令和4年5月、我国周辺における中露両軍の活動と我国/同盟諸国の対応


2022-06-03 松尾芳郎

令和4年5月、我国周辺における中露両軍の活動と、我国および同盟諸国の動きに関し、それぞれの公的部門等から多くの発表があった。以下にその項目と内容を紹介する。注目すべきニュースは次の通り;

  1. 北朝鮮、ミサイル発射試験を反復実施
  2. 中国海軍、「遼寧」空母打撃群が沖縄南方太平洋上で長期訓練
  3. 陸自、豪州東部で米豪軍と実動訓練(Southern Jackal 22)を実施
  4. 陸自、北海道で実動対抗演習を実施
  5. 海自、太平洋で米空母「ロナルド・レーガン」と防空戦訓練を実施
  6. 中露の戦略爆撃機、Quad summitを狙い合同パトロールを実施

(The military maneuvers by Russo-Chinese forces around Japanese Islands are as usual. Japan and allies move to take farther counter measure. Following six were noteworthy in May ;-

  1. North Korea launched three missiles including an ICBM, 12 hours after Biden left Tokyo.
  2. Chinese Liandong carrier strike group conducted long term exercise on Pacific nearby  Okinawa.
  3. Japanese Army join the Southern Jackal 22 exercise, held by U.S. and Australian Army in  eastern Australia
  4.  Japanese Army conducted large scale exercise in Hokkaido.
  5. Japanese Navy conducted anti-aircraft exercise with USS Ronald Reagan carrier strike group on western Pacific.
  6. China, Russia hold joint aerial patrol for 4th consecutive year amid Quad Summit.

北朝鮮、ミサイル発射試験を反復実施

北朝鮮は、5月4日正午、5月7日午後2時、5月12日午後6時半、そして5月25日早朝の4回にわけて日本海に向け弾道ミサイルの発射実験をした;―

5月4日:北朝鮮西岸から東に向け弾道ミサイル1発を発射した。最高高度800 kmのロフテッド軌道で500 kmを飛翔し日本海の我国排他的経済水域(EEZ)外に落下した。

5月7日:北朝鮮東岸付近から東に向けて弾道ミサイル1発を発射した。これは潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)と推定され、最高高度50 kmで600 km飛翔し日本海の我国排他的経済水域(EEZ)外に落下した。

5月12日:北朝鮮西岸から東に向け3発の短距離弾道ミサイルを発射した。最高高度100 kmの軌道で350 kmを飛翔し日本海の我国排他的経済水域(EEZ)外に落下した。

5月25日:午前6時から7時に掛け、北朝鮮平壌の順安空港付近から東に向け3発の弾道ミサイルを発射した。1発目はICBM「火星17(Hwasong 17)」、最高高度550 kmの軌道で300 kmを飛翔し日本海の我国排他的経済水域(EEZ)外に落下した。2発目は同6時37分に短距離弾道ミサイルを発射したが高度20 kmで消失したので失敗したと思われる。さらに同6時42分ごろに3発目として同じ短距離弾道ミサイルを発射、最高高度50 kmで変則軌道で750 km飛翔し日本海の我国排他的経済水域(EEZ)外に落下した。

韓国軍合同参謀本部は、バイデン大統領が5月24日まで韓国・日本を歴訪し、北朝鮮及び中国からの武力攻撃に対処すべく日米韓3カ国の連携を確認した直後を狙った示威行動だ、と非難した。

北朝鮮は、2022年3月24日に「火星17」の発射実験に成功、と主張している。この時は高度6,000 kmに上昇、1時間後に日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。しかし韓国は、これは「火星17」ではなく「火星15」だった、と言っている。理由は「火星17」が直前の3月16に打上げ失敗したのを隠すために、別途「火星15」を打上げたもの、と推測している。

「火星15」と改良型の「火星17」はほぼ同じ外観で、後者については射程が15,000 kmに延伸されている。詳細は不明。

「火星15」は、重量40~50 ton、全長22.5 m、直径2.4m、射程13,000 km。構造は2段式でその上に弾頭を載せる構造、1段目は液体燃料エンジン2基を装備、発射機はTEL(Transporter Elector Launcher)形式で9軸18輪の車両である。

図1:(朝鮮中央通信/共同))北朝鮮新型ICBM「火星17」。9軸18輪TELに搭載、直立して発射される。液体燃料を使うため発射前に燃料注入の作業が必要になる。

中国海軍、「遼寧」空母打撃群が沖縄南方の太平洋上で長期訓練

5月1日、長崎県男女群島西の海域に姿を現した中国海軍「遼寧(16)」を中心とする空母打撃群8隻は、同日夕刻に沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を通過し太平洋に進出、沖大東島南方の海域で戦闘機およびヘリコプターの発着訓練を開始した。その後5月6日-13日には石垣島南方に移動し、ここで艦載機の離発着訓練を行なった。そして再び沖大東島南方に戻り5月14日から20日にかけて艦載機の発着艦訓練を行った。同21日にようやく訓練を終了して22日に宮古海峡を通過、東シナ海に戻った。この期間は3週間に及ぶ。「遼寧」の艦載機発着艦回数は300回を超えた、と統合幕僚監部は発表している。これでかなり離着艦の練度が向上したと思われる。

図2:(統合幕僚監部)統幕発表の「遼寧」空母艦隊の動静図を纏めたもの。5月2日から同15日までを示す。「遼寧」艦隊は、搭載航空機の離着艦訓練を20日ごろまで続け、22日に宮古海峡を通過東シナ海に戻った。

今回の空母「遼寧」艦隊に関し、統合幕僚監部は5月2日から同22日に渡り、ほぼ連日その動静を発表してきた。要約すると;―

「遼寧」艦隊の構成

空母「遼寧(16)」、レンハイ級ミサイル駆逐艦(101)、ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(117)、同(118)、同(120)、フユ級高速戦闘支援艦(901)、ジャンカイII級フリゲート(531)、ルーヤンII級ミサイル駆逐艦(151)の8隻。

図3:(統合幕僚監部)ロシア(旧ソ連)で製造途中だったアドミラル・クズネツオフ級空母「バリヤーグ」を、1998年に中国がウクライナから2千万ドルで購入、地中海、スエズ運河、インド洋、南シナ海、東シナ海を経由、大連まで曳航し、ここの造船所で空母として2012年に完成させた。満載排水量67,500 ton、全長305 m、速力30 kts、「J-15」戦闘機24機、ヘリコプター10機などを搭載する。飛行甲板は着艦用アングルド・デッキ(7度)と、発艦用スキー・ジャンプ(14度傾斜角)甲板となっている。青島を母港としている。

図4:(統合幕僚監部)南昌級ミサイル駆逐艦(055型駆逐艦)、満載排水量13,000 tonの大型で装備が充実しており、米海軍では「ミサイル巡洋艦」と位置付けている。艦番号101は「南昌」、2020年の就役。同型艦は8隻、空母直衛艦としての役目が主。

図5:(統合幕僚監部)「ルーヤン/旅洋III級 / 052D型 昆明級」駆逐艦は中国版イージス艦。同型艦は25隻が就役済み、追加5隻が艤装中で間も無く30隻体制になる。写真「西寧/Zining (117)」は2017年の就役、北海艦隊に所属。満載排水量7,500 ton、全長156 m、速力29 kts。VLS(垂直ミサイル発射装置)64セルに対空/対艦ミサイル(HHQ-9、CY-5、YJ-18など)を装備。

図6:(統合幕僚監部)前図参照。写真は「烏魯木斉 /Urumqi (118)」。

図7:(統合幕僚監部)前図参照。写真は「成都 /Chengdu(120)」。

図8:(統合幕僚監部)満載排水量48,000 ton、長さ241 m、速力25 kts、空母機動部隊に随伴し支援するのが役目。中部甲板に門型ポスト3基を装備。前後の2基は液体用ポスト、中央はドライカーゴ用。艦尾にはヘリコプター甲板があり、Z-8およびZ−18ヘリを搭載する。搭載燃料は、航空用を含め25,000 ton、真水1,500 ton、弾薬1,800 ton、食料400 ton。現在までに2隻、「呼倫湖 (Hulun-hu) 965」、「査千湖 (Changan-hu) 967」、が就役。

図9:(統合幕僚監部)「ジャンカイII/江凱II」型は「054A」フリゲート、写真は「湘潭(Xiangtan)/531」で2016年就役、東海艦隊所属。満載排水量4,500 ton、全長137 m、速力27 kt、HQ-16対空ミサイルを32セルVLSに収納。対艦ミサイルは艦中央にYJ-83型を4連装発射機2基に搭載。[045A]フリゲートは30隻が就役済み。

図10:(統合幕僚監部)52C型(蘭州級)ミサイル駆逐艦、本級は中国版イージス艦の原型。写真は6隻中の4番艦「鄭州(Zhengzhou)・151」。「蘭州級」は満載排水量7,000 ton、HHQ-9A艦隊防空ミサイルを6セル円筒形VLS 8基の収めている。対艦ミサイルはYJ-62射程400 kmを4連装発射機2基に収納している。

搭載戦闘機

中国海軍では空母「遼寧」および「山東」に搭載する艦上戦闘機として「J-15」を開発、56機以上を保有している。「J-15」は、2001年ごろロシアの艦上戦闘機「Su-33」の試作機「T-10K-3」をウクライナから入手、これを基本にして瀋陽航空機で開発製造した機体。2009年に初飛行した。エンジンはロシア製AL-31Fターボファン、推力はアフトバーナ時30,000 lbs/137 kN、を2基搭載している。全体として米海軍の「F/A-18E/Fスーパーホーネットに匹敵する戦闘攻撃機で侮りがたい。

図11:(統合幕僚監部)空母「遼寧」上空を飛ぶ「J−15」戦闘機。主翼と水平尾翼は上方に折畳める。ランデイングギアはチタン合金製、3Dプリント製法で製造。兵装は空対空ミサイル、精密誘導爆弾、YJ-83対艦ミサイルなどを搭載可能。甲板風速10 ktsで、離艦重量は28.5 tonになり、搭載兵装は空対空ミサイルPL-8を4発およびPL-12を8発になる。

搭載ヘリコプター(Z-18)

Z-18ヘリコプターは昌河航空機(Changhe Aircraft)が哈爾濱(Harbin)製 Z-8の後継機として開発した大型汎用ヘリコプター。主な任務は人員、物資の輸送で胴体両側のドアと後部のランプから乗降、貨物の搬出入ができる。人員輸送では20席まで用意できる。対潜哨戒ヘリZ-18Fの場合は、後部ランプドアを廃しそこに対潜ソノブイを搭載、また胴体側面に短魚雷や空対空ミサイルを搭載する。

図12:(統合幕僚監部)空母「遼寧」から離艦する中国最大のヘリコプター「Z-18」

図13:(Military Today.com) 「Z-18」は、着水も可能で胴体側面の車輪にフロートおよび胴体内4カ所に収納式フロートを装備する。機体構造の30 %を複合材にして腐食・経年疲労を減じ耐用年数を25年に延ばしている。エンジンは国産のWZ-6C出力1,300 KW、最大離陸重量13.8 ton、ペイロードは4 ton。アビオニクスはグラス・コクピット、フライバイワイヤ、機首下部に気象レーダーと赤外線/光学センサーを組込んだターレットを備える。

警戒・監視体制

「遼寧」空母艦隊の警戒、監視に当たったのは、海自第1護衛隊所属ヘリ空母「いずも」、第4航空群所属「P-1」哨戒機、および第5航空群所属「P-3C」哨戒機、および空自南西航空方面隊所属「F-15J」戦闘機などである。

陸自、豪州東部で米豪軍と実動訓練(Southern Jackal 22)を実施

陸上幕僚監部は5月9日に「令和4年度オーストラリア東部の演習場で、米豪軍と実動訓練を実施」すると発表した。期間は5月9日から同27日の間、場所はクイーンズランド州ショールウオーター・ベイ演習場で、米豪軍が行う「サザン・ジャッカル22(Southern Jackal 22)」実動訓練に参加する形で実施する。

特に対ゲリラ・コマンド作戦に関わる遂行能力(ドローンを活用した作戦を含む)と米豪陸軍との相互運用性の向上を図るのが狙い。

陸自からの参加部隊は、第13普通科連隊および中央即応連隊。

  • 第13普通科連隊:第12旅団隷下で長野県松本市にある連隊、陸自唯一の山岳レンジャー連隊で兵員数650名。
  • 中央即応連隊:栃木県宇都宮市にあり、陸上総隊隷下の緊急展開部隊、隊員は全国からの志願者で構成、700名規模、各種装輪装甲車、高機動車、など100輌を装備する。

オーストラリア陸軍からの参加部隊は、第7旅団第6歩兵連隊。

米軍からは海兵隊、第1海兵機動展開部隊 ダーウイン・ローテーション部隊

ショールウオーター・ベイ演習場(Shoalwater Bay Military Training Area)

「ショールウオーター・ベイ演習場」はクイーンズランド州(Queensland, Australia)珊瑚海に面した海岸にある広大な演習場で、面積は454,500ヘクタール(ha)(1,223,000 acres/エーカー)。陸自最大の演習場は北海道にある「矢臼別演習場」・総面積16,800ヘクタール( ha)なので、その76倍ほどの広さになる。

図14:(Wikipedia)オーストラリア北東部クイーンズランド州にある「ショールウオーター・ベイ演習場」の位置。陸自最大の北海道「矢臼別演習場」の76倍の広大な演習場である。

陸自、北海道で第1回実動対抗演習を実施

陸上自衛隊では、5月13日〜6月21日の間、北海道上富良野演習場および然別演習場で、第5旅団および第14旅団が実動対抗演習を実施している。目的は、戦車部隊および野戦特科部隊(砲兵部隊の意)を含む普通科連隊(歩兵連隊の意)が戦闘力の組織的運用と練度向上を図る。

参加部隊;―

  • 第5旅団:北部方面隊隷下の旅団で、帯広駐屯地にある。3個普通科連隊/自動化歩兵連隊を基幹とする旅団で、兵員3,600名、隷下に鹿追駐屯地在の第5戦車大隊を持つ。第5戦車大隊は3個戦車中隊(90式戦車を装備)で構成。普通科連隊/自動化歩兵連隊は、16式機動戦闘車、155 mm 榴弾砲、軽装甲機動車などを装備する。
  • 第14旅団:陸自機動旅団/即応近代化旅団の一つで、中部方面隊隷下で香川県善通寺駐屯地にある。配下に第15即応機動連隊、第50普通科連隊、中部方面特科隊(砲兵部隊の意)、第14飛行隊、第14高射特科隊、を持つ。第15即応機動連隊は16式機動戦闘車を装備している。

主要装備:―

  • 90式戦車:北海道に侵攻するロシア軍機甲部隊に対抗するために開発された。1990年から2009年までに341輌が調達された。車体・砲塔は三菱重工製、120 mm滑腔砲は日本製鋼所製。120 mm滑腔砲には高度な射撃管制装置が付き、自動装弾装置を採用して装填手を不要にしている。装甲にはセラミック複合素材を採用し耐弾性能が極めて高い。2011年度からは後継となる10式戦車の配備が進んでいる(現在100輌ほど)。

図15:(陸自調査団)90式戦車は、全長9.76 m、幅3.33 m、重さ約50 ton、乗員3名、速力70 km/hr。主砲の44口径120 mm滑腔砲は、ドイツ・ラインメタル(Rheinmetall AG)製のライセンス生産。エンジンは三菱10ZG32WT水冷10気筒デイーゼル・出力1,500馬力。移動目標追尾機能は米陸軍から高い評価を受けている。

  • 16式機動戦闘車:2016年から調達が始まった装輪装甲車、三菱重工が試作・製造を担当している。主として機動師団(第6師団と第8師団)、機動旅団(第11旅団と第14旅団)配下の即応機動連隊などに配備されている。搭載する52口径105 mmライフル砲は、74式戦車の主砲と同じで、イギリスの Royal Ordnance製ライフル砲LA7A1を日本製鋼所がライセンス生産している砲。これには高度な射撃統制装置を装備しているので高い命中精度を持つ。車輪走行のため高速道路を時速100 km/hrで走行できる。重さは26 tonなので、離島などにC-2輸送機で輸送可能。2022年度までの調達数は197輌。

図16:(YouTube)日本原駐屯地で公開された16式機動戦闘車。全長8.45 m、幅3 m、重さ26 ton、エンジンは三菱製・直列4気筒水冷デイーゼル出力570 馬力。

155 mm榴弾砲:1970年代に英・独・伊3カ国で共同開発した牽引式榴弾砲で「FH70 =Field howitzer 70」と呼ばれる。これを1983年から日本製鋼所がライセンス生産して陸自に納入してきた。搭載する補助動力装置(APU)は富士重工(現在はスバル)が製造した。このAPUの力で短距離なら自力で移動できる。

現在運用しているのは、日本/398門、イタリア/162門、サウジアラビア/72門、など。

過去に運用していた国は、イギリス/67門、ドイツ/192門、など。

1990年以降になると、イギリスはL118 105 mm榴弾砲、AS90自走榴弾砲、MLESに更新し、「FH70」は1999年に退役した。ドイツは2002年にPzH2000自走榴弾砲に更新し退役した。

イタリアでは現在も90門が現役で使用中で、退役した「FH70」はウクライナに供与されたと報じられている。

米陸軍は、精密誘導砲弾「エクスカリバー」を使えるM777 155 牽引式超軽量榴弾砲(英ビッカース社製)の導入を開始している。これが、2022年ウクライナに米国が90門、オーストラリアが6門、カナダが4門、供与した榴弾砲である。

米陸軍は別途155 mm自走榴弾砲M109の近代化改良を進め、現在はM109A6を配備している。

このように陸自配備の「FH70」榴弾砲は、導入以来40年が経過しており、西側主要国ではほぼ退役した装備なので早急な更新が望まれる。陸自では後継として99式自走155 mm榴弾砲の配備を進めているが、予算の制約で北海道に少数配備されている状況。

図17:(YouTube) 富士演習場で実弾射撃をする陸自FH70 155 mm 牽引式榴弾砲。

海自、太平洋で米空母「ロナルド・レーガン」と防空戦訓練を実施

海上自衛隊は5月8日〜同16日の間関東地方南方の太平洋海空域で、米第7艦隊空母「ロナルド・レーガン(Ronald Reagan /CVN 76)」およびミサイル巡洋艦「アンテイータム( Antietam /CG-54)」と防空戦闘訓練を実施した。海自側から護衛艦「てるずき/DD-116」と「P-3C」哨戒機および「UP-3D」電子戦訓練支援機(岩国基地第31航空群第81航空隊所属)が参加した。

米第7艦隊ニュース(May 16, 2022)は、次のように報じている。

「第5空母打撃群の旗艦・空母「ロナルド・レーガン/CVN 76」とミサイル巡洋艦「アンテイータム/CG-54」は、5月17日までの1週間、フィリピン海で海自ミサイル駆逐艦「てるずき/DD-116」、P-3C哨戒機などと共同訓練を行なった。訓練には米側から「第138電子戦飛行隊 / Electronic Attack Squadron(VAQ) 138」が参加した。

日米両軍は、実弾射撃訓練、電子戦訓練、ヘリコプター着艦訓練、編隊航行訓練、通信訓練、洋上補給訓練、の相互訓練を実施し、共同交戦能力を向上することができた。」

図18:(海上幕僚監部)空母「ロナルド・レーガン」と並走する海自ミサイル駆逐艦「てるずき/DD-116」。

図19:(第7艦隊ニュース)海自ミサイル駆逐艦「てるずき/DD-116」(左)と米ミサイル巡洋艦「アンテイータム( Antietam /CG-54)」。「てるずき」は満載排水量6,800 ton、長さ150.5 m、速力30 kts、兵装は62口径5 inch単装砲、Mk.41 VLS (32セル)、90式SSM 4連装発射筒2基、など、電子戦装備は最新型機器を搭載している。SH-60Kへりコプター離発着甲板を備える。「あきずき」型護衛艦4隻の2番艦で2013年に就役、現在第2護衛隊群・第6護衛隊の所属、横須賀が提携港である。

「UP-3D」電子戦訓練支援機」;

P-3C哨戒機を基本に、訓練用電波妨害装置を搭載して艦隊の電子戦訓練の支援をする機体で3機製造され岩国基地第91航空隊に配備している。

3機はいずれも新造機で、P-3Cの尾部のMADを取り外し、胴体上下に2ヶ所のレドームを増設、必要に応じ標的曳航やチャフ散布も行える。レドーム内のアンテナから訓練用妨害電波を発射する。

図20:(海上自衛隊ホームページ)UP-3D、幅30.4 m、長さ32.7 m、離陸重量56 ton、速力365 kts、T-56-IHI-14ターボプロップ4,900 HPを4基、乗員8名。

「第138電子戦飛行隊 / Electronic Attack Squadron(VAQ) 138」;-

「イエロー・ジャケット(Yellow Jackets)」と名付けられた「EA-18Gグローラー(Growler)」遠征電子戦機中隊で、ワシントン州ウイドベイ島・海軍航空基地(NAS Whidbey Island, Washington)に本拠を置く。世界中何処にでも展開し、電子戦攻撃、すなわち敵側が使う電磁波を遮断、減衰、破壊して、米軍と同盟国軍の作戦を支援するのが役目である。青森県三沢基地にもしばしば駐留し、中露軍の電子戦活動に対処している。通常は陸上基地にいるが、今回の演習のように空母打撃群に移動、訓練に参加することもある。

「EA-18Gグローラー」は空母搭載の戦闘攻撃機「F/A-18Fスーパーホーネット」ブロックIIを基本に、最新のAEAアビオニクスを搭載した電子戦機。

図21:2016年6月横田空軍基地で撮影したEA-18Gグローラー

図22:(seaforces.org.) 「第138電子戦飛行隊 / Electronic Attack Squadron(VAQ) 138」は1976年に創設され、ボーイングEA-18Gグローラー電子戦機で編成されている。

中露の戦略爆撃機、Quad summit/4ヶ国首脳会議を狙い合同パトロールを実施

中国とロシアが我が国周辺でも軍事定期連携を強めている。日・米・豪・印4ヶ国の首脳会議/クアット・サミット(Quad Summit)が開かれた5月24日、核兵器を搭載できる中露両軍の爆撃機が日本海、東シナ海、太平洋を飛行した。ロシアのウクライナ侵攻後の共同飛行は初めてで、クアッド・サミットに対する威嚇・示威飛行である。中国はロシアへの軍事支援は行わないとしているが、日米の台湾防衛への関与に警戒を募らせているための飛行とされる。中国軍東部軍管区は25日に台湾周辺の海空域で大規模な実戦演習を実施したと発表した。

統合幕僚監部は次のように報じている(5月24日);―

5月24日午前から午後にかけて、中国爆撃機「H-6」2機が東シナ海から対馬海峡を通り日本海に進出し、ここでロシア爆撃機「Tu-95」2機と合流、編隊を組んで対馬海峡を南下、東シナ海に向け飛行した。その後、これら中国爆撃機「H-6」2機は、別の「H-6」2機と交代し、これがロシア爆撃機「Tu-95」2機と編隊を組み直し、東シナ海から沖縄県宮古海峡を通り太平洋に進出した。そしてこれら4機は往路を同じ経路を飛行、それぞれの基地に戻った。

また同日、ロシア軍の情報収集機「IL-20」が北海道礼文島沖から能登半島沖まで日本海上空を飛行した。

これらに対し、航空自衛隊は戦闘機を緊急発進させ、継続的に監視し、領空侵犯を未然に防いだ。

図23:(統合幕僚監部)5月24日4ヶ国首脳会議が行われている最中に我国防空識別圏(ADIZ)に侵入、威嚇飛行を行った中露両軍の爆撃機6機と情報収集機の航跡。

図24:(統合幕僚監部)「H-6」初期型はロシアTu-16爆撃機を国産化した機体で1968年初飛行。改良された現在の「H-6K」は巡航ミサイル搭載型で2007年に初飛行、改良型の洋上対艦攻撃型「H-6J」は「YJ-12」対艦ミサイル4発を搭載できる、最大離陸重量76 ton、爆弾/ミサイル搭載量9 ton、航続距離6,000 km.。配備機数は不明だが50機以上。

図25:(統合幕僚監部)上図参照

図26:(統合幕僚監部)「Tu-95 」爆撃機は、改良型Tu-95MS「戦略ミサイル輸送機」の名称で63機が配備中。軸馬力14,800 hpのクズネツオフNK-12MAターボプロップを4基、最大離陸重量180 ton、最高速度925 km/hr、航続距離6,400 km。超音速対地攻撃用ラドガ(Raduga) Kh-15巡航ミサイル(射程300 km) 6発を胴体内のドラムランチャーに搭載。派生型のTu-95MS-16は、ラドガ(Raduga) Kh-55亜音速・射程2,500 km巡航ミサイルを胴体内に6発と翼下面に10発、計16発搭載できる。

図27:(統合幕僚監部)上図参照

図28:(統合幕僚監部)「IL-20」型情報収集機。「IL-20SDR クート(Coot) A」とも呼ばれる通信傍受をするCOMINT/ELINT電子戦/情報収集機。胴体下部にあるのは合成開口レーダー・ポッドらしい。原型は1957年代から600機以上生産されたイリューシン(Ilyusin) IL-18旅客機、これを基本に開発された。IL-18は離陸重量64 ton、航続距離3,700 km、イブチェンコAl-20Mターボプロップ出力4,250 hpを 4基装備する。

―以上―