ボーイング、B777-X次世代型機は引き続きエバレット工場で最終組み立て


2013-11-04     マーク・デブリン(米フロリダ州マイアミ)

ボーイングのドル箱機体、B777型機の次世代シリーズ『-X』がシアトル郊外のエバレット工場で製造される見通しとなった。技能工や、エンジニアが参加するIAM(全米機械労組)との交渉が大詰めで妥結へ向け大きく前進したという。シアトル・タイムズ紙がボーイング・ウォッチャー、ドミニック・ゲーツ記者署名記事で伝えた。カリフォルニア、サウスキャロライナ両州など同型機の製造ライン誘致に対抗してワシントン州が優遇税制措置の”切り札”で引き止めに成功したとも言われる。-Xで導入する複合材を全面採用する新型主翼の工場は輸送の利便性、コスト節約でエバレット工場隣接地に建設される方向で最終調整に入った。

B777-Xシリーズは乗客400人以上を乗せ、航続距離15,000㌔以上で燃費は20%減。現在製造中のB777型機の全面、モデルチェンジ。複合材を全面採用した新主翼とアルミ合金製の在来型胴体のハイブリッド設計が最大の特徴。ボーイング社は最終製造ラインについて民間旅客機製造拠点のエバレット工場等ワシントン州に執着せず、製造コストの抑制の為、B787型機の第2製造ラインのあるサウスキャロライナ州、旧ダグラスの拠点、南カリフォルニアなど白紙から選定を進める動きを見せていた。一時はワシントン州からB777次世型機の製造プラント脱出の情報も飛び交うほどだった。

しかしボーイング民間航空機のレイモンド・コナーCEO兼社長とIAMのトップ交渉で事態が急転し、エバレット工場で-Xシリーズの最終組み立てライン維持で大筋の合意点を見い出しつつある。5年間の平和協定が締結される可能性が取りざたされている。同時並行でワシントン州当局もB777型機に係わる技能工等が2万人と見積もられ、地元の雇用対策からもボーイング引き止めの方策のとりまとめへ動いていた。新たな税制優遇の導入だ。

結果、双方の思惑が大筋で満足すべき結果となりそうでエバレット工場でのB777-Xシリーズ最終組み立てライン維持で決着する雲行きだと言う。ただB787型機の地球規模でのサプライ・チェーン構築が足かせとなった教訓で、同型機の新主翼プラントはエバレット工場に近い場所を選定しそうだという。B787型機の主翼は日本の三菱重工に全面的にゆだねている。B747型機の改修型専用貨物機『ドリームリフター』使用は空輸コストがかさみ、頭痛の種らしい。

日本航空がB777型後継機種でライバルのA350XWB型機に走ったこともあり、旅客機製造技術のコア部分の主翼製造を米国にUターンさせたかもしれない。ただ三菱重工が培った複合材技術は侮りがたくB777−Xシリーズでも活用すると見られる。

最終組み立てライン問題がほぼ決着した事で、ボーイングは今月17日、ドバイで開催する航空ショーでのB777-X型機プロジェクトのお披露目に全力を投じる。

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