団(3rd Marine Expeditionary Brigade)、第1海兵航空連隊(1st Marine Air Wing)、さらに第7艦隊、第18航空団等が参加している。

図:11(US Marine Corps)6月20日撮影、大分県日出生台演習場で訓練中の第3海兵師団・第12海兵沿岸連隊・第12戦闘隊(12th Littoral Combat Team, 12th Marine Littoral Regiment, 3rd Marine Division)の機関銃兵。の姿。

これには日米共同訓練では初めて鹿児島市の谷山港、志布志市の志布志港を使う。

訓練には陸自兵員7,400名、米海兵隊兵員2,300名が参加、谷山港では「12式地対艦誘導弾発射車両などを新造の海上輸送群所属の輸送艦「にほんばれ」に積込み奄美市の名瀬港に運ぶ。志布志港では補給品コンテナを輸送艦「ようこう」に搭載名瀬港に運ぶ。両輸送艦が演習に参加するのは初めて。

訓練には、このほかに陸自奄美駐屯地、瀬戸内分屯地、徳之島を使い、米軍参加で輸送や攻撃減りでの離着陸訓練をおこなう。

奄美大島では陸自と米軍の無人偵察機を使う情報収集訓練もある。徳之島でも無人偵察機訓練を行う他、米海兵隊の半潜水型無人艇[ALPV]を使う物資輸送も行う。

図12:(乗り物ニュース)「にほんばれ(LCU-4151)」型輸送艦は、2025年3月発足の「自衛隊海上輸送群」に配備されている。基準排水量2,400 ton、全長80 m、最大速力15 kts、輸送能力は数百トン、車両10数両または20 ftコンテナ10数本を搭載できる。砂浜にビーチング、艦首が左右に開きランプが展開しそこから兵員、貨物・車両を上陸させる。3隻が就役済み、1隻建造中。

図13:日出生台演習場を走行する米海兵隊車両JLTV (L-ATV) 。L-ATV (light Combat Tactical All-Terrain Vehicle)はOSHKOSH Corp.製(Oshkosh, Wisconsin)。海兵隊は2020-2022で5,500両を調達。陸軍は2019-2030で49,000両を導入予定。これまでのハンビー(HMMWV=High Mobility Multipurpose Wheeled Vehicle)の後継、ハンビーは地雷や即席爆弾(IED)に弱かったので強化改良してある。旧型のハンビーはAM General社が製造、今では民間仕様のHAMMERが売り出されており、街中でしばしば見かける。

終わりに

今年度に入ってから、中国、ロシアなどの我国周辺における軍事的圧力は著しい高まりを見せている。我が国EEZ内での無断航行、空母遼寧の西太平洋上での大規模訓練、そして中露軍合同の戦略爆撃編隊の我国周辺で繰り返す威嚇飛行等。枚挙にいとまがない。これに対処するに、米国に頼り安穏に過ごしてきた我国はやっと目覚め、数年前から防衛力強化に動き始めた。その成果がここで紹介した「サザン・ジャッカルー」、「バリアント・シールド」、「レゾリュート・ドラゴン」である。将来は米軍の助け無しでも、自力で周辺諸国の脅威に立ち向かえるようになりたい。

―以上―

本稿作成に参照した主な記事は次の通り。

  • 5月22日 陸上幕僚監部発表 “米豪軍との実働訓練「サザン・ジャッカルー2026」について”
  • JUN 3 2026 Marines News “Australia, Japan begin exercise Southern Jackroo 2026 by 1st Lt. Case Fortier, Marine Rotational Force – Darwin”
  • May 29, 2026 PACOM mil. “U.S., Australia, Japan begin Exercise  Southern Jackaroo 2026”
  • 5月22日 統合幕僚監部発表 “米国主催バリアント・シールド2026共同演習に参加”
  • June 21, 2026 U.S. 7th Fleet News “Allies come together in the Indo-Pacific: Valiant Shield 26” by U.S. Pacific Fleet Public Affaires
  • June 23, 2026 U.S. NAVAL Institute News (USNI) “U.S. Kicks off Western Pacific Exercise Valiant Shield, Resolute Dragon” by Dzirhan Mahadzir
  • 南日本新聞5月23日“米軍ミサイル装置「タイフォン」「ハイマース」4ヶ月展開、日米共同訓練、海自鹿屋航空基地に6月〜10月”