令和3年11月、我国周辺における中露両軍の動向と我国/同盟諸国の対応


2021-11-11 (令和3年) 松尾芳郎

令和3年11月、我国周辺における中露両軍の活動と、我国および同盟諸国の動きに関し、それぞれの公的部門から多くの発表があった。以下にその項目と内容を紹介する。注目すべきニュースは次の通り;―

  • 米国防総省(DoD)が「2021年次中国軍事情勢報告」を発表(11月3日)/内容はTokyoExpress 2021-11-29 「米国防総省DOD」発表の2021年次中国軍事情勢報告」を参照する
  • 中国軍は台湾東部・花蓮沖/与那国島南方沖の太平洋上で上陸演習
  • 中国ロシア両海軍艦艇のの活動は異常に活発化、11月は前記「⑵」を含め12件
  • 中露両空軍の爆撃機4機が日本海・対馬海峡・東シナ海・宮古海峡を通過、太平洋に進出
  • 陸上自衛隊は、12月に3つの日米共同訓練を実施予定、すなわち、[指揮所演習「YS-81」]、[米国で米陸軍との実動演習、ライジング・サンダー21」]、[国内全国規模で米海兵隊との実動訓練「レゾリューション・ドラゴン21」]
  • 海上自衛隊は11月後半に5カ国海軍合同演習「ANNUALEX 2021」をフィリピン海で実施

(The military threats by Russo-Chinese Forces surroundings Japan and Taiwan were reported as active. Following four were noteworthy;-

  1. The U.S. DOD released its annual report to Congress on military and security development involving China, referred as the China Military Power Report.
  2. Chinese assault landing ships conducted landing exercise on the east side water of Taiwanese Island
  3. Russo-Chinese naval vessels sail off Japanese coast very often as many as twelve cases.
  4. Russo-Chinese Air Force Bomber of four, has flue alongside of Japanese ADIZ in western Japan.)

中国ロシア両海軍の活動の概要

防衛省発表および関連

11月19日:中国測量艦1隻、屋久島南領海に侵入

11月13日:中国ドック型揚陸艦2隻、台湾東部花蓮沖で上陸演習

統合幕僚監部発表

11月 1日:中国駆逐艦1隻、宮古海峡を通過、太平洋へ

11月13日:中国駆逐艦など3隻、宮古海峡を通過、東シナ海へ

11月15日:中国駆逐艦など2隻、対馬海峡を通過、日本海へ

11月18日:中国駆逐艦1隻、対馬海峡を通過、日本海へ

11月19日:ロシア駆逐艦1隻、対馬海峡を通過、東シナ海へ

11月19日:中国駆逐艦など2隻、対馬海峡を通過、東シナ海へ

11月22日:中国フリゲート1隻、宮古海峡を通過、東シナ海へ

11月22日:中国フリゲート1隻、対馬海峡を通過、東シナ海へ

11月30日:ロシア潜水艦2隻を含む5隻、宮古海峡から対馬海峡を通過、日本海へ

11月30日:ロシア哨戒艇など2隻、宗谷海峡を通過、オホーツク海へ

詳しくは以下を参照する。

図1:(統合幕僚監部)我が国周辺の地図。11月は、中露両軍の艦艇が12回も我国の周辺を航行、日本に対する威圧行動を行なった。また中国空軍機の飛行も活発で、空自戦闘機によるスクランブルは100回を超えた。

防衛省発表および関連

  • 11月19日  中国海軍艦艇の動向について

11月17日午後8時40分、海自鹿屋基地所属のP-1哨戒機が鹿児島県屋久島南の我国の接続水域・領海を西に進む中国海軍シュパン級測量艦1隻を発見した。その後同艦は口永良部島沖を東シナ海に向け航行した。防衛省は同艦が領海を侵犯したと判断、外交ルートを通じ中国に“遺憾の意”を伝えた(領海侵犯に対し威嚇射撃はおろか抗議もせず “遺憾の意”だけとは!)。

図2:「シュパン級測量艦」、満載排水量5,883 ton、全長129.3 m、速力17.5 kts。1998年就役の外洋測量艦。外洋での水深、海底地形、潮位、などを行う。

図3:(読売新聞)11月17日我国領海を侵犯した中国海軍「シュパン級」測量艦の航跡。

  • 11月中旬  中国海軍揚陸艦2隻が与那国島沖を通過、台湾東部沖で上陸演習を実施

複数のメデイアによれば、今月14日前後に中国海軍の「071型」ドック揚陸艦(LPD)2隻が沖縄県与那国島と台湾の間の海峡を通過、台湾東部・花蓮沖に進出、上陸作戦を想定した演習を行なった。台湾東部の沿岸部は断崖が多く上陸に適した場所が少ないが、花蓮は例外で幅10 kmの砂浜があり、軍民両用の花蓮空港がある。

統合幕僚監部は本件について発表していないが、岸防衛相は記者会見で事実を把握済みと見られる発言をしている(11月26日)。

図4:中国海軍ドック型揚陸艦「071型」「崑崙山・988」、全長210 m、満載排水量25,000 tonで大型エアクッション揚陸艇(ACV)4隻搭載、後部甲板は中型ヘリコプター「Z-8」型2機が離発着できる。搭載能力は戦闘装甲車両15~20両および兵員800名。同型艦は8隻が南海艦隊および東海艦隊に配属されている。

統合幕僚監部発表

  • 11月1日 中国機の南シナ海および太平洋における飛行について

11月1日中国軍の「y-9」哨戒機2機が東シナ海から宮古島―沖縄本島の間の宮古海峡を通過、宮古島沖の太平洋上を飛行、反転して往路と同じ経路を飛行、東シナ海に立ち去った。空自沖縄基地から戦闘機が緊急発進、領空侵犯を防いだ。

図5:(統合幕僚監部)11月1日、宮古海峡を往復した中国軍「Y-9」哨戒機2機のうちの1機

  • 11月1日  中国海軍艦艇の動向について

10月31日午前0時、沖縄県久米島の西北西140 kmの海域を東シナ海から太平洋に向け航行する中国海軍ルーヤンII級ミサイル駆逐艦1隻を発見した。発見・追尾したのは海自第14護衛隊舞鶴基地の「せとぎり」と第5航空群那覇基地の「P-3C」哨戒機である。

図6:(統合幕僚監部)10月31日、久米島沖を通過太平洋に進出した「ルーヤンII級ミサイル駆逐艦・151」

  • 11月5日  令和3年10月 月刊緊急発進状況について

10月の緊急発進回数は令和3年度で最も多く126回に達した。

方面隊別では那覇基地の「南西航空方面隊」が90回に達し、他の方面隊がそれぞれ10回前後であったのに対し圧倒的に多い。

国別の緊急発進回数では、中国軍機に対する緊急発進が101回で最多、対ロシアの21回を大きく上回った。

図7:(統合幕僚監部)2021年度(令和3年度)の対象国別の緊急発進回数。対中国機の回数が飛び抜けて多く、中国との間で緊張が高まっていることを示す。

  • 11月11日  令和3年度自衛隊統合演習(実動演習)について

陸海空3自衛隊の統合運用能力を維持・向上させる演習で、一部に米軍が参加、日米の相互運用性の向上を図る。

実施期間は11月19日から11月30日、実施場所は種子島、津多羅島、自衛隊施設、米軍射爆撃場、および我国周辺の海空域等。

訓練項目は「水陸両用作戦」、「総合ミサイル防空訓練」、「共同対艦攻撃訓練」、「統合後方補給訓練」、「基地警備」、「空挺作戦」、「宇宙状況監視に関わる連携訓練」、「サイバー攻撃対処訓練」、「統合電子戦訓練」、「指揮所活動に関わる訓練」、などである。

参加部隊は;―

陸海空3自衛隊関連の各幕僚監部、各実動部隊、その他で人員3万名、車両1,900両、艦艇10隻、航空機140機、

米軍からは第7艦隊、第3海兵機動展開旅団、太平洋空軍、人員5,800名。

11月25日に種子島での訓練が報道関係者に公開された。この訓練には陸自の上陸作戦専門部隊「水陸機動団」兵員500名が参加、海岸から10 km沖合に展開した海自輸送艦「くにさき・LST-4003」/満載排水量13,000 ton (おおすみ型輸送艦の3番艦)、などから「エアクッション揚陸艇(LCAC)」、「水陸両用戦闘車(AAV7)」、「大型ヘリコプター(CH-47J)」に分乗して発進、中種子町の長浜海岸に上陸する、と云う想定で行われた。

また同24日には、海自鹿屋航空基地で、米第3海兵機動展開旅団の地対艦ミサイル部隊が展開し、指揮系統の確認や模擬射撃訓練が実施された。

図8:(統合幕僚監部/産経新聞・納富康氏撮影) 11月25日午前種子島で行われた離島奪還訓練の様子。海自輸送艦「くにさき」から大型車両を搭載して発進したエアクッション揚陸艇(LCAC)が中種子町の長浜海岸に接岸する様子。手前は、敵が設けた上陸を阻止するための鉄杭。LCACは重さ100 ton、長さ27 m、戦車1両と兵員30名を揚陸できる。

  • 11月12日  英空母打撃群との共同訓練の実施について

アデン湾に派遣されている海自海賊対処水上部隊は、11月11日アデン湾で英空母打撃群(CSG21=Carrier Strike Group 2021))と共同訓練を実施した。海自からは護衛艦「ゆうぎり」、英海軍からは空母「クイーン・エリザベス(HMS Queen Elizabeth / R08」、駆逐艦「ダイアモンド(HMS Diamond / D34)」と「デフェンダー(HMS Defender / D36)」、補給艦「フォート・ビクトリア(RFA Fort Victoria / A387)」、「タイドスプリング(Tidespring / A136)」が参加した。

駆逐艦「ダイアモンド/D34」と「デフェンダー・D36」は、「045型」と呼ばれ2009~2013年に建造された最新のミサイル防空駆逐艦、空母打撃群で防空任務を担当する、6隻が就役。

図9:(Wikipedia/Pinterest/seaforces) 写真は、45型ミサイル防空駆逐艦6隻中の3番艦「ダイアモンド (HMS Diamond D34)。満載排水量8,000 ton、長さ152.4 m、速力32 kts以上。前甲板には114 mm単装砲とその後ろの防壁内にアスター30/15 SAM用VLS 48セルを装備。このミサイル管制は前檣トップのサンプソン・レーダーが行う。他に対艦ミサイル・ハープーン4連装発射筒2基を備える。

  • 11月13日  中国海軍艦艇の動向について

11月12日午前7時、宮古島の東北東105 kmの海上を太平洋から東シナ海に向け進む中国海軍ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦1隻、ジャンカイII級フリゲート 1隻、およびフチ級補給艦1隻を発見、那覇基地第5航空群所属の「P-3C」哨戒機と沖縄基地第45掃海隊所属の「ししじま」哨戒艇が追尾した。

これら3隻の艦隊は去る5月16日に東シナ海から宮古海峡を通り太平洋に進出したものと同一である。

図10:(統合幕僚監部)

図11:(統合幕僚監部)

図12:(統合幕僚監部)

  • 11月15日 中国海軍艦艇の動向について

11月13日午後2時、中国海軍ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦1隻、ジャンカイII級フリゲート1隻が東シナ海から対馬海峡を抜け日本海に向け航行した。発見・追尾したのは厚木基地第4航空群所属の「P-1」哨戒機と佐世保基地第3ミサイル艇隊所属の「おおたか」である。

図13:(統合幕僚監部)

図14:(統合幕僚監部)

  • 11月18日  中国海軍艦艇の動向について

11月16日午後1時、中国海軍ジャンカイII級フリゲート1隻が対馬海峡を東シナ海から日本海に向け航行するのを、海自厚木基地第4航空群所属の「P-1」哨戒機および佐世保基地第3ミサイル艇隊所属の「おおたか」が発見・追尾した。

図15:(統合幕僚監部)

  • 11月19日  中国・ロシアの爆撃機の東シナ海・日本海・太平洋における飛行について

中国軍の「H-6K」爆撃機2機とロシア軍「Tu-95」爆撃機2機が、日本海の竹島と隠岐の島間の我が国防空識別圏の沿って飛行、対馬海峡上空を経由東シナ海へ、そして宮古海峡上空を通り太平洋に進出し、反転して東シナ海に戻り、立ち去った。空自の西部航空方面隊、南西航空方面隊から戦闘機が緊急発進、警戒にあたり領空侵犯を防いだ。

図16:(統合幕僚監部)「H-6」初期型は、ロシアTu-16爆撃機の国産化機体で1968年初飛行。改良され現在の「H-6K」は巡航ミサイル搭載型で2007年に初飛行、改良型の洋上対艦攻撃型「H-6J」は「YJ-12」対艦ミサイル4発を搭載できる、最大離陸重量76 ton、爆弾/ミサイル搭載量9 ton、航続距離6,000 km.。配備機数は不明だが50機以上。

図17:(統合幕僚監部)[ Tu-95 ]爆撃機は改良型Tu-95MS「戦略ミサイル輸送機」の名称で63機配備中。軸馬力14,800 hpのクズネツオフNK-12MAターボプロップを4基、最大離陸重量185㌧、最高速度925 km/hr、航続距離6,400 km。超音速対地攻撃用ラドガ(Raduga) Kh-15巡航ミサイル(射程300 km) 6発を胴体内のドラムランチャーに搭載。派生型のTu-95MS-16は、ラドガ(Raduga) Kh-55亜音速・射程2,500 km巡航ミサイルを胴体内に6発と翼下面に10発、計16発搭載可能。

図18:(統合幕僚監部)11月19日、中国軍「H-6K」爆撃機2機およびロシア軍「Tu-95」爆撃機2機の飛行航跡。

  • 11月19日  ロシア海軍艦艇の動向について

11月18日午後5時、ロシア海軍ウダロイI級駆逐艦1隻が、日本海から対馬海峡を通過、東シナ海に向け航行した。発見・追尾したのは佐世保基地佐世保警備隊所属の「あまくさ」。

図19:(統合幕僚監部)

  • 11月19日  中国海軍艦艇の動向について

11月18日午後7時、中国海軍ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦1隻およびジャンカイII級フリゲート1隻が、日本海から対馬海峡を通過、東シナ海に向け航行した。これら3隻は、11月13日に対馬海峡を北東に進み日本海に入ったものと同一である。発見・追尾したのは佐世保基地第3ミサイル艇隊所属の「おおたか」。

  • 11月22日  中国海軍艦艇の動向について

11月19日午後6時、中国海軍ジャンカイII級フリゲート1隻が太平洋から沖縄本島と宮古島間の宮古海峡を通過、東シナ海に向け航行した。発見・追尾したのは沖縄基地第46掃海隊所属の「くろしま」と呉基地第1海上補給隊所属の「とわだ」。

ジャンカイII級フリゲート(530)

図20:(統合幕僚監部)

  • 11月22日  中国海軍艦艇の動向について

11月19日午後11時、中国海軍ジャンカイII級フリゲート1隻が日本海から対馬海峡を通過、東シナ海に向け進むのを発見した。この艦は11月16日対馬海峡を北上、日本海に入ったのと同一である。発見・追尾したのは佐世保基地第3ミサイル艇隊所属の「おおたか」。

ジャンカイII級フリゲート(548)

図21:(統合幕僚監部)

  • 11月24日  中国機の南シナ海および太平洋における飛行について

11月24日中国軍 Y-9 情報収集機1機および Y-9 哨戒機1機が東シナ海から宮古海峡を通り太平洋に進出、沖縄本島南東の空域で滞空飛行を行った後、往路と同じ航路で東シナ海に向け立ち去った。空自南西航空方面隊から戦闘機が緊急発進、警戒にあたった。

本件と翌25日の中国機の飛行は、折からフィリピン海で実施されていた「5カ国共同演習/ ANNUALEX 2021」を偵察するため、と思われる。詳しくは本稿の「海上幕僚監部発表」に記載の「11月16日 令和3年度海上自衛隊演習(日米および日米豪加独共同演習)について」を参照されたい。

図22:(統合幕僚監部)

図23:(統合幕僚監部)

図24:(統合幕僚監部)

  • 11月25日  中国機の南シナ海および太平洋のおける飛行について

いずれも前日の機体と同じ。空自南西航空方面隊から戦闘機が緊急発進、警戒にあたった。

  • 11月30日  ロシア海軍艦艇の動向について

その1;―

11月23日午後4時、ロシア海軍キロ改級潜水艦2隻、ステレグシチーII級フリゲート1隻、ドウブナ級補給艦1隻、およびイングル級救難曳船の5隻の艦隊が西表島の南170 kmの海域から沖縄本島―宮古島間の宮古海峡を通過、東シナ海に入り北上して対馬海峡経由、日本海に向け航行した。海自は厚木基地第4航空群所属の「P-1」哨戒機、那覇基地第5航空軍所属の「P-3C」哨戒機、呉基地第12護衛隊所属の「あぶくま」、舞鶴基地第14護衛隊所属の「せとぎり」、「せんだい」、沖縄基地第46掃海隊所属の「くろしま」、および佐世保基地第3ミサイル艇隊所属の「おおたか」が、発見・追尾した。

図25:(統合幕僚監部)「キロ級/877型」を改良したのが「キロ改級/636型」潜水艦。水中排水量4,000 ton、全長52 m。水中速力25 kts、ターボ・デイーゼル推進、推進用プロペラを6枚から7枚ハイスキュード型に変更、回転数を半減し騒音を抑えている。艦橋に対空ミサイル18発を搭載し浮上時に発射する。魚雷発射管は6門、装填は自動、有線誘導魚雷のほか各種ミサイルも発射可能。「キロ改級/636型」は16隻が完成、8隻が太平洋艦隊に配備されている。

図26:(統合幕僚監部)

図27:(統合幕僚監部)

図28:(統合幕僚監部)

その2;―

11月28日午前8時、ロシア海軍ナヌチカ級ミサイル護衛哨戒艇1隻およびロプチャーI級戦車揚陸艦1隻が北海道宗谷海峡を日本海からオホーツク海に向け航行した。発見・追尾したのは八戸基地第2航空群所属の「P-3C」哨戒機。

図29:(統合幕僚監部)

図30:(統合幕僚監部)

陸上幕僚監部発表

  • 11月10日  令和3年度第3回国内における米空軍機からの降下訓練の概要について

島嶼部への敵攻撃に対処するため米空軍機から降下訓練を行い、空挺作戦に必要な技量向上を図る。期間は11月15~17日、場所は大分県日出生台演習場(総面積4,900 ha)と横田基地。同時期に空自輸送機からの降下訓練も実施する。

  • 11月11日  令和3年度国内における米海兵隊との実動訓練(レゾリューション・ドラゴン21 / Resolution Dragon 2021)の概要について

12月4〜17日の間、東北地方最大の演習場“宮城県王城寺原演習場”をはじめ岩手県岩手山演習場、青森県八戸演習場、東北方面航空隊等の基地・宮城県仙台市霞目駐屯地、自衛隊最大の北海道矢臼別演習場、等で陸自と海兵隊の共同演習を実施する。

参加部隊は;―

陸自:第9師団第5普通科連隊、東北方面特科隊(岩手駐屯地、FH-70 155 mm榴弾砲45両の運用部隊)、東北方面航空隊、

米軍:第3海兵師団第4海兵連隊第28大隊(高機動ロケット砲システムHIMARSの運用部隊)、第1海兵航空団第36海兵航空群(普天間基地、MV-22Bオスプレイの運用部隊)、

特色は;―

陸自の領域横断作戦(CDO)と米海兵隊の機動展開前進基地作戦(EABO)を踏まえた連携向上のための訓練で、国内での両軍合同実施の最大規模の演習、海兵隊MV-22Bを使う空中機動作戦演習、陸自AH-64Dヘリコプターによる射撃訓練、対艦戦闘訓練、を含む。

図31:(陸上自衛隊)AH-64Dアパッチ・ロングボウ、1984年から米軍で配備開始されたボーイング製戦闘ヘリ「空飛ぶ戦車」。陸自が導入したのは「D型」、2005年から取得開始し富士重工がライセンス生産、しかし13機を調達して打ち切られた、価格52億円。重量10.4 ton、エンジンはT700-IHI-701Cターボシャフト2基、兵装は機首に30 mm機関砲、パイロンにAGM-114ヘルファイア対戦車ミサイル16発など。メインローター・マストには対地ミリ波(Kaバンド) レーダー「ロングボウ・レーダー」を装備、戦車、装甲車を識別する。米陸軍は、AH-64Dを700機保有、現在は改良型の「AH-64E」を取得中である。

  • 11月18日  令和3年度日米共同方面隊指揮所演習(YS-81 / ヤマサクラ81) の概要について

12月1~13日の間、陸上自衛隊および米陸上部隊は、それぞれの指揮系統に従い、共同して作戦を実施する場合の指揮幕僚活動を演習し能力の維持向上を図る。場所は、伊丹駐屯地、朝霞駐屯地、座間駐屯地、長崎県相浦駐屯地等。

参加部隊等は;―

自衛隊:陸上幕僚監部、陸上総隊、中部方面隊、統合幕僚監部、海自、空自等、

米軍 :太平洋陸軍司令部、在日米軍司令部、第1軍団、第25歩兵師団、第3海兵機動展開旅団等

特色は;―

我が国を取り巻く安全保障環境の変化に対応すべく発展してきた陸自最大規模の日米共同演習。従来に加えて宇宙、サイバー攻撃、電磁波攻撃などを加えた演習。

  • 令和3年度米国における米陸軍との実動演習(ライジング・サンダー21 / Rising Thunder 21)の概要について

12月1〜15日の間、米国ワシントン州シアトルの東にある広さ13万Haのヤキマ演習場(Yakima Training Center, Washington)で陸自第32普通科連隊は米陸軍第22ストライカー旅団と共同で中隊規模の昼夜間攻撃訓練を行う。

参加部隊は;―

陸自:第1師団第32普通科連隊(埼玉県埼玉市大宮駐屯地)、第1戦闘ヘリコプター隊(西部航空方面隊所属、佐賀県目逹原駐屯地、AH-64Dを運用)、第6情報隊

米軍:第22ストライカー旅団戦闘団(22nd Striker Brigade Combat Team/ SBCT)第117歩兵大隊、第16戦闘航空旅団 (16thCombat Aviation Brigade, 7th Infantry Division)等

(注) :「ストライカー旅団戦闘団/SBCT」とは、31個旅団がある旅団戦闘団(BCT)の一つで、7個旅団がある。SBCTは、8輪歩兵戦闘車/ストライカー系列の車両を中心に編成された即応旅団で、有事の際はC-130輸送機で出撃、1個旅団が120時間で展開できる)

特色は;―

日米共同で情報、機動、火力を連携させた中隊規模の昼夜間の攻撃演習となる。陸自として初の無人偵察機「スキャンイーグル2」の国外訓練で、米軍の各種無人機と共同で偵察訓練を行う。陸自 AH-64Dヘリコプターから空対地ミサイル「ヘルファイア」の射撃訓練を行う。

図32;(US Army) M1126 ストライカー歩兵戦闘車(M1126 Stryker Infantry Fighting Vehicle)。2002年から配備が始まり、4,900両以上が製造され、大部分が米陸軍で使われている。重量はICV(歩兵戦闘車)が18 ton、MGS(105 mm 砲搭載車/105 mm M1128 Mobile Gun System)が21 ton、乗員2名、兵員9名輸送可能、

海上幕僚監部発表

  • 11月2日  日独共同訓練について

11月4~5日、関東地方南方の太平洋上の海空域で、海自護衛艦「さみだれ」とドイツ海軍フリゲート「バイエルン」は、両海軍の連携強化のため戦術訓練を実施。

図33:(海上幕僚監部)ドイツ海軍フリゲート「バイエルン(Bayern / F217)」は満載排水量4,900 ton、速力29 kts、「ブランデンブルグ( Brandenburg)級」の3番艦、1996年就役。

図34:(海上幕僚監部)海自護衛艦「さみだれ(DD-106)、満載排水量6,100 ton、「むらさめ級」の6番艦、2000年就役。

  • 11月4日  日米共同訓練について

11月3日九州西方東シナ海の海空域で、海自ヘリ空母「いせ /DDH 182」、護衛艦「はるさめ/DD 102」、「あさひ/DD119」、ミサイル艇「おおたか/PG829」、掃海艇「ひらしま/MSC 601」、「やくしま/MSC 602」、「たかしま/MSC 603 」は、米海軍強襲揚陸艦「アメリカ (USS America / LHA 6)」と戦技向上と相互運用性の向上のため戦術訓練を実施した。

米第7艦隊ニュースは本件を大きく報じた。強襲揚陸艦「アメリカ /LHA 6」は、第31海兵遠征師団(31st Marine Expeditionary Unit)と共に第7艦隊の「アメリカ遠征打撃群 (the America Expeditionary Strike Group)」の旗艦を務め、インド・太平洋の安定・秩序維持の役を担っている。

図35:(海上幕僚監部)手前「いせ/DDH 182」、奥「アメリカ/USS America/LHA 6」。

  • 11月5日  日米共同訓練について

令和3年度インド太平洋方面派遣(IPD21)部隊は10月28日~11月4日の間、南シナ海、東シナ海、日本海の海空域で、米海軍と共同訓練を実施した。参加したのは、海自護衛艦「しらぬい」、米海軍駆逐艦「ヒギンズ」、給油艦「ビッグホーン」である。

図36:(海上幕僚監部)左「ビッグホーン」から給油を受ける右「しらぬい」。奥に見えるのは「ヒギンズ」。「ビッグホーン(USNS Big Horn / T-AO-198)」は「ヘンリ・J・カイザー(Henry J. Kaiser)」級給油艦16隻中の12番艦で1992年就役、満載排水量40,000 tonの大型艦。速力20 kts、艦艇燃料、航空燃料合計で28,000キロリットルを搭載できる。

  • 11月5日  日米共同訓練について

令和3年度インド太平洋方面派遣(IPD 21)部隊は、10月29日~11月4日の間、南シナ海で米海軍空母打撃群と共同訓練を行なった。海自からはヘリ空母「かが」、護衛艦「むらさめ」、米海軍からは空母「カール・ビンソン」、巡洋艦「レイク・シャンプレーン」および「シャイロー」、駆逐艦「ミリウス」である。

図37:(海上幕僚監部)上空から見た左「カール・ビンソン」、右「かが」その他の艦艇。空母「カール・ビンソン(USS  Carl Vinson CVN-70)」は排水量103,000 ton、全長333 m、搭載機数約70機の超大型艦、一方海自最大のヘリ空母「かが/ DDH-184」は、満載排水量26,000 ton、全長248 m、搭載機数は最大14機。これはその差が分かる写真。

  • 11月5日  日米共同訓練 (ILEX21-5) について

11月3日東シナ海で、海自補給艦「おうみ」は米海軍駆逐艦「デユーイ」に洋上補給を実施した。

図38:(海上幕僚監部)手前海自補給艦「おうみ」が米海軍駆逐艦「デユーイ」に洋上補給を実施した。「デユーイ(USS Dewey / DDG-105)」は「アーレイ・バーク級」ミサイル駆逐艦(イージス艦)の55番艦で2010年就役・2021年9月から第7艦隊所属。海自補給艦「おうみ/ AOE-426」は、「ましゅう級」の2番艦、満載排水量25,000 ton、第1海上補給隊(佐世保)に所属。

  • 11月6日  日米共同訓練について

11月5日、海自厚木基地第51航空隊所属「P-1」哨戒機は三沢基地米海軍第138戦闘支線飛行隊所属の「EA-18G」電子戦機2機と情報交換訓練を厚木基地で実施した。

図39:(海上幕僚監部)訓練に参加した日米両海軍の隊員と、背景は手前が米海軍「EA-18G」電子戦機、奥が海自「P-1」哨戒機。「EA-18G」グラウラー(Growler)は、複座戦闘攻撃機「F/A-18F」スーパー・ホーネットを電子戦機に改造した機体で2009年から米海軍が運用、150機ほど保有している。AN/ALQ-99戦術妨害装置(TJS)、AN/ALQ-218(V)2無線周波受信装置、AN/ALQ-227通信対抗手段セット等を搭載する。昨年、同機を無人機化し、有人「EA-18G」による制御飛行に成功している。空自でも導入を検討中と一時報じられた。

  • 11月9日  令和3年度機雷戦訓練(日向灘)および掃海特別訓練(日米共同訓練)について

11月18日~28日の間、日向灘の海空域で令和3年度機雷戦訓練と日米共同の掃海特別訓練を実施する。参加部隊は、海自から艦艇18隻(掃海母艦1隻、掃海艦2隻、掃海艇15隻、および掃海ヘリコプター「MCH-101」2機、米海軍からは掃海艦2隻、掃海ヘリコプター「MH-53E」2機。

  • 11月10日  日加共同訓練 (KAEDEX21)について

11月9日東シナ海の海空域で、海自護衛艦「じんつう」、カナダ海軍フリゲート「ウイニペグ」が共同訓練を行なった。

図40:(海上幕僚監部)手前が「ウイニペグ」、奥が「じんつう」。

  • 11月12日  日豪共同訓練(日豪トライデント)について

11月10日~12日の間四国南方海空域で、海自護衛艦「いなずま」はオーストラリア海軍フリゲート「ワラマンガ」と共同訓練を実施。

図41:(海上幕僚監部)

  • 11月13日  日米共同訓練について

11月8日~12日の間、南シナ海で、令和3年度インド太平洋方面派遣(IPD 21)部隊のヘリ空母「かが」と護衛艦「むらさめ」は、米海軍駆逐艦「ミリウス」と共同訓練を実施。

図42:(海上幕僚監部)左ヘリ空母「かが」と右駆逐艦「ミリウス」

  • 11月16日  令和3年度海上自衛隊演習(日米および日米豪加独共同演習)について

11月21日~30日の間、日本周辺の海空域で、海自艦艇約20隻・航空機約40機が参加する大規模演習を実施。米海軍からは艦艇約10隻、オーストラリア海軍から艦艇2隻、カナダ海軍から艦艇1隻、ドイツ海軍から艦艇1隻が参加する。演習項目は対潜戦、PhotoExなど。

米第7艦隊ニュースでは、本件を「日米豪加独共同演習 /ANNUALEX 2021」として報じている。以下はその概要;―

11月21~30日の間、日本南方沖合のフィリピン海で日米など5カ国海軍が参加して「日米豪加独共同演習/ANNUALEX 2021」が行われる。演習項目は、艦隊相互通信訓練、対潜水艦訓練、航空機戦闘訓練、洋上補給訓練、艦艇相互間の離発着訓練、対敵妨害航法訓練など多岐にわたる。

「ANNAALEX」は日本海上自衛隊がホストとなり年1回行われる演習で、各國海軍間の連携強化と全ての技量向上を目指す戦術訓練。海自以外の参加艦艇は;―

オーストラリア海軍:「HMAS Brisbane」

カナダ海軍    :「HMCS Winnipeg」

ドイツ海軍    :「FGS Bayern」

米海軍      :「USS Carl Vinson/CVN 70」、「USS Lake Champlain/CG 57」、「USS Stockdale/ DDG 106」、「WSNS Rappahannock/T-AO 204」「USNS John Ericsson/T-AO194」、および空母航空団/CVW 2 (F-35C戦闘機等を運用)

図43:(7th Fleet) 「日米豪加独共同演習 /ANNUALEX 2021」参加5カ国海軍艦艇のフォーメイション。一番手前の両側には潜水艦、その後ろには左ヘリ空母「かが」、右は空母「カール・ビンソン」。

  • 11月16日および11月18日  日米共同対潜演習および共同訓練について、

令和3年度インド太平洋方面派遣(IPD 21)部隊、ヘリ空母「かが」・護衛艦「むらさめ」・潜水艦・「P-1」哨戒機は、米海軍駆逐艦「ミリウス」・「P-8A」哨戒機と共同で、11月14~17日の間、南シナ海で対潜戦を含む訓練を実施。この訓練は海自と米海軍が南シナ海で行う最初の対潜訓練である。

中国共産党機関紙・環球時報は本件に関し、「日本はこれまでの態度から一歩踏み出し、南シナ海で米国と共同歩調を取り、中国の主権に対抗しようとしている」と報じた。(2021-11-17)。

図44:(海上幕僚監部)南シナ海で、海自潜水艦と米駆逐艦「ミリウス」

航空幕僚監部発表

  • 11月1日  米軍との共同訓練について

10月28日那覇北西の東シナ海上空域で、米空軍と戦闘機22機を含む大規模な防空戦闘訓練、捜索救難訓練、および空中給油訓練を行なった。参加したのは;―

航空自衛隊:那覇基地第9航空団F-15戦闘機12機、小牧基地第1輸送航空隊C-130H輸送機1機、入間基地第2航空輸送隊C-1輸送機1機、美保基地第3航空輸送隊C-2輸送機2機、那覇基地航空救難団U-125A救難捜索機1機およびUH-60Jヘリコプター1機、

米空軍  :F-15戦闘機10機、KC-135給油機1機、MC-130J輸送機1機およびC-130J輸送機1機

図45:(USAF) 10月28日東シナ海空域で日米戦闘機合計22機が参加して実施た戦闘訓練の写真。

  • 11月9日  令和3年度航空総隊総合訓練(実動演習)の実施について

航空自衛隊の作戦遂行能力の維持・向上のため、11月10日~23日の間全国の自衛隊施設および周辺空域で、人員約300名、航空機約20機、車両約40両が参加して、支援施設が不十分な飛行場への航空機部隊の展開訓練を実施した。

  • 11月11日  米軍との共同訓練の実施について

11月9日、宮古島・石垣島北・尖閣諸島付近の東シナ海上の海空域で、那覇基地航空救難団U-125A救難捜索機1機、UH-60Jへリコプター1機は、米空軍CV-22テイルトローター輸送機1機およびMC-130J特殊作戦輸送機1機と共同救難訓練を実施。

図46:(航空幕僚監部)11月9日東シナ海で実施した空自・米空軍の共同救難訓練。左から、米CV-22テイルトローター輸送機、空自UH-60Jヘリコプター、米C-130J特殊作戦輸送機。

図47:(航空幕僚監部)「U-125A救難捜索機」、1994年から空自基地11箇所の航空救難団救難隊に配備中。原型はデハビランド DH-125ビジネスジェット、現在はホーカー・ビーチクラフトがホーカー800として製造中。乗員4名、エンジンはTFE731-5R-1H推力約2 tonを2基、最大離陸重量26.9 ton、最大速度820 km/hr.

米第7艦隊ニュース

  • 11月9日  米強襲揚陸艦「アメリカ」と海自ヘリ空母「いせ」を含む艦隊が11月3日東シナ海で共同演習を実施

詳しくは海上幕僚監部11月4日発表を参照する。

  • 11月17日  米ドック型揚陸艦「ラシュモア」佐世保に到着、「前線展開海軍部隊」に編入

水陸両用ドック型揚陸艦(amphibious dock-landing ship)「ラシュモア(USS Rushmore /LSD 47)」16,000 tonが17日佐世保に到着、「前線展開海軍部隊 (FDNF=forward deployed naval force)に編入された。「ラシュモア」は去る9月に帰国した同じ揚陸艦「ジャーマンタウン(USS Germantown/LSD 42)」の後継となる。「ラシュモア」は500名の海兵隊員を輸送、上陸用エアクッション艇LCAC 4隻で揚陸及び回収する能力を持つ。1991年就役、1997年から2年の改修で、艦橋に電子チャート表示装置(Electronic Chart Display)を備え艦橋システムと操縦舵輪など機械システムとの統合化を行い、最初の“スマート・シップ”となった。

図48:(7th Fleet /Navy MC1 Jeremy Graham) 佐世保に到着した米海軍ドック型揚陸艦「ラシュモア/LSD 47」

  • 11月21日  豪・カナダ・ドイツ・日本・米国各國海軍、ANNUALEX 2021演習に参加

本稿の海上幕僚監部発表「11月16日  令和3年度海上自衛隊演習(日米および日米豪加独共同演習)について」を参照する。

  • 11月23日  第7艦隊駆逐艦「ミリウス/DDG 69」が台湾海峡を通過

11月23日、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦「ミリウス(USS Milius /DDG 69)は台湾海峡を通過、航行の自由作戦を実施した。

その他

11月6日、台湾国防部発表によると6日早朝、中国軍戦闘機など16機が台湾南西の台湾防空識別圏に侵入、これに対抗するため嘉手納基地米空軍F-15戦闘機4機が緊急発進、台湾南西部に向かった。

11月28日、台湾国防部発表によると28日、中国軍、戦闘機、爆撃機、空中給油機など27機が、台湾南西部の防空識別圏に侵入、その半数以上がバシー海峡を通過台湾南東部沖合に進出し、それから往路と同じ経路で引き返した。飛来した空中給油機は「運油20」と呼ぶ「IL-78空中給油機」、ロシア・イリューシンIL-76MD輸送機を基に作られた機体。ロシア空軍、インド空軍で使用中。2020年から中国空軍でも使用開始。最大離陸重量89 ton、行動半径1,000 km、4発機。

―以上―