2015-01-19 松尾芳郎
瀋陽航空機製J-15は中国初の艦上戦闘攻撃機で、米海軍のF/A-18E/Fスーパーホーネットに匹敵する性能を持っている。
米海軍研究所によると、中国軍のJ-15は遼東半島遼寧省の西の海、遼東湾を挟んだ北西のHuludao(錦西)に新設された基地で訓練に励んでいる。この基地は空母離着艦訓練用で、艦載機を収容できるシェルターが24基あり、整備用ハンガーも設置され、滑走路脇のランプには“遼寧”を模したスキージャンプ台と飛行甲板のマーキングが施されている。
図：(Defense Update / Eros B satellite image, Imagesat) Huludao（錦西）の東に隣接する基地内にJ-15戦闘攻撃機の訓練施設が設置された。写真は3枚から成っており“上”が滑走路とランプの全体、“下”がランプの拡大図、“中”がランプに描かれた空母”遼寧”の飛行甲板の拡大写真。
図：瀋陽航空機と601研究所が共同開発中の艦上戦闘攻撃機J-15。ロシア・スーホイ製Su-33戦闘機に国産のレーダー、兵装を施した機体。2001年当時ウクライナからSu-33の原型T-10k-3を取得、これを模しロシア製AL31ターボファン装備で完成、2009年に初飛行した。2013年末からWS-10Aエンジン(推力A/B時33,000lbs)2基装備型で量産を開始、これまでに20機ほどが作られている。最大離陸重量33㌧、最大速度マッハ2.4、航続距離3,500km。瀋陽航空機が作るWS-10Aエンジンは、1982 年に米国から輸入したCFM56のコアを基に開発したターボファンで、ロシアの専門家によると「ロシア製サターンAL-31と同等もしくは優れ、中国が最も成功したエンジン」としている。WS-10Aをベースに高バイパス比ファンとするWS-20の開発にも取組んでおり、完成すれば既報のY-20大型輸送機に装備する予定、と云う。
中国海軍は、空母 ”遼寧”とJ-15戦闘攻撃機を実戦配備することで、目指す世界戦略に向けた第一歩を踏み出し、同時に米海軍と対峙する能力を示すことになる。しかし現在は、空母の隻数、搭載機の数、保有する技術力、いずれも米海軍と肩を並べるにはほど遠い水準にある。仮に今直ぐ米国が空母の新造と搭載機の更新をストップしたとしても、中国が米国の水準に到達するには10年あるいは20年の歳月を要する。しかし、中国が世界中何処でも空母、つまり航空基地を展開できる能力を備えたことは無視できない。特に我国にとっては、日本列島付近にいつでも作戦可能な中国の移動基地が生れたことを意味し、安全保障上の大きな脅威となる。
図：写真は空母“遼寧”と発艦するJ-15戦闘機。後部甲板には10数機のJ-15が見える。この艦は、ウクライナの黒海造船所で建造され1988年に進水したが、経済危機に見舞われたロシアは1992年に建造を中止した。この未完成空母ワリヤーグを、中国政府が2,000万㌦で購入し2001年に大連に回航した。2005年より大連造船所で補修、改装を進め、2012年に中国海軍初の空母“遼寧”として完成した。海軍への引渡し式には当時の胡錦濤国家主席、恩家宝国務院総理が出席し完成を祝った。2014年4月７日訪中したチャック・ヘーゲル(Chuck Hagel)米国防長官は、山東半島Qingdao(青島)基地に停泊中の”遼寧”を２時間にわたって視察した。これは中国人以外に対する初めての遼寧公開となる。
図：”遼寧”の全景、基準排水量53,000㌧、満載排水量67,500㌧、全長304m、この大きさは英国で建造中の空母クイーン・エリザベスに匹敵する。近く就役する我国の新造ヘリ空母「いずも」の２倍以上もある。
離艦用甲板はスキージャンプ方式でカタパルトは無い。着艦用アングルド・デッキにはアレステイング・ワイヤを装備する。エレベーターは右舷艦橋の前後に計2基ある。対空兵装は30mm11銃身CIWSを3基、18連装対空ミサイル発射機3基、対潜ロケットは12連装2基を備える。推進は蒸気タービン(20万馬力)で４個のスクリューを回す。艦載機数はJ-15を24機と早期警戒機やヘリコプターなど、合計36機を搭載できる。艦橋正面にはAESAレーダー・パネル(4枚のうちの１枚)が見える。
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本稿作成の参考にした記事は次ぎの通り。
Aviation News 2015-01-15 “First photo of the fully operative Chinese rivals to the US Navy F-18” by Jesus Diaz
人民網日本語版“中国初の空母「遼寧号」が就役”2012年9月26日
Defense Updte Dec 1, 2012 “China’s J-15 Fighter jets Conduct First Successful Operatins Aboard Aircraft Carrier Liaoning