令和8年5月、我国周辺での中露軍活動と我国/同盟諸国の対応



2026年6月13日(令和8年) 松尾芳郎

令和8年4月、我国および台湾周辺における中露軍の活動はほぼ以前の水準に戻りつつある。これに対し我国および同盟諸国は、警戒を緩めることなく抑止力強化に努めている。

(China’s PLA military drill near Japan and Taiwan territorial space in May get back to normal, Russian’s are no change. Japan and allies are putting defensive act against the hostiles. Following are the details of major issues.) 

防衛省および各幕僚監部、米第7艦隊などが発表した5月における我国周辺の中露両軍の軍事活動および我国と同盟諸国軍の対応は以下の通り。

中露、北鮮軍の動向

  • 5月7日 統合幕僚監部発表 中国艦3隻が5月1日深夜、日本海から対馬海峡経由東シナ海へ

5月1日深夜、対馬海峡を南西に航行する中国艦・ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦2隻(119)と(120)及びレンハイ級ミサイル駆逐艦(102)を発見、追尾した。その後5月2日には3隻は東シナ海へ入った。

ルーヤンIII級(119)及びレンハイ級(102)は、3月30日深夜に対馬海峡を北上、日本海に入っている。またルーヤンIII級(120)は3月30日から4月27日の間 対馬海峡を数回往復している。

図1:(統合幕僚監部)「ルーヤンIII級・昆明級/052D型駆逐艦」は、乗員280名、満載排水量7,500 ton、長さ161 m、最大速力32 kts、兵装は70口径130 mm単装砲1門、30 mm CIWS 1基、対空ミサイル用VLS 32セルを2基で、Ka-28/Z-9対潜ヘリコプター1機を搭載。艦橋の4面に平板状の346A型フェーズドアレイ・レーダー・アンテナを装備。「ルーヤンIII級・昆明級/052D型駆逐艦」は33隻が就役中。次級は「南昌級(055型)。写真(120)は「成都」2019年8月就役。

図2:(統合幕僚監部)艦番号(102)は「拉薩」2021年3月就役。レンハイ級(南昌級/055型)ミサイル駆逐艦、満載排水量13,000 ton、最大速力32 kts、全長180 mの大型艦、70口径130 mm単装砲、ミサイル垂直発射筒(VLS)は64セル+48セル、その他の装備を含め前級「昆明(052D)」より性能が向上した。中国最新のイージス艦で同型は8隻就役中、4隻追加する予定。

図3:(統合幕僚監部)艦番号(119)は「貴陽」、2019年2月就役。

  • 5月7日 統合幕僚監部発表 ロシア艦3隻が5月3日早朝/深夜、対馬海峡経由日本海へ

ロシア海軍ステレグシチー級フリゲート(335)、キロ改級潜水艦及びバルク級航洋曳船が5月3日早朝、東シナ海から対馬海峡経由日本海へ入った。これら艦艇は3月5日同6日対馬海峡を南下、与那国島―西表島間を抜け太平洋に出、4月21日に往路と同じ経路で東シナ海に入ったもの。

図4:(統合幕僚監部)ステレグシチー級フリゲートは[20380型]、改良型は[20381型]、沿海用警備艦で2007年から配備。満載排水量2,200 ton、長さ105 m、速力27 kts、ステルス形状で閉囲型マストを装備、電子装備、武器システムが近代化されている。対艦兵器は[3M24ウラン]対艦ミサイル4連装発射筒2基を搭載、艦尾甲板にはKa-27PL哨戒ヘリ1機を搭載。写真(335)は「グロムキー」、2018年12月の就役。太平洋艦隊に5隻が配備中。

図5:(統合幕僚監部)キロ改級潜水艦。「キロ」級877型の改良型で「636号計画艦」。エンジンは出力向上したターボデイーゼルになり、充電時間を短縮。推進プロペラを6翅から7翅に変え回転数を半分にし騒音を抑えている。排水量は水上2,350 ton、水中3,950 ton、長さ74 m、水中速力25 kts。兵装は、533 mm魚雷発射管6門、艦橋に対空ミサイル発射筒があり、浮上し発射する。

図6:(統合幕僚監部)

図7:(統合幕僚監部)4月21日から5月3日かけてのロシア艦艇の航路。

  • 5月11日 統合幕僚監部発表 ロシア軍、貨物船6隻を含む10隻の艦隊が日本海から対馬海峡経由、東シナ海へ

5月9日夕刻から10日にかけてロシア海軍ステレグシチー級フリゲート2隻(333)及び(343)、ドウブナ級補給艦、バルク級航洋曳船及び貨物船6隻の合計10隻からなる艦隊が日本海から対馬海峡経由、東シナ海に向け航行した。4隻の艦隊が6隻の貨物船を護衛する異例の航海で、ドウブナ級補給艦を伴っている事から長期行動と予想される。またバルク級曳船がいる事から、原潜が随伴している可能性がある。ロシア海軍では潜水艦の長期行動時には故障に備えて航洋曳船を随伴することが習慣化しているため。

図8:(統合幕僚監部)(333)は「ソベルシェンヌイ」。説明は図4を参照。

図9:(統合幕僚監部)(343)は「レーズキイ」。

図10:(統合幕僚監部)ドウブナ級補給艦は満載排水量11,500 tonの大型補給艦でロシア海軍では「支援艦」と呼んでいる。積載能力は、燃料7,000 tonと清水300 ton、それに食料・貨物・部品など1,500 tonを搭載できる。補給装備として艦首と艦尾にクレーンがある。また洋上輸送のため門型給油装置を装備しているが、太平洋艦隊の「イルクート」と「ペチェンガ」では撤去されている。

図11:(統合幕僚監部)バルク級曳船は外洋で使う大型曳船。ロシア海軍では潜水艦の長期行動には故障に備えて外洋曳船を随行するのを習慣としている。

6隻の貨物船は全てクレーン付きで、うち1隻「カピタン・ダニルキン」は砕氷船型船首をしている。喫水線の沈みから見て2隻は貨物をかなり積載している模様。また4隻はAIS/船舶自動識別装置を作動させているので、ウラジオストクを出航したことは分かるが、行き先は不明。

6隻のうち「アンガラ」、「レデイR」、「マイア1」、の3隻は北朝鮮の羅先港でコンテナを積み込む所を偵察衛星が捉えている。そしてウラジオストックに行き、他船舶と合流して出航した。AISを発信しているのは[Maia 1], [Lady E], [Kapitan Danillkin], [Lady Mara]の4隻。

同船団は、その後東シナ海を南下、西表島付近を通過し太平洋を経由、ベトナムの南東200浬を航行している。行先と積載貨物はロシア製兵器や北朝鮮製ミサイルかいずれ判明するだろう。

図12:(統合幕僚監部)6隻の貨物船。

  • 第11管区海上保安本部発表/読売新聞オンライン報道 中国海洋調査船、5月8日までの1ヶ月間、尖閣諸島EEZ海域で海底調査を繰り返す

中国の海洋調査船「向陽江22」は、3月30日〜5月8日の約1ヶ月間、沖縄県尖閣諸島沖の我国排他的経済水域(EEZ)内で、我国の同意を得ないまま海洋調査を繰り返した。「向陽江22」は、昨年秋にも奄美大島沖で同じ無許可の調査を行なっている。日本側は中止要求と抗議を繰り返すが中国側は無視し活動を続けている。

第11管区海上保安本部によると、同船は3月30日〜5月6日、3回にわたって尖閣諸島魚釣島の西北西60 kmの沖合を航行、舷側からパイプやワイヤを度々海中に伸ばし、データを取得する様子が見られた。船舶の運航情報を公開するサイト「Marine Traffic」によると、同船が調査したのは「南北60 km x 東西15 km」の海域。中国浙江省の港に戻っては同海域に向かう動きを繰り返し、低速(時速数キロ)でジグザグ航行をしている。

国連海洋法条約で、沿岸から200海里(n.m.)までのEEZ(排他的経済水域)内での資源開発や学術調査は沿岸国に権利があり、他国が行う場合は沿岸国の同意が必要、と決まっている。奄美大島や尖閣諸島がある東シナ海では日本・中国の距離が400海里未満なので両国のEEZが重複する。このため日本は両国沿岸から等距離となる中間線の東側を日本のEEZと主張している。しかし中国側は大陸棚が続く「沖縄トラフ」までを自国のEEZと主張し確定していない。

そのため日中両国は、相手国の「近海」で調査を行う場合は予定日の2ヶ月前に連絡する「相互事前通報」をすることで合意していた。しかし昨年以降この約束は反故にされた状態となっている。

このままでは、既成事実を積み重ねる中国の手法を認めることになり、日本の海洋権益が失われる、と関係者は危機感を募らせている。

図13:(第11管区海上保安本部)中国海洋調査船「向陽江22」の艦尾からワイヤを伸ばし海中または海底を調査している様子(2026年3月30日撮影)。

  • 5月19日 統合幕僚監部発表 中国艦ジャンカイIII級フリゲート及びフユ級高速戦闘支援艦が東シナ海から宮古海峡を経て太平洋に進出

5月18日昼間、中国海軍ジャンカイIII級フリゲート(545)及びフユ級高速戦闘支援艦(901)の2隻が沖縄県久米島北西から南下、同19日に沖縄本島と宮古島の間、宮古海峡を抜け太平洋に向け航行した。このうちジャンカイIII級フリゲートは初めて姿を見せた新造艦である。

5月25日には、東京都沖ノ鳥島の南西880 km付近で空母「遼寧(16)」、南昌級駆逐艦(104)、昆明級駆逐艦(124)、ジャンカイII級フリゲート(545)、と合流、5隻の艦隊として行動している。

図14:(統合幕僚監部)ジャンカイIII級フリゲート(江凱III級)[045B]型は、「045A」型/江凱II級」に続く改良型。「(545)潔河」は2025年1月就役の新造艦。同型艦は20隻発注したと言われる。満載排水量6,000 ton、全長150 m、前艦橋上に2面のフェイズドアレイ・レーダーを背中合わせに配置・回転させ全周を捜査する。艦首には改良型100 mm単装砲、VLSは32セル、艦尾にはZ-20F哨戒ヘリコプター格納庫と甲板がある。

図15:(統合幕僚監部)フユ級高速戦闘支援艦は901型総合補給艦とも呼ぶ。満載排水量48,000 ton、全長241 m、速力25 kts、Z-8ヘリコプター1機とZ-18ヘリコプター1機を搭載する。中部甲板に門型ポスト3基を装備する。前後2基が燃料・清水用の液体ポスト、後部液体用ポストに接近して左舷に空母燃料給油用ポストがある。搭載量は、艦艇・航空燃料25,000 ton、真水1,500 ton、弾薬1,800 ton、食料400 tonなど。兵装はH/PJ-13 30mm CIWSを4基搭載している。艦番号「901」は「呼倫湖」2017年9月の就役。同型艦は3隻で2隻が建造中。

図16:(統合幕僚監部)ジャンカイIII級フリゲート(545)及びフユ級高速戦闘支援艦(901)の航跡、その後5月25日には2隻は、東京都沖ノ鳥島南西880 km付近の海上で空母「遼寧(16)」などと合流している。

  • 5月21日 統合幕僚監部発表 ロシア軍情報収集機「IL-20」が日本海能登半島沖まで飛来、変針して沿海州へ戻る

5月21日ロシア情報収集機「Il-20」1機が日本海北海道沿岸から本州沿岸佐渡島近くを通過、能登半島沖まで飛行、その後反転して大陸方面沿海州に戻った。

図17:(統合幕僚監部)5月21日飛来したロシア情報収集機「Il-20」は、監視・偵察(surveillance, reconnaissance)をする4発ターボプロップ機、1968年3月初飛行、19機が製造された。[ELINT] (electronic intelligence)および[COMINT] (communication intelligence)用電子機器を搭載する。

図18:(統合幕僚監部)5月21日飛来したロシア情報収集機「Il-20」の航跡。

  • 5月22日 統合幕僚監部発表 ロシア軍情報収集機「IL-20」が大陸から飛来、北方四島・北海道太平洋沿岸を経由、岩手県沖まで南下、反転同じ経路で戻る

前項の翌日5月22日昼間には、ロシア軍情報収集機「Il-20」1機が大陸方面から飛来、オホーツク海から北方四島経由、太平洋に進出、岩手県沖まで南下、その後反転して往路と同じ経路で大陸方面に立ち去った。

図19:(統合幕僚監部)5月22日、ロシア軍情報収集機「Il-20」が本州太平洋側岩手県沖まで飛来、反転し同じ航路経由で戻った。

図20:(統合幕僚監部)5月22日「Il-20」情報収集機の航跡。

  • 5月24日 台湾国家安全会議/共同通信発表 南西諸島からフィリピンに伸びる海域で中国軍艦艇100隻が展開

台湾の総統諮問機関、国家安全会議の呉秘書長は5月23日、日本の南西諸島からフィリピンに延びる「第1列島線」の海域で中国が艦艇100隻以上を展開しているとXに投稿、「これは地域の平和と安定を脅かしている」と主張した。

6月12日報道(産経新聞)によると、中国海軍の傘下にある海警局艦艇が台湾の周辺海域で活動を活発化している。日本とフィリピンが「海洋境界確定交渉」を始めたことに反発、対抗措置として最大規模の「法執行」を実施した。中国は台湾への圧力を軍事力にによる威嚇に加え、海警局による「法律戦」を加えてきた。海警局によると6月6日~10日には、海警局1万トン級巡視艦「海巡09」を含む4隻を台湾東部海域に展開、通過する船舶約200隻を検査し、うち3隻に規定・法律違反有りと指摘、是正を勧告した、と言う。

図21:(台湾国家安全会議/共同通信)呉秘書長がXに投稿した中国軍艦艇の出現状況。「大きい赤丸」は10隻以上、「小さい赤丸」は5隻以上を示す。

  • 5月25日 統合幕僚監部発表 4万トン級ユーシェン級揚陸艦、護衛フリゲートと共に宮古海峡から太平洋に進出。

5月22日午後、中国海軍「ユーシェン」級揚陸艦(33)と護衛するジャンカイII級フリゲート(599)が東シナ海から沖縄本島と宮古島の間宮古海峡を通過太平洋に出た。

図22:(統合幕僚監部)ジャンカイII級フリゲートは、054A型/江凱II型(徐州級)、満載排水量4,050 ton 。垂直発射装置VLS  32セルを装備する。 搭載ヘリはZ-9C/Ka-28を1機。同型は40隻が就役済み、10隻が建造中。写真(599)は「安陽」2018年の就役。

図23:(統合幕僚監部)「ユーシェン級揚陸艦」は別名「075型強襲揚陸艦」。艦番号(33)は「安徽」2022年9月就役で同型艦は4隻あり、さらに4隻建造の予定。満載排水量36,00~40,000 ton、全長232 m、速力22 kts、兵装は「H/PJ-11 CIWS」対空機関砲2基、「HHQ-10」近SAM 2基。艦載ヘリコプターは30機。米海軍「ワスプ級強襲揚陸艦」に匹敵する艦で台湾のみならず日本全土、グアム、ハワイへの侵攻性能を持つ。アイランド型艦橋は前が航海用艦橋、後ろが航空機管制艦橋。飛行甲板の直下はへリコプター格納庫、その下にウエルドックがある。作戦時には水陸両用大隊約800名、空中強襲大隊約400名が乗艦する。

図24:(統合幕僚監部)5月22日宮古海峡を通過太平洋へ進出したジャンカイII級フリゲート(599)とユーシェン級揚陸艦(33)の航跡。

  • 5月26日 統合幕僚監部発表 中国海軍空母「遼寧」(16)を含む艦隊、フィリピン東岸の太平洋上で艦載機発着訓練

5月25日昼間、中国海軍空母「遼寧(16)」、レンハイ級ミサイル駆逐艦(104)、ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(124)、ジャンカイIII級フリゲート(545)、及びフユ級高速戦闘支援艦(901)、からなる5隻の艦隊が東京都沖ノ鳥島の南西約880 kmの海域を航行し、翌26日には、空母「遼寧(16)」から艦載機及びヘリコプターが発着訓練を行っていた。

これら艦艇のうち、ジャンカイIII級フリゲート(545)、及びフユ級高速戦闘支援艦(901)の2隻は、5月19日に宮古海峡を通過太平洋に進出したものである。

図25:(統合幕僚監部)空母「遼寧」は、満載排水量60,000 ton、全長304.5 m。艦首甲板は、傾斜角14度のスキージャンプ方式の発艦甲板になっている。着艦はアングルドデッキ甲板を使い、アレステイング・ワイヤ4本で停止する。標準搭載機数は、J-15戦闘機・24機、Ka-28PL哨戒ヘリコプター・6機、Ka-31早期警戒ヘリコプター・4機など合計36機。

図26:(統合幕僚監部)ジャンカイIII級フリゲート(江凱III級)[045B]型は、「045A」型/江凱II級」に続く改良型。「(545)潔河」は2025年1月就役の新造艦。同型艦は20隻発注したと言われる。満載排水量6,000 ton、全長150 m、前艦橋上に2面のフェイズドアレイ・レーダーを背中合わせに配置・回転させ全周を捜査する。艦首には改良型100 mm単装砲、VLSは32セル、艦尾にはZ-20F哨戒ヘリコプター格納庫と甲板がある。

図27:(統合幕僚監部)5月25日・26日フィリピン東方の太平洋上で訓練を繰り返す空母「遼寧」の艦隊。

我国、同盟諸国の対応

  • 5月4日 Naval News-7th Fleet發表 4月下旬、南シナ海で実施中の多国間共同訓練「バリカタン2026 (Balikatan 2026)」は5月1日に完了

米海軍から、第7駆逐艦隊 (7th Destroyer Squadron / DESTRON 7)およびアシュランド機動艦隊(Task Force Ashland)、これはドック型揚陸艦「アッシュランド(USS Ashland / LSD-48)」とそれに乗艦する第1海兵遠征軍( 1st Marine Expeditionary Force)で構成されている。作戦中、第7駆逐艦隊幕僚は、日本を含む参加国海軍の幕僚と共に「アシュランド」に乗艦、共同で任務を遂行した。「バリカタン2026」に参加した主要国はオーストラリア、日本およびカナダで「海上共同行動(Maritime Cooperative Activity)」に関わる高度な訓練を行い、自由で開かれたインド・太平洋実現に向けて、実弾射撃・対潜水艦戦・捜索救難訓練・負傷者輸送訓練・洋上補給およびヘリコプターでの艦艇間移乗などの諸訓練を行なった。

多国間共同訓練「タリバカン」は毎年行われているが、中国による海洋・島嶼進出の拡大に対処するため、日米など同盟諸国の参加規模も大きくなってきた。今年は艦艇11隻と航空機8機、それに関係する兵員多数が参加した。

揚陸艦「アッシュランド(USS Ashland / LSD 48)」と共に参加した艦艇は、米沿岸警備隊カッター「USCGC Midget (WMSL 757)」。フィリピン海軍・揚陸艦「BRP Tarlac (LD601)」、同ミサイル・フリゲート「BRP Miguel Malyar (FFG 6)」、同ミサイル・フリゲート「BRP Antonio Luna (FFG 15)」、同沿岸警備隊多目的艦「Cape San Augustin (MMEV 4408)」。日本海上自衛隊からヘリ空母「いせ(DDH 182)」、同護衛艦「いかづち (DD 107)」、同戦車揚陸艦「しもきた(LST 40002)」。カナダ海軍からフリゲート「HMCS Charlottetown (FFG 339)」。オーストラリア海軍からフリゲート「HMAS Toowoomba (FFG 156)」が参加した。

共同訓練名「バリカタン(Balikatan)」は、タガログ(Tagalog)語で「肩を並べて(shoulder to shoulder)」の意味。最初は米国とフィリピンの強固な結び付きを示す言葉として使われていたが、それに日本、オーストラリアが加わるようになった。

図28:(US Navy)手前から、フィリピン海軍沿岸警備隊哨戒艦「BRP Cape San Agustin (MRRV 4408)」、米沿岸警備隊カッター「USCGC Midgett (WMAL 757)」、海自護衛艦「いかづち(DD-107)」、その遠方にオーストラリア海軍フリゲート 「HMAS Toowoomba (FFH 156)」等が並ぶ。南シナ海で4月28日撮影した。

  • 5月6日 Air Force News發表 インド・太平洋区域の空軍力増強のため「F-22 Raptor」戦闘機を嘉手納基地に派遣

図29:(USAF Airman 1st class Francisco Huerta) バージニア州ラングレー・ユーステス統合基地(Joint Base Langley-Eustis, Va.)を本拠とする第27遠征戦闘機中隊(27th Expeditionary Fighter  Squadron)所属の「F-22Aラプター(Raptor)」戦闘機1機が5月5日に嘉手納基地に到着した。

アラスカ州エレメンドルフ・リチャードソン統合基地(Joint Base Elmendorf-Richardson, Alaska)所属の第90戦闘機中隊(90th Fighter Squadron)と、ラングレー・ユーステス統合基地(Joint Base Langley-Eustis, Virginia)第27遠征戦闘機中隊(27thExpeditionary Fighter Squadron)所属の「F-22Aラプター(Raptor)」戦闘機がインド・太平洋区域の安全を守るため、ローテーション配備で沖縄嘉手納基地に到着した。

現在、嘉手納基地には第4世代(F-15EXなど)および第5世代(F-35など)戦闘機でなる第18戦闘機航空団(18th Wing)が駐留、地域の防衛に当たっている。

「F-22」は第5世代制空戦闘機で、ステルス形状、先進センサー類を装備、卓越した空戦性能を備える。そして長距離から敵を探知、追尾、攻撃できる優れた戦闘機。

「F-22」の嘉手納配備の間、乗員と整備員は「第18戦闘機航空団(18th Wing)」の指揮下に入り、日本など同盟国空軍と協力して地域の安全確保の任務に就く。

図30:(USAF) 5月5日嘉手納基地を離陸するF-22 Raptor戦闘機。本機はエレメンドルフ・リチャードソン統合基地第90戦闘機中隊(90th Fighter Squadron)所属の機体。

図31:嘉手納基地の簡易シェルターに駐機するF-22 Raptor戦闘機。

今回のF-22嘉手納基地へのローテーション配備は、「F-15EXイーグル(Eagle)」の配備が遅れているので、その補完のために行われたもの。機数は公表されていないが、地元新聞は「12機が到着」と報じている。

米空軍は2022年11月に、嘉手納基地の第18戦闘機航空団(18th Wing)に配備中の旧式機「F-15CおよびD」48機を順次退役させ2026年春から新しい「F-15EX」合計36機に更新することを決めた。しかし、F-15EXを製造するボーイング社セントルイス(St. Louis, Missouri), 工場の量産準備が遅れ、空軍への引渡しが遅延、初号機の到着は2027年、そして36機の引渡完了は2028年になる見込みとされる。

嘉手納から台湾までは約450マイル (810 km)、中国軍の侵攻を抑えるには嘉手納の戦闘能力増強が必要不可欠である。

  • 5月7日 海上幕僚監部発表 シドニー近海で行われたオーストラリア海軍主催共同訓練(ASWEX 2026)に海自護衛艦を派遣

停泊フェーズとして4月1日から同5日まで、それから洋上フェーズとして4月5日から5月5日までの間、シドニー、バス海峡および周辺海域で共同訓練 (ASWEX 2026)が行われた。海自は、フリゲート「もがみ/FFM-1」型の2番艦「くまの/FFM-2」を派遣参加した。洋上フェーズでは対地射撃訓練、対潜水艦戦、洋上補給などの訓練が含まれる。

4月18日小泉進次郎防衛大臣は、オーストラリア南東部のビクトリア州メルボルン(Melbourne, Australia)に寄港中の「くまの」の艦上で、リチャード・マールズ(Richard Marles)オーストラリア副首相兼国防相と会談、「もがみ」型フリゲートの技術を継承する新型艦の共同開発に関する覚書に署名し、共同記者会見を行った。オーストラリア政府は「もがみ」型能力向上型FFMを11隻を導入する計画である。

「もがみ」型は満載排水量5,500 ton、全長133 m、機関はMT30ガスタービン1基とMAN 12V28/33D STCデイーゼル・エンジン2基のCODAG方式、速力30 kts以上、乗員60~90名。兵装は、62口径5inch砲1門、Mk.41 VLS(16セル)1基、対空用Sea RAM 1基、対艦攻撃用17式SSM 4連装発射筒2基、324 mm 3連装魚雷発射管2基。そしてSH-60K哨戒ヘリコプター1機を搭載する。C4ISRとして空母「いずも」以降で採用されているLink 22対応のOYQ-1 戦術情報処理装置を搭載、レーダーはOPY-2多機能型、ソナーはOQQ-11対機雷戦用ソナーシステムとOQQ-25水上艦用ソナーシステムを装備、電子戦用にNOLQ-3E電子戦装置を装備している。

「もがみ」型ではクルー制が導入され、3隻のFFMに対し4組のクルーを配し、3組が乗艦し1組が休養する。これで艦の整備以外の停泊期間を短縮し稼働時間を向上させる。さらに乗員数が減ったので、食堂は1箇所とし士官・下士官・水兵の区別なく同室で食事を採る方式になっている。

「対空・対水上戦」、「対潜水艦戦」、「対機雷戦」、「電子戦」に対応した先進装備が充実した多機能艦であることから、フリゲートを意味する「FF」に多機能性「Multi-purpose」を意味する「M」を加え、艦種記号が「FFM」となった。

オーストラリア海軍ミサイル駆逐艦「ブリスベーン(HMAS Brisbane / DDG-41)」は、ホバート級駆逐艦の2番艦として2018年10月に就役、満載排水量約7,000 ton、全長147 mで、海自フリゲート「もがみ」型より僅か大きい。艦橋上部にフェイズド・アレイ・レーダーSPY-1Dを4面に貼付け、対空・対艦ミサイル発射用VLS (48セル)を備える。2024年12月には巡航ミサイル「トマホーク」の発射試験に成功。さらに対艦ミサイル「ハープーンBk.2」4連装発射筒2基などを装備する。

図32:(海上幕僚監部)オーストラリア海軍との共同訓練(ASWEX)に参加した海自フリゲート「くまの/ FFM-2」手前とオーストラリア海軍ミサイル駆逐艦「ブリスベーン(HMAS Brisbane / DDG-41)」。

図33:(海上幕僚監部)海自フリゲート「くまの」から発艦するオーストラリア海軍「MH-60R」ヘリコプター。

  • 5月7日 海上幕僚監部発表 令和8年度遠洋練習航海について

5月16日から10月24日までの161日間、海自練習艦「かしま」及び「やまぎり」は、練習艦隊司令官「東 良子」海将補の指揮のもと、第76期幹部候補生過程卒業生を含む約530名を乗せ欧米各国の歴訪を開始した。訪問先は次の通り。

アイスランド・レイキャビック(Reykjavik, Iceland)、アメリカ・アンカレッジ(Anchorage, Alaska)、サンデイゴ(San Diego, Calif.)、ダッチハーバー(Dutch Harbor, Alaska)、東海岸ノーフォーク(Norfolk, Virginia)、ニューヨーク(New York)、パールハーバー(Pearl Harbor, Hawaii)。カナダ東岸ハリファックス(Halifax, Nova Scotia)、同西岸のバンクーバー(Vancouver, British Columbia)、パナマ(Panama City, Panama)、メキシコ西岸マンサニージヨ(Manzanillo, Colima)、の各港を訪問する。

図34:(海上幕僚監部)練習艦「かしま(TV-3508)」は練習艦として設計・建造された艦。1995年1月就役、満載排水量5,400 ton、全長143 m、速力最大25 kts、乗員360名。艦後部に候補生170名収容可能な実習員講堂があり、その後ろにヘリ発着可能な訓練甲板を備える。兵装は前甲板に62口径76 mm速射砲1門、両舷に68式3連装短魚雷発射管2基を装備する。対空・対艦ミサイル、対潜用アスロックの発射訓練はCIC内に設置したシミュレーターで行われる。練習艦隊の旗艦として諸国を訪問するので、艦橋前部の甲板に礼砲2門を備える。艦内各公室は公式儀礼を行うため特別仕様になっている。搭載艇は11 m作業艇2隻と13 m 将官艇1隻の合計3隻。設計時から女性乗員のための設備を設置済み。

図35:(海上幕僚監部)練習艦「やまぎり(TV-3515)」は、「あさぎり(DD-151)」型汎用護衛艦(DD)8隻の2番艦 (DD-152)として1989年就役。2004〜2011年の間は練習艦になったが、その後汎用護衛艦(DD)に戻り、2025年3月から再び練習艦となる。満載排水量4,900 ton、全長137 m、最大速力30 kts、乗員220名、兵装は、62口径76 mm単装速射砲1門、対空用CIWS Mk.15 mod. 2機関砲2基、同シースパロー短SAM8連装発射筒1基、ハープーンSSM 4連装発射筒2基、アスロックSUM対潜ミサイル8連装発射筒1基、324 mm 3連装短魚雷発射管2基を備える。艦中央から後部にかけてSH-60Kヘリコプター格納庫と甲板が見える。

  • 5月14日 海上幕僚監部発表 「もがみ」型フリゲート9番艦「なとり(FFM 9)」の引渡式、自衛艦旗授与式を実施

5月21日三菱重工長崎造船所でもがみ型フリゲート9番艦「なとり(FFM 9)」の引渡式、自衛艦旗授与式が行われた。哨戒防備群第5哨戒防備隊に所属、青森県大湊基地に配属された。建造費は約470億円。

図36:(海上幕僚監部)「なとり(FFM 9)」は満載排水量5,500 ton、長さ132.5 m、速力30 kts、62口径5インチ砲、Sea RAM 1基、17式対艦誘導弾SSM-2 4連装発射筒2基、Mk41 VLS 16セルを1基、SH-60K哨戒ヘリ1機、無人機雷排除システム(USV+UUV (OZZ-5) + EMD)、簡易型機雷敷設装置を装備する。

  • 5月18日 読売新聞報道 年内改訂予定の安全保障3文書に「早期警戒無人機」の導入を記載

5月18日読売新聞報道及び同日版Yahoo/エキスパート解説記事(by 木村和尊氏)によると、政府は太平洋の防衛強化に向け、早期警戒機用レーダーを搭載する無人機を導入することの検討に入った。また硫黄島と小笠原諸島・父島には車載式で移動可能な警戒監視レーダーを配備することを決めた。これで警戒監視の空白地帯である太平洋での監視網を整備し、活動を活発化させている中国軍に対する抑止力・対処能力を強化する。

早期警戒監視レーダー搭載の無人機は、海自が2027年度に導入する[GA-ASI](ジェネラル・アトミクス)社製の「MQ-9B」無人海洋哨戒機の派生型機が有力候補に上っている。「MQ-9B」シーガーデイアン(Sea Guardian)は、電子光学センサーや電波情報収集アンテナ、海洋監視レーダー、対潜水艦戦ミッション・キット、を搭載した無人機で、天候に関わりなく30時間の滞空飛行が可能。海自は現在運用している「P-1」有人哨戒機を補完し一部の任務を代行する機体として「MQ-9B」23機の導入を決め、2027年度から鹿屋基地及び八戸基地に配備を始める。

これら状況を背景として、2026年改訂の「安全保障3文書」に記載される無人早期警戒監視用無人機としては、「MQ-9B」シーガーデイアン改良型が有力視されている。この機体は「MQ-9B」にスエーデンの大手防衛企業「サーブ(Saab)社が開発した「Loyal Eye」と呼ぶ「AEW=Airborne Early Warning」早期警戒ポッドを搭載する。「Loyal Eye」を搭載した「MQ-9B」は、今年(2026)5月19日、南カリフォルニアにある「GA-ASI」社の施設で初飛行をした。これから7ヶ月間の試験飛行を行い性能を検証する予定。

図37:(GA-ASI)サーブ社が開発した早期警戒ポッド「Royal Eye」を搭載したMQ-9Bの試験飛行。[Royal Eye]ポッドは両翼の下面に取付ける。エンジンはHoneywell TPE331-10Tターボプロップ出力900 shp、全長11 m、翼幅20 m、最大離陸重量4,760 kg、運用高度7,600 m、滞空時間28時間(搭載量により異なる)、航続距離5,900 km、ペイロード1,700 kg、巡航速度300 km/hr。

図38:(読売新聞オンライン)2026年末に改訂予定の「安全保障3文書」に記載される父島、硫黄島、南鳥島の活用/防備強化案の概要。

  • 5月18日 海上幕僚監部発表 海自フリゲート「くまの(FFM-2)」、ニュージランド海軍と共同訓練

オーストラリアを訪問を終えた海自フリゲート「くまの(FFM-2)」は、5月17日にニュージランドを訪問、ニュージランド西方海域で同国海軍フリゲート「テ・マナ(HMNZS Te Mana /F111」と共同訓練を行った。

ニュージランド海軍は、現在1990年代後半に就役したアンザック(ANZAC)級フリゲート「テ・マナ(HMNZS Te Mana /F111)」と「テ・カハ(HMNZS Te Kaha /F77)」を運用している。これらは2030年代半ばに寿命を迎えるため代替艦を導入することを予定。NZ政府は2027年末までに候補となる艦種を決める。NZのクリス・ベンク国防相によると、候補は、オーストラリアが選択した日本の三菱重工製「もがみ」能力向上型と、イギリスのバブコック社製フリゲートをベースとする英海軍「31型」の2種。ニュージランドとオーストラリアは「ANZUS」条約を締結している同盟国で、両海軍は高い相互運用製を重視してきた経緯があり、オーストラリアが導入を決めた「もがみ」能力向上型に強い関心を示している。

図39:(Royal New Zealand Navy) 5月17日ニュージランドを訪問した海自フリゲート「くまの(FFM-2)」(右)はニュージランド海軍フリゲート「・マナ(HMNZS Te Mana /F111」(左)と共同訓練を行った。首都ウエリントン湾内での写真。

図40:(Wikipedia)ニュージランドの首都はウエリントン(Wellington)、最大の都市はオークランド(Auckland)、いずれも北島にある。ウエリントンの西・クック海峡を隔てて南島がある。

  • 5月19日 海上幕僚監部発表 海自練習艦「しまかぜ」は伊予灘でイギリス海軍哨戒艦「スペイ」と共同訓練

5月18日、海自練習艦「しまかぜ(DDG-172からTV-3521に変更)」は、5月14日に海自呉基地に来航中のイギリス海軍哨戒艦「スペイ(HMS Spey P234)」と伊予灘で共同訓練を実施した。(伊予灘は本州・四国・九州に囲まれた瀬戸内海の海域)

練習艦「しまかぜ(TV-3521)」は「はたかぜ(DDG-171からTV-3620に変更)」型の2番艦で、満載排水量5,950 ton、全長150 m、主機はRR Olympus TM3B・2基とRR Spey SM1A  2基のCOGAS方式で出力70,000 PS、速力30 kts、1988年に汎用護衛艦として就役、2021年から練習艦となっている。

イギリス海軍哨戒艦「スペイ(HMS Spey P234)」は、インド太平洋地域に常駐する英国海軍艦艇2隻の1つ、伊予灘での共同訓練が終了した後、東シナ海を航行、台湾海峡を通過、南シナ海に入った。英海軍としては4年ぶりの台湾海峡通過で、「航行の自由を護る行動」と台湾政府からの称賛を受けた。中国政府はこのような行動は地域の情勢を混乱させ平和と安定を害する、と非難した。

「スペイ(HMS Spey P234)」は、「リバー(River)」級哨戒艦で、満載排水量2,000 ton、全長90.5 m、速力24 kts、乗員34名プラス海兵隊50名、艦尾にヘリコプター甲板、各種機関砲を備える。2021年6月の就役。同型艦は5隻ある。

図41:(海上幕僚監部)伊予灘で訓練中のイギリス海軍哨戒艦「スペイ」(右)と海自練習艦「しまかぜ」(左)。

  • 5月22日 統合幕僚監部発表 沖縄周辺で日本、アメリカ、オーストラリアの3カ国空軍が共同訓練

5月21日、沖縄本島東の太平洋上に空域で日本・アメリカ・オーストラリア3カ国空軍が共同訓練を実施した。訓練目的は、力による現状変更を目論む中国に対し「3カ国が一致協力して一方的な現状変更は許さない」とする強固な意思表明をすることにある。

参加部隊は;―

航空自衛隊:第9航空団「F-15」戦闘機 4機、警戒航空団「RC-2」電波情報収集機1機、

アメリカ空軍:嘉手納基地にローテイション配備中の「F-22」戦闘機3機、第18戦闘機航空団(18th Wing)「F-35A」戦闘機 4機、海軍航空隊「F/A-18」戦闘機2機、「KC-135」給油機2機、「KC-130」給油機1機、

オーストラリア空軍:「P-8A」哨戒機1機、「KC-30A」給油・輸送機1機

図42:(統合幕僚監部)5月21日行われた日米豪3カ国空軍共同訓練の様子。オーストラリア空軍の「KC-30A」給油・輸送機を中心に編隊飛行する各国空軍機。

オーストラリア空軍の「KC-30A」は、エアバス「A330-200」をベースにした給油・輸送機 (MRTT=Multi Role Tanker Transport)で、燃料50 tonを積み1,800 kmを飛行、貨物34ton、さらに兵員270名を搭載できる。「A330-200」は4発機だったが、「MRTT」では1番・4番エンジンを外しそこに給油ポッド(probe-and-drogue system)を装備し、胴体尾部にフライング・ブーム(flying boom)を装備している。これでF-15、F-2、F-16、F/A-18、F-35、F-22、C-17、P-8A、B-1B、などあらゆる機種に給油ができる。オーストラリア空軍の要求で開発されたが、その後イギリス、ドイツ、NATOその他世界核国で採用されている。オーストラリア空軍は、「KC-30A」を7機運用中でアンバレイ(Amberley)基地第33中隊に配属している。

「KC-30A」は、全長59 m、翼幅60.3 m、最大離陸重量233 ton、乗員は4~8名、エンジンはGE製CF6-80E1A3 を2基、巡航速度860 km/hr、最大燃料搭載量は111 ton。

図43:(防衛省)5月21日の日米豪訓練に参加した航空自衛隊電波情報収集機「RC-2」。写真は空自入間基地「航空戦術教導団」へ配備された「RC-2」電波情報収集機(機体番号202)。

「RC-2」は、機体各所に大型のアンテナ・ドームが配置されているので、航続距離は「C-2」輸送機の7,600 km (20 ton搭載時) から5,700 kmに減る。しかし現用の電波情報収集機・「YS-11EB」の2,200 kmや海自が運用する「EP-3」の4,400 kmに比べて、はるかに行動範囲が広がる。巡航速度はマッハ0.8 ( 890 km/hr )。現在「航空戦術教導団」と「警戒航空団」に配備されている。今回演習に参加したのは「警戒航空団」所属機。「警戒航空団」は、E-767早期警戒管制機、E-2C/D早期警戒基、RC-2電波情報収集機を運用し、地上レーダーの機能を補完するのが主な任務とされる。

原型の「C-2」輸送機は、最大離陸重量141 tonの大型機、容積が大きいので多種の大型測定装置を搭載できる。

防衛省の評価報告には、本機は『高度に自動化したシステムを搭載し、敵が発するあらゆる情報とデータを収集・処理・伝送する。また、機首、胴体上面と側面、垂直尾翼頂部のフェアリング内に各種アンテナを配置し、遠距離から広い周波帯信号を捕捉・遮断し、敵目標の方位を探知する能力を持つ』と記されている。

つまり敵の「電磁気信号の収集 (collection of electromagnetic signals)」だけでなく、電子信号を妨害する「ジャミング(jamming)」機能も備える、と言うことだ。

搭載する電子機器システムは、防衛装備庁が三菱電気(レーダー類)、東芝(電子機器)、日本電気(データー・リンク)、および「C-2」のメーカー川崎重工(レドーム類)、などの協力で開発した「新電子戦システム」。このシステムには、各種変調方式に対応できるソフトウエア受信技術、アンテナ配置を最適化し、広帯域電波の受信を可能とする技術、低被探知化された敵の信号を短時間で検出する分析処理技術、などを備えている。

―以上―