危機の中の民主党、サバイバル戦略はあるのか!


2015-12-24(平成27年)元・国務大臣秘書官 鳥居徹夫

 

■□民主党と維新の党が統一会派を結成したが、共同歩調は疑問 

 

今年も押し迫った12月18日、民主党と維新の党は、統一会派「民主・維新・無所属クラブ」の結成を衆院事務局に届け出た。新会派は計93人。(民主71人、維新21人、無所属1人)。しかし参院では、統一会派とはならなかった。

 

統一会派を結成で確認した7項目の基本的政策合意には、安全保障関連法について「憲法違反など問題のある部分を白紙化、わが国周辺の厳しい環境に対応できる法案を提出」と明記。さらには憲法改正を目指すことや国家公務員総人件費の2割削減なども盛り込んでいる。

維新の党の議員の多くは、かつて民主党を飛び出したメンバーでもある。維新側の松野頼久代表や今井雅人幹事長、石関貴史国対委員長らは元民主党議員であった。松野代表らが、民主党から飛び出した大きな要因は、民主党政権が消費税の税率アップに道筋をつけた「社会保障と税の一体改革法案」に反対したからである。

維新の党の江田憲司前代表は、「共同歩調を取れるか法案や政策ごとに検証する。重要法案で足並みがそろわないなら新党になれない」と述べるなど、民主党中心の政治勢力結集に否定的である。

■□党内民主主義がなかった民主党 

 

来年(2016年)の参議院選挙は、野党第一党の民主党にとって、きわめて厳しい。

安保法制が審議された昨年の通常国会では、対案を出すべきという党内の意見をも封殺し、ほとんど論議もされずに法案成立阻止、「反対のための反対」に一直線に暴走した。

その国会対策方針に抗議し、民主党政権で外務大臣を担った松本剛明議員までもが離党した。つまり党内民主主義が、民主党にはなかったのである。

民主党内では、審議が不十分どころか、対案の審議すら門前払いであった。拒否していた。それでは国民の支持どころか、連合組合員の反発にもつながりかねない。

それでいて政府与党に対しては、「審議が不十分」とか「国民の理解を得ていない」と、言いながら、今年の通常国会では95日間の会期延長に反対し、しかも乱闘国会となった暴力的な審議妨害を行っていた。

多くの世論調査では、安倍内閣の支持率についても、支持が不支持を大きく上回った。そして9月に成立した安保法制についても賛成が反対を上回っている。

これは、中国の南シナ海の岩礁を埋め立て、そこを拠点として覇権の拡大を狙ったことへの危機感のためである。

このような国連海洋法条約に反する行為などが、アメリカ海軍の航行の自由作戦などにより、白日のもとに曝されたことなどがあろう。しかも中国が岩礁埋め立てには、海域のサンゴ礁を爆砕したものが使われており、地球環境の視点から見ても問題の多いものであったことは言うまでもない。

■□定数是正で厳しくなる民主党、定まらぬ選挙対策 

 

現在の国会での議席は、民主党が衆議院で71議席、参議院で59議席の計130議席。ちなみに自民党は、衆議院292議席、参議院115議席の計407議席。

民主党の参議院議員59名のうち、今年の参議院選挙での改選数は42名(比例15名、選挙区27名)。これは前回2013年の当選者17名に対し3倍近い改選数である。

ちなみに比例では、前回2013年が713万票で7名当選であったが、今回改選になる2010年選挙の得票は1845万票で当選者は16名。このときは小沢グループの谷亮子(比例)も民主党であった。

今回は、1票の格差是正に向けた公職選挙法改正により6年前と比べて、北海道、東京、神奈川、大阪府、兵庫、愛知、福岡が1名増。福島、新潟、宮城、長野、岐阜で定数2が1となり、鳥取と島根県、徳島と高知が合区となり定数1となる。

しかし民主党にとって、1名増となる7都道府県ですら、民主党の候補者数が現議席数より少ないのである。たとえば愛知県は現職2名を1名に絞り込んでいる(安井美沙子が衆議院候補に転出するため)。

今回、定数増の恩恵を受けるのは公明、共産であろう。

減員県では7選挙区のうち、6選挙区(鳥取と島根の合区を除く)で民主党の現職がいる。しかも勝ち残れない公算が強い。

さらに民主党にとっての悩みの種は、一人区である。滋賀、三重、山梨、岡山,奈良、大分には現職がいるが、共産党が候補擁立を見送らない限り、再選が厳しい。(このほか一人区では、岩手に“生活”の現職がいる)

そのためか、改選期に当たる輿石東、江田五月、桜井充など大物クラスの去就すらも、いまだ明らかにされていない。

一方で共産党は、選挙区の候補者擁立を着々と進めている。

共産党は、「国民連合政府」の樹立とそのための野党間選挙協力を呼びかけ、野党間で協力の合意ができた選挙区では候補を取り下げる可能性に言及し、民主党に揺さぶりをかけている。

共産党の戦略は、「得票850万票、8人以上の当選」を目指した比例代表での票の掘り起こしと、選挙区での議席確保である。

これに対し民主党は、軸足が定まらない。民主党内にも、安全保障関連法への対応について「反対のための反対」への反発がある。また支援組織の労働団体「連合」は、共産党との連携に強い危惧を抱いている。

また維新の党は参議院の比例票のかさ上げのために、議席のない選挙区にも候補擁立は避けて通れない。維新の党は、衆議院で民主党と統一会派となったが、参議院では統一会派とならない理由の一つでもある。

このような中で、民主党にサバイバル戦略はあるのか。

あるとすれば、自民党に先立って憲法改正を提起することを目玉にすることで、共産党と一線を画すことを、まず明確に提示することである。とりわけ、シナの覇権主義的な横暴に対して、日本の主権・領域と、日本人の安全と生命、財産を守るため、憲法9条2項の削除を、民主党が提起することであろう。

ちなみに民主党と維新の党の統一会派の政策合意には、憲法改正を目指すことを明記している。(敬称略)

—以上—