エアバス、複合材製の一体型中央翼の試作に成功


2017-02-11(平成29年) 松尾芳郎

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図1:(Airbus) 試作に成功した一体型炭素繊維複合材製の中央翼を背景に、担当したエアバス社ツールースおよびナンテス工場研究技術チームの記念写真。

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図2:(Airbus) エアバスでは世界で初めて複合材を使い一体型の中央翼(center wingbox) を試作した。

 

エアバスは、「この程世界で初めて航空機の主翼を支える中央翼を、複合材を使って作るのに成功した」と発表した(13 Jan. 2017)

現在中央翼は複数の部品を組合わせて作られているが、エアバスのツールースとナンテス(Toulouse and Nantes)工場の 研究技術チームは、炭素繊維複合材を使い一体型中央翼にすることで製造費を20%節減することに成功した。

一体型中央翼は、最新の複合材技術を適用して作られたもので、複雑な形の内部構造を連続する炭素繊維で成型して作り上げる。従って組立工程が簡単になり荷重の伝達、つまり“ロードパス (load path) ”がスムースになり改善される。

これまでの中央翼は、エアバスに限らずボーイングでも、複合材製の複数の部品を組合わせて作られ、複合材や金属製の他の部品と結合されている。A350やA380の中央翼はナンテス工場で作られ、複合材を40%含んでいる。

このプロジェクト・リーダーであるデニス・ソウラ(Denis Soula) 氏によると、今回の中央翼試作は、次の3企業の協力を得て行われた。

・  複合材成型技術を持つサフラン(Safran)の子会社“STRUCTIL”

・  ・炭素繊維の自動重ね合わせ技術 を持つ”CORIOLIS” 社

・炭素繊維複合材の“引出し成型加工技術 (pultrusion) ”を実用化済みの日本企業 ”ジャムコ (JAMCO) ”、ジャムコはエアバス A380機の2階客室床ビーム、A320、A330、A350、A380などの垂直尾翼用縦通材等を “pultrusion”技術で製造、納入している。

同研究技術チームの次の目標は、実機用の大型中央翼の製造工程を確立し、次世代型旅客機の中央翼生産に繋げたい、としている。

 

—以上—

 

本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。

 

Aviation Week Network Feb 6, 2017 “The Week in Technology, Feb.6-10, 2017” by Graham Warwick

Airbus News 13 January 2017 “Airbus’ new center wing box design holds great promise for future aircraft”