機
2026-11-01(令和8年)松尾芳郎

図1:(中央社)2026年10月2日午後、台東市志空軍基地に到着した[F-16V Block 70]戦闘機。2機が8月17日テキサス州からハワイに向け飛行、約1ヶ月半に及ぶ点検・整備と9月の米中首脳会談が終わるまで待機。10月1日にハワイを出発しグアム空軍基地経由で台湾に到着した。台湾への飛行は米国側要員が担当し、志空軍基地で台湾側に引渡手続きが行われた。

図2:(USAF/Lockheed Martin) [F-16V Block 70]戦闘機は新しく胴体側面と背面にコンフォーマル燃料タンク(CFT)が付いたので既存機と外見が異なる。
第1次トランプ政権が2019年に台湾に売却を決定した最新型F-16V戦闘機66機のうち最初の2機が10月2日に台湾年東部の台東県台東市にある台湾空軍の志航空基地に到着した。台湾国防省が発表した。
台湾聯合報は、F-16V戦闘機2機は8月下旬にハワイ米空軍基地に到着後9月末まで現地に留まった。これは搭載機器が故障・交換するのに時間がかかったのと、中国習近平主席が9月下旬に訪米することを勘案したため、と報じた。
台湾が発注、米政府が承認した「F-16V ブロック70 (Block 70)」66機は、総計80億ドル(約1兆2000億円)で、第4.5世代戦闘機とされる。旧式となったミラージュ2000とF-5戦闘機の更新として購入する。F-35やF-22など第5世代戦闘機と同様ノースロップ・グラマン製AESAレーダー[AN/APG-83]、高出力・低燃費のGE製 [GE F-110-GE-129]推力29,000 lbsエンジン、航続性能向上のため胴体の上部・側面にコンフォーマル燃料タンク(CFT=Conformal Fuel Tank)を装備する。
台湾空軍は1997年からロッキード・マーチン製[F-16A/B]を140機を運用中。増強著しい中国の軍事的圧力に対抗するため、台湾国防省は、漢翔航空工業(台中市)と米ロッキード・マーチン(Lockheed Martin)社との協力でF-16A/B]全機を漢翔航空工業で「F-16V Block 20」にする改修を進め、2023年12月に全機改修を完了した。うち1機を事故で失ったので台湾空軍は[F-16V Block 20]を139機運用中である。これに新しく[F-16V Block 70]が66機加わるので、合計200機を超える。
F-16は世界で20カ国で採用され、2,500機が使われている。この中で台湾は世界最大のF-16保有国になる。台湾は2021年11月18日、最初の「F-16V Block 20戦闘航空団」を発足させた。
[F-16V Block 20]は、F-16A/Bには装着できないinternal ECM systemを除き、標準型のBlock 72と同じ装備(APG-83レーダー、F-100-PW-229エンジン、その他電子機器)を装備する。ECM は[ IVEWS]と呼ばれ、F-16A/Bではポッド型を装備する。台湾空軍はこの機体を「F-16AM/BM」と呼んでいる。

図3:台湾空軍)台湾空軍の「F-16 AM Block 20 (F-16V)」の外観。
台湾空軍の「F-16V Block 70」
台湾が調達する「F-16V Block 70」戦闘機の型式は「F-16C/D Block 70」で、「V」は「バイパー(Viper)/毒蛇」の頭文字。台湾では「鳳翔プロジェクト」と呼び、2020年〜2026年で1兆2000億円の予算で購入する予定だった。しかしコロナ禍・開発遅れ、米中首脳会談等の理由で遅れ、Block 70の初号機の完成(Rollout)は2022年末、それから各種試験に2年半を費やし2026年10月から納入が始まった。Block 72のRolloutは更に遅れて2026年9月になった。こちらはモロッコ空軍に納入される。モロッコは25機を発注している。
「F-16V Block 70」の特徴は;―
- ノースロップ・グラマン(Northrop Grumman) 製AN/APG-83 AESAレーダーを搭載、これを中心に目標の探索・追尾・射撃管制・友軍との通信・電子戦などの機能をセンター・デイスプレー(CPD=Center Pedestal Display)に表示する。
- 自動対地衝突回避装置(Auto GCAS=Automatic Ground Collision Avoidance System)を装備、超低空飛行時(CFIT=Controlled Flight into Terrain)の安全性を確実にしている。
- 航続距離は約4,000 km、コンフォーマル燃料タンク(CFT)を装着すれば5,700 kmに達する。戦闘行動半径は約580 km、CFT装着時は約1,000 km。
- 兵装搭載は、翼胴にある11箇所のハード・ポイント(牽架装置)に最大7,700 kgの各種ミサイルを搭載できる。搭載可能なミサイルは、短距離対空ミサイルAIM-9X、中距離対空ミサイルAIM-120D AMRAAM、対レーダー・ミサイルAGM-88、空対地滑空誘導ミサイルAGM-154 JSOW、無誘導弾に精密誘導機能を持たせるJDAM装備付きの爆弾、長射程誘導巡航ミサイル・ハープーン(RGM-84 Harpoon)など。
- エンジンは、Block 70には[GE製f110-GE-129] 推力29,000 lbs(A/B時)、Block 72には[PW製F100-PW-229] 推力29,000 lbs(A/B時)。両者の主な違いは「バイ パス比」、すなわちエンジンを通る空気のうち内部を流れる量と外部を流れる量の比率。GEは0.76、PWは0.36。一般論としてバイパス比の高いエンジンは亜音速での燃費が優れ、バイパス比の低いエンジンは超音速での推力が大きい。
- F-16C/D Block 70 / 72の諸元は;― 長さ・15 m、高さ・5 m、翼幅・9.4 m、速度・マッハ2+、空虚重量・9.2 ton、最大離陸重量・21.7 ton 、設計荷重・ 9 g、設計寿命12,000時間。

図5:(Lockheed Martin)「F-16V Block 70」はF-16の配備開始以来36年以上の経験を背景に、多目的戦闘機として180種以上の各種ミサイルを装備できる。生産はサウス・カロライナ州グリーンビル(Greenville, S.C.)工場で1,500人の従業員により最終組立と主要装備品の製造をしている。
終わりに
台湾向け「F-16V Block 70」の続きは、一部は引渡しの段階にあり近く台湾に向け出発する(台湾国防省発表)。
9月のトランプ大統領・習近平国家主席の会談への影響を配慮して引渡しを延期していた2機は1週間後に台東県の基地に到着した。習近平氏はトランプ大統領に対し「台湾独立に反対」と言わせようと要求した。しかしトランプ氏は言質を与えず、武器売却を進めた。これで「米国の台湾政策は不変だ」と中国に思い知らさせたのである。トランプ・習会談では、習氏が日本政府・高市首相を新軍国主義と非難、同調を求めたがトランプ氏は取り合わず首相を「歴史に残る強い指導者」と称賛した。
「台湾有事は日本の有事」を再確認する観点から言うと、今回の台湾の防衛力強化の進展は歓迎すべきである。
―以上―
本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。
- 産経ニュース2026-19-2 ”米最新型F-16V戦闘機が台湾到着 66機のうち第一人の2機、機器故障と習氏訪米で延期“ By 西見由章
- フォーカス台湾 2026-10-02 “新造のF-16V戦闘機2機、台湾に到着 空軍「段階的に戦力構築」“ By 遊凱翔 /編集 斉藤啓介
- Wikipedia “Lockheed Martin F-16 “
- Seculligence 2026-10-10 “台湾向けF-16V、米中首脳会談後に到着―中国国防部は抗議において米国名指しなし“ By 吉永ケンジ編集長
- Taiwan Tensions 2026-10-02 “Taiwan receives first of 66 new F-16V fighter jets from US”
- South China Morning Post 2026-10-02 “Taiwan hails F-16V delivery as sign US support holds after Xi-Tramp summit”
- 産経新聞2026-10-05 “米の台湾政策は不変” By桜井よしこ
- Lockheed Martin “F-16 Fighting Falcon”
- Lockheed Martin “F-16 Block 70/72”
- Tokyo Express 2019-08-30 ” 米政府、最新型F-16 Block 70/72戦闘機を66機台湾に売却“