テキストロン・セスナ 408 スカイクーリエが初飛行


2020-05-23(令和2 年) 松尾芳郎

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図1:(Textron Aviation) 5月17日ウイチタのビーチ・フィールド(Beech Field)空港からテキストロン・セスナ408 スカイ・クーリエ (SkyCourier) 初号機が離陸、2時間15分の初飛行を行った。巡航速度は370 km/hr、2.5 ton搭載時の航続距離は740 km、フェリー時の航続距離は1,700 kmになる。単価は550万ドル(5億9000万円)。カーゴドアは87 inch x 69 inchサイズで「LD3」コンテナ79 inch x 60.4 inchサイズに対応している。

 

テキストロン・エビエーション(Textron Aviation)のセスナ(Cessna) 408 スカイ・クーリエが5月17日にウイチタ(Wichita, Kansas)東部にあるビーチ・フィールド空港で初飛行した。セスナ408は双発の多用途機で、2時間15分の飛行だった。これから初号機を含む5機で型式証明取得の作業が始まる。

(Textron Aviation Inc. announced today the successful first flight of new twin utility turboprop, the Cessna SkyCourier, where it flew for 2 hr 15 min. and kicked off the flight test program.)

試験飛行を担当したパイロット、コーレイ・エクハート(Corey Eckhart)、アーロン・トビアス(Aaron Tobias)の両氏は「セスナ・スカイクーリエの初飛行は素晴らしかった。特に離着陸時の安定性は抜群で、飛行特性は最初から完成の域に達しているように思えた。」と話している。テキストロン・エビエーション社長ロン・ドレーパー(Ron Draper)氏は、初飛行は予想通りの出来栄えで、関係者全員の努力の結集の賜物である、と語っている。

セスナ408計画は2017年11月28日に開発が決まり、2020年に1号機を顧客に引き渡す予定だった。しかしその後に生じたコロナ・ウイルスの大流行で、テキストロン本体のみならず、協力企業、審査を行う監督官庁も影響を受け、予定が遅れている。

セスナ408は、貨物航空大手のフェデックス・エクスプレス(FedEx Express) がローンチ・カストマーとして「確定50機 + オプション50機」の発注で開発が始まった。室内にはLD3コンテナを3個搭載でき、また旅客用として座席19席仕様に変更でき、さらに貨客両用にも変更可能な機体となる。

セスナ408 スカイ・クーリエはセスナ208キャラバン(Caravan)の後継機、となる。

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図2:(Textron Aviation) FedEx のロゴを付けたテキストロン・セスナ408の完成予想図。セスナ408クーリエは、高翼・双発ターボプロップの多用途機。パイロット用ドアと「LD3」コンテナが搭載できる大型ドアを備え、積載量は乗客19名または「LD3」コンテナ3個(合計重量2.7 ton)。エンジンはP&WC PT6A-65SCターボプロップ出力1,100 hpが2台、固定3車輪式ランデイングギア、コクピットはガーミン(Garmin) G1000 NXiアビオニクスを装備する。客室は与圧していないので、上昇限度は25,000 ft (7,600 m)だが通常は1万ft以下で飛行することになる。全長16.7 m、翼幅22 m。

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図3:(Garmin) ガーミンG1000 NXi 次世代型フライトデッキ。G1000 NXiは、Garmin Flight Stream(パイロットが手に持つタブレット)からワイヤレスでデータベースを更新可能、SurfaceWatch機能で「MFD」上に着陸進入時の地表表示画面を改善強化、中央にある「HIS」航路表示画面に地図情報を付加、など最新の機能を追加し、使い易さと安全性を高めている。2017年2月にFAAの証明「STC=Supplemental Type Certificate」を取得、以後多くの小型機に採用されている。「MFD」(Multi-Function Display)/多機能表示装置は、飛行に必要な、速度、高度、方位、姿勢などの情報を表示する。

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図4:(Textron Aviation) 「LD3」コンテナを3個搭載できる。胴体左にあるカーゴドアは87 inch x 69 inchサイズで「LD3」コンテナの79 inch x 60.4 inchサイズに対応している。

 

(注)貨物機を含め広胴型機や多くの狭胴型機の貨物室に搭載する標準型パレット・コンテナは、「unit load device = ULD」として規格化されている。「LD3」はその中の一つで最も多く使われ、一般的なスーツケース、貨物、郵便物、などを搭載する。容積4.5 m、高さ64 inch (163 cm)、奥行き60.4 inch (153 cm)、全体幅79 inch (201 cm)。ATR72、デハビランドDash 8-300、など一部のリージョナル機にも搭載できる。

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図5:(Wikipedia) ボーイング747の床下貨物室に搭載中の「LD3」コンテナ。

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図6:(Textron Aviation) テキストロン・セスナ408を座席19席の旅客機仕様した場合の図。

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図7:(Textron Aviation)セスナ208 キャラバンは、FedExが最初に注文した多用途機。高翼、単発、固定脚3車輪式。就航は1984年、2,600機が作られ、世界各国で使われている。乗員1〜2名、旅客型は乗客9人を収容できる。全長11.5 m、翼幅15.9 m、全備重量3.6 ton、エンジンP$WC PT6A-114A ターボプロップ675 hp、巡航速度340 km/hr、航続距離1,900 km。価格はやや大型の208Bで270万ドル(2億9000万円)。

 

テキストロン・エビエーションとは

「テキストロン・エビエーション(Textron Aviation Inc.)」は、ゼネラル・エビエーション業界を代表する会社で、傘下に「ビーチ・エアクラフト(Beech Aircraft)」、「セスナ(Cessna)」、及び「ホーカー(Hawker)」の3つの商標権・製造権を保有している。現在世界中で飛行中のゼネラル・エビエーション機の半分以上は、この3つの商標の付いた航空機である。テキストロン・エビエーションは、ビジネス・ジェット、ターボプロップ機、高性能ピストンエンジン機、軍用の練習機や小型対地攻撃機などを世界中の顧客に納入している。その数は134ヶ国以上に及び、25万機に達する。この中には、好評なサイテイション(Citation)ビジネス・ジェット、キングエア(King Air)ターボプロップ、キャラバン(Caravan)ターボプロップ、T-6軍用練習機、などがある。

テキストロン・エビエーションの親会社「テキストロン Inc.」は、世界的なネットワークを持つ多業界を横断する企業で、25ヶ国で35,000人を雇用、売上高136億ドル。事業部門は[ Bell]、[Textron Aviation]、[Industrial]、[Textron Systems]、[Finance]からなり、製造から金融まであらゆるサービスを提供している。航空関係ではベル・ヘリコプター(Bell Helicopter)、ライカミング(Lycoming)など著名企業を配下に持つ。ゴルフ・カートの「E-Z-GO」、芝刈り機の「Jacobsen」も傘下にある。

―以上―

 

本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。

 

Avation Week May 17, 2020 “Textron Aviation’s SkyCourier Takes First Flight” by Molly McMillin

Textron Aviation “Cessna SkyCurier -Cessna Aircraft”

Textron Aviation November 28, 2017 “Textron Aviation unveils new large-utility turboprop, the Cessna SkyCourier; FedEx Express signs as launch customer for up to 100 aircraft”

Textron Aviation January 4, 2017 “Textron Aviation brings new G1000 NXi integrated flight deck to its piston product line”

Garmin January 3, 2017 “Announcement: Garmin Introduces G1000NXi Next Generation Integrated Flight Deck”