露軍機への緊急発進回数が8倍に激増。防衛省統幕監部の平成26年度第1四半期纏めで判明


2014-07-10 (JST 23;30)  小河正義

2014-07-11   改訂

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図;(防衛省統幕監部)5月21日、本州日本海側に接近した露軍トゥポレフTu142″ベア”電子偵察機

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図:(防衛省統幕監部)同上のケースで飛来した露海軍電子偵察機イリューシンIL38″メイ”

 

『過去例を見ない露軍機に対する緊急発進回数の激増』ー防衛省統合幕僚監部が7月9日、公表した平成26年度第1四半期の『緊急発進の実態報告』で”日本が空の守り”で新たな難題を抱えた事が明らかになった。それによると、露軍機が対象の緊急発進回数が同期間235回と前年同期の31回に比べ約8倍の激増だったと言う。その影響で全体でスクランブル件数は期間中、340回(前年同期、115回)で平成17年度に現在の様式で緊急発進の件数を発表して以来、四半期ベースで、最大の件数に跳ね上がった。対中国軍機の件数も104回(前年同期、69回)と増加基調に変わりなく、尖閣諸島領有権帰属での日中対決を浮き彫りにした。

ロシア機では電子偵察機、爆撃機の大型機が対象だったが、中国機の場合は戦闘機の件数が目立ちスクランブル機との間で緊張感が一気に高まる事態に発展しうる。防衛当局を緊張させている事が理解できる。

露軍機の件数が激増した背景に対日強硬路線への政策転換が関与しているか、あるいはプーチン政権のウクライナ問題で見せた武力を前面に出す戦略が色濃く反映しているのかを、今暫く眺める必要があろう。

航空方面隊別のスクランブル件数の内訳は、北部航空方面隊が113回(前年同期、20回)とトップ。次いで南西航空混成団:104回(同75回)、中部航空方面隊:65回(14回)、西部航空方面隊:58回(同6回)の順。

露軍機に対するスクランブル件数の激増が、航空方面隊別の緊急発進出動で裏付けられる。防衛省は特異な事例だけに限って、スクランブル発生の日時、状況、対象機の写真等を公表するのに留めている。露軍機に対するスクランブルの異常な増加は、4月13~19日の7日間、連続で28件(公表分のみ)発生した事でも判る。

今後はビデオカメラの搭載で動画を公表する方針。中国機が航空自衛隊機との異常接近発生時に一方的画像で反撃してきた事への対抗措置。当然の対応で、遅すぎた感もある。

露軍機へのスクランブル件数の予想外の激増は、南西方面への”航空戦力スウィング”の方向の再検討も必要だろう。次期主力戦闘機として導入を決めた、F35『ライトニングⅡ』の装備機数の大幅増も必要になるかもしれない。パイロット養成、整備士の訓練体制を再点検するべきだ。国際情勢は時々刻々、変転する訳で、柔軟な戦略構築が今後、防衛省に欠かせないだろう。

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図:(防衛省統幕監部)尖閣列島周辺に姿を見せる中国空軍の主力機、スホーイSu27″フランカー”

スクランブル

図:(防衛省統幕監部)緊急発進回数の年度別比較。今年の第一四半期だけて340回なのでこの傾向が続けば、今後の1年間は1000回を遥かに越えそう。

方面隊別

図:(防衛省統幕監部)26年度第一四半期の緊急発進回数は、北部航空方面隊:113、中部航空方面隊:65、西部航空方面隊:58、そして南部航空混成団:104、といずれも過去5年間の同期を大きく越えている。これで見ると配備機数の少ない南部航空混成団の負荷が著しく大きくなっていることが判る。

相手別

図:(防衛省統幕監部)相手国別の緊急発進回数、四半期別ではロシアと中国が群を抜いて多くなって来ている。

中露機の航跡

図:(防衛省統幕監部)おなじみのロシア機と中国機の飛行経路パターン。

第一四半期

第一四半期2

第一四半期3

第一四半期4

第一四半期5

図:(防衛省統幕監部)26年度第一四半期における空自機が緊急発進をした事例の一覧表(1から5まである)

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