令和4年6月、我国周辺における中露両軍・北朝鮮の活動と我国/同盟諸国の対応


2022-07-03 松尾芳郎

令和4年6月、我国周辺における中露両軍の活動と、我国および同盟諸国の動きに関し、公的部門等から多くの発表があった。以下にその内容を紹介する。注目すべきニュースは次の通り;

  1. 北朝鮮、前月に続きミサイル発射試験を反復実施
  2. ロシア艦隊、中国艦隊、相次いで日本周辺海域へ
  3. ロシア戦闘攻撃機、中獄戦略爆撃機など日本周辺に飛来
  4. 米4軍がマリアナ諸島でバリアント・シールド演習を実施
  5. 中国3隻目の空母「福建」が進水式実施

(The military maneuvers by Russo-Chinese forces around Japan are increased massively. Japan and allies move to take farther counter measure. Following five were noteworthy in June ;-

  1. North Korea launched eights missiles to Sea of Japan in single day of July 5th.
  2. Russian and Chinese Naval vessels cruise around Japan’s island in coordinated each other
  3. Russian fighters and Chinese H-6 bombers penetrated Japan’s ADIZ.
  4. U.S. Indo-Pacific Forces come together on the Northern Mariana Islands]: Valiant Shield 22.
  5. China launches EM catapults-equipped 3rd aircraft carrier in Shanghai.)

以下に詳しく述べる。

1 北朝鮮、前月に続きミサイル発射試験を反復実施

防衛省は6月5日、次の通り発表した。

北朝鮮は午前9時台に複数の地点から日本海に向け弾道ミサイルを8発発射した。いずれも着弾したのは北朝鮮に近い我国排他的経済水域(EEZ)の外あった。発射時刻、最高飛行高度、飛翔距離等は次の通り。

  1. 09:06 am、西岸から発射、最高高度50 km、飛翔距離350 km
  2. 09:10 am、東岸から発射、最高高度50 km、飛翔距離300 km、
  3. 09:15 am、西岸から発射、最高高度50 km、飛翔距離400 km、
  4. 09:24 am、内陸から発射、最高高度100 km、飛翔距離350 km、
  5. 09:30 am、西岸から発射、最高高度50 km、飛翔距離400 km、
  6. 09:41 am、内陸から発射、最高高度100km、飛翔距離300 km,
  7. 同時間帯にさらに2発のミサイルが発射され、極めて低高度を短時間飛翔した

この中には変則軌道で飛翔したものが含まれている。

北朝鮮は今年に入ってから巡航ミサイルを含め17回、33発に及ぶ高い頻度で、日本海に向けてミサイルの発射を繰り返している。

これに対し我が政府は何時もの言葉「米国と連携し情報の分析、国民に対し迅速な情報の提供、警戒監視に万全、外交ルートを通じ北朝鮮へ抗議」、を繰り返し述べた。

韓国軍合同参謀本部の発表(JSF 6月5日発表記事による);―

09:08 amから09:43 amにかけ、北朝鮮の順安、介川、東倉、咸興から短距離弾道ミサイル8発を発射した。飛翔距離は110~670 km、最高高度は25~90 km、最高速度はマッハ3~6。発射したのは、ロシア製短距離弾道ミサイル「イスカンデル」の北鮮版「KN-23」、米陸軍戦術ミサイル「ATACMS」に似た「KN-24」、および「超大型放射砲(多連装ロケットの意味)」と呼ぶ「KN-25」と推定される。

図1:(nikkei.com) 2022年6月5日北朝鮮が発射したミサイルの発射地点と着弾したエリアを示す図。韓国軍合同参謀本部発表による。

  • ロシア艦隊、中国艦隊、相次いで日本周辺海域へ

6月のロシア艦隊及び中国艦隊の活動はこれまで以上に活発化、防衛省統合幕僚監部は連日のように中露艦隊の動きを発表した。

ロシアはウクライナ侵攻作戦で太平洋艦隊の一部、旗艦ワリヤーグ(011)を含む3隻を地中海東部に派遣したまま、太平洋艦隊は旗艦不在で手薄な状態にある。しかし、6月初旬のロシア下院議長の発言「北海道はロシア領、近く解放しなければならない」、で分かるように我国に対し強硬な姿勢が目立つ。この流れで太平洋艦隊の活動は一層活発になり空軍も交えしばしば日本に対し威嚇の姿勢をあらわにしている

中国艦隊の動向に関わる統合幕僚監部の発表は期間中14件に達し、月間件数として最多を記録した。。中国はロシアを支援する目的で日本に対する牽制・圧力を強めている。これは、中国海軍海警局所属の艦艇による尖閣諸島に対する連日の領海侵犯とも連動している。

いずれのケースも、空自および海自の航空機、艦艇が出動、追尾・監視にあたり、領空・領海の侵犯を防いでいる。

中露両軍の動きに対し我が政府は「注視すると共に警戒監視に万全を期す」と述べるだけ、なんとも歯がゆい。

以下に両海軍艦艇の主な航跡を図示し、併せて統合幕僚監部の発表をロシア、中国に分けて時系列で示す。

図2:2022年6月の中露艦隊の我国周辺での動きを示す。統合幕僚監部発表を基に作成した。中露両軍の動きは明らかに連携している。

ロシア海軍

  • 6月9日発表

6月9日午前5時、バルサム級情報収集艦(80)1隻が北海道奥尻島南南西から津軽海峡を抜け太平洋に進出。

  • 6月10日発表

6月9日、5隻の艦隊が北海道根室半島南東の太平洋上で活動。艦隊の構成はウダロイI級駆逐艦(543)、ステレグシチーII級フリゲート(337)、及びステレグシチー級フリゲート(333)・(335)・(339)の3隻。

  • 6月13日発表

6月12日午前7時、「6月9日」のバルサム級情報収集艦(80)が北海道宗谷岬をオホーツク海から日本海に向け航行。

  • 6月16日発表

6月15日正午、7隻の艦隊が北海道襟裳岬南東の太平洋上を南に進み、千葉県犬吠埼の南東180 kmを南西に航行した。艦隊の構成は、ウダロイI級駆逐艦(543)・(548)の2隻、ステレグシチーII級フリゲート(337)、ステレグシチー級フリゲート(333)・(335)・(339)の3隻、およびマルシャル・ネデリン級ミサイル観測支援艦1隻。このうち5隻は6月9日に北海道根室半島沖に現れた艦隊と同一。

  • 6月17日発表(2件)
  • 6月16日午後7時、5隻の艦隊が伊豆諸島須美寿島と鳥島間の海峡を南西に向け航行、同17日深夜、ウダロイI級駆逐艦1隻が、また同日午前7時にマルシャル・ネデリン級ミサイル観測支援艦1隻がそれぞれ須美寿島と鳥島の海峡を通過、南西に航行した。5隻の艦隊およびその他の2隻は、6月15日/襟裳岬、6月16日/犬吠埼に現れた艦隊と同一。
  • 6月17日午前6時、9隻の艦隊がオホーツク海から宗谷海峡を西に進み、日本海に入った。艦隊の構成は、グリシャV級小型フリゲート(390)、タランタルIII級ミサイル護衛哨戒艇(916)、(921)、(946)、(971)、(978)、(991)の6隻、アルタイ改級補給艦、オビ級病院船。
  • 6月19日発表

6月19日午後4時、5隻の艦隊が沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を太平洋から東シナ海に向け航行。この艦隊は、6月15日/襟裳岬、6月16日/犬吠埼、6月17日/須美寿島・鳥島を通過した艦隊と同じ。

  • 6月21日発表

6月21日午前7時、6月19日発表の5隻の艦隊が東シナ海から対馬海峡を抜け、日本海に入った。この艦隊は6月15日北海道襟裳岬南から日本本州を一周して6月21に日本海入りウラジオストクに向かったものと同じ。

以下にロシア艦隊の代表的な写真を示す。

図3:(統合幕僚監部)バルサム級情報収集艦(80) は、5月から6月にかけて北海道を周回した。これは北海道・東北に配備されている日米両軍の通信傍受とレーダーの電子情報を収集するための行動。この艦は、満載排水量約5,000 ton、レドーム、大型マスト、対空ミサイル9K32ストレラ2 8連装発射機などを備える。艦番号80は「プリバルチカ」1984年就役。同型艦は4隻ある。しかし船体の汚れがひどい、中身は大丈夫なのか?

図4:(統合幕僚監部)大型対潜艦・ウダロイ級駆逐艦、満載排水量7,500 ton、全長163 m、速度35 kts、強力なソナー、長射程の対潜ミサイル、ヘリコプター2機、SA-N-9型個艦防空ミサイルを装備。1980-1991年に作られ、8隻が就役中で太平洋艦隊には4隻を配備。

図5:(統合幕僚監部)写真はステレグシチー級フリゲート「グロムキー(335) 」2018年太平洋艦隊に就役。満載排水量2,200 ton、全長104,5 m、速力27 kts、マスト頂部はSバンド3次元レーダー、マストは閉囲型で各種レーダーを内臓。兵装は、対空用GSh-630M 30 mm ガトリング砲 2基、陸上用対空ミサイルS-400を艦載化して12セルのVLS(垂直発射装置)に装備、対艦用3M24ウラン・ミサイル4連装発射筒2基を搭載。同型は6隻で追加2隻が艤装中。

図6:(統合幕僚監部)写真337( グロズヌイ?)は2021年起工の新型艦らしい、前傾写真の改良型の20381型。対空ガトリング・ガンを長射程の「3K96リドウート」に変更、巡航ミサイル運用能力が追加された。

図7:(統合幕僚監部)グリシャ級は、1124型小型対潜艦と呼び1970年代から使われ90隻以上が建造された。満載排水量1,200 ton、速力34 kts。うちグリシャV級は1985年以降28隻が就役中。主砲が76 mm AK-176単装砲になり、対空ミサイル4K33オサーM連装発射機(20発)を搭載、RBU-6000対潜ロケット砲(96発)を装備する。

図8:(統合幕僚監部)写真、複合測量艦「マルシャル・クルイロフ」(331)は、ミサイル追跡艦で「ネデリン」級2番艦で太平洋艦隊に所属。満載排水量24,000 ton、2015年に近代化改修を終え、僚艦「ネデリン」が退役したのでロシア海軍唯一のミサイル追跡艦になっている。

図9:(統合幕僚監部)タランタルIII級ミサイル護衛哨戒艇。超音速対艦ミサイルSS-N-22・連装発射筒を両舷に装備。現役は25隻、満載排水量462 ton、速力36 kts、兵装はSS-N-22対艦ミサイル4基と76 mm単装砲1門。

図10:(統合幕僚監部)アルタイ改級補給艦は、満載排水量7,250 ton、全長106 m、速力14 kts、同級艦は6隻ある。前掲「バルサム級情報収集艦(80)」と同様汚れが目立つ。

図11:(統合幕僚監部)「オビ」級病院船。写真は320B計画「イルテイッシュ」、常備排水量11,570 ton、全長152 m、客船と似た仕様だが、後部甲板はKa-25PSヘリコプター格納庫と発着甲板になっている。同型艦は3隻だが、稼働中は「イルテイッシュ」のみ。2017~2018年に近代化改修を済ませ、ウラジオストクを母港にしている。

中国海軍

  • 6月1日発表

6月1日午前9時、4隻の艦隊が、奄美大島と鹿児島県横当島の間を東シナ海から太平洋に進出。艦隊の構成は、ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(154) 1隻、ジャンカイII級フリゲート(515)1隻、ユージャオ級揚陸艦(986)1隻、及びフチ補給艦(904)1隻。

  • 6月3日発表

6月2日午後9時、ドンデイアオ級情報収集艦(795)が沖縄県久米島北西から宮古島と沖縄本島の間の宮古海峡を抜け、東シナ海から太平洋に進出。

  • 6月13日発表

6月12日午後1時、別のドンデイアオ級情報収集艦(794)が長崎県対馬海峡西側を東シナ海から日本海に向け航行。

  • 6月14日発表

6月13日正午、レンハイ級ミサイル駆逐艦(102)、ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(120)、フチ級補給艦(902)の3隻が、長崎県福江島西の海域から対馬海峡を北東に進み、日本海に進出。

  • 6月16日発表

6月16日午前9時、青森県竜飛岬の西の日本海から、ドンデイアオ級情報収集艦(794)およびフチ級補給艦(902)の2隻が津軽海峡を通過、太平洋に進出した。これらは6月12日、13日に対馬海峡を北東に進み日本海に進出した艦と同一。

  • 6月17日発表

6月16日正午、北海道礼文島の南西の日本海から宗谷海峡を通過、オホーツク海に向かうレンハイ級ミサイル駆逐艦(102)とルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(120)を発見。これらは6月13日に対馬海峡経由、日本海に入った艦と同一。

  • 6月20日発表

6月19日午後2時、宮城県金華山の東を南に進む3隻の艦隊を発見、午前10時これらは犬吠埼沖を南進した。これら3隻は、6月12日―13日に対馬海峡から日本海に入り、16日―17日に宗谷海峡あるいは津軽海峡を通過、太平洋に進出した艦と同一。

  • 6月21日発表

6月21日午前3時、6月20日の3隻の艦隊が伊豆諸島の須美寿島―鳥島の海峡を通過、西に航行した。

  • 6月22日発表(2件)
  • 6月21日午前9時、沖縄県与那国島と台湾の間のの海域を南に進むジャンダオ級小型フリゲート(615)、及び同午後11時にルーヤンII級ミサイル駆逐艦(153)を発見、これらは台湾東岸の太平洋に向け航行。
  • 6月21日午後2時、沖縄県久米島の北西から宮古海峡を通過、太平洋に向かうルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(131)、ジャンカイII級フリゲート(599)、(529)の2隻、及び22日午前6時にルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(156)を発見した。
  • 6月24日発表(2件)
  • 6月24日午前6時、与那国島と台湾の海峡を太平洋から東シナ海に向かう2隻を発見、これらは6月21日同じ航路を東シナ海から太平洋に向かった艦の戻りである。
  • 6月23日午後9時から同10時にかけて、沖縄本島と宮古島の間、宮古海峡を通過、東シナ海に向かう5隻の艦隊を発見、これらは6月2日、同21日、同22日に宮古海峡経由太平洋に進出した艦の戻りである。
  • 6月26日発表

6月26日午前1時、伊豆諸島八丈島と御蔵島の間をドンデイアオ球情報収集艦(794)が西に向かって航行。この艦は6月12日に対馬海峡から日本海へ、同16日に津軽海峡から太平洋に向かって航行したものと同一。

  • 6月30日発表

6月29日午後11時、太平洋から宮古海峡を通過、東シナ海に向かうレンハイ級ミサイル駆逐艦(102)、ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(120)およびフチ級補給艦(902)の3隻を発見、これらは6月12日対馬海峡を北進、6月16日に宗谷海峡と津軽海峡を通過、6月20日には犬吠埼、6月21日には伊豆諸島須美寿島近傍を通過したものと同じである。

図12:(統合幕僚監部)2022年6月、レンハイ級ミサイル駆逐艦(102)、ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(120)、フチ級補給艦(902)、ドンデイアオ級情報収集艦などが日本を周回した航路を示す図。

以下に中国艦隊の代表的な写真を例示する。

図13:(統合幕僚監部)「ルーヤン/旅洋III級 / 052D型 昆明級」駆逐艦は中国版イージス艦。同型艦は25隻が就役済み、追加5隻が艤装中で間も無く30隻体制になる。写真「太原(Taiyuan) / 131」は2018年就役、東海艦隊に所属。満載排水量7,500 ton、全長156 m、速力29 kts。VLS(垂直ミサイル発射装置)64セルに対空/対艦ミサイル(HHQ-9、CY-5、YJ-18など)を装備。海自イージス艦「こんごう」級6隻よりやや小振りだが、総合性能はほぼ同じ。

図14:(統合幕僚監部)「ジャンカイII/江凱II」型は「054A」フリゲート、2008年に写真1番艦「舟山・529」が就役。満載排水量4,000 ton、全長134 m、速力27 kt、HQ-16対空ミサイルを32セルVLSに収納。対艦ミサイルは艦中央にYJ-83型を4連装発射機2基に搭載している。[045A]型フリゲートは外洋艦隊用で防空能力を強化。同型艦は30隻が就役済み。海自フリゲートFFM「もがみ」級よりやや小型。

図15:(統合幕僚監部)「ドンデイアオ級/Dongdiao-class /東調級情報収集艦(815型情報収集艦)は、満載排水量6,600 ton、速力20 kts、9隻が就役中。艦尾にヘリコプター甲板、船体中央の大型レーダーは1,000 km範囲の弾道ミサイルや衛星を追跡する。写真の艦番号「795」と「794」が日本近海に現れ、日米が共同演習中の海域に出現、各種電波情報の収集とミサイル追跡をしている。

図16:(Wikipedia)ユージャオ級揚陸艦・071型は中国海軍初のドック型揚陸艦。米海軍のサンアントニオ( San Antonio LPD-17)に似た艦。満載排水量20,000 ton、全長208 m、Z-8輸送ヘリコプターを最大4機収納するハンガーを備える。艦内に車両甲板とウエルドックがあり、726型エアクッション揚陸艇最大4隻を搭載可能。装甲戦闘車両20両と兵員800名を輸送する。8隻が就役中。写真の艦番号986は「四明山・Simingshan」で同級の7番艦。

図17:(統合幕僚監部レンハイ級ミサイル駆逐艦。「055型・南昌級駆逐艦」は満載排水量13,000 ton、世界最強の水上艦と言われる。NATOではミサイル巡洋艦と呼んでいる。垂直ミサイル発射機・VLSを2基/合計112セルには、対艦ミサイル「YJ-21」、対空ミサイルなどを搭載する。対艦ミサイル「YJ-21」は射程1,000~1500 kmで空母打撃群攻撃や対地攻撃が目的、戦略爆撃機「H-6N」にも搭載が可能。写真は1番艦「南昌 101」だが、今回現れた2番艦「拉薩(らさ/LHASA・102)」は2021年3月就役したばかり。同級は7隻が配備中で、さらに少なくとも3隻が建造中。

図18:(統合幕僚監部)レンハイ級ミサイル駆逐艦の2番艦「拉薩(らさ/LHASA・102)」の写真、夜間撮影のため不鮮明だが艦首の「102」は読める。この艦の就役と演習を報ずる中国国営英字紙グロ―バル・タイムズは「台湾問題を巡って日米が繰り返し中国を挑発する中、この艦は運用能力の全てを実現し、台湾海峡での仮想敵国の干渉を抑えることができることを証明した」と報じた。

図19:(統合幕僚監部)「ジャンダオ級・江島級・Jiangdao-class」小型フリゲートは、「056型コルベット (056 corvette)」と呼ばれ、沿海防御用の艦で2020年までの8年間に72隻が作られた。満載排水量1,500 ton、全長89 m、速力25 kts、兵装は、76 mm単装砲、YJ-83 対艦ミサイル連装発射筒2基、防空用に最新のHHQ-10近接防空ミサイル(8連装)発射機1基、後部甲板にはKa-28やZ-9哨戒ヘリが離着艦できる。写真は49番艦「孝感・Xiaogan ・615」である。

図20:(統合幕僚監部)福地級補給艦、903型総合補給艦とも言う。本級には903型/20,500 tonと903A型/23,000 tonがある。全長178.5 m、速力20 kts、物資や燃料を11,000 ton搭載。903型は2005年に2隻が就役、以後大型の903A型が7隻完成済み。写真「902」は艦名不詳。

  • ロシア戦闘攻撃機、中獄戦略爆撃機など日本周辺に飛来
  • 6月8日発表

6月7日夜、ロシア機4機がシベリア沿海州から北海道小樽市西の積丹半島近くまで直行・接近し、領空の手前で反転、引き返した。航空自衛隊千歳基地に対するに対する威力偵察である。

2018年4月7日にSu-24戦術偵察機2機が北海道北東部の我が国防空識別圏(ADIZ)に侵入したが、今回の侵犯もSu-24の可能性がある。

図21:(統合幕僚監部)6月7日夜、北海道西岸積丹半島の領空に接近したロシア機4機の航跡。

図22:(Sukhoi/Wikiwand)Su-24戦術偵察機。スーホイ(Sukhoi)Su-24攻撃機を偵察機にした機体でSu-24MRと呼ぶ。機首にはBKR-1側方視認レーダーを搭載、胴体下面には赤外線センサー、電子偵察機材、各種カメラを搭載、主翼下面には電子情報蒐集のELINTポッドを備える。基本のスーホイ Su-24フェンサー(Fencer)は可変後退翼、双発で並列座席に乗員2名。1974年就役開始、1993年までに約1,400機が作られた。航続距離3,000 km、爆弾・ミサイル搭載量は8 ton。構造、電子装備の近代化改修が行われSu-24M2として配備中。最大離陸重量は43,8 ton、可変後退翼は飛行モードに応じて4段階になる。エンジンはサターン(Saturn)AL-21F-3A、アフトバーナ付き推力24,700 lbsが2基。各機種合計で370機が配備中。

  • 6月23日発表

6月23日午後、中国戦略爆撃機H-6が3機(機番56, 20214, 54)、東シナ海から沖縄本島と宮古島の間、宮古海峡を通過し太平洋に進出、反転して、再び東シナ海に戻った。機番54および56は、H-6Aなど旧い機体を近代化改修したH-6M型機らしい。これに対し機番20214は、2007年に初飛行した新型機H-6K、現在空軍の主力機である。

図23:(統合幕僚監部)6月23日午後、沖縄県宮古海峡を往復した3機の戦略爆撃機「H-6」のうちの1機。初めはロシアTu-16爆撃機を西安航空機で国産化し1968年に初飛行。現在はH-6K、H-6H、H-6M、H-6Nなど各型が配備されている。我国周辺にはH-6K、H-6Mや最も新しいH-6Nがよく現れる。写真(機番56)は翼下面に対艦ミサイル4発が見えるのでH-6Mらしい。これに対しH-6Kは兵装搭載量が9 tonから12 tonに増えた新型、機番が5桁表示で、翼下面に巡航ミサイルCJ-10Aを6発搭載する。H-6N型は対艦ミサイルYJ-21を発射可能と言われる。

  • 6月24日発表

6月24日午前、中国軍Y-9情報収集機1機が東シナ海から宮古海峡を通過、太平洋に進出、反転して往路値同じ航路で東シナ海に戻った。

図24:(統合幕僚監部)6月24日午前、沖縄県宮古海峡を往復した中国軍Y-9情報収集機。Y-9は陜西飛行機が開発した搭載能力20 tonの中型輸送機。グラスコクピット、複合材6翅プロペラ、出力5,100 shpターボプロップ4基を装備、最大離陸重量65 ton、航続距離5,200 kmで、2012年から就役している。この派生型がY-9情報収集機で、Y-9JB型(ELINT)およびY-9G(ジャミング型)がある。写真から、機首の下、前部胴体・後部胴体の側面、尾翼などにアンテナが見えることから、Y-9Gのようだ。

自衛隊と米国を含む友好国の活動

我国防衛省と米国を含む友好国の活動を以下に述べる。

海上幕僚監部関係

  • 6月1日発表

5月31日房総半島の南方海域で、海自ヘリSH-60Kと米海軍へりMH-60Rが海自潜水艦を目標にして対潜戦訓練を実施した。

  • 6月8日発表

6月5日―7日南シナ海で、海自護衛艦「はるさめ」は米海軍ミサイル駆逐艦「フィッツジェラルド」および補給艦「テイピカヌー」と洋上補給訓練を行なった。

  • 6月14日発表

6月21日―30日硫黄島周辺海域で、日米海軍は「令和4年度、実機雷処分訓練および掃海特別訓練」を実施する。海自参加部隊は、掃海母艦「ぶんご」、掃海艇「ひらど」、「ひらしま」、「すがしま」、「うくしま」、「あいしま」。米海軍からは水中処分兵員約10名。

  • 6月16日発表

6月23日三菱重工長崎造船所で、「もがみ」型フリゲート5番艦(FFM-5)の進水式を行った。進水式で艦名は「やはぎ」と命名された。同艦はこれから艤装を開始、2023年12月に就役する予定。

  • 6月20日発表

6月17日―19日の間、西太平洋王で日米両海軍は共同演習を実施。参加部隊は、海自からヘリ空母「いずも」、護衛艦「たかなみ」、米海軍からミサイル駆逐艦「サンプソン」、補給艦「ラパハノック」。

図25:(海上幕僚監部)左は海自護衛艦「たかなみ」、右は米ミサイル駆逐艦「サンプソン」、後ろはヘリ空母「いずも」。

  • 6月21日発表

6月20日、大西洋上のイギリス海峡で日英海軍の共同訓練を実施した。参加部隊は、海自から練習艦「かしま」と「しまかぜ」、英海軍から哨戒艇(patrol ship)「マージー(HMS Mersey)」、および測量艦(survey vessel)「エンタープライズ(HMS Enterprise)」。

6月21日付け「Naval Today」電子版は「2大海軍国である日本・英国の艦艇が、イギリス海峡(English Channel)に面したドーセット沿岸(Dorset coast0で共同訓練)」と題して伝えた。日本からの2隻は、いずれも多数の士官候補生を乗せた遠洋航海中の艦で、すでにスペイン沿岸において英海軍の最新鋭空母「プリンス・オブ・ウエルス(HMS Prince of Wales)・65,000 ton」などが実施したNATO海軍演習にも参加している、と報じた。

図26:(海上幕僚監部)ドーバー海峡での日英共同訓練。左から「エンタープライズ」、「しまかぜ」、「マーシー」。

航空幕僚監部関係

  • 6月7日発表

6月3日青森県東方の太平洋状の空域で、空自は米空軍と共同訓練を実施。参加部隊は、空自第2航空団(千歳基地)F-15戦闘機2機と北部航空警戒団(三沢基地)、米空軍からはB-1爆撃機2機で、主として邀撃訓練を行なった。

  • 6月7日発表(統合幕僚監部)

北朝鮮、中国、ロシアからの脅威が増すなか、対処するため日米空軍は日本海上の空域で共同訓練を実施した。参加部隊は、空自は第2航空団(千歳基地)F-15戦闘機4機、米第5空軍・第35戦闘航空団(三沢基地)F-16戦闘機2機で、各種戦術訓練を行なった。

第5空軍は日本全域と韓国を担当する部門で、配下には第18航空団(沖縄県嘉手納基地)・F-15、KC-135、E-3Bなど、第35航空団(三沢基地)・F-16、第374空輸航空団(横田基地)・C-130、などを持つ。

米第7艦隊ニュース

  • 6月4日発表

6月4日フィリピン海で、米海軍空母「ロナルド・レーガン(USS Ronald Reagan) CVN 76 」、ミサイル巡洋艦「アンテイータム(USS Antietam) CG 54」、ミサイル駆逐艦「ベンフォルド(USS Benfold) DDG 65」は、韓国海軍の揚陸艦「マラド(馬羅島)LPH 6112」、ミサイル駆逐艦「世宗大王(Munmu The Great) DDH 976」など7隻と共同訓練を実施。これは4年7ヶ月ぶりとなる。

図27:(US 7th Fleet, Petty Officer 2nd Class Askia Collins)6月4日フィリピン海で米空母打撃群と共同訓練をした韓国海軍の揚陸艦「マラド・LPH 6112」。「独島(日本名の竹島)級揚陸艦」の2号艦で、2007年に就役。満載排水量19,000 ton、全長185 m、速力22 kts、上陸部隊700名を輸送する。甲板にはヘリ発着スポット5箇所があり、UH-60ヘリなどの運用可能。甲板の前後にエレベーターが2つ見える。

  • 6月5日発表

6月7日から17日にわたり、米「インドー太平洋軍」は、グアム島近くの北マリアナ諸島演習海空域で大規模演習「バリアント・シールド(VS=Valiant Shield) 22」を実施した。参加したのは、空母打撃群「ロナルド・レーガン(USS Ronald Reagan / CVN 76)」、同「アブラハム・リンカーン(USS Abraham Lincoln / CVN 72)」、強襲揚陸艦「トリポリ(USS Tripoli / LHA 7)」、陸軍第94対空・対ミサイル防空軍(AAMDC)、海兵隊第1および第3遠征軍(MEF)、空軍からグアム基地・第36航空軍、などが参加。航空機200機以上、艦艇15隻、兵員13,000名を動員して行われた。

この演習「VS 22 FTX= field training exercise」は、2年ごとに行われる陸海空宇宙を含む大規模な演習で、敵からの攻撃の探知、追跡、交戦のあらゆる場面を想定して行う実戦さながらの演習で、緊迫の度合いが増え続ける「インドー太平洋地域」の現状に対応した訓練である。

  • 6月6日発表

マリアナでの米軍大演習「VS 22 FTX」開始の直前6月3日に、横須賀軍港に入港した米海軍第7艦隊所属の強襲揚陸艦「トリポリ(USS Tripoli / LHA 7)を、海自・自衛艦隊司令官「湯浅秀樹」海将などが訪問、F-35B戦闘攻撃機の離発着訓練、艦内格納庫などを視察した。

図28:(US 7th Fleet) 「強襲揚陸艦トリポリ(LHA 7)」は、「アメリカ級」揚陸艦の2番艦。2020年7月就役でサンデイゴが母港。2022年5月に、中国海軍の動きを牽制するため岩国基地に移動し第7艦隊を補強中。写真は2022-4-7撮影したトリポリ。甲板上には20機のF-35B STOVL戦闘機が並んでいる。「トリポリ」は排水量46,000 ton、全長257 m、速力22 kts、海兵隊員1,600名以上を運べる。

Global security.com

  • 6月17日報道/中国3隻目の空母が進水式

中国環球時報/Global times 6月17日によると、中国海軍3隻目となる最大の空母「福建(Fujian)・艦番号18」が上海の江南造船所で完成、17日午前11時に進水式を行った。初の電磁カタパルト装備で、飛行甲板はこれまでの「遼寧」、「山東」・6万トン級のようなスキー・ジャンプ方式ではなく、フラットデッキ。これから艤装、試験航海が行われ、3年後の就役を目指している。

「福建(18)」は、満載排水量85,000 ton、通常動力推進で、アングルド・デッキを採用、電磁カタパルトを3基装備する。米海軍の最新型原子力空母「ジェラルド・フォード(Gerald R. Ford)」10万トンは電磁カタパルト4基を装備するので、これには及ばない。搭載機数は「遼寧」、「山東」より増え、電磁カタパルト対応の改良型「J-15T」戦闘機、「J-15」電子戦機、さらに次世代型「J-35」戦闘機、「KJ-600」早期警戒機など60機程度になる。

図29:(環球時報)17日上海江南造船所で進水式を終え、タグボートでドックから引き出された「福建」。3基の電磁カタパルトには覆いを被せている。電磁カタパルトは大電力を消費するので、いろいろ課題があると言われている。

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